夕映に憑依したダレカの物語   作:ポコ

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ネギまのSSが書きたくなって、つい息抜きに書いちゃいました。
夕映を選んだのは好きなキャラだというのもあるけど、チートじゃない程度に強キャラだからです。刹那やネギに憑依だと俺Tueeeeになる未来しか見えない。
主人公最強系は、読むのは大好きだけど書くのは嫌であります。


第0話 夕映になった私

(ん……眩し……)

 

 その眩しさに刺激され、薄らと瞼を開けると見慣れない天井が視界に入った。

 これはどういう事だと思い、ここがどこかと確認しようとしたけど――――。

 

(あ、あれ? 身体が上手く動かせない?)

 

 身体を動かそうとしたけど、指先くらいしか動かせなかった。それに声も上手く出せない。え、何これ。どういう状況なの?

 必死の思いで首を左右に動かすと、どうやら木で出来た柵に囲まれたベッドに寝かされているみたいだった……ていうか、首を動かす度に視界に入ってくる赤ん坊みたいな手足って……。

 

(どう見ても私の手足だよねえ……)

 

 これはもしかしてあれかな。二次創作でよく見る転生をしちゃった? でも私って神様に会った覚えとか無いんだけど……え、あれ? 神様どころか、自分の名前というか前世も思い出せないんだけど!?

 前世が思い出せないという事にショックを受けてると、思わず大声で泣き叫んでしまった。うん、流石は赤ん坊。泣き声の大きさにかけては大人にも負けないね! そんなアホな事を考えてると、両親と思わしき男女が慌てた様子で入って来た。泣き止もうとは思ってるんだけど、これが精神が肉体に引っ張られるってヤツなのかな。頭は冷静なつもりなんだけど、どうにも体が言う事を聞いてくれない。

 

「どうしたの夕映? お漏らしはしてないんだけど……あ、ひょっとしてお母さんがいなくて寂しくなっちゃったのかしら?」

「成程。夕映は寂しがり屋だなぁ~」

(ゆえ? それが私の名前?)

 

 お母さん(多分)が私を抱きかかえてあやしてくれてると不思議な安心感を感じて、気づいたら泣き止んでいた。なんか安心したら眠たくなってきたなぁ……これも赤ん坊だからかな。色々と考えたいことはあるけど、取り敢えずは寝だめをしてからにしよう。寝る子は育ちますけえ。

 

 

――――――――

 

 私が転生してから5年が経ちました。え、時間が飛ぶのが早いですか? 別に神様にチートを貰ったわけじゃないんですから、平々凡々な幼児生活をしただけです。これが神様転生なら能力の訓練とかしてたんでしょうけど、残念ながら私の産まれたのはごく平凡な普通の日本家庭。ニュースや新聞でも女尊男卑とかコロニーとか機械獣とかブリタニアとかそんな物騒な単語は出てきませんし、私は普通に平和な日本に産まれたに違いないです。そう思わせてください。

 

 何か口調が変わってないか、ですか? それなんですけど、拙いながらも喋れるようになってから、何故かこのような説明的というか、語尾に“です”をつける癖みたいなのが付いちゃいました。これも肉体に引っ張られるって事なんでしょうけど、何でなんですかね。

 では気を取り直して。私の家族構成から説明しましょうか。祖父、両親、私の4人家族です。残念ながら、上にも下にも兄弟はいないです。ちょっと兄弟に憧れてたんですけど、いないのは仕方ないです。前世の事は相変わらず思い出せないですけど、きっと一人っ子だったんでしょうね。けど、残念ながら両親は不在で現在は祖父との2人暮らしです。両親の仕事が何なのかは知りませんけど、どうやら海外で働いてるらしく。私が3歳になって走りまわれるようになると、祖父に私を頼んで名残惜しそうに旅立ちました。お爺様は大好きだから私に不満は無いです。けど、まだ幼い子供を置いていったりなんかしたら、下手したら両親って自覚されなくなってもおかしくないと思うのですが。その辺りは考えてたんですかね?

 

 前世の話が出たついでに、それについてもお話します。さっきも言いましたけど、前世の事についてはさっぱり思い出せません。これから先も思い出す事は無いでしょう。何故かは分かりませんけど、思い出せないという確信があります。ホント、何ででしょうね? あ、前世が思い出せないと言っても知識とかは覚えてますよ。そうじゃないと5歳児がこんなに色々考えられる訳が無いじゃないですか。それなりの知識はありますし、転生前が小学生や中学生という事はないと思います。というか、そんな若い身空で亡くなったとか思いたくないです。

 あ、私は前世も多分女だったみたいです。その、女性特有の事態に関する知識がありますから。この知識があるのに前世が男だったら完全に変態さんじゃないですか……医者の可能性ですか? 残念ながら医学関係の知識は無いので、その可能性は0です。ですから、私は前世も今世も女です。雌です。♀です。分かったですか? 分からなくても分かってください。

 

 さて、長々と話を引っ張りましたけど、そろそろ本題に入りましょうか。この世界はよくある転生物みたいに物騒な世界ではないでしょうと言ったですが。実は現実逃避でした。いえ、物騒な単語を聞かないというのは本当です。ですが、私が成長するにつれてどんどん嫌な予感が膨らんできてるです。というか、もうここまで来たら確定ですね。何でかと言うと――――私の名前が“綾瀬 夕映”なんです。ええ。“魔法先生ネギま!”という作品の重要人物の一人と同じ名前ですね。

 最初はそこまで珍しい名字でも無いし、偶然同じ名前なんだろうと思ったです。いえ、思いたかったの間違いですけど。喋れるようになった時にこの口癖が出始めて、一気に嫌な予感は膨らんだです。それはもう、萎んでた風船を一気に膨らませたくらいに。朝、歯を磨く度に鏡を見るのですが、どんどん原作の“綾瀬 夕映”の面影が出てきてます。この光り輝くおでこはもう間違いないです。

 前世の私は“魔法先生ネギま!”という作品が好きだったようで、ネギまについてはそれなりの知識があります。所謂原作知識というやつですね。ですが、所詮は何度も読み返して覚えてると言った程度の知識です。二次創作みたいに年代や国の名前と言った詳細までは覚えてません。例えばネギ先生……夕映の体に引っ張られてるんでしょうか。まだ産まれて間もないだろうネギ先生の事を、先生呼びしてしまいます。ネギ先生の故郷の村がいつ悪魔に襲われたとかはうろ覚えです。確かネギ先生がナギさんに杖を貰ったのが……原作の6年前でしたっけ? 大きくは外れてないと思うんですけど、まぁ私の原作知識なんてそんなもんです。

 

 問題は“夕映”が作品に及ぼす影響の多さです。私の勝手なイメージですけど、“夕映”がネギ先生に与える影響はかなりのものです。3-Aの中では明日菜さん、千雨さん、エヴァンジェリンさん、超さんの次くらいに影響を与えてるんじゃないでしょうか。

 こう書くと大した影響じゃなく思えるかもですが、“夕映”の存在が一番ネギ先生に必要とされるのは超さんとの戦い……所謂“麻帆良祭編”です。超さんとの決戦前にネギ先生を後押しした“夕映”の存在が無ければ、もしかすると超さんとの決戦での問答で致命的な隙を生んでしまっていたかもしれません。そうすると、エヴァンジェリンさんや学園長が介入でもしない限りは超さんの作戦は成功してしまうでしょう。そうなると私のちっぽけな原作知識は役に立たず、下手をすると魔法使い同士の戦乱に巻き込まれるかもしれないです。

 超さんは上手くやると言ってましたが、【完全なる世界】(コズモ・エンテレケイア)がいる以上は超さんの理想の未来になる可能性は低いでしょう。魔法がバレるとネギ先生がオコジョにされてしまうのは、原作でも書かれていた通りです。それはフェイトや造物主に対抗できる手段が無くなってしまう事と同異議です。

 

 ですから、超さんの計画は何としても阻止しなければいけません……その後の“魔法世界編”を思うと憂鬱極まりないですが。魔法世界編での強さインフレはとんでもないですからね。ネギ先生は勿論、刹那さんや小太郎さん、古さんにのどかと言った【白き翼】(アラ・アルバ)の面々のレベルアップもかなりのものです。

 と言う私こと“夕映”もかなりのレベルアップを果たしてますが、それは記憶喪失というイレギュラーな事態があっての事です。当たり前ですが、私は記憶喪失になる気は全くありません。色々と理由はありますけど、一番の理由は“原作知識喪失の可能性”があるからです。私のような一般人から原作知識を取り上げれば、それだけで死亡率は跳ね上がりますから絶対に御免です。コレットやビーさん、委員長との出会いが無くなってしまいますけど、仕方がないです。まだ見ぬ友情よりも自身の安全です。それに、私と関わったせいでコレット達は参加する必要のない最終決戦に巻き込まれたとも考えられますし。どうしても彼女達がいなければならない状況というのも無かった筈ですし、やはり私の記憶喪失は回避一択です。

 

 ……あれ? そう言えば、何で私は深く考えずに原作に介入する方向で考えてるですか。原作から逃げるという手も……いえ、それは無いですね。さっきも考えましたけど、“夕映”がいない事で出る影響が恐いです。超さんという最大の脅威が居る以上、私の原作介入は必然です。楽観的に考えて何もせずにいて最悪の事態を招くなど、愚の骨頂です。世界の平和を、ひいては私の未来を守るために! 私はやってみせるです!

 

 さて、決意をしたのは良いですけど。原作前に私に出来る事は無いでしょうか? 確か“夕映”が麻帆良学園に入学するのは中学生になってからの筈です。ですが、それでは原作までは僅か2年足らずしか無いです。師匠を探して訓練をするにしても、2年では時間が足りないです。

 原作では数ヶ月であの強さになったとは言え、それは恵まれた環境故にです。エヴァンジェリンさんという優秀な師。アリアドネーという魔法学校での効率的な授業。のどかや委員長と言った好敵手の存在。ここまでの要因が揃って、初めて原作の夕映の強さを得られるのです。

 原作2年前ではネギ先生がいませんから、のどかや千雨さんどころか、明日菜さんや木乃香さんすら魔法に関わってません。明日菜さんは厳密には違いますけど、記憶を封印されてる以上は一般人と一緒です。刹那さんは木乃香さんを避けてる頃ですし、古さんも一般的な内気功くらいしか使えないでしょうし……考えれば考えるほどマズいです。

 二次創作に習ってエヴァンジェリンさんにいち早く弟子入り出来れば万事解決ですけど、ハッキリ言って無理です。原作の夕映がエヴァンジェリンさんに弟子入り出来たのは、ネギ先生あってのものです。私のようななんの実績も無い小娘が弟子入りを志願したところで、門前払いがオチです。いえ、門前払いで済めば良い方ですね。万が一、ここがネギまとよく似ただけの世界であった場合――――エヴァンジェリンさんが残虐な性格の可能性があるです。可能性は低いですけど、その場合は一発でゲームオーバー。一巻の終わりです。

 同じ理由で魔法先生達も微妙ですね。どこに【正義の魔法使い】(マギステル・マギ)を名乗る正義馬鹿がいるか分かりませんし、そもそも長である学園長が怪しすぎます。ある意味エヴァンジェリンさんよりマズい相手です。私に原作知識があるなどと知られては、どんな目に合わされるやら。

 うーん……見事に八方塞がりですね。大人しく原作開始を待つしか無いんでしょうか。エヴァンジェリンさんのような危険性が無く、学園の魔法先生達のように正義に酔ってもないフリーの最強クラスの魔法使いで、麻帆良にいる。そんな都合の良い師匠っていないですかねー……。

 

「……あ」

 

 い た !

 いましたいました! エヴァンジェリンさんのような危険性もなく正義に酔ってもいなくて尚且つ最強クラスという素敵な人が麻帆良にいるです!! ちょっと性癖に難はありますけど、この際細かい事は後回しです! そうと決まれば早速お爺様に相談しないと!!

 

「おじいさまー!」

「おや。どうしたんだい夕映。私に何かお願いごとかい?」

 

 お爺様は私を抱き上げると、優しく語りかけてくれました。

 いつも私に本を読んでくれる、尊敬する優しいお爺様。

 そんなお爺様に無茶なお願いをするのは心が痛いですけど、こればっかりは譲れないです!

 

「わたし、まほら学園に行きたいです!」




夕映の語りを書くのが楽しすぎた。
両親は扱いに困るのでボッシュート。別に隠れた重要人物とかじゃないです。
次回は麻帆良にて師匠さがし。性癖に問題あるフリーで最強クラスの魔法使い……一体何ネル何ダースなんだ!

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