モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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およそ1ヶ月ぶり…………なんだ、早い方だな



20話

10年前の焼き直し

 

それに近い戦いが起こっている

降りしきる弾丸の雨と、それを弾くか受けるか、あるいは避けるかを取捨選択する言峰綺礼

違うのは10年という歳月が言峰綺礼に衰えを運んで来ていた事と、衛宮切嗣という人物がいない事

 

見える手札はどちらも減っている

そしてどちらも減っているが故に膠着が続いている

 

カイの持つ弾数が減り、そして衰えた言峰は10年前ではありえない程早く息を軽く乱し始める

この状況が続けば先に余裕がなくなるのは言峰だ

黒鍵を投げて牽制はしているが、所詮は散発的でしかなくカイが僅かに体を逸らせば避けられる程度のもの

言峰の衰えは年月によるものだけでなく、正式に教会の主人となった事で鍛錬の頻度や強度が下がった事にも由来している

 

故に以前の様に致命的なもの以外を体で受けるという方法が取りづらくなっている

鋼の身体は硬度を無くし、弾丸によって軽くではあるが傷つく

10年という歳月がその肉体を鋼鉄から頑丈な程度の肉へと引き摺り下ろしていた

 

ジリ貧か

 

体の所々から血を流す言峰はそう冷静に考えると手に持った黒鍵を投げ、相手に背を向けて柳洞寺の本堂へと走る

背に当たる弾丸の痛みに顔を顰めつつ、ガラス戸を突き破って本堂の中へと飛び込む

 

カイはそこに弾丸を幾らか撃ち込んでから射撃を止め、懐に隠していた手榴弾を取り出し、投げ込む

数瞬の後、中で大きな爆発が起こりやがて火の手が上がる

一切の油断なく再度銃を向け、直後脳裏によぎった嫌な予感に従ってその場から飛び退く

直前まで立っていた石畳の一部が弾け飛んだ

 

「……銃か。

随分と用意が良いな。

人払いを済ませてくれただけじゃなく、本堂に武器を仕舞い込んでいたのか。」

 

燃え盛る本堂から姿を現した言峰の手には短機関銃が一丁、そして反対の手には黒鍵が握られていた

体勢を整えながら話しかければ、言峰は機嫌良さげに答える

 

「前回の戦いで痛感したのでな。

銃器という現代の武器に魔術的な処置を施したものがどれだけ厄介か。

君程とまではいかないが、聖堂教会にも武器に仕込みが出来る者はいるのでな。

コネは存分に活用しなくてはな。」

 

ごもっとも、と声には出さずに賛同する

 

「さて、ではそろそろ再開するとしよう。」

 

言峰綺礼が銃器を持ち出してきた事で戦いの構図が全く異なるものへと変化する

先程までは一撃必殺の重い一撃を持つ言峰を懐に入れさせない為に、カイは引き撃ちして一方的に体力の消耗と傷を与えられていた

まばらに放られる黒鍵など意味をなさないのだから当然だ

 

しかし今は弾丸の飛び交う現代戦の様相に様変わりする

だが、ただの現代戦と違い、その弾丸には魔術的な加工がされている

カイの放つ弾丸は着弾すれば炎や氷、電撃などが放たれ、言峰の放つ弾丸は純粋に破壊力と貫通力が強化されており、灯籠などの障害物を易々と貫通する

そして、武器の差が埋まればものを言うのは本人の能力

 

衰えが見え始めているとはいえ、元聖堂教会で異端者や吸血鬼などの怪物を狩っていた言峰、対してカイはモルガンの手により老化が抑えられこの日の対決のために鍛えてきた

どちらに軍配が上がるかと言えば……言峰だ

的確に弾を弾き、避け、前に進める言峰に対し、カイは遮蔽物に隠れることも出来ず射線から逃げ続けるしかない

 

視線を切れる林の中に逃げ込むという選択肢もあるが、準備して待ち構えていたのは相手側

銃に手を出した奴が他の現代兵器に目を付けていない訳がない

どれだけのトラップがあるか分からない林の中に入る訳にはいかない

 

閃光弾を投げつけて僅かな猶予を作り出し、建物の影に逃げ込み、リロードする

落ち着け、所詮今までは相手の体力を削っていただけ

トドメの一撃にと用意したものは無事だし、相手に知られてもいない

更に武器を保管していた本堂が爆発した事で残り弾数も心許ないはず

他の建物に隠してあるなら同様に破壊してしまえば良い

 

まずはあいつから飛び道具を奪う事に専念しろ

考えを纏めると同時に発砲音

容易く建物を貫通してくる銃弾から身を守る為にもう一度カイは戦場に身を晒した

境内を横断しながら応射

銃弾が行き交い、互いの体に傷をつける

 

言峰の銃が放った弾丸の一発が左手に持っていた銃に当たり、弾き飛ばす

代わりに取り出すのは手榴弾

口で安全ピンを取り、放り投げる

放物線を描いて飛んでいく手榴弾が言峰の足元に転がり、言峰は慌てる事なく手榴弾を蹴飛ばし、空中で爆発する

 

防御用の術式を付与したコートを翻し、爆発の熱波と破片から身を守る

思ったよりも現代兵器の事を勉強して対策してきたらしい

手榴弾の対策として、爆発する前に蹴飛ばすのは最適解と言っていい

勿論、ある程度カウントしてから投げる事で蹴飛ばす暇を与えない方法もあるが……

銃器の扱いもそれなりだ

手に持った手榴弾を狙われて万が一にも当たればそれは致命傷に繋がる

 

爆発によって発生した僅かな戦闘の休止

その間に息を整える

 

「ああ、クソ。

思ってたよりもキッツイぞ……」

 

そう愚痴を吐き、体に鞭を打って飛んできた弾丸を避ける

避けきれなかった弾丸が左の掌を穿つ

その痛みに顔を顰めながらお返しにと鉄の雨を降らせる

しかし、走りながら放たれる弾丸が同じ様に走って避ける言峰にそう簡単に当たるはずも無く

大半が夜の闇の中に消え、奥の建物の残骸に当たって付与された魔術を弾けさせている

 

さらに悪い事は重なる

ガチッ、という硬い音が鳴って射出が止まる

弾詰まりを起こした様だ

それを好機と見た言峰が足を止め、しっかりと狙いをつけて引き金に指をかける

そして引き金を引き、数発の弾丸が吐き出され、そしてすぐに止まった

 

それを見たカイが大きく息を吐く

そして、すぐには直せないと判断した銃を放り投げ、デッドウェイトと化した弾丸の詰まったマガジンを服の下から取り出して捨てていく

言峰も銃弾の切れた銃を少しの間眺めた後、そこらへと放り捨てた

カイが長めのサバイバルナイフを取り出し、言峰が元から片手に持っていた黒鍵を調子を確かめる様にその場で振るった

 

互いが互いの方へとゆったりと歩き出し、少しずつ速度を上げ、そして走り出す

そして互いの武器の間合いに入ると、同時にそれを振るった

言峰が武器がぶつかり合う衝撃を考え、身構えるが、予想に反して衝撃は薄く、カイのナイフが容易く黒鍵の刃を切り捨てた

そして返す刃で振るわれるナイフを紙一重で避け、後ろへ跳んで間合いの外へと逃げる

そして自分の体を見下ろせば、擦ったとも感じていないのに服が切れていた

 

「……そのナイフは……」

 

「まあ、ちょっとした小細工をな。」

 

それは切嗣の起源礼装、起源弾の中に収まっていた骨の粉を塗し、そこに宿る『切断と結合』の内、『切断』の方のみを何とか取り出して付与した物だ

それ故に生半可な礼装などではその刃を受け止める事は出来ない

この戦いの為に用意したカイの切り札だ

 

「……なるほど、それが君の虎の子か。

だが、こんな言葉を知っているかね?

『先に切り札を切った方が負ける』と。」

 

言峰が切れた服を破り捨て、衰えたとはいえ鍛え抜かれたその肉体を露わにする

胸には大きな傷跡と、それを塞ぐ様に禍々しい黒い泥の塊が収まっていた

 

「その程度の短いナイフで私を殺せるのなら殺してみせると良い。

それよりも前に私の拳が貴様の骨を砕き、内臓を破壊するが。」

 

そう言い放って言峰は拳を握り、半身を引いて構える

カイはその手に握られたずっしりとしたナイフの重みを感じながらナイフに手を添えて構えを取る

第二ラウンド開始だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、やはりまずは貴様等が来たか。

予期した通りでつまらんな

つまらんが……愉しませてくれるのはこれからであろう?

精々足掻くのだな。

あまりにも早く死に体を晒すのであれば……何をするか分からんぞ?」

 

「水鏡……最大展開……!!」

 

洞窟の天井に水が集い、モルガンの魔術により水鏡となり、繋がる

そこから送られてくるのは、10年で可能な限り用意した手製の武器

それらが重力に引かれて落ちてくる

 

「ハ、ハハハハハハハハハ!!!

初手でそう来るか!

よもや我の猿真似からとはな!

よかろう、開幕の号砲としては及第点をくれてやる!!」

 

それに応じる様に地面に黄金の波紋が開く

そこから打ち出される数多の宝具が、降り注いでくる武器を弾き、壊す

それはまるで蒼い雨を金色の傘が受け止めているようであり、雨音の代わりに金属同士が叩かれる高い音が鳴り響く

 

そしてその雨の中を、偉丈夫が突き進む

降り注ぐ武器が何するものぞ

体に当たれどその身を貫く事は出来ず、無論、足を止める事も出来ない

突進の速度をそのまま岩斧へと伝え、ギルガメッシュ目掛けて振り下ろす

しかし、目の前に現れた盾がその攻撃を防ぎ、届かない

 

「ほう?

この数日で命のストックを全て補充してきたか。

なるほど、あの時は足手纏いでしかなかった人形娘も伊達にマスターをやっている訳では無いということか。

だが、その程度で我に勝てると思うとは……思い上がりも甚だしい!!」

 

「勿論、その程度で勝てるなんて思っちゃいないとも。」

 

場違いにもふわりと舞い上がった花弁が僅かな間とは言えどギルガメッシュの持つ規格外の千里眼すら惑わす

その僅かな間にバーサーカーが盾の内側へと潜り込む

逆袈裟に敵を両断しようとし、這い寄って来た鎖の嫌な気配に攻撃を止めて後ろへ跳ぶ

それよりも早く鎖がバーサーカーを捕らえんと距離を縮めるが、バーサーカーの背後に作られた水鏡がその巨体を受け止め、モルガンの隣へと避難させる

 

「うーん、流石に手強い……」

 

バーサーカーには目も向けず、宝剣を手に取って背後へと振るったそれを避けたマーリンが呟く

 

「当たり前だ、貴様らの前に立つこの我を一体誰だと思っている。」

 

1人あたり数十門の『王の財宝ゲート・オブ・バビロン』が向けられ、数多の宝具が射出される

各々がそれを避け、弾き、水鏡で返すなど対処する

 

「ウッソ!?」

 

初めに驚いたのは回避を選んだマーリンだ

避けた筈の宝具がその軌道を変えて追ってくる

基本的に慢心し、全力を出さないギルガメッシュらしからぬ的確な宝具のチョイス

幻術を使い、当たったと宝具自体に錯覚させる事で追撃を躱しきるが、予想外のその行動に思考を巡らす

モルガンには曲射を与え、帰って来た宝具は『王の財宝ゲート・オブ・バビロン』の波紋で受け止め、また蔵の中へと戻す

ヘラクレスには緩急強弱をつけ、本能だけでは捌ききれない翻弄する攻撃を

モルガンが間に入って水鏡で返す事で何とか捌き切る事に成功する

 

しかし、それでもバーサーカーたるヘラクレスは別として、モルガンとマーリンは現状がどれ程マズい状態なのか、今の攻防だけで理解させられていた

それを見たギルガメッシュの顔に笑みが浮かぶ

 

「何を驚いている。

相手が貴様等ならばそれなりの本気を出すに値すると、そう認めてやったのだ。

光栄に思うが良い。

さあ、守ってばかりでは勝ちようが無いぞ?

次は……どう来る?」

 

大聖杯を見下ろす丘の前

ギルガメッシュはそこから悠々と自分へと挑む挑戦者を見下ろす

そして愉しげな笑みを浮かべたまま右手を上げ、『王の財宝ゲート・オブ・バビロン』を発動

波紋から漏れる黄金の逆光の中で、その赤い瞳が爛々と輝いている

 

それに対し、真っ先に動いたバーサーカーに合わせ、モルガンとマーリンの2人がかりでサポートに動く

幻術で狙いを逸らし、魔力波で飛んでくる宝具の数を減らす

そうして無傷でギルガメッシュの下へと辿り着いたヘラクレスも、ギルガメッシュが常用する切り札たる『天の鎖エルキドゥ』の前には逃げの一手しか打つ事が出来ない

 

「……アインツベルン!!」

 

「令呪二画をもって命ずる!

その狂気の檻を壊して、大英雄たる技量を見せつけなさい!!」

 

即座に不利を悟ったモルガンの合図で近くに隠れていたイリヤスフィールが令呪を使う

その効果により、バーサーカーの瞳から狂気の靄が消え、理性の光が灯る

狂化によるステータスの上昇はそのままに、ヘラクレスにまさに神業と言うべき技量が戻る

 

「我がマスターがそう願うのなら。」

 

令呪二画をもってしても一時的にしか行えない狂気の抑え込み

しかし、たったそれだけの変化でギルガメッシュの笑みがより深く、攻撃的なものへと変化した




モルガン組はなんか良い感じに見えるかもしれませんが、本人達の想定よりも早く手札を切らされています
ぶっちゃけ、それなりとは言え本気出した英雄王が強すぎんのよ
大半の英雄に対して圧倒的な有利を取れるのがヤバい

さて、いつも通りではありますが、感想と評価よろしくお願いします
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