夕映に憑依したダレカの物語   作:ポコ

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 本日昼前に何気なく当SSの情報をチェックすると、お気に入りがいつの間にか1000越えしてて全力で吹いた。何故に日刊ランキングに載ってた一昨々日から更に100近く増えてらっしゃるんデスカー!? もうすぐ電子の妖精に追い付いちゃうじゃないかと!
 というわけで、あまりの喜びに勢いで7話を執筆執筆。夜勤前だけど気にしない。この数日であやかしびとのトーニャルートをやり直してキャラを把握し直したし、全く問題無い。つか何回もやってるのに、また泣いてしまった。昔から感動屋な作者なのであります。


第7話 あやかしの里

「なぁ夕映姉ちゃん。その鴉のおっちゃんの屋敷って、まだかかるんかー?」

「はぁ……」

 

 遠野でまさかの原作キャラと遭遇してから数時間。まだ8月末だと言うのに秋の味覚を満喫しつくした私は、鴉さんの屋敷に戻っています……何故か小太郎さんを連れて。

 

「なぁって! もう随分歩いとるのに、全然屋敷なんか見えへんでー?」

「はぁぁ……」

 

 原作では京都で初遭遇した小太郎さんですが、何故小太郎さんのような子供が関西から遠野……岩手くんだりまでやってきたのかを――――あ、何故小太郎さんが関西出身と知っているのかは関西弁を使っているところから推測したと言っておいたです。何故このような山奥に居るのかを訊いたところ、半妖と言う事で狗族の里から追い出されてしまったそうで。食い扶持を稼ぐ為に裏の仕事に手をつけようとしたところ、忌み子だからと地元の裏世界からも突っぱねられたそうで。

 が、ここで泣き寝入りしないのが小太郎さんらしいと言うか。何でも物心ついた頃に一族の方々が噂していた、遠野にとんでもなく強い烏天狗がいるという話を思い出し。人伝に噂について尋ねたところ、その烏天狗がかの有名な牛若丸を育て上げた妖怪だというところまで突き止めたらしいのです。6歳児のくせして、どこからそんな情報網を得たのかは謎ですが……まぁ小太郎さんは意外と仕事関係の人付き合いが巧そうですし、この頃からその手の事には慣れていたのだと思っておくです。……いくら半妖で濃い人生を送ってきているとはいえ、そんな6歳児は嫌ですが。

 あ、小太郎さんは先月6歳になったそうです。今は98年の8月。原作開始まで後4年半なので、ネギ先生より1つ年上だったようです。私がこの11月で10歳になりますから、だいたい4歳差ですね。……身長がほぼ同程度なのが泣けてくるです。そりゃ原作の夕映の身長も高くはないですが、さすがに小学4年生で120cm程度しか無いのはどうかと思うのです! ……ここで言ってもどうしようも無い事だというのは分かってるですが、改めてこう自分のミニマムっぷりを露呈させられるとこう、遺憾ともし難い感情が……!

 

「なあ!」

「ぇひゃいっ!?」

 

 こ、小太郎さん!? ななななんですか突然大声を出して!

 

「さっきから声掛けとるのに、返事せえへん夕映姉ちゃんが悪いんやろ? 鴉のおっちゃん屋敷はまだかいなって聞いとんのにー」

「う……すいません。少し思考に埋没してたです」

 

 そうでした。小太郎さんは鴉さんに鍛えてもらうために、この遠野の山を捜しまわっていたそうなのです。何でも自分が仕事を貰えないのはまだ弱いせいだと思い、それなら強くなって見返してやると思い立ってここまで来たそうです。人間の子供を育てるような変わり者なら、自分の修行も見てくれるだろうと安易に考えたようで……まぁ、鴉さんの人格を考えると間違ってはいないのですが。しかしこのただっ広い遠野の山々から、勘だけでこんなに近くまでやってくるとは。呆れるべきか感心すべきか。

 流石に半妖とは言え子供の体力で山奥を何日も捜しまわるのは限界があり、そこらへんに生えている野草や茸に手を出しては腹を下し。もう動けなくなる寸前だったところを、私が発見したというわけです。何というか、狙ったかのようなタイミングですが……何か強制力のようなものが動いてないか、不安になるレベルです。原作でも小太郎さんは、鴉さんに教えを受けたのでしょうかね? 影分身なんかは、いくら才能があっても独学じゃあなんともならないと思うのですが。まぁどこぞの野良忍者に習ったりしたのかもしれないですし、真相は分かりませんが。

 で、先程食事の最中に小太郎さんから身の上話を聞いている中で私がうっかり、鴉さんとその弟子を知っていると溢してしまいまして。それを聞いた小太郎さんは私に飛びついて目を輝かせながら案内してくれとせがんできまして……またもや私には断る事が出来ず、こうして道案内をする羽目になったのです。桜子と言い小太郎さんと言い、私って押しに弱いのでしょうか……?

 

「ふーん? よーわからんけど。鴉のおっちゃんの屋敷はまだなんか?」

「もう目と鼻の先です」

「はぁ? 何言うとんや夕映姉ちゃん。屋敷なんか、どこにも見えへんやないか」

「いえ。ちゃんとここにあるです」

 

 小太郎さんにそう言いながら、私は右の手首に巻いていた鈴を頭上に掲げ――――。

 

 りぃん――――

 

 りぃん――――――

 

 りぃぃん――――――――

 

 3度。

 周囲に鈴の音が染み渡るように、ゆっくりと鈴を鳴らすと――――。

 

「おわぁっ!?」

 

 突然目の前に現れた屋敷に、小太郎さんは思わす飛びのいてしまうくらいに驚いたようです。

 まぁ、無理もないです。先程まで何も無かった空間に、いきなり屋敷が出来れば誰だってそうなるです。

 

「なっ、なななな……なんやこれっ!?」

「不可視と人払いの結界を一時的に解除したです。小太郎さんがいくら鴉さんを捜しても見つからなかったのは、これが原因というわけです」

「はぇー……こないな結界を張れるとか、ごっついんやなぁ鴉のおっちゃん」

「これを張ったのは、鴉さんの上役らしいですよ」

「そうなんか? ここはごっつい奴がようさん居るんやなぁ……」

 

 この鈴は結界の通行証のようなもので、私だけならわざわざ結界を解除する必要は無かったのですが。小太郎さんを連れて行くとなると、結界を一旦解除しないと小太郎さんだけ結界に弾かれてしまい、屋敷内に連れて入る事すらままならなかったので。

 外出前に念のためということで結界解除の方法を教えてもらいましたが、まさかその日のうちに使う事になるとは思わなかったです。鴉さんに迷惑をかけてなければ良いのですが――――。

 

「夕映さん」

「はひっ!?」

「んなっ!?」

 

 突然目の前に現れた鴉さんに、思考に埋もれていた私も、屋敷を見て呆けていた小太郎さんも同時に飛び上がりました。し、心臓に悪い登場の仕方は止めて欲しいです!

 

「失礼しました。ですが、悟られずに近づくというのは妖怪の習性のようなものですので……中には敢えて悟らせる妖怪もいますが。」

「……そうですか」

 

 習性と言われてしまうと、ぐうの音も出ないです。至極尤もな言葉ですし。普通の人間の姿をした妖怪が堂々と手を振りながら歩いてきたら、誰も恐れないです。

 

「それで夕映さん。結界を解除されたのは、そちらの少年を招き入れる為という事で宜しいですか?」

「あ、はい。そうです。何でも鴉さんに頼みがあるという事で――――あれ?」

 

 鴉さんに紹介しようと小太郎さんの方を振り向くと、彼は額……いえ、身体中から汗を噴きだしながらも、いつでも跳びかかれるような姿勢で鴉さんを睨んでいました。

 

「こ、小太郎さん!? 何をやってるですか!」

「……………………ぐっ……」

「ふむ……」

 

 睨んでいる筈の小太郎さんが見るからに消耗しているのを余所に、当の鴉さんは微塵も動じていない様子で、真っ直ぐに小太郎さんを見つめ返していました。もしかして、鴉さんが何かやってるですか……?

 そう思っていると鴉さんの視線に耐え切れなくなったのか、小太郎さんが後ろに倒れこんでしまったので、慌てて支えに走りました。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

「だ、大丈夫ですか? 小太郎さん」

「あー……大丈夫やで夕映姉ちゃん。ちょっと気当たりしただけや」

「はい?」

 

 気当たりですか?

 

「その鴉のおっちゃん、とんでもないわ。夕映姉ちゃんに全く感じさせんと、俺だけにあれだけの殺気を飛ばすとか……俺やったらそないな器用な事、何年修行しても出来んわ」

「殺気!?」

 

 何で会った瞬間からそんな殺伐とした関係になってるのですか!?

 

「そんな事はありませんよ。貴方はまだ若い。数十年もすれば、私のような老いぼれなど軽々と踏み越えていくでしょう」

「そうかー?」

「ええ。私が保障します」

 

 ……あれ? 殺気を飛ばしあう殺伐とした関係では無かったのでしょうか。何やら凄く親しげになっているのですが?

 

「ん? ああ、夕映姉ちゃん。さっきのは試しというか、挨拶みたいなもんやで」

「ええ。夕映さんが連れてこられた以上は悪人ではないのでしょうが、御館様からこの屋敷を預けられている身ですので。無条件で招き入れる訳にはいかなかったのです。夕映さんの客人に対する不作法、申し訳ありません」

「はぁ……」

 

 納得出来たような、そうでもないような。とにかく小太郎さんは客人として認められた、という事で良いのでしょうか。

 首を傾げていると、ある程度回復した小太郎さんが鴉さんに案内されて、さっさと屋敷に入ってしまったです。ちょ、ちょっと! 私を置いて行かないで下さいー!

 

 

 

 ――――――――

 

 

「成程。私に教えを乞いにきた、と」

「そや。なぁ、頼むわ鴉のおっちゃん。俺はもっと強くなりたいんや!」

「ふむ……しかし、私には虎太郎という弟子がいますし。何より――――」

 

 チラ、と一瞬私の方へ目線を剥ける鴉さん。

 

「古い友人の大切な弟子を預かっている身ですから。私一人の独断で新たな弟子を招き入れるわけにも……」

 

 わ、私のせいですか!?

 これはマズイです。もしここで小太郎さんが鴉さんに師事出来なければ、最悪の場合は小太郎さんが原作より弱体化してしまう可能性が!

 

「あの! 鴉さん!」

「はい?」

 

 そう思うといてもたってもいられず、思わず声を荒げてしまう。

 

「あ、あのですね。私の事は気にしないで……いえ、私のためにも、小太郎さんを弟子にしてあげて欲しいのです。その、私も歳が近い方が一緒にいた方が、組手の相手とかにも困らないですし、その、対抗意識が芽生えて互いに切磋琢磨し、修行に身が入るというかですね……」

「ふむ……」

 

 私の言葉に一理あると感じたのか、顎に手を当てて思案する鴉さん。小太郎さんはそんな鴉さんの返答を、真剣な表情で見守ってます。なんとか納得してくれると良いのですが。

 

「何を難しく考えてるんだ? 師匠」

 

 少し張りつめた空気の中、襖を開けて入って来たのは私のもう一人の師匠である虎太郎さんでした。って、小太郎さんと同じ読みで紛らわしいですね。小太郎さんの方には、通称でも考えておいた方が良いですね」

 

「虎太郎?」

「俺達が忙しいって言っても、夕映がここにいる間だけだろ? だったらその犬っころをここに住ませて、夕映が居ない時に鍛えればいいだけだろうに。夕映がいる時は本人がさっき言った通りに夕映の組手相手でもさせてりゃ良いし、何ならあいつ(・・・)にでも鍛えさせたらいいだろ」

「あいつ?」

 

 その親しげな言葉に、思わず首を傾げてしまう。

 あいつって、鴉さんと虎太郎さん以外にも誰かいるのでしょうか?

 

「ん? ああ、夕映にはまだ言ってなかったな。ここ遠野は色々な半妖が集まる場所でな。気付けば【半妖の里】なんて呼ばれる始末だ。師匠みたいな純粋な妖怪も、数える程だがいるけどな」

「はぁ……」

「へぇー!」

 

 半妖の里、ですか。いまいちイメージが浮かばない私に対し、嬉しそうな声を上げる小太郎さん。自分と同じ半妖が集まっている事が嬉しいのでしょうか?

 

「反応がいまいちだな夕映。想像がつかんか? 半妖の集まりとは言っても、連中は能力と寿命以外は普通の人間と変わらんよ。生徒会の連中なんぞは、揃って騒がしい阿呆共の集まりだしな……なんなら会わせてやろう。今すぐにな」

「はい?」

 

 今すぐとはどういう意味か。

 そう問いかけようと声をあげる間もなく、スタスタと襖の方へと向かう虎太郎さん。

 そしておもむろに襖を開けると――――。

 

「むぎゅっ!?」

「おっと」

 

 襖に耳を押し当てていたのか。茶色かかった長い金髪を一房に纏めた女の子と、綺麗な銀髪をポニーテールにした白い肌の女の子が転がり込んできた――――銀髪の子が、金髪の子を踏み台にした形で。

 

「痛い痛い痛い! さっさとどきなさいよこの陶器女(トーニャ)!」

「あ、ごめんなさい。丁度目の前に踏み易そうな狐の毛皮があったので思わず」

「誰が毛皮かぁー!」

 

 唖然とする私と小太郎さんをよそに、キャットファイトを始める二人。

 で、結局このお二人は何処のどちら様ですか?

 説明せよという意思を込めて虎太郎さんを見ると、気持ちが伝わったようで。むんずと銀髪の方の首根っこを掴んで持ち上げると、UFOキャッチャーのように空いていた座布団まで移動させました。

 

「こいつらが今話した生徒会の面子の一部だ。ちなみに顧問は俺。というか、何でここに来てたんだお前ら?」

「夏休みに入ってから鴉天狗さんと虎太郎先生が人間の女の子を鍛えてるという話を、一ノ谷先輩から聞きまして。それを聞いたこの耳ざとい狐娘が面白そうだと興味を持ってしまいまして。私は頑張って止めようとしたんですが、純粋な妖怪相手では私の力など役にも立たず。憐れ私はこの狐娘の道楽に無理やりつき合わされ」

「何流れるように嘘八百言ってんのよ! アンタが暇だから見に行こうって、私を言葉巧みに引きずり出したんじゃないの! 狐を化かすとか、何様のつもりよこの狸娘!!」

「知ーりーまーせーんー。すずさんが何を言ってるのか私にはさっぱりです。やはり100年も生きていると記憶力にも問題が発生するんですね。可哀想にすずさん。でも、心配しないで下さい。貴女の為に最高の老人ホームを見つけてあげますから。主に伊緒が」

「こっ、この豆狸ぃ~~~!」

 

 キャットファイト、ラウンド2開始。

 いや、本当なんなんですかこの二人。というか100年?

 色々と疑問を込めて虎太郎さんを見つめると、面倒そうにしながらも応じてくれました。面倒だなんだと言っても教職者ですね。どこぞのマダオとは違って頼りになるです。

 

「あー……面倒だが仕方ないか。俺から簡単に紹介してやろう。金髪の方が如月すず。今の話で気付いたかもしれんが、さっき俺が言ってた数少ない純粋な妖怪の一人だ。種族は……まぁ、本人から後で聞いてくれ。昔は人間嫌いだったが、今は問答無用で嫌うような事は無いし、お前らみたいな子供に対しては意外と面倒見が良いから大丈夫だろうさ」

 

 さっき狐娘とか言われていたから、きっと狐に関する妖怪なのでしょう。さほど妖怪に詳しいわけではないので、狐の妖怪と聞くとかの有名な金毛白面九尾の狐くらいしか思いつかないのですが。後はお稲荷様くらいでしょうか? 単なる化け狐という可能性もありますが……また機会があれば本人に訊いてみるです。

 

「で、もう一人の銀髪の方がトーニャだ。ちなみにロシア人な。本名はえらく長ったらしいんだが、俺はあんな舌を噛みそうな名前なぞいちいち覚えてない。毒舌で軽くSが入っているが、中身は割とへっぽこだ。からかうのは大好きだが、からかわれるのには滅法弱い。半妖としては少し珍しい種族でな……まぁこっちも詳しくは本人に訊け。

 後、少し歳の離れた義兄がいるが、ヤツは歩く公害だから極力近づかないように。青少年の教育に悪い。それと、兄妹揃ってウォッカを愛している。以前水筒にウォッカを入れて来た時は流石に驚いたぞ……あれを水のようなものだと言い張る味覚は未だに分からん」

 

 なんですかその説明は!?

 トーニャさんもですが、それ以上にお兄さんの方が気になるのですが……歩く公害って、一体どんな方なのですかー!

 本当に今の説明で良いのかと鴉さんの方を見ましたが、いつもの素敵な笑顔で返されたです。つまり、今の説明で間違ってないのですね……こんなのが生徒会役員で、大丈夫なんでしょうか。

 

 色々と疑問に思いながらも、取り敢えずは二人のじゃれ合いが終わるまで待つことになるのでした。え、小太郎さんですか? あの二人が入ってきてから、私の隣で固まってるです。6歳児にこの光景は、色々と衝撃ですよね……早く麻帆良に帰りたいです。割と切実に。

 




ちなみに原作夕映の身長は138cmです。ネギや小太郎と並んでも頭1つ分の差さえ無かったけど、よもやそこまで低かったとは。

さて、遂に(?)出してしまいましたあやかしびとの面々。文字数が6000字を超えたのでここで切りましたが、どうだったでしょう?

さて、前回の活動報告で書いた通り、アンケートを取ります。内容は【トーニャを中等部から麻帆良に編入させるかどうか】。どうぞよろしくお願いします。

夕映の強さをどうするかアンケートは、この話を投稿した瞬間に締め切ります。沢山の回答、有難うございました! ほぼ3一択でしたが、原作が始まってからチート化するか、原作開始時にはもうチートになってるかで意見が分かれてまして。色々と先を考えた結果、原作開始時は2。始まってから3になるという事にしました。どうやってえ強さ度を3000未満から6000超えにするかは先をお楽しみに。

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