???「イタズラにカケラを集めて遊んでみたものよ。
前提として、祟※しの世界になるのかしらね。
登場人物は、小此木と入江の二人にしておいてあげたわ。難しく考えなくていいもの。
一部の酔狂な人たちにとっては面白いかもしれないわね。少なくとも私は楽しめたわ」
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周辺に誰も居ない事を確認すると、物音を立てないようにマイクと集音器を体から静かに外しスイッチをオフにする。それを所長しか見ないであろう書類棚へ隠し、仮眠室へ向かっていた。
誰かに見られンのも聞かれンのも録音機器でさえも、ちぃとマズイんでな。
エントランスから少し奥まった場所にあるのは、所長が静かに過ごしてぇからなンだろうな。
昨晩の祭で忙しくしていたのは知っている。あと数時間もすれば片付けに追われるだろうよ。
コンコンココンと、俺が入室する事が分かるように合図をして扉を開ける。うつらうつらしていたであろう所長の声が間近で聞こえた。コチラを見上げるような格好で。
「ふぁい‥‥あぁ、小此木さん、ですね」
「よォ、入江のセンセイ。邪魔しますぜ」
船をこいでいた私を起こしに来たのは、小此木さんだった。
呼ばれたらすぐ起きて立ち上がれるように、扉壁に椅子を持っていき、聞き耳を立てられるように壁にもたれて仮眠をするのが常なのでして。
鍵の掛かる扉ではあるのですが普段は掛けていませんのでね。
目線の先にあるのは時計のみで、何かあった時のためにデスクとメモ用紙とボールペン程度は置いていますが、音が出るものは他には置かない事にしているのですよ。
誰かが来る度に椅子をあちこち移動させるのは面倒ですので、扉の邪魔にならない私の隣にもう一つ椅子を置いて。
壁にもたれていた背中を起こして、センセイと呼ばれた事に対して驚き、周囲の音がないか耳を澄ませてみるも他に音はせず、つまり人払いがされている事に気付く。
彼がわざわざそうするのには理由がある事を知っているので、不思議に思う事は無い。このようにして訪ねてくる時は、アチラ方面の前触れを感じてザワザワと落ち着かなくなる。
「あの、小此木さん、まずは私の隣にあるその椅子に腰掛けていただけませんか。私がお話聞けませんのでね。
それで、私に何か、ご用がおありなのでしょう」
「聞きてぇのは、俺たちが定期で打っている予防接種の事でな」
いつからか、祭りの後はいつも、誰かが行方不明になり、誰かが死亡という事になっている‥‥らしいな。今年の犠牲者は誰になるかと噂されてはいるが、俺が何かをやっているから起きている訳でも何かを起こしている訳でも無ぇんでな。
イマノトコロハ。
「こちらはいつもと変わりませんが、そちらのほうで何かお変わりございましたか」
「おかしいとは思わねぇんだな、センセイは」
はて、何もおかしな事はないはずですが。いつもの通り厳重に管理と保管をしていますし、いつもの通り確認していますし、破棄も出ず、先日の分は使いきったはずで‥‥。頭の中で何度か反芻し確認をする。
いつも対面で問診するように、座っている椅子をキィと回転させたところで、私の体は自然と彼と向かい合う格好になりますね。
なるほど。首に少し、赤みが見えます。掻いている様子は無いので軽度でしょうが。私が以前に付けた跡の可能性もありましたが、それはずいぶん前の事でしたし、ね‥‥
「薄めて使用しているか、違う薬品の投与をした可能性は潰したか?」
「そのような事はございませんよ。いつも通りに、ラベルの確認をして原液を規定量注入して投与していますので。
その様子だと、副作用が出ている可能性がございませんかね」
俺は所長を疑った。顔より俺の首を見ている事に気付いたからな。だからといって襲う気も襲われる気も更々無ェよ。そもそも、そんな酔狂な気を起こす必要が今は無ェんだわ。
必要がありゃ、もっとこう‥‥ガッとやってチュッとやってァンァンと言わせてでもヤってますわ。所長のトンでもネェ姿は、さんざ眺めてきたからな。
「入江センセイ‥‥俺は、どうかしてるわけじゃあ、無ェんだぜ」
「そうですね、あなたの発汗の様子から見るに‥‥」
どうにも落ち着かない。落ち着けない。意味深な沈黙が私の動悸を速くさせる。今日の彼が、先程から私をセンセイと呼ぶ事がいつも以上にオカシイと気づくまで時間を要してしまった。私とした事が不覚だった。
彼が求めているのは、その答えではないようですね。求めているのは‥‥私の‥‥
「フフッ、私を誰だとお思いで?
分かっていますよ。様々な口実を駆使して私に逢いに来ているのも、なかなかにオカシイ事なのですからね。
薬品に関して言えばですが、私は特別な事などしていませんよ」
「へへッ、いまさら何を。なん、だ‥‥??」
両腕の手首をグイッと掴まれた。振り払おうと思えば出来るンだが、特に何かされた訳でも無かったンで、されるがままになった。
焦りなのか冷や汗なのかは分からんが、掴まれた手首や腕からじんわりと汗が滲んできているのを感じる。首に浮いた汗がツツーっと垂れて、自分の体が火照っている事に今更ながら気付く。
「小此木さん、あなたは私を葬ろうと機会を伺っていたのでしょうが。私は医者ですから患者を助け生かすのが仕事です。それは知っていますよね。
ご自分では気がつかれていないのかもしれませんが。あなたは救いが欲しくて、私によく逢いに来てくださいますね。
医者としてあなたを救えるなら、救いたい。
私は‥‥小此木さんが、好きなのですよ‥‥」
そもそも私は外科医ですからね。ここに居る時は内科もしていますが。
本心から出たとはいえ、小此木さんに対して恥ずかしい事を言った事に気付いてしまいました。お互いが熱くなっている事に気付くのも時間の問題ですね。
「ハハッ、流石に気づかれちまったか。テメーの仕事に文句言うつもりは無ェ。
だがな、救いが欲しいと言った憶えも無ければ、思った事すら無ぇ。
ただな、最後のは、何だ‥‥」
見透かされたと思った。この俺がか。そんなハズは‥‥無ェはずなんだがなぁ。
声を出して叫んだ所で誰も来ねぇようにしたのはこの俺だからな。捩じ伏せようと思えば出来たンだが、ここに居て不思議とそんな気は起きなかった。何故かは分からないが所長がそうさせるのか、それとも回数を重ねたからか。
「済みませんが最後のは、忘れてください。言葉のアヤで」
「聞き捨てならんな‥‥」
空調の無い、ただ仮眠するためだけの部屋に、彼と私の二人だけの空間が完成した。
いつ誰が入ってくるか分からないスリルは、彼にとっては楽しんでいたようですが、私にはよりストレスで嫌な思いは何度もしたものです。思い出すのも嫌なので墓まで持っていくことにします。
今はまだ誰にも邪魔される事はないでしょう。ほら、彼の気が変わらないうちに、私はまた、彼の手首を掴んで、様子を伺う事にします。
「小此木、さん‥‥ですから、あの‥‥」
「入江センセイ‥‥いや、イツモのように京介と呼ぼうか‥‥」
いつまで腕を掴んでいるのやら。
俺の気が変わらぬうちに所長の左肩に俺の顎を乗せ、耳元で囁いてやった。
「忘れてやらねーよ」
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祟※し寄りなので、このあとめちゃくちゃになったのは言うまでもない‥‥
描いてたら、入江にちょくちょく逢いに来ている小此木さん前提になってしまいましたが、ほんのり入小此っぽくなっていればいいなぁと。