[惑星サルトゥス]
ここは惑星サルトゥス。
地表のほとんどが森に覆われていて、成人男性の平均身長が100cmという、リスのような見た目をした人類種サルトゥス人が樹木の上に街を作り暮らしている。
そんな中を明らかにサルトゥス人ではなく、少し長めの黒髪にまるで夜空に浮かぶ星々のような銀色の瞳を持ちアメジストのような宝石のブレスレットを身に付けた地球人の青年が一人ため息を付きながら歩いている。。
「はぁ...。俺はゼントランかっての。」
青年の身長は170cm前後で、青年が分類される日系地球人としては平均的である。
しかしながら一部を除けばサルトゥス人が大半を占めるこの惑星では、寧ろ自分の方が巨人なのではないかと錯覚させられる。
因みにこの青年はとある任務のためにこの惑星を訪れ、先程までサルトゥス政府の要人達と面談を行っていた。
『...ハルキ殿のお話は良くわかりました。戦術音楽ユニットを立ち上げ、活動を行うのであれば、ケイオスは支援を惜しまないと...。非常に魅力的なお話を頂いたこと、感謝いたします。しかしながら我がサルトゥスの人的資源では必要な人材を確保することすら困難であると言えましょう...。今回は申し訳ございませぬと言うことで...。』
青年は長い髭と長い眉に全身真っ白な体毛に包まれたリス...もといハルトゥス大統領の言葉を思い出す。
彼はすでに12の惑星と4の移民船団を訪れては似たような言葉を聞かされていた。
(結局のところリン·ミンメイ、FIRE BOMBER、シェリルノーム、ランカ・リー。彼女等の様に自らの意思で台頭して来ない限り
そんなことを考えながら街を歩いていると、街路沿いの露店から声をかけられる。
「兄ちゃん!どうだい?よってかねーかい?」
ハチマキにタンクトップで、サルトゥス人としては非常に体格の良い店主らしき男が手招きをしている。
(そういえばここに着いてから何も食って無かったか。)
この惑星に到着したのは先日の夜の事だったのだが、フォールドによる時差ボケがあったため、手近な宿を取ってすぐに寝てしまっていた。
今朝はと言うもの、起床時間が面談の時間ギリギリだったため宿を飛び出しすぐに面談場所へと向かってしまっていた。
(思い出すと、急に腹減ってくるなあ...。よし、腹ごしらえとするか!)
青年は声の方へ足を向け暖簾をくぐった。
「そんじゃお言葉に甘えて邪魔するぜ。」
軽く挨拶をしながら椅子に腰を下ろす。
座席数は10席ほどあるのだが、昼時をとうに過ぎていることもあってか他に客の姿は見当たらない。
「兄ちゃん地球人かい?珍しいね。最近は物騒だから観光客もぱったり見なくなっちまった。」
店主が客席のモニターを見ながら話しかけてくる。
「ヴァールシンドロームか...。さっきまで普通にしてた奴が急に暴れだすってんじゃ、観光どころじゃねーだろ。」
青年もモニターからメニュー表に目を移しながら返事をした。
「うーん...。おすすめメニューとかあるのか?」
今度は青年が店主に話しかける。
「そりゃあもちろん!サルトゥス名物森クルミサラダ!森クルミラーメン!森クルミポタージュだ!」
店主が目を輝かせて親指を立てている。
(おいおい...どっかにも居たなこんな奴...。てか、こいつら味覚までリスなのかよ。)
そんなことを思いながら再びメニュー表に目を移す。
「そんじゃあ...森クルミラーメン一人前頼む。」
「あいよ!」
意を決したような表情で注文を終えた青年はメニューからモニターに目を戻す。
モニターの中では先ほどから数日前のヴァールによる暴動事件が特集されている。
青年は昔の事を思いだし、どことなく悲しげな表情でモニターを眺めていた。
そんな彼に気付いたのか店主が口を開く。
「兄ちゃん大丈夫か?なにも悪いニュースばかりじゃないんだからそう気を落とすなよ!今朝だって...」
何かを言いかけたところでモニターが切り替わりきらびやかな映像と共にアップテンポなサウンドが流れてくる。
「ほら!ワルキューレだ!どうやら新メンバーが入ってきたとかで、惑星ランドールでデビューライブやるんだとよ!全くランドールの連中が羨ましいぜ!」
店主はまたしても目を輝かせながらモニターを注視している。
「新メンバーか。ランドールならそう遠くないだろ?今からチケット取れば全然行ける距離じゃねーか?」
青年はモニターから流れるサウンドに合わせて軽く頭を揺らしながら、店主に問いかける。
「面白いこというな兄ちゃん。今からチケットなんかとれるはずないだろ!お待ち!サルトゥス名物森クルミラーメン!」
店主は笑顔でどんぶりを差し出しながら答える。
それを受け取った青年は箸を割り、いただきますと一言だけ告げ、麺を啜る。
(ランドールか。折角の新メンバーだからな。これから向かえばライブには十分間に合う距離だし、たまにはあいつらの顔拝みに行ってやるか!)
青年は不敵な笑みを浮かべると早々にラーメンを啜る。
「ごちそうさま。最悪の味だったぜ。こりゃしばらく店畳んだ方が良いかもな。」
憎まれ口を叩いた青年はテーブルに代金を置くと、後ろ手にひらひらと手を振りながら店から出ていく。
「なにっ!?俺の飯が不味かったってのか?おい!」
店主の呼び掛けにも答えず去って行った青年が座っていたテーブルには、スープまで飲み干され空になったどんぶりと、[ワルキューレライブ特別ご招待券 招待者ハルキ·スメラギ]と書かれた紙が残されていた。
「兄...ちゃん!」
目に涙を浮かべた店主が天を仰ぐ。
「金払ってけよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
店主の叫びが夕暮れのサルトゥスに響き渡った。
いかがでしたでしょうか?
次回より本編に突入します。
原作アニメ4話の辺りから始める予定です。
もし良ければよろしくお願いします。