???「これはただの糊付けされていたページと記録よ。廃棄するには惜しいから、ここに置いておくわね。
記録の持ち主は鷹野。表には出なかったものだけれど思い出すついでに開封したみたいね。
【MT's diary.】に記述されなかった、あの場面が描かれているわ。気分の悪い表現が少しあるから気を付けなさいな。
【Secret code security. 0】
【祭囃子が鳴り響く頃に 1.0】
【when Evening Cicada stops crying 0.0】
上記シリーズも読んでおくと状況が掴めるかもしれないわね。
一部の酔狂な人たちにとっては面白いかもしれないわね。少なくとも私は楽しめたわ」
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うっすら開いた仮眠室の扉から聞こえてくる、聞き捨てならない入江所長の嫌がる声。私の部下である小此木が相手をしているのをまたも聞いてしまったわ。聞いて居られなくて静かにその場を立ち去ったのだけれど。私、今、何を聞いたのかしら?
実は以前にも通り掛かった事があってね、扉が薄く開いていて漏れ聞こえていたからなのだけれど。残念ながら不可抗力よ。この時も聞いていられなくて途中で静かに立ち去っているのよね。
いったい何のつもりで音を、声を漏らしているのか私には分からなかった。誰も入れないように鍵をすればいいのにとも思っていた。一回、二回ならただの気紛れお戯れだとまだ分かるのだけれど、これで三回目よ。偶然とは思えないわ。
私にはジロウさんが居るのを所長も部下も知っているはずだし、公言している訳ではないけれど、雛見沢村に住む殆どの人が私とジロウさんがただならぬ関係である――付き合っている――のは周知の事実だし。
愛しのジロウさんは、あの部下みたいに乱暴してくれないのよね。いつも優しく包んでくれるだけだもの。あの部下みたいに積極的になってくれたら良いのに。ジロウさん一筋な私なのに、どうしてかしら所長と部下が気になるの。
あら。悶々と考え事をしていたら仮眠室の入口に戻ってきてしまっていたわ。うっすらと開いた扉の向こう側からは人の気配はあるものの、チクタクと響く掛け時計以外の物音は何も聞こえなかったから、いつも通り扉をそっと開けてみたの。そこにはいつも通り……ではなかったみたい。
「えっ……」
血の気が引き、声にならない声を発していたわ。医者にあるまじき無防備な姿の――柔らかい枕を抱いてそこに顔を埋め、脚を折り曲げ膝をついたうつ伏せの状態で前屈している――所長がうずくまっていたの。下半身がどうなっていたかは……所長には悪いから此処には描かないわ。失礼ね、それくらいの良識は私にもあるわよ。
ここに来るまでも沈んでいたけれど、こんな光景を見せられては余計に思考が底に沈んでいくのを感じたわ。
辺り一面が惨劇の跡……という訳ではないようで散乱している医薬品を脇に退けながら、ひとまず息をしているかだけ確認をしようと近づいて見つけた数々のうっ血痕。
えっ、いつの間にこんなに? 余程近づかなければ見えない位置に付けられているじゃない。所長をこんな風に痛め付ける必要がどこにあるというの?
「ッチ、マズったな‥‥」
息があるのを確認して所長を起こすかどうか躊躇していると背後から声が聞こえたわ。誰かと思えば見知った顔、私の部下の小此木がカチャリと扉の鍵を掛けたところだったの。普段は掛けておかない事を所長から聞いていたから入室したのに、今頃鍵を掛けるとはどういう了見なのッ、小此木ッ!!
所長と部下の関係はうっすらと頭で理解はしているから尚更何故としか思えなくて。今回だけは聞き捨てならなくて心配になって、静まりかえった扉を開けて正解だったと安堵したわ。
「小此木……この惨状を作ったのは、あなたね?」
「落ち着いてくれ、所長はちゃあんと生きてますんね」
手荒に抱いちまって自己嫌悪で席を外していたんだが、その間に鷹野が部屋を訪れたってワケか。
元々扉をちぃと開けていたのもあってか、所長の声と俺の声をワザとらしく漏れさせて誰も近付けんようにしていたつもりだったが‥‥裏目に出ちまったな。
「あなたが所長と仲良くしている事は知ってはいたけど、こう……まざまざと見せつけられるとは思わなかったわ。悪いけれど許してね、所長も私の仲間なのよ?」
鷹野さんの声が……聞こえます。確か、小此木さんに……そんな事は良くて。いえ、良くはありませんが。私は、大丈夫ですから……と伝えようとしたけれど呻き声しか出せずに居ると、いつの間にか鷹野さんに顔を覗かれており、ぼんやりと漂わせていた視線をそこに向けて焦点を合わせようとしていたところで、ひとつの疑問が浮かぶ……どうして貴方は、泣いているのですか?
「……鷹野、さん。あの、どうか……されましたか?」
目の前の彼女に伝えようとしたところで、仮眠室の扉前で、私ではなく鷹野さんの方を向いて睨んでいる……小此木さんが居るのを確認する。
先程まで薄く開いていたはずの扉が閉められている事に気付いて、聞かれたくない事があるのでしょうと察する事は出来たけれど、私の……このありさまを鷹野さんに知られてしまった事に、ただただ申し訳なさでいっぱいになる。
「あっ、入江所長……気が付いたのね。良かった……」
「はい、鷹野さん。私は大丈夫ですから……ありがとうございますね。鷹野さんは、あの、どうしてこちらに? ご帰宅されたのだと思っていましたが」
最近……いえ、これは先ほど付けられたものだわ。またも、うっ血痕を見付けてしまうとは。あっちもこっちも傷だらけじゃない。あなた、どうして……そんなに……
【ここから先は破壊されていて判読不能】
【MT's diary.】の、準続編。
【祭囃子が鳴り響く頃に 1.0】と【when Evening Cicada stops crying 0.0】の間のお話。
事後で済みませんねえ。ガッツリ描くのは色々と制限が御座いまして。
言動と思考が合ってないのは、この目撃の前に、入江と鷹野が富竹の事で話をしていて、富竹が鷹野に告げずに東京に向かったからで。
鷹野が富竹の事で気落ちしていて仮眠室前を通り掛かる→入江と小此木が致しているところに扉越で遭遇&そっと聞き耳(三回目なので少しじっくりと聞いてしまう)→あらあらまあまあとなるものの一旦場を離れる→入江が果てる&小此木が火照りを冷ますために部屋を出る→(小此木が見えなくなった辺りから入れ違いになり)気になり様子を見に来た鷹野が仮眠室の惨状を見つける→小此木が仮眠室に戻る