???「これは、過去に他の場所に置いていたカケラの再編よ。廃棄するには惜しいから、ここに置いておくわね。稚拙な箇所が多数あるから、そこには目を瞑ってちょうだいね?
登場人物は小此木と富竹だけれど、雲雀13がチョイ役で出ているわよ。
小此木→富竹前提の、富小此なのよね。だから接吻するような関係よ。
何編と言われると困るけれど、少なくとも小此木も富竹も雛見沢に住んでいると思っていいわ。
一部の酔狂な人たちにとっては面白いかもしれないわね。少なくとも私は楽しめたわ」
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もう必要ないはずなのに、またここに来てしまった。もしかしたらという気持ちがあったのかもしれない。
――ひぐらしの鳴く声に
たぶんきっと、彼に逢えるんじゃないかと思ったからかもしれない。
鬱蒼とした草木に埋もれながら、森の奥に引き込まれるように。彼の瞳に吸い込まれて。魅入られて。
周辺を見渡してみると、幾つかのトラップ――北条沙都子ちゃんによるものと思われる――が仕掛けてあったと思われる場所には、大きな穴やドラム缶、冷蔵庫など…おそらく違法投棄されたものであろう朽ちた電化製品や日用品が、乱雑に積み上げられていた。
その横を通り過ぎる。この辺りはまだ野鳥は見受けられない。もう少し奥まったところに鳥達のオアシスがあるだろうと検討をつけ、分け入っていく。
ふいに胸がざわつくのを感じた。その視線の先に、よく知っている人物を見たから。
そっと、そっと。近づいてみる。やはり小此木くんに違いなかった。僕は少しの音を立てて更に近づく。
いつもの彼ならとうに気付いて臨戦体勢に入るは…ず? あれ? 未だに気付いて貰えない。どうしたのだろうか、嫌な予感がする。
隣に腰掛けて、腕を取って脈拍を計り呼吸に異常がないか様子を見る。少し脈が速いが、呼吸は大丈夫そうだ。
腰に据え付けられた無線機から他の隊員の声はするが、内容までは聞き取れなかった。
無防備に体を投げ出した彼の着ている服には、所々に野草の汁やシミがついており、これはただ事ではないなと感じ取る。
いつもふざけ合うみたいに、そっと唇にキスをする。
「んッ…ふぅ…」
つい息が漏れてしまった。眉を潜める様子に、やっと気付いてくれたという思いと、気付かれてしまったかなという思いもあり離れたつもりなのだが…勢い余って歯を当ててしまった。痛い。名残惜しいけど仕方ない。
「いっ、てぇ…」
みるみる赤くなる彼の表情を見て、しめたと思った。珍しいこともあるものだと仰ぎ見る。
「ごめんよ、小此木くん。野鳥の撮影をしていたら見知った顔を見掛けたのでつい、ね」
歯は少し痛いけどご愛嬌。彼の表情を見て和んだ。不安はまだあるけど少し安心した。顔色は先程の火照りで血行が良くなったようだ。ハハハと笑って腕を伸ばして近づこうとする。
「つい、じゃねぇだろ……おい、富竹」
両腕をガシッと掴まれ、引っ繰り返された。逆光で表情はよく見えなくなったけど。胸が高鳴り、懐かしい気持ちにさせられる。
「あはは。珍しいものを拝ませて貰ったよ。惜しむらくは、それを写真に収められなかった事だけどね」
雑踏に押し倒される。僕も背中を少し擦ったみたいだった。見上げると表情が硬い。目が本気だ。こういう時の彼は容赦ないからなぁ。僕はなんとかして振り解こうと試みる。
「そこはヤダって小此木くん。あ、ちょっと待って。その…インカム、オフじゃないよね?」
彼の手の動きが止まる。どうやら図星だったらしい。僕は、彼が良いというなら気付かないままでもよくて、ただの当てずっぽうだったのだけど。なんだか嫌な汗が。
「あぁ多分、お前の声までは入らねぇと思うぞ」
「こちら雲雀13。お言葉を返すようで悪いですが聞こえていますぜ、小此木の旦那。そちらに居られる富竹二尉の声もはっきりと…おっと、済みません」
僕の声なんて聞いて…あぁそういえば、確か山狗の隊員に居るんだった。人員を集めたのは彼だったから、それまでは知らなかったし気付かなかったけれど。
「こちら鳳1から各隊員へ。これからインカムオフにするが、一時間ほどで復帰する。それまで雲雀13が仮の隊長だ。頼んだぞ、オーバー」
「雲雀13、了解」
彼がインカムのスイッチを切り、僕は無線機を少し弄る。ラジオは…さすがにこんな森の中じゃ途切れ途切れでしか入らないか。どうやら無線機そのものの感度は低いらしい。その分インカムのマイクで集音を上げているようだ。
「僕の事はいいから少し休んだらどうかな。あまり眠れていないのだろう?」
僕は彼の傍に居られるだけで幸せだからと、少しの嘘を吐いて。
「オマエの顔を見たら、眠気なんざ吹っ飛んじまったな…」
火照りを冷ますようにネクタイを緩めた彼の表情は、僕を捉えて離さない。彼の首に見慣れない筋を見付けたのは、僕の落ち度かそれとも。
……
…………
………………
……………………
…………………………
無線機のチャンネルを弄ったのだろう。
何度か受信があり、彼を捜索している無線が隊員達の間で飛び交っているようだった。
「こちら雲雀13。旦那ァ…戻ってきてくださいよ」
彼は。彼らは此処には居ない。報せるのが筋ではあったが、誰にも知られずに秘密裏に診療所へ運び込まれたのだから、戻る事はない。
惨状を知ることになるのは、一週間は経った後だった。
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side小此木では、雛見沢に来て間もない頃を想定して描いていましたが、コッチでは『祭囃し』を通っていて、色々許された後に雛見沢/興宮に住んでいる小此木さんを描きたくて描いた感じです。
ほぼ同じ台詞で似たシチュではありますが読んでいるコチラ側しか分からないので、富竹さんも小此木さんもデジャヴしている訳ではなかったり。
小此木さんの首に筋があるのは……発症している感じが出せているかなと。
入江さんや鷹野さんや雲雀13さんとの関係性が変わってしまうのもあり、彼らとは“未だ”そういう関係ではないです。誰かが付けた痕かもしれないなんて思わせる事はしたくなかったので。
以前のEDだと、装備を木々に紛れ込ませて森の奥に入って戻らないって感じにしてましたが、今回は、診療所に向かっている感じにしてみました。
(旧あとがき)
既に書いた小此木メインの小咄を、セリフは同一で人物描写を富竹メインの小咄に変えて「side富竹(解)」として書いてたんだけど、終盤がまとまらなくて苦戦してしまいました。
やっとこさストンて落ちてくれたのでヨシ。
彼=小此木くん
です。セリフ以外はほぼ富竹なので。何回も小此木くん小此木くん言うのは、さすがに煩いかなぁと。
気付いたらサブタイトルが出来ていた。でも中身には大して擦ってないので関係無いような気もする。なのでサブタイはこっそりのつもりで。
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