モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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はい、3ヶ月ぶりですね
もう年末だよ一年って短いね(クリスマスから目を逸らしつつ)


19話

幾千、幾万もの剣が地面に突き刺さる丘がどこまでも続く心象世界

 

その世界を呪いで汚染しながら暴れ回る白い巨大な龍

雨のように降り注ぐ剣はその鱗に容易く弾かれて消える

龍の足元で剣を振るうセイバーの攻撃も効いている様には見えない

その光景を少し離れた場所から見ている遠坂と士郎のマスターと遠距離からの観察に留めているアーチャーは、相手のその余りの出鱈目さに歯噛みするしか無かった

 

「何よアイツ、攻撃が効いてないじゃない。

バーサーカーといい、どいつもこいつもバカじゃないの?」

 

「……いや、完全に効いてない訳ではない。

あの黒い霧が攻撃の威力を7、8割ほど軽減しているようだ。

そして軽減された攻撃をあの硬い鱗で受けている。

完全に効いていない訳ではないが……」

 

「どの程度違うってのよ。」

 

「さあな、だが完全に効いていないよりはまだやりようがあるという話だ。

I am the born of my sword我が骨子は捻れ狂う

偽・螺旋剣カラドボルグⅡ』……!」

 

多くの魔力を注ぎ込んで投影したのはケルト神話に名高いフェルグスの持っていた螺旋剣、またの名を虹霓剣

それを黒の弓につがえ、形状を剣から矢へと変化させ、そして撃ち出す

螺旋剣の名の通り、空気を割き、螺旋を発生させながら目標へと向かうその一撃は足元のセイバーを押しつぶそうと片方の前足を振り上げていたヴォーティガーンへと直撃する

その衝撃でバランスを崩しそうになり、さらにその直後、剣に宿る神秘が暴走、爆発しヴォーティガーンの巨大な体が大きく揺らぎ、そして倒れた

 

「おい、セイバーがいるのに!」

 

「未熟者め、自分のサーヴァントが何をしているか位は把握しておけ。

直撃で奴がバランスを崩した瞬間に逃れている。

そんな事より今の一撃でも奴に大した傷を負わせられなかったのが問題だ。

私の渾身の一撃でもバランスを崩して転ばせるのが精々とはな。」

 

黒弓を消し、体勢の崩れたヴォーティガーンに向けて剣の雨を降らせる

そしてセイバーもここが好機と見たか、風の鞘を束ねた一撃『風王鉄槌ストライク・エア』を放つが、やはり与えられる傷は浅い

 

「……やはり事前の推測通り、神造兵器でなければ有効打にはならんか。」

 

「アーチャー、アンタ何か神造兵器投影できないの!?」

 

「無茶を言ってくれる。

人には模倣はおろか理解すらできない代物だから神造兵器というのだ。

なに、私は手札の多さならギルガメッシュにも負けず劣らずであると自負している。

それに、トドメを刺すのに必要なものはあるのだろう?

ならば後は詰将棋だ。

それを確実に当てられる状況を作り出す。

衛宮士郎、貴様は特によく状況を見ておけ。

それを預かっている貴様の判断がこの戦いの命運を分けるのだからな。」

 

自分の周りに幾多もの剣を投影させ、それを打ち出すと共に干将・莫耶の夫婦剣を投影してヴォーディガーン向けて駆け出していくアーチャー

その姿を見ながら士郎は自身の手に握られた小さな青と白の筺をしっかりと握り直した

 

それはこの戦いが始まる前、最後の確認のために集まった場でモルガンから渡された『偽・霊脈閉塞型兵装ロンゴミニアド』、その待機状態

本物のロンゴミニアドの待機状態である筺を真似たものだ

使用者であるセイバーに持たせていないのは、起動条件にセイバーの魔力を用いる為である

戦闘中に漏れ出た魔力がそれに触れれば予期せぬタイミングで起動してしまう

それで避けられでもしたらもうヴォーティガーンを倒す術は無くなる

 

故に状況を見極められる位置に士郎が待機し、状況に応じて『偽・霊脈閉塞型兵装ロンゴミニアド』を渡す

場合によっては令呪を用いる事も視野に入れてただ好機を待つ

ここで必要になるのは蛮勇とも呼べるような勇気でも、英雄と渡り合うための力でもなく、ただ味方を信じて状況を見極める冷静さ

 

衛宮士郎という男は蛮勇はあり、力を求め、しかして冷静さは未だ欠けている

正義の味方という曖昧かつ夢物語にも近い夢を追い続けて来た弊害なのだろう

何の考えもなしに他人を助けるという事はその人物の事を信じていないという事と同義である

何処かの並行世界でセイバーを1人の女の子と認識したままバーサーカーの攻撃から庇ったように、或いはまた別の並行世界でアインツベルンを襲ったギルガメッシュがイリヤスフィールを殺そうとした時に飛び出そうとしてしまったように

 

故に今のこの状況は衛宮士郎にとっては目の前で死線を潜り抜けている者がいるのに一切手出しが出来ないというこれ以上なく受け入れ難い状態なのだ

 

目の前で黒い炎が剣の丘を舐め、刺さっていた幾つもの剣が溶かされ、消える

目の前で戦う二騎のサーヴァントでも防御すら不可能

一撃一撃が必殺

そんな攻撃が何度も何度も放たれ、そしてこちらの攻撃は大して効いていない

精々が鱗の表面に傷をつける程度

セイバーの魔力放出、風圧の剣撃もアーチャーの剣の雨、壊れた幻想ブロークン・ファンタズム、3つの夫婦剣による必中の連撃も大した意味をなさない

 

衛宮士郎はそんな光景を目の前にして本来は黙って見ていられるような性格ではないのだ

 

考えろ

思考を回せ

戦うのがサーヴァントなら考えるのがマスターの役目だ

肝心の一撃を外さない為には相手の体勢を先ほどとは比べ物にならない程崩さなければならない

アーチャーの渾身の攻撃で片足を上げた状態のヤツを多少は崩せる

そこにもう一撃入れられれば……

 

さっきのアーチャーの攻撃、その時は確か偽・螺旋剣カラドボルグⅡと言っていた

つまりはアレも投影だ

俺の使える投影魔術と同じ……!

つまり俺がアレを使えれば…………だが今の俺は構造も材質も知らなければ実力も足らない……!

 

「士郎、変な事を考えるんじゃないわよ。

足りない物を無理に埋め合わせようとして、仮に埋め合わせられたとしてもそれは自分にとって絶対に必要な物を削り取って埋め合わせただけ。

連戦上等のこの戦いでそんな真似をしたら確実に死ぬわよ。

無茶をするのは今あるものを使い切った後!

何があってどう使えるか、そうやって考える事を諦めて楽な方に流れようとしない!」

 

戦場を瞬きすらせずに睨むように視線を向けている遠坂から喝が飛ぶ

その言葉に思考が出来もしない事から目の前の現実に戻る

俺にあるのはなんだ

令呪が二画、絶対的切り札の『偽・霊脈閉塞型兵装ロンゴミニアド』、それと……

とそこまで考えたところでソレの存在を思い出す

アーチャーから渡された二振りの剣

夫婦剣『干将・莫耶』

 

今俺が持つ中で『偽・霊脈閉塞型兵装ロンゴミニアド』を除いた一番強い武器

布で包み、紐を通して背に背負っていたそれの重さを思い出した

 

「これしか無いけど……無いよりマシだ!」

 

問題はどう使うか

仮に俺がこの二振りを持って戦いに行ったとしても無駄死にしかしないだろう

なら…………アーチャーあいつと同じように矢にして撃ち出す

これも投影で作り出した剣だ

なら同じ魔術の使い手である俺が手を加える事も可能なはず!

 

「……同調トレース開始オン……!」

 

「士郎!?」

 

意識のスイッチを変える

手に持つ剣の中、そしてそこに蓄積された経験を探る

 

創造理念、鑑定

基本骨子、解明

構成材質、解明

 

流れてくる

この剣がどうして、何を目指し、どんな物質で作られたか

同時に流れてくる

どうすれば良いかが

 

制作技術、解明

成長経験、共感

蓄積年月、憑依

 

使い手が何を磨き、何を思い、何を重ねたか

そこにはあのアーチャーの経験も含まれ、そして今いる世界を通してより深く理解する、理解できる……!

 

「基本骨子、変更……!」

 

剣に魔力を通してその形を変える

断つための剣から、穿つ為の矢へと

 

「構成材質……補強……!!」

 

しかし未だ未熟な魔術により、無理な変更によってソレは虫食いだらけのようなスカスカの状態になる

それを埋め合わせる

 

そして…………

 

「出来た……」

 

それは出来上がる

未熟である事を象徴するように捻れた二つの矢

しかしその捻れ方は二つとも同じで……夫婦剣である事だけは忘れぬかのように二本がピッタリと合わさる

 

「士郎、アンタ。」

 

「説明は後でする。

後は弓が……」

 

必要だ、と言おうとしたところで目の前に黒い弓が現れる

目を向ければニヒルに笑うアイツがいた

 

「あのヤロウ……!」

 

見抜かれていたこと、知っていて何も言わなかった、その上この期に及んで手札を隠しているアイツに歯噛みするも……笑みが溢れる

 

「遠坂、俺が隙を作る。

セイバーで崩して俺が隙を広げて……アーチャーで詰めてセイバーでトドメを刺す!

多分アーチャーには残りの令呪が必要だ、ここで使ってくれ。」

 

これで絶対に決める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッラァ!!」

 

兵士が二、三人纏めて吹き飛ばされる

その後ろから距離を詰める別の兵士の攻撃は容易く弾かれ、そこを突こうとしたライダーの攻撃は屈んで避けられる

返す一撃でブケファラスを狙われ、雷撃で防御

しかし攻撃が届かないと判断するやいなや、ランサーは距離を離す

 

「……全く、この戦上手めがッ!」

 

「褒め言葉にしか聞こえねェなぁ!!」

 

先ほどからこれの繰り返しだ

ランサー、クー・フーリンは僅かに突出した兵士を突き、次は防御しながらあわよくばとライダーの足を狙い、そして決定的に囲まれる前に後ろに引いて仕切り直す

それもその筈、クー・フーリンの経験した戦いは一対多であることが多かった

死んだ時すらそうだったのだ

その経験は今この様にいやらしく、しかして確実に数を減らしているその戦法に反映されている

 

ライダーが突撃すれば軍勢に紛れて同士討ちを誘発しつつ自身はしっかりと避け、兵士が槍を投げれば矢避けの加護により届かず、兵士が先行すれば確実に仕留めて仕切り直す

攻撃が全く届いていない訳ではない

少しずつだが傷をつけられている

だが、損耗具合では確実にライダーの軍勢の方が上回っている

 

「マスター、何とかならんか!?」

 

「クー・フーリンの死因はゲッシュだが、今この場で打てる手ではない!

自力で奴を上回って倒すしかない!」

 

「なるほど……だが、変に策を弄するよりも其方の方が愉快であろうよ!

まだまだこれから!

そら気張っていくぞ!!」

 

クー・フーリンの死因はその間に刻まれた誓約、ゲッシュにある

例えば『自身より身分の下の者からの食事を断ってはならない』と『犬の肉を食べてはならない』という矛盾した縛りによる弱体化

『吟遊詩人の願いを聞かなければならない』という誓約によるゲイ・ボルクの取り上げ

『カラドボルグを持つ者には負けなければならない』という誓約によって大怪我を負わせる

女王メイヴはこれらのゲッシュを駆使してクー・フーリンを殺せるレベルまで弱体化し、それでいて自身の軍勢をかなり消耗させて漸くクー・フーリンを殺したのだ

 

サーヴァントとなり、更にはその知名度の低さにより生前よりも遥かに弱体化していても未だライダーと『王の軍勢アイオニオン・ヘタイロイ』ではランサーを倒す道は見えていない

その事を理解して尚、ライダー、イスカンダルは笑みを浮かべる

 

「……仕方ない。

少なくとも何の策も無しに勝てる相手じゃない、今までの戦いでおおよそ相手の行動は把握できた。

策を考えるからそれまで兵も魔力も消耗を最低限にしてくれ。」

 

「ハハハハ、そりゃあ無理な相談だわな!

何故ならいつだって余は全力で生きているが故にな!

だから貴様は頑張って考えろ、余も頑張って戦う。」

 

「頑張る方向性を変えろって言ってるんだ!

コイツは本ッ当に……!」

 

「諦められよマスター殿!!

それが我らが王の魅力なれば!」

 

「そんなものはとっくに知っている!!

王も部下も揃って似た者同士ばかりか!」

 

ハハハハハハ、と軍勢に笑いが広がる

その様子に敵であるクー・フーリンすら笑みを浮かべ、そして敬意と殺意を込めて目の前の戦士一人一人を倒していく

 

「テメェらばかり楽しそうにしてんじゃねぇよ!

オレも混ぜろや!」

 

「応ともよ!

心ゆくまでこの闘争を楽しむと良いぞクー・フーリン!!」

 

槍と剣がぶつかり、その音はまるで戦場に流れる楽しげで物騒な音楽そのものの様だった




という訳で固有結界内の2組のお話でした
セイバー、アーチャー組は比較的善戦、ライダー組は相性で若干不利って感じです

という訳でヴォーティガーンの残りの情報を出します

龍型時
筋力A+
耐久EX
俊敏B
魔力A++
幸運C
宝具A
 
宝具
滅びとなれ我が運命ヴォーティガーン
ランクB
カテゴリ 対人宝具
人から龍の姿、龍から人の姿へと変化するだけの宝具
 
彼方と繋ぐ闇の鎧ヴォイド・スケイル

彼方へ堕とす闇の龍ヴォイド・スケイル
ランクB→A+
カテゴリ 対人宝具
聖剣などの神造兵器以外での攻撃によるダメージを常時、大幅にカットする
更に神造兵器の真名解放すらも一度は飲み込む事で無効化する
ただしその場合、この宝具は失われる
 
約束された滅びの吐息ホープレス・キャメロット
ランクB〜A+++
カテゴリ 対城宝具
龍状態で使用できる呪いのブレス
目の前にある物は全て焼き尽くし、残った物には高濃度の呪詛が篭もる
使っただけでその地は汚染される
宝具というが実際は龍型時のブレスは規模こそ違えど全てコレ
 
スキル
怪力 A
復讐者 C
忘却補正 D
自己回復(魔力) EX
カリスマ B
自己改造 A
魔力汚染 EX
黒の祝福 B
対魔力 A++

うん、ヤバいとしか言いようがない


という事で毎回の事ながら感想、評価お待ちしてます
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