???「例によって、イタズラにカケラを集めて遊んでみたものよ。
前提として、祟※しの世界を想定しているわ。
【Secret code security. 0】と【祭囃子が鳴り響く頃に 1.0】の、最終章ね。先にこの二編を読んでいて欲しいけど、単独でも読めると思うわ。
小此木の独白がメインよ。入江が少し出てくるだけ。名前だけなら富竹や鷹野も。
一部の酔狂な人たちにとっては面白いかもしれないわね。少なくとも私は楽しめたわ」
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きっかけは何だったか忘れちまったが。定期検診以外の時でも俺は診療所を度々訪れるようになっていた。理由は様々あったが、運命を感じたとか何とか言って丸め込ませたンだったな。
空は半分を灰色の雲で覆い隠し始めており、冷たい風が通り抜ける。蒸し暑いこの時期に、ここまで冷え込むのは珍しい。ポツポツと、雨が窓を打つ音が聞こえてくるようになった。
「入江所長、邪魔するぜ?」
「はい。私に何でしょうか、小此木さん」
珍しくも正面から逢いに来てやったぜ。ただ逢いたいがために何の用が無くとも寄るようになってったからな。コイツと話してっと昔を思い出すわ。昔つっても俺の幼少の頃はきれいさっぱり忘れちまったンで、雛に聞かれてもいい範囲で上官だった頃の富竹の話をな。
変わらず俺にそう接して、疲れねぇンだろうかといつも思う。コイツを消しちまわねぇとならンなっちまった時から俺は。ほーンと、コイツは人がいいな。
「アイツを逃がした、だろう?」
「あぁ、さっきの前原君の事ですね」
コイツは人の話を聞くのが好きなンだろうな。場合によっちゃ自分から話す事もあるだろう。その話が本当かは知らンが‥‥聞く限りじゃ本当なンだろうな。
ついでだから腹の内でも話してから闇に葬るか。これまでもあまり気持ちをぶつけることが無かった俺だが、コイツの巧みな話術によって幾らか吐き出させて貰った。頼まれたら断れない性格なのを知っているからわざと。少し涙を見せるだけでも効果的だったぜ。面白い程にナァ。
しっかし、コイツを※ろすのが惜しくなっちまったな。だが、引き返せねぇとこまで来ちまった。気は進まねぇが、やるしかねぇか。雛のためにも、俺のためにも。
ちょっと目を離した隙を狙い、見つからねぇように液状にした睡眠薬を数滴垂らしておいた。以前試した事があるが、味に変化は無ぇからなァ。全て飲み終わる頃にはぐっすりってぇ寸法だ。
「後始末は俺に任せてくれりゃいい。所長も大変だろうが、苦しまずに何とかしてやりますんね」
「えぇ。済みませ‥‥あとはよろし、ねが‥‥のぎ‥‥ん」
眠った所長の頸に<それ>を突き刺す。あぁ。アンタの亡骸は、俺が弔ってやらンとな。アンタと過ごした思い出は、これからずっと永遠に忘れてやらねぇからよ。時期が来る度に思い出してやる‥‥
俺は‥‥泣いているのか?
今頃になって気付いたところで、もう遅い。
俺は‥‥アンタが‥‥好き、だったのかもしれねぇ。
パァン‥‥
カナカナカナカナカナカナカナ‥‥
診療所内に設置されている小型ラジオから無機質な音声が鳴り響く。
ポツリポツリと降っていた雨は止んでいたが、天は切れ目なく雲で覆われ、殆ど動く様子が無く数日はこのままだろうという事を報せていた。
ひぐらしだけは覚えている。
祭の後の、彼らの記憶は残らない。遺せない。
ひぐらしだけが知っていた。
祭の前の、彼らの記録は、いつかは白日のもとに晒される事を。
カナカナカナカナカナカナカナ‥‥
所長の最期を、小此木視点で描いてみたかったもの。
「会いたい 入江 運命 永遠 思い出して」直接的なものも含め、散りばめてみた。
数年振りに完成にこぎつけたよ!
ほとんど東京弁に戻ってしまっていますが、小此木さんの心の内なので、少し冷酷な面が出ております。