モルガンと行く冬木聖杯戦争   作:座右の銘は天衣無縫

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6話

 

夢を見た。

ある1人の女の夢だ。

彼女は天才だった、それこそそこらの凡俗では彼女にものを教える事すら叶わないほどに。

彼女は恵まれていた、父親は王だった。

それ故に厳しく育てられたが、厳格ながらも慕われていた父親を見て憧れていた。

 

けれど父親は彼女の事を見てくれなかった。

王として最低限接しはする。

だが、彼女がどれだけ勉学に励もうが、どれだけ魔術を学ぼうが見てはくれなかった。

 

彼女は聡かった、故にそれが父親が王であるが故に後継者たる自分にはもっと上の結果が求められているのだと思った。

 

 

違った。

彼女は後継者ではなかった。

父親の死後、何故か彼女は王にも王の妻にもなれなかった。

 

ただ政治的な判断からオークニーの王の下へと嫁ぎ、空だった玉座には何処の馬の骨とも分からぬ小娘が座った。

 

無論、初めは抗議した。

王の血を引かぬものが玉座に座る資格なし、と。

だが、返ってきた答えには信じられない言葉があった。

新たな王であるアーサーは前王ウーサーの隠し子であった、と。

そして何よりウーサーの遺言並びに宮廷魔術師のマーリンにより自分には王座に座る事能わず、と。

 

何もかもが違ったのだ、父は元より自分に期待など寄せていなかった。

 

その事実から目を逸らす様に怒り狂った。

だが、まだ彼女は冷静であった。

そんなはずは無い、と書状を幾つも送りつけた。

だが、それを続ける内に彼女の周りからは人が去って行った。

 

『見苦しい』『モルガン姫は狂乱なされた』『それに比べてアーサー王の栄光は素晴らしい』『王としての格の違いはとうについている』

 

それに彼女は更に怒りを膨らませる。

盗まれた物を我が物だと言っているだけなのに!

何故私の方が泣き寝入りせねばならん!

 

何かに背中を押される様に怒りと憎しみはドンドン深まって行く。

当てつけの様に自身の子らがアーサー王の下でその武勇を示しているのも気に入らない。

ありとあらゆる手を尽くした。

なのに、奴らはまるでそれが自身の栄光を高めるためにあったのだと言わんばかりに解決して此方には見向きもしない。

 

私が王ならばあの様な小娘よりもよっぽど良い治世を行なってみせるのに!

 

何の根拠もなくそう思った。

虎の子として育て上げたモードレッドすらもあの王に心酔した。

怒りに狂った憎しみに狂った呪い狂った。

だが、もはや万策尽きた。

 

そんな己とアーサー王の栄光の象徴たるキャメロットに怒りながら数年後。

キャメロットは瓦解した。

 

突然の事だった。

初めは何が何だか分からずにポカンとしていたが、理解した時には笑いが止まらなかった。

 

見ろ! 天罰が下ったのだ!

これでブリテンは私の…………

 

数多の争いによって荒廃したブリテンを見た瞬間に彼女は正気を取り戻した。

どこで間違えたのだろうか。

確かに私はブリテンを愛していた筈なのに。

 

呆然としながら彼女は歩き出した。

自身がどこに向かって居るのかも分からないまま、辿り着いたのはカムランの丘だった。

憎んでいた騎士達の亡骸になんの感傷も湧かず、丘の頂点を目指した。

 

そこにはアーサー、否アルトリアがいた。

憎むべき相手な筈なのに何も思わなかった。

 

そこで彼女達は少しの間話し合った。

2人がどんな表情をしていてどんな会話をしているのかは何故か分からない。

 

それを終えてアルトリアは眠る様に死んでいった。

しばらくその場にいたモルガンだったが、突然何かに導かれたかの様にアーサー王の亡骸を抱えると去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セイバー陣営とキャスター陣営が手を組んだ翌日、男が目を覚ますと普段は近くで本を読んでいるか魔術の実験を行なっているかしているモルガンの姿が見えなかった。

 

工房の様子は変わらず、結界も特に不備はない。

戦闘になっていたらモルガンは容赦なく叩き起こすはずだ。

 

既に午前も終わる時間帯だから1人で何処かを歩いているとは考えられるが、案外あの女王様は束縛が強い、とでも言うべきか何処かに行くなら必ず声を掛けるか一緒に来いと言う。

 

なのにいないのはおかしい。

取り敢えず念話を繋ぐ。

 

「キャスター、今どこにいる?」

 

『ああ、目が覚めましたかマスター。

今はアインツベルンの城です。

少々、セイバーを苛め、もとい2人だけで会話していたところです。』

 

衝動的にお前やっぱり実はセイバーの事好きだろ、と言いそうになったのを止める。

 

「分かった。

俺も何か適当に食べたらそっちに行く。」

 

『分かりました。

セイバーのマスターにも伝えておきます。』

 

念話を終えてから自分が見た夢について考える。

間違いなくモルガンの記憶だった。

物語では悪役として描かれるモルガンもまた、あの頃の動乱のブリテンにおける被害者だったのだとも言えるだろう。

 

聖杯戦争で組んでいて分かる。

自身が上だと言いながらもこちらの言う事にはしっかり耳を貸してくれている。

モルガンもまた王の素質は十分に備わっていた。

にも関わらず、モルガンは認められなかった。

 

その理由は分からないが、モルガンは自分の代わりに玉座についたアーサー王、そしてその配下たる円卓の騎士に怒りを抱いた、というわけだ。

 

そんな事を考えながらストックしておいた保存食を食べてから鏡を通ってアインツベルンの城へと到着した。

姿見は昨日の衣装部屋とは違う空の部屋に置かれていた。

 

まあ、確かに女性が服を着替える所にそんな物あったらマズいし流石に置き場所変えるよな、と考えながら部屋を出てみれば昨日は全く通っていない廊下に出た。

モルガンからの連絡がしっかり通っていた様で既にホムンクルスが男を待っていた。

 

「お待ちしておりました。

どうぞこちらへ、旦那様と奥様がお待ちです。」

 

「出迎えどうも。

キャスターは?」

 

「3時間ほど前にいらしてからセイバー様とご歓談なされている様です。

結界が張られていて何を話しているかは分かりませんが。」

 

……なんだろうか、セイバーが関わるとキャスターは微妙にポンコツになる呪いでも受けているのだろうか。

そんな益体のない事を考えつつ、ピリピリと感じる殺気と敵意は無視する事にした。

 

詫びがわりにセイバーに何か差し入れしてやるかな、と特に理由も無く思った。

あり得ないだろうが、流石にサーヴァントがストレスでパフォーマンスに支障が出るとかなったら笑えない。

 

案内された先は大きなテーブルが置かれた会議室だ。

切嗣はそこで地図を広げて男の事を待っていた。

男は切嗣とテーブルを挟む形で向かい合い、地図を見る。

 

「来たか。

早速だが今後の話をしたい。

そっちが接触してこなければ次に狙おうとしてたのはエルメロイ陣営だ。

詳細は知ってるか?」

 

「ああ、冬木ハイアットホテルの最上階を貸し切って工房化。

まともに突破しようとすれば苦労するだろうな。」

 

なお、モルガンが初めて外部からエルメロイの工房を見た時には「ひょっとしてこれは身を張ったギャグという奴か? どう思うマスター。」などと言われている。

まあ、彼女が生きていた時代でこんな事をしようとすれば待っているのは聖剣解放からの蒸発なのだから是非もなし。

 

「まともにやればな。」

 

「案は?」

 

「ホテルの基部に爆薬を設置、爆破解体する。」

 

「相変わらずやり口がえげつないな。」

 

一度手を組んだ相手なだけあり、トントン拍子に話が進んでいく。

 

「既に舞弥が侵入、爆薬を設置している。」

 

「そうか、で俺らの役目は?」

 

「そっちの方が使い魔の性能は良いだろう?

四方から監視、万が一生きてたら処理してくれ。

方法は任せるが復帰の手立ては無い様に頼む。」

 

「要は殺すか残った令呪を奪った上で心を折るかしろって事だろ?

任せろ。」

 

「そっちは相変わらず甘いな。

死人に口なし、殺せる時に殺すべきだ。」

 

「生憎とアンタほど殺しに特化して無いんでね。

その場では殺せても後の報復が面倒だ。

なら、報復なんて言葉が浮かばない程に心を折った上でわざと生かして返した方が丸く収まるだろ?

 

というかこの話は前に組んだ時もやったろ。

やめだやめ、方向性の違いを話し合うほど無駄な事はないだろ。」

 

男が面倒くさそうにそう言えば切嗣も黙って後ろを向いてテーブルによっかかってタバコに火をつけた。

暫くの沈黙の後、切嗣が口を開く。

 

「決行は今夜だ。

……あと、キャスターをどうにかしてくれ。

あんなに殺気を撒き散らされたらアイリが参ってしまう。」

 

「それは本当にすまないと思っている。」

 

取り敢えずキャスターは連れて帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう?

随分とまあ派手な手段を取りますね、それは。

あの甘ったれの愚妹のマスターである事が惜しいくらいです。」

 

男がキャスターと共に工房に戻って切嗣との話し合いの内容を説明した後、キャスターは感心した様にそう言った。

 

「私にやらせるのが後始末なのは少し気になりますが……まあ、愚妹は渋りそうですし、元はと言えば私達抜きでやるつもりだった事なのでしょう?」

 

「そうらしいな。

昨日俺らが行かなきゃ昨日のうちにやるつもりだったそうだ。」

 

「であれば仕方ありませんね。

生きていたのなら出会い頭に宝具をぶつけて無力化します。

構いませんね?」

 

「ああ。

必要経費なら仕方ないからな。

それと、今の話とは関係ないんだが……」

 

「何ですか?」

 

「お前の記憶を夢で見た。」

 

男が少し言い淀んだ事に疑問を抱いた様だったが、返ってきた答えに納得した。

モルガンは珍しくため息を吐くと、顔を顰めながらも話し出した。

 

「私に対して隠し事も嘘もしないという貴方のソレは好ましく思っているがこのタイミングでとはな。

あまり知っては欲しくなかったのだが……不可抗力なら仕方があるまい。

どうだった、私という愚かな女の人生は?」

 

「このタイミングだからこそだ。

その妖精眼で何か隠し事してても分かるんだろ?

だったら一旦それを解消してからやるべき事をやって、終わってから話すべきだと判断した。

 

クソがつくレベルで真面目で深刻な話なんて酒でもなきゃやってられないだろ。」

 

「それもそうか。

だが少し意外だったぞ、貴方は他人にそこまで深く関わらない質だと思っていたが。」

 

「記憶を見て分かったんだよ。

触媒もなしにモルガンというサーヴァントを呼べたのが、何処となく似た者同士だったからだってな。

なら、似た者同士仲良くやれそうだからな。

少しは踏み込んだ話もしたくなる。」

 

「フ、それもそうか。」




確かに自分がbad付きまくってて草とか言いましたけど、流石に皆さんガチャ報告だけじゃ無くて感想も書こうね?

ガチャ報告だけ書いてるの規約違反だからね?
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