主SSである電子の妖精は執筆に3時間以上かかるのに、このSSは半分くらいの時間で執筆出来る謎。こっちがメインになりそうで怖いわー。
電子の妖精の方は明日の晩に更新予定……と、ここで書く事じゃないですな。
クウネルさんに連れられて、やってきたです図書館島地下。学園祭後に白き翼の面々が招待されたあそこです。ベッドとか見当たらないのですが、クウネルさんはどうやって休んでいるのでしょう。本体に戻ったりしてるんでしょうか。
このクウネルさんの部屋(?)へは直通の転移魔法陣があちこちの隠し部屋に設置されてるようで、すぐに来れたです。こんな直通ルートがあるなら、学園祭編でネギ先生達を案内してくれても良かったのにと思うのですが……ああ、そう言えばあの時は図書館島からではなく、牢獄からの裏道を通ったのでした。
「では御嬢さん、お話を聞かせて頂けますか? 何故一般人の少女である貴女が私の事をご存じなのか。私がここにいる事は、学園長しかご存じない筈なのですが」
「直球ですね。クウネルさんならもっと遠まわしに厭らしくねちっこく聞いてくるかと思ったですが」
「おや? どうやら私の性格についても把握しておられるようで……益々興味深い。
直球で聞いた理由は簡単です。貴女をからかっても照れてくれなさそうですから」
「賢明ですね。そういうのは愛しのキティさんにやって下さいです」
「キティの事まで……あの子のミドルネームを知っている人物は極僅かだと思っていたのですが。ですが、貴女もキティに負けず劣らず愛らしいですよ♪」
「自重しろです変態」
「ふふ……こういう反応も悪くないですね」
……もしかして私、クウネルさんに新たな性癖を与えてしまったですか? やってしまった感が半端無いですが……まだ見ぬエヴァンジェリンさん、ご愁傷様です。
「それでは……おっと、私とした事が。まだ貴女の名前を聞いていませんでしたね。宜しければ教えて頂けませんか?」
「む。これは失礼しました。私は“綾瀬 夕映”です。この春から麻帆良学園初等部に通う事になってるです」
「では夕映さんと。ふふ、夕焼けに映えるとは貴女によく似合う名前ですね。昼と夜の狭間に住まう者、というところでしょうか」
「勝手に人の名前を厨二病にしないで下さいです!」
「おや? こういう方向性のからかいには耐性が無いご様子で。ふふふ……これは良い事を知りました」
むむぅ……いくら前世の知識と原作知識があるとはいえ、やはり数百年を生きる魔法使い相手に舌戦は分が悪すぎです。なんとかしてこちらのペースに引き込まなければ。
「……私がぴっちぴちの6歳児だからと言って、襲わないで下さいよ?」
「何を言うのですか夕映さん。この私がそのような紳士にあるまじき行いをするわけがないでしょう!」
「……Yesロリータ?」
「Noタッチです」
「この変態紳士!」
「褒め言葉ですね」
時代の先を生きすぎですこの変態! 今ってまだ1995年ですよ? エヴァンゲリオンの影響でオタク文化が世間に浸透し始めた頃なのに、何で10年近く先のネタを使いこなしてるですか! あぁもう、こういうオタク知識ばかり完備している前世の知識にも腹が立ってきたです。どんな人生を送ってたですか前世の私ー!
これ以上話を長引かせても、どんどんクウネルさんのペースに嵌るだけです。なんとか私のペースに戻したかったのですが、もう無理です。お手上げです。私のようなちょっと賢しいだけの子供が敵う訳ありませんでした。さっさと本題に入るが吉ですね。
「はぁ……実はクウネルさんにお願いしたいことが」
「私への弟子入り……ですか?」
「はいです。お願いできませんか?」
「いいですよ」
「分かってるです。私のような怪しい幼女を弟子になんかするわけないですよね。であれば、私の持つとっておきの情報を――――――あれ?」
聞き間違いですかね。今、あっさりと許可を取れた気がするのですが。
「すいませんです。ちょっと空耳が聞こえたのですが……今、許可しなかったですか?」
「しましたよ?」
「…………
「その方が面白そうですから♪」
「……むぅ」
どうしましょう……この展開は予想外すぎるです。クウネルさんなら裏で何を考えててもおかしくないですし、逆に本気で面白いだけで許可されてもおかしくない気もするです……! こう何を考えてるか分からないという人種が、ここまで厄介だったとは……。
「クウネルさん。弟子にしてくれるのは有難いですが、よく考えて欲しいのです。私、これ以上なく怪しいですよ? 自分で言うのもなんですけど、エヴァンジェリンさんみたいな人外でも無い魔法世界の出身でもないただの人間の6歳児が、こんなに色々と知ってるわけないでしょう」
「そうですねぇ」
「分かってるですか!? もし私が【完全なる世界】の造ったホムンクルスだったりしたらどうするつもりですか! 貴方が護っている封印を解くために来たのかもしれないんですよ!?」
「おやおや。まさか【完全なる世界】や世界樹の封印の事まで御存じとは……ここまでは流石に予想していませんでした」
「あ」
……………………や、やっちまったです――――――!!
ええいアホですか私は! いいえアホですね! 空前絶後で前代未聞で抱腹絶倒で針小棒大なアホです!! どの口がオリ主や慢心王のように油断はしないとか言ってたですか! クウネルさんがあまりに訳わからないからとは言え、興奮して創造主の封印の事まで話してしまうとは……もうダメです。オワタです。ガメオペラです。これからはめくるめく尋問拷問凍結封印の日々です。あぁ、尊敬するお爺様ごめんなさいです。夕映は先に逝きます――――!
「……って、何をニコニコニヤニヤしながら私を見てるですかそこの変態紳士。私は絶望するのに忙しいので、放っておいて下さい」
「いえいえ。貴女の百面相があまりに面白かったので。ところで何をそんなに嘆いているのですか?」
「分かり切った事を聞くなんて、良い趣味してやがりますねこの野郎です。こんな紅き翼と学園長くらいしか知らないであろう情報を知ってる危険人物、尋問拷問封印しか未来はないでしょう」
「何故ですか?」
「何故って……ですから、今言った通り――――」
「何で私が自分の弟子を尋問しなければいけないんですか?」
「へ?」
……もう無理です。頭の処理能力を完全に超えました。クウネルさんが何を考えてるかさっぱりです。
「何で私みたいな危険人物を、まだ弟子にする気なんですか」
「夕映さんが頼んできたんじゃないですか」
「いえ、そうですけど……何でこんな情報を持ってるか聞かないのですか?」
「勿論聞きますよ。ですが、それと弟子にするのとは別問題でしょう?」
「……悪い魔法使いを目指してるのかもしれないですよ。もしかしたら、完全なる世界の手の者かもです」
「有り得ませんね」
「何でそう言い切れるですか!」
「勘です♪」
「もうイヤですこの人――――!!」
「では、貴女のその情報の出所を教えて頂けますか?」
「ここで言うですか!?」
多少の性癖には目を瞑ると思った過去の私にガゼルパンチを喰らわせてやりたいです……! これなら多少の危険があるとは言え、エヴァンジェリンさんの方に行った方が良かったかもしれないです。
はぁ……もう今更言っても後の祭りですし、観念して原作知識の事を話しましょうか。幸い弟子にしてもらうという目的は遺憾ながらも達成出来たみたいですし、後は流れに身を任せるです……もうどうにでもなーあれ!
――――――――
「前世の知識に原作知識ですか。これはまた、予想の斜め上の理由ですね」
「クウネルさんは」
「夕映さん。私の事は
「……師匠は私の知識の出所は何だと思ってたですか?」
「そうですね……一番可能性が高いと思ったのは未来予知系のレアスキルですね。過去と未来の全てを見通す、ある種の千里眼のようなものかと」
「そんなスキルを持ってたら、頭が情報を処理しきれなくなって廃人一直線です」
「そうですね。ですが他の理由では説明がつきませんでしたから……それにしても夕映さんは本当に面白い。私の方から弟子になって下さいとお願いするレベルですよ」
「喜んでいいのか微妙ですね。師匠は自分が漫画の存在かもしれない事に、何も思わないですか? 今は私もそうですけど」
「ええ。特に何も。創られた存在というなら魔法世界人もそうですしね」
「あぁ、そう言われてみれば」
魔法世界の亜人の皆さんは、魔力で創られた存在なんでしたっけ? ですから魔力が薄いこちらの世界では、普通には存在出来ないとかそんな感じだったような。うん。漫画の住人とそこまで変わりないですね。流石は師匠。発想が柔軟です。
「夕映さんの言う“原作”は約8年後。夕映さんが中学2年生の3学期から始まるのですね?」
「はい。本格的に始まるのは3年生の春休みですけど。それまでの1~2ヶ月はネギ先生……ナギさんの息子さんが麻帆良に馴染む為の準備期間のようなものです」
「産まれたばかりのナギの息子が先生と呼ばれるのは、変な感じですねえ」
「言わないで下さいです。原作知識に引っ張られてるのか、どうしてもそう呼んでしまうんです」
「ふふ。分かってますよ。それで夕映さんは原作開始までに力を付けたいと思い、私のところへ来たと。私を選んで下さったのは嬉しい限りですが、学園長やタカミチ君達学園の魔法先生、キティではダメだったのですか?」
「学園長は色々な意味で怪しすぎます。強いとは思いますが、実力も不明瞭ですし。西洋魔術と陰陽術のどちらを使うのかも分からない相手に弟子入りを頼むのは博打要素が強すぎです。
高畑先生には申し訳ないですけど、魔法を使えない時点でダメです。感卦法は魅力的ですけど、やはり優先すべきは魔法です。魔法先生達はもっと論外です。正義馬鹿に洗脳されるのは御免被ります。
エヴァンジェリンさんには原作でも白き翼の面々が師事してましたが、それはネギ先生あってのものです。それに今のエヴァンジェリンさんは、ナギさんの死を聞いて自暴自棄になってそうですから。
というわけで、あらゆる面で考えてクウネルさんしかいなかったのです」
今はちょっと後悔してますとは言えないです。まぁ、クウネルさん以外に選択肢が無かったのは本当ですし、仕方ないですね。
「ふむ……よく現状を把握していらっしゃる。確かに今のキティに弟子を取る余裕はありませんし。近右衛門に関しては……そうですね。個人としては悪い人物ではないのですが、本国の陰謀に巻き込まれる可能性が少なからずありますし」
「そうですか。判断が間違って無かったみたいで良かったです」
「それで夕映さん。弟子にするのは良いんですが、何故そこまで早く強くなろうとしているのですか? 原作が無事に終わったのならば、ネギ君が来てからでも遅くは無いと思うのですが」
「かもしれないですが、“私”というイレギュラーが“夕映”になってしまった以上、不測の事態というのは間違いなく起こるです。それに原作通りだと、魔法世界に行く時に私がマズい事になるです」
「と言うと?」
「魔法世界では白き翼の皆さんは破格のレベルアップをするのですが、私だけは“記憶喪失”と“行方不明”という事態があって、初めてレベルアップするのです」
「それは……確かにマズイですね」
「ええ。最悪の場合、私の唯一のアドバンテージである“原作知識”が失われるです」
かと言って原作通り記憶喪失にならなければ、最終決戦では足手纏いになるのは必然。あの風のアーウェルンクスに手も足も出ないでしょう。原作でもどうにかなったとは言い難いですが、あそこで“夕映”が麻痺解除をしなければ、下手をすれば明日菜さんを解放できない可能性が出てきます。
「ようやく納得出来ました。ネギ君という親友の忘れ形見の為。貴女という愛弟子の為。そして私の趣味の為に。原作開始まで貴女を育て上げる事を確約しましょう!」
「待つです。最後に嫌な単語を付け加えなかったですか」
「何か問題でも?」
「問題しかないです!!」
弟子になれたのは良いですが、本当にこんな変態紳士に師事して大丈夫でしょうか。先行き不安です……。
無事にクウネルの弟子になる事が出来ました。
次回からは特訓をしつつ麻帆良探索ですかね。