モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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8ヶ月ぶり……ですね
Xでは一足早く生存報告していたけど、こちらも更新します
本当にお待たせしました

書けば書くほどああすれば良かったこうすれば良かった、と話の展開に対する後悔が浮かんできてモチベが削られまくってましたわ
でも前も言った通り、完結までは書きますので長い目でお付き合い下さい


23話

「クフ、フハハハハハハハハ!!

善い!

善いぞ!

人理の終焉を賭けた戦いとは、こうでなければならぬ!!」

 

世界最古の英雄、ギルガメッシュだとしても認めなければならない

ギリシアの神話世界最強の狂戦士、その在り方故に冠位には届かぬとも冠位に相応しい英雄を永劫に囚えた魔女、そして永劫に囚われた魔術師の同位体

 

我が永遠にして唯一の盟友にこそ及ばないが、王として英雄として、そして1人の戦士として本気・・を出すに相応しいに他ならない

故にこの世に合わせた衣服は捨て、鎧をこそ身に纏おう

 

髪をかき上げ、戦いの愉悦にのみ身を浸す

 

「ご機嫌だな英雄王!!」

 

「如何にもその通りだ、大英雄!!

これを愉悦と呼ばずしてなんと言う!?」

 

巨大で頑丈なだけの石斧を捨て、魔女の用意した武器を握り、降り注ぐ宝具の雨を容易く防ぐ大英雄が吠える

もはやそこには狂気などなく、しかし狂気故に手に入れた力は手放さずに存分に振るってくる

そら、雨に僅かにでも隙間が出た瞬間、奴はそこを逃さずに一気に肉薄して来た

 

アーチャーたる今の我の柄ではないが、剣を握らざるを得まい

剣を握り、狂戦士が振るう剣に合わせる

力では勝てん

だが、武器の格は我の方が遥かに上

故に砕け散るのは貴様の剣だ

同時に我の手からは剣は弾かれよう

だが、最初の一手さえ凌げば次の一撃を差し込める!

 

放たれた宝槍を弾き、武器を失い、しかしその拳で容易くその後に続く宝具の雨を弾き、距離を取る

そこらの英雄ならば絶死の状況から、こうも容易く還ってみせる

追撃を放とうとして……目測を見誤る・・・・・・

これは……マーリンか

 

そして見当はずれの方向に飛んでいった宝具は水鏡に飲み込まれ、背後から排出される

王の財宝ゲート・オブ・バビロンで回収しようとした瞬間にもう一度の水鏡

波紋の内側に出口を作り、正しくすり抜ける様に回収を防いでくる

 

だが、まだ甘い

上から同数の宝具を放ち、防御

何か企んでいる割には良い動きをする

ヘラクレスの手の届く場所に相応しい武器を送り込み、自分たちの防御を一手に引き受け、何かしらの準備を進めている

しかし、何の準備を進めているかまではこの我の眼をもってしても完全には見えぬ

1つの魔術式に幾多ものブラフを含ませ、本命を隠している

強化、召喚、接続、抹消、断絶、どれもが使い様によっては強力な切り札になり得る

 

否、正しく1つ1つを切り札として用意している

流石に本命はあろう

だが、それ以外の術であっても隙あらば即座に放ってくる

そうでなければ、防御に集中するためであってもあそこまで目に敵意や殺気の類は宿らぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい、ライダーどうした?

動きが鈍くなってないか?』

 

『うむ、流石に兵の数が減らされすぎた。

王の軍勢アイオニオン・ヘタイロイ』は発動時こそ余の魔力のみで賄うが、維持は我ら全員が分担して行っておる。

故に維持には本来そう魔力は喰わん。

だが、頭数が減れば個々の消費は多くなる。

幾らかの兵は斃されてもすぐに戻っては来とるが……彼奴らもそう無理は出来ん。』

 

黒馬に乗ったまま前線で暴れ回るイスカンダルを少し離れた場所から見ていたエルメロイII世がイスカンダルの動きに疑問を抱き、念話を通して確認すればそんな返答が帰ってくる

しかし、その言葉とは裏腹にエルメロイII世から持って行かれる魔力に変化はない

 

『……ったく、そういう時は遠慮なく持って行け。

こっちもそれは承知の上だ、対策くらいは用意してある。

征服王ともあろう者が遠慮か?』

 

『ははは、ぬかしたな?

よかろう……では貰っていく!』

 

ぐん、と一気に魔力を持っていかれる感覚に顔を顰めながらも膝はつかない

初めから用意しておいた魔力を込めた宝石を取り出し、飲み込む

それで多少は負担が軽くなるものの、それすら僅かな間に持って行かれる

 

自分の戦いが完全に他人任せなのが歯痒い

教会が長い間かけて溜め込んだ令呪のストックによって言峰綺礼は三画の令呪を使いながらもマスター権限を未だに失っていない

外でカイが言峰を倒せれば、その時点で主を失ったランサーからは令呪の強制力は少しずつとはいえ消えていく

 

そこでマスターを更新し、先ほどの命令の『敵』を言峰綺礼個人の敵ではなく、『ランサーのマスター』に対する敵であると解釈させるように令呪を使用する

そうすれば、こちらが失う令呪は三画も必要ない

圧倒的に有利な状態でランサーを味方に出来る

そこまで耐えれば、取り敢えずは目の前の戦いに勝ったと言えるだろう

キツいのはその後にも戦闘が控えているから余力を持たせなければいけない事なのだが

 

(やれやれ、いい年した大人にティーンの様な無理無茶無謀を期待してくれるな、と言いたいところだが……)

 

目の前でいい年した永遠の大人共がいい笑顔で限界を越えるような争いをしているのだ

1人だけ泣き言を言ってはいられない

何より、アイツにそんな愚痴を聞かれてみろ

10年前の焼き直しの如く思い切り背中をはたかれるに違いない

 

それを防ぐためにもカイにはさっさと決着をつけて欲しいところだが……そう容易い相手ではない……どころか勝てるかどうかすら怪しい

言峰綺礼は大半の魔術師、魔術使いにとっては天敵の様な存在だ

身体能力の高さ、魔術に対する豊富な知識、膨大な戦闘経験

恐らく時代が違えば英霊として座に登録されていてもおかしくない程の強さ

唯一付け込める隙があるとすれば前回の聖杯戦争からの10年ものブランク

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(クソ、予想より魔力の消耗が激しい。)

 

滝の様に流れる汗を無視してひたすらに攻める

少しでも手を緩めれば即座に反応して形勢逆転される

その確信があるからこそ、イニシアチブを握り続ける必要がある

攻めてるのはこっちだっていうのに、確実に追い込まれている

 

魔力炉による魔力の補充は追い付いている

問題は俺の体の方が暴力的な魔力の消耗についてこれていない事だ

ついでに肋骨の骨折とヒビが響いている

必殺の拳を潜り抜け、攻撃の後隙にナイフの刃を地面に走らせればそれで仕込みは完了

そこの地面にある石畳にはいつでも干渉できる

 

相手もそれは理解しており、迂闊にそのエリアに踏み込むことはない

実際、言峰綺礼は即座にその場から退いた

先ほどからその繰り返し

距離を空ける、隙が出来るその度に無理に攻めるのでは無くその場を自分の陣地へと塗り替えていく

満身創痍一歩手前の俺では地力で敵わない

故に環境を味方とする

 

龍の背に立ち、尾による攻撃と同時にその遠心力に乗って一気に距離を取る

言峰の防御のタイミングに合わせて龍を崩し、呼吸を乱す

糸による拘束を狙いながら龍を再構成

糸が足に絡みつき、動きを制限する

龍の額に生やした巨大で鋭利な一本角による一突きで心臓を狙うが肘打ちでいとも容易く粉々にされた

 

しかしそれは織り込み済み、運動エネルギーはそのままにその巨体で体当たりをかまし、弾き飛ばす

地面を跳ねながら勢いを殺していく言峰の先にもう一体龍を作り出す

前後から龍を突進させるが、体勢を立て直しきれていないにも関わらず、拳の一撃を地面に放って無理矢理上へと逃げた

だが、予想着地点は既に俺が切り刻んだ場所だ

 

一手稼げるな

そこにも龍を作り出して大きく口を開け、口内に捉える

内部は勿論、土の槍を大量に配置しているがまあ、大したダメージは期待できない

だが、視線を完全に遮ることが出来た

 

すぐに龍の体にヒビが入り、僅かな切り傷がついただけの言峰が出てくる

そこに真上から急襲

だが、それを予想していたのか即座に反応され反撃が腹に入る

拳がいとも容易く腹を突き破り……軽すぎる手応えに言峰が拳を引き抜くよりも早く土の人形が形を崩した

拳から腕を通じて肩までを固め、さらに土の龍だったものが言峰の胸から下を固める

 

拘束したのも一瞬、即座に土塊にヒビが入る

それよりも早く背後から襲い掛かり、拘束を解いた言峰が裏拳を放つ

そこを真下から龍の体を切り抜いて俺自身が強襲

それを認識した途端にピタリと動きを止め、俺への攻撃へと移るのは流石としか言いようが無いが、一手遅い

背後から襲わせた土人形が今度は両肩を拘束し、動きを止める

 

狙うは喉

 

「ぬんッ!!」

 

気合いの声と共に言峰の右手の令呪が光り、一瞬のうちに周囲に衝撃が走り拘束が全て破壊される

そして身体強化の余韻を残したまま、拳を引き、言峰らしからぬ大振りのテレフォンパンチが放たれる

鋭さが全くないその一撃でも無防備に足場の消えた今の俺には十分な威力だ

 

片腕のガードは間に合うが、踏ん張る大地もない今、容易く吹き飛ばされる

受け身を取ってもその衝撃は完全には消せずに折れた肋骨に響く

痛みに耐えながら即座に立ち上がるが、目の前には既に言峰の膝が迫る

体を引きながら両腕でガードを固める

 

「っ!?」

 

しかし、それはブラフ

一瞬手前で足を止めると、体を回転させ後ろ回し蹴りでナイフを弾かれる

糸で拘束してナイフを拾う時間を作ろうとするが、そんな咄嗟の対応が通じるはずもなく、蹴りの足を戻すとそのまま踏み込み掌底

糸をぶち破り、バキバキと鈍い音を立てながら骨を折る瞬間を感じた

 

僅かな意識の断絶

衝撃を感じて目を覚ました時には既に言峰に首元を掴まれ地面に引き倒された後だった

腹から迫り上がる熱い感触に耐えきれず、咳をすればごぽ、と口から血を吐き出す

内臓や気管支のどこかを損傷したらしい

言峰の後ろには太い柱の一本が完全に折れた山門、どうやら寺の外に出たらしい

そんな事を考えながら両手を上げる

 

「負けたか。

流石に不利が過ぎたな。」

 

「先ほど私が言った通りになったわけだな。

先に切り札を切った方が負ける、と。

 

確かに素晴らしい礼装だった。

だが、付け焼き刃が過ぎたな。

我々は培った経験と鍛え上げた力という固く太い刃を振るう人間だ。

切れ味凄まじいが薄く脆い刃は後先考えぬ人間が振るってこそその真価を発揮する。

貴様の敗因はただ一つ、使う武器と使い方を間違えた事だ。

 

さて、これでも聖職者だ。

言い残すことがあれば聞こう。」

 

「懺悔しろってか。

残念ながらテメェに吐くような罪やら後悔はねぇな。

それすら死ぬ時まで俺のものだ。」

 

笑みを浮かべてそう言い放ってやれば言峰は一切の表情を変えずに拳を振り上げる

 

「これで10年前の精算を終えると思うと……些か気分が良いものだ。

故に略式ではあるが敬意を込めて祈りを送ろう。

『休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう。

永遠の命は、死の中でこそ、与えられる。

ーーー赦しはここに 受肉した私が誓う。

"この魂に憐れみをキリエ・エレイソン

 

……私の勝ちだ。」

 

拳が振り下ろされる

俺という死にゆくものへの憐れみと、己の手で俺を殺せることへの興奮という矛盾の混じった笑みを隠すこともなく

 

ああ、俺の負けだとも

 

死を直前にして、最後の足掻きとばかりに脳の情報処理速度が跳ね上がる

拳がゆっくりと近づいて来る

だが、俺に出来ることはもうない

 

……そう、俺には・・

 

一閃

夜の闇を割く様な一筋の光が走った

遥か1km以上先から、山門を出てすぐそこという狙撃には十分視線の通る場所へと放たれた一撃

必殺からは程遠い肩を掠っただけの一撃だが、対物ライフルの持つ運動エネルギーならそれだけで肩から先を抉り取る

 

「っおおおおぉぉ!!!」

 

最後のチャンス

保険として用意していた狙撃が十分に機能したのを認識すると同時に体を跳ね上げる

狙撃の衝撃で体勢を崩していた言峰を容易く倒し、マウントポジションを取る

 

「やっぱり鈍ってたな。

誰がテメェみたいな化け物と1対1でやり合うかよ。」

 

最後まで残していたその武器を取り出す

トンプソン・コンテンダー

30-06スプリングフィールド弾が1発だけしか入らないゲテモノ銃

これを今の今まで使わなかったのは単純に俺の趣味じゃないことと弾が1発しか残っていなかったからだ

残りは全てさっきのナイフを作るのに消えた

1発残ったのもただの偶然

 

だが、こういう1発が残ったことに意味が生まれるのが俺たちの様な人種の中で唯一信じられる奇跡だ

 

さて、聖杯の泥という魔力の塊が心臓の代わりになっている今、そこに衛宮切嗣の起源弾を打ち込んだらどうなると思う?

 

「じゃあな、次は相手が死んでから勝ち名乗りをあげろよ?」

 

俺の敗因は1つだけ

その1つを完璧に突かれて負けた

対照的に言峰の敗因は幾つもある

油断、衰え、敵を作り過ぎた、目的を勝つ事ではなく愉しむ事にしていた

それらの敗因を積み重ねて漸くこいつの命に手が届いた

 

最後の起源弾が放たれる

狙い違わず心臓に撃ち込まれた起源弾が、言峰の魔力を喰らってその効果を発揮する

即ち無秩序な破壊と再生

穴の空いた服から泥が溢れ出す

血のようにとめどなく

 

それを見ながら残心、空薬莢を出し、しかし装填する銃弾が無いためそのまま銃身を戻す

鈍器とするために銃身を握り、ピクリとも動かない言峰に慎重に近付き、死亡確認

脈は……なし、呼吸もない

 

……流石にここから生き返ったらそれはもう人類やめてるのだが……念の為、銃弾をもう何発か叩き込みたいが、肝心の銃の方が弾詰まりを起こしている

……令呪を剥ぎ取る時に達磨にしておくか




カイ
勝ち筋が肉を切らせて骨を断つしか無かった
自分の負け筋を作ることでしか勝てなかった

舞弥
撃つ寸前まで現役時代では感じた事なかった極度の緊張で体の震えが止まらなかった

言峰
死亡……擬似サーヴァントとして召喚されて再登場とかもない、ないったらない

作者
FGOとブルアカとゼンゼロ、あと論文の作成と就職で忙しかった
最近はFGOのガチャ運が良過ぎて夏辺りに揺り戻しが来そうで怖い
沼は嫌だ沼は嫌だ沼は嫌だ

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