モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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今回も早めに投稿できました


21話

黒の弓に2つの捻れた矢をつがえ、引く

その目の先は少し離れた所で暴れ回っている白い龍に向き、衛宮士郎は構えを解いた

 

「……ダメだ。

アイツ、こっちを油断なく観てやがる。」

 

「ソレの危険性をあそこから嗅ぎつけたって訳ね。

龍種の癖に慢心もしてくれないの……?」

 

白き龍、ヴォーティガーンは衛宮士郎を、正確にはその手に持たれた干将・莫耶の改造矢を警戒していた

ヴォーティガーンはブリテン島に厄災を齎す白き龍であり、策略を弄する1人の王

その本質は企み、また蹂躙する者であって戦う者ではない

故に戦闘に対する勘は英霊の中でも一歩劣る

 

だからこそヴォーティガーンは臆病と言える程に慎重だった

生前では気にも留めない様な弓兵の攻撃も今、サーヴァントとして存在している状態では有効打になり得る

少なくとも体勢を崩されてはいる

そんな攻撃が完全に意識外から来たら?

 

目の前にいる赤き龍、己の天敵の前で致命的な隙を晒す事になるだろう

それだけは絶対に避けるべき事だ

故に、あの弓兵と同等かつ同様の魔術を使用した赤毛のマスター、アレには令呪の使用に対する最低限の警戒に加え、己を害しうる事に対する警戒も必要だ

その分のリソースは……あの弓兵から割こう

確かにあのマスターよりは脅威度は高いものの、流石に神造兵器を作る事は出来ないだろう

 

有効打にはなっても致命傷には程遠く、その攻撃の大半は鬱陶しいだけの剣の雨を降らせるだけ

魔力の高まりを感じた瞬間のみ警戒度を引き上げれば問題はない

 

「と、その様に考えるだろうな。

その甘い考えが命取りだと知るがいい。

リン、先程、神造兵器を投影しろという言葉に対し、私は『無茶』と言ったな?」

 

『は?

何よいきなり。』

 

「なに、英霊たる者、多少の無茶を押し通して当然だという話だ。

令呪を寄越せ、私があの鬱陶しい防御を引き剥がす。

だが流石に時間がかかる。

セイバーと衛宮士郎、そしてリン、その間は任せる。」

 

返答を待たずにアーチャーは数多の投影を止め、ヴォーティガーンから少し離れた丘の上に立つ

思い起こすは、あの日からどれだけ経とうが脳裏に焼き付いて離れない黄金の祈りの光

投影六拍

即ち、創造理念、基本骨子、構成材質、制作技術、成長経験、蓄積年月

創造理念を除き、その殆どが不明の星の内海で鍛えあげられた聖剣

 

だが、手掛かりはゼロではない

かつてはこの身に宿り、己の起源を作り出した聖剣の対となる盾にして鞘

実物はこの固有結界内にいるかつての己自身の内にある!

衛宮士郎がアーチャーの経験を、干将・莫耶の夫婦剣を通して掴んだ様に

アーチャーもまた固有結界を通して、その身に宿る『遥か遠き理想郷アヴァロン』に同調する

更にダメ押しで今も戦っているセイバーの手の内にある本物の聖剣にも解析をかける

 

その圧倒的な存在と情報量に霊核が軋む

完全な理解など不必要

必要なのはガワだけのハリボテであっても神造兵器を作り上げる事だ

無茶な投影に荒れ狂う魔術回路を抑え込み、自身の手の内に聖剣を作り出す

 

「なにかよく分からないけど……良いわ使ってあげるわよ!

令呪を持って命じる!

英雄たる証を!私に見せなさい!!」

 

その手に宿った令呪の一画が光り、そして消える

バックアップを受けた事でアーチャーの魔力が大幅に高まり、その高まりにヴォーティガーンが気付く

視線を向ければ、見覚えのある忌々しい祈りの光がアーチャーから立ち昇っている

 

「バカな……!?

神造兵器を模倣するのか……!?」

 

明確な焦りが顔に浮かぶ

本来はあり得ない、絶対に失敗する放っておいても自滅する筈の行動

しかし、嫌な予感が止まらない

すぐに止めなければ……!

 

「ここだぁぁぁああ!!!」

 

ブレスを吐くために息を吸い込み、魔力を口に集めたその瞬間

完全に意識から外れた士郎が矢を放つ

矢は士郎の狙い通りに空中に軌道を描き、大量の空気を吸い込んだ事で発生した風に乗ってヴォーティガーンの口内に突き刺さる

 

「弾けろ!

壊れた幻想ブロークン・ファンタズム!」

 

そして爆発

更に、口内に溜め込んだ魔力が誘爆し、ヴォーティガーンの肉を内側から焼く

完全に予想外の衝撃にその巨体が仰け反る

それを好機と見たセイバーがダメ押しに一撃を放つ

 

風王鉄槌ストライク・エア!!」

 

圧縮した風を剣に纏わせ、一気に飛び上がり、大上段で仰け反って無防備に晒された首に叩き付ける

本物の聖剣のその一撃は『彼方へ堕とす闇の龍ヴォイド・スケイル』による防御を貫通し、鱗を斬り裂き肉を断った

そして仰け反った体はその一撃で更に押されて、仰向けに倒れる

とはいえ、相手は真正の龍種

首に巨大な傷を負っても、致命傷にはならない

すぐさま体を横に回転させて立ち上がる

 

同じ轍は踏むまいと今度はその巨体でアーチャーへと直接突っ込んでいく

アーチャーはそれを見るも、一切焦る事なく投影を続ける

何故なら戦っているのは自分だけではないから

共闘しているセイバーを信じているから

 

「させ、ないっ!!

貴様の相手はこの私だ、ヴォーティガーン!!」

 

「ッ!

忌々しい赤き龍め……!!

良かろう、真名解放で諸共消し飛ばしてくれる……!」

 

突進をセイバーに防がれたヴォーティガーンは再度その口内に魔力を溜める

これまでよりもずっと濃く、強く

黒い呪詛の炎が口の端から漏れ出す

それを迎え撃とうとセイバーがその聖剣を上段に構える

極光が聖剣に集い始める

しかし、それが悪手である事をセイバーは分かっている

 

恐らく聖剣解放とヴォーティガーンのブレスの威力は同等程度

仮に押し切ってその防御を剥いでも、アーチャーの偽の聖剣では恐らく屠きれない

そして聖剣の一撃で大量の魔力を消耗してしまったら、聖槍は使用できないだろう

無論、大きなダメージを与えた事でヴォーティガーンはそのまま押し切れる可能性は高くなる

問題はその後

ギルガメッシュとの決戦に耐えれるだけの魔力が残るか否か

 

恐らくは否

そうなれば……負ける

今ここで負けるか、次の戦いで負けるか

その2択を選ばされているのだ

そしてセイバーは次の戦いで勝ちの目を拾える事を祈りながら、今の戦いで負けない選択肢を取る

その筈だった

 

「セイバーぁぁァァァ!!!」

 

丘を滑り降りて士郎がセイバーの前に降り立った

まさか、と目を疑いながらも聖剣を掲げた手は下ろさない

 

「任せろ。」

 

小さく呟かれたその言葉を信じるか否か

その僅かな迷いの間にヴォーティガーンのチャージが完了する

 

「集え、人理を呪う怨嗟の声。

天を、地を、全てを焼き尽くす炎と変え、滅びを齎さん……!」

 

「投影……開始!

検索」

 

必要なのは盾だ

あの呪いの炎を耐え切るだけの防御を!

英霊、エミヤシロウとマスター、衛宮士郎の心象風景が混ざる

黄昏と巨大な歯車の空間、その一部が晴れ渡る青空へと変わる

そして混ざり合った世界を、そこに溜め込まれた情報から必要な物を探し出す

 

「選出」

 

見つけたのはギリシャ神話の英雄、アイアスの使った盾

 

「解析!」

 

投擲武器、射撃を完全に防ぐ花弁の様な7つの防御

それを可能な限り情報を吸い出す

 

「I am the born of my sword……!」

 

「『約束された滅びの吐息ホープレス・キャメロット』!!」

 

「『熾天を覆う七つの円環ロー・アイアス』!」

 

作り出せたのは不完全も不完全花弁の数はたったの3つ

その内の2つがブレスに接触すると共に破壊される

残る1枚も僅かに拮抗するが、既にヒビが入り始めている

これじゃあダメだ

もっと、もっと絶対の防御を!

呪いを祓う聖なる防御を!

 

けれど、そんな物は……!

果たしてあるのか……?

この広大な英霊の中を探しても、そんな物は見つからない

 

ヒビが大きくなっていく

そのひび割れの隙間から灼熱の炎が吹き出し、途轍もない熱が肌を焼く

諦めるしか、負けるしかないのか……?

いつの間に士郎は俯き、目を閉じてしまっていた

 

「探し出せ!

それはオレではなく貴様が持っている!!

貴様に唯一許された魔術が一体どこから来たものなのか、己の内から探せ衛宮士郎!!!」

 

完全に諦めかけていたその時、アーチャーの怒号が響く

アーチャーの中ではなく、俺の中を探せと

叱咤激励ではない、完全に確信した口振りで

悔しいが、今の俺はアイツの完全な下位互換でしかない

なのに……俺だけが持っている物があると、そう言うのだ

 

俺の魔術、それは無限の剣を造る事……ではない

無限の剣を内包した世界を造る事だ

その核となったものは……なんだ?

アーチャーの心象風景ではなく、己の心象風景に精神を投じる

魔術回路の大元、心象風景の核、そして……剣と世界の2つに通じるもの

己の中にあるもの

 

それは

それは……!

脳裏に浮かび上がる見た事も無ければ、アーチャーの固有結界にもない盾にして鞘

聖剣を収め、持ち主に不老と不死を与える聖剣の対となる物

 

「こいつか……!

セイバー! こっちに!」

 

「まさか……!

いや、今は……!!」

 

体の中にあった聖遺物

それを目にしたセイバーは驚き、そしてすぐに己のマスターの横に並ぶ

聖剣の解放を中断し、花弁の盾が耐えている間にと聖剣をそれに収めようとする

最後の花弁が砕け、怨嗟の炎が2人に襲い掛かる

しかし、その前にガチン、と音を立てて剣があるべき場所へと収まった

 

「『全て遠き理想郷アヴァロン』」

 

祈る様な静かな声でセイバーがその真名を告げる

それは使用者をあらゆる干渉から防ぐ最強の防御

物理干渉は勿論の事、並行世界や多次元からの干渉すら完全にシャットアウトする護り

聖剣が人理に仇なす者へと向ける最強の矛であるなら、これは人理の終末にすら抗う対終末、対粛正防御だ

 

故に終末を齎すヴォーティガーンのブレスを完全に防ぎ切る

それどころか攻撃を反射し、ブレスを相殺、放った本人へと返す

龍たるヴォーティガーンが己の炎に焼かれる事はない

しかし、そこに込められたエネルギーは白き龍を大きく仰け反らせ、タタラを踏ませるには十分以上の威力となって襲い掛かる

 

これで3度、ヴォーティガーンがアーチャーを邪魔しようとした行動を防ぐ事に成功した

更に、『全て遠き理想郷アヴァロン』を手にした事でこれ以上の抵抗は全て無駄になる事が決まった

故にヴォーティガーンは次の手として……飛び上がった

弓兵から距離を取り、偽の聖剣の一撃を避ける

 

仮に本当に聖剣の投影に成功したとしても、それは相当無茶をしての事

恐らく霊核にまでダメージが至る筈

そうなればもうあの弓兵は実質的に戦闘不能

固有結界も解け、現実世界へと戻る

そうなればもう後は穢れた聖杯以外の全てを巻き込んでしまえばいい

赤き龍は現代の何の関係もない民を見捨てる事も出来ずに守りに回る筈だ

後は持久戦だ

聖杯からのバックアップに加え、龍の心臓が完全にではないが十分に働いている己の方が圧倒的に有利となる

 

全くもって正しい判断だ

だが、その判断は遅かった

一手、遅れたのだ

 

「ああ、貴様は戦う者では無かったという事だ。

やはり瞬間的に最善の一手を選ぶ能力に欠けている!

この光は永久に届かぬ王の剣……!

永久に遥か黄金の剣エクスカリバー・イマージュ』!!」

 

偽の聖剣、偽の光、しかしそこに込められた祈りや希望は本物に限りなく迫った一撃が放たれる

その極光が白き龍を飲み込み、その身を覆い、守っていた靄を剥ぎ取っていく

 

「セイバー、行けるな!?」

 

「無論です。

聖槍、抜錨……!」

 

それを見た士郎がセイバーに聖槍を手渡し、聖剣を手放したセイバーがそこに収まっていた人工の神造兵器という矛盾した聖槍の偽物を解き放つ

青白い極光がセイバーの手の中に収まり、人の形をした光がセイバーを囲む

 

十三拘束解放シール・サーティーン円卓議決開始ディジション・スタート!」

 

円卓の騎士達が決めた拘束条件

それを満たせば宝具の威力は跳ね上がっていく

 

是は、勇者と共にする戦いである ー 承認、ガウェイン

是は、心の善い者との戦いではない ー 承認、トリスタン

是は、誉れ高き戦いである ー 承認、パーシヴァル

是は、生きるための戦いである ー 承認、ケイ

是は、己より強大な者との戦いである ー 承認、ベディヴィエール

是は、人道に背かぬ戦いである ー 承認、ガヘリス

是は、真実のための戦いである ー 承認、アグラヴェイン

是は、精霊との戦いではない ー 承認、ランスロット

是は、邪悪との戦いである ー 承認、モードレッド

是は、私欲なき戦いである ー 承認、ギャラハッド

是は、世界を救う戦いである ー 承認、アルトリア

 

13の拘束の内、11を解放

強大な魔力が収束し、渦を巻く

渦は魔力の嵐となって荒れ狂い、それを纏め上げて指向性を持たせる

狙うは上空で身を守る宝具を奪われ、無防備になった災厄の龍

 

「再び地に伏す時だ、ヴォーティガーン。

偽・霊脈閉塞型兵装ロンゴミニアド』!!」

 

ヴォーティガーンはその一撃を迎え撃とうと、再度魔力を口内に集める

しかし、ブレスを放とうとセイバーを睨めつけたと同時に動きが固まる

セイバーの瞳が碧眼から金色に近い色へと変わっていた

その眼を見て生前最後の記憶が脳裏に浮かび上がった

終末装置そのものである己を終わらせた希望の光

 

「……終末の後には新たな時代が生まれ、始まる。

我は元よりあの時代のあのブリテンを終わらせる者。

この時代を終わらせる役には程遠かった、という事だ。」

 

固有結界の空間が燃える様に崩壊していく中、ロンゴミニアドの金色の光が邪龍の胸を貫いた




はい、ヴォーティガーン戦終了
あっさり終わったけど、これは短期決戦じゃなきゃ勝てなかったからです
龍の心臓+大聖杯からの魔力供給+超耐久+超火力の移動砲台相手に長期戦なんか出来る訳がない

なのでメンバーも短期決戦が可能な2人で組まれてます
それでも相当無理をしてますが

ところで、十三拘束の内、『共に戦う者は勇者でなければならない』と『この戦いは1枚1である』が矛盾してる気がするんですけど、どう解釈すれば全開放いけるんでしょうね

それでは感想、評価お願いします
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