ブリッジへ通じる通路を歩いているハルキは、戦闘中に響いた歌の事を思い出していた。
それはアップテンポなリズムとキャッチーなメロディで戦士達を鼓舞するワルキューレのサウンドとは違い、オペラのように厳格などことなく恐怖を与えるような粛々とした歌であった。
(あれにもウィンダミアが関係してんのか?)
そんなことを思い、ブレスレットを見つめながら歩いていると身体が何かにぶつかった。
「痛っ...わりぃ!考え事してた!大丈夫か!?」
余所見をしていたハルキは相手に謝罪しながら顔をあげるとそこには、黒いモヒカンを携えた屈強な男がいた。
「メッサー!?」
「変わらないなお前は。歩くときは前を見て歩け。」
メッサーは見下ろすようにハルキを見ながら注意した。
「中尉殿もお変わり無さそうで...それよりどこに行くんだ?」
「隊長に呼ばれてブリッジに向かっている。」
苦笑いしながら軽口を返したハルキはメッサーと並んで歩く。
しばらく無言で歩いたが、その空気に耐え兼ねたのか或いは本当に気になったのか真剣な顔をしたハルキが口を開く。
「その後、どうだ?その...体のほうは。」
「お前にはこれが不健康に見えるのか?自分の事は自分がよくわかってる。お前に口出しされる筋合いはない。」
「誤魔化すなよ...。」
「ヴァールか...お前が戻って来た以上、どうなろうと問題ない。もし俺がΔ小隊やワルキューレを襲うようなことになれば、お前が俺を殺せ。以前にも言ったはずだ。」
最初は顔色ひとつ変えず何も語ろうとしなかったメッサ-だったが、ハルキの真剣さに押され少し俯きながら語り出す。
しかしそれを聞いたハルキは俯き息を吸い込んでからまた口を開く。
「こっちも前に言ったはずだぜ?俺はもう仲間殺しなんて勘弁だ。俺はΔ小隊もワルキューレも必ず守る。それはお前も例外じゃねーよ。」
「本当に変わらないな。そんな甘い考えだと、いつか命を落とすことになるぞ。」
二人はお互いに前を向いたまま、真剣な顔つきで話していた。
しかしメッサ-の最後の言葉を聞いたハルキは、笑顔でメッサ-の方を向いた。
「仲間が死ぬよりはマシだ!」
それに対しメッサ-は返事をすることはなく、どことなく呆れたような顔で立ち止まる。
そこにはブリッジのドアがあった。
「失礼します。」
メッサ-が声をかけながら入っていく。
ハルキもそれに続いてブリッジに入る。
そこにいたのはゼントラーディの屈強な男マクロス·エリシオン艦長アーネスト·ジョンソン、立派な髭をはやした男Δ小隊長アラド·メルダース、赤髪のショートカットの女性ワルキューレリーダーカナメ·バッカニアの3人だった。
「2人ともよく来たな。そしてハルキ中尉、久しぶりだな。無事で何より。」
一番最初に口を開いたのはアーネストだ。
それに対してハルキも軽く挨拶をする。
「お久しぶりです、艦長。それに隊長もカナメさんも。連絡もせずに戻ってすみません。」
それに反応したのはアラドだ。
「お前がマメに連絡するタイプじゃないのはよく知ってるがそれにしても何でヴォルドールに?」
「いや、実はその...ワルキューレに新メンバーが入ったって聞いてデビューライブを観に...」
アラドの質問にハルキはバツが悪そうに答えた。
するとクスクスと笑いながらカナメが口を開く。
「フレイヤの?そう...ハルキくんも心配してくれてたのね。」
「いやいやそう言うわけでは...それよりもご用件は?」
カナメに核心を付かれたのが照れ臭かったのか、ハルキは少し顔を赤くしながら話を反らす。
するとアラドが笑いながら用件を述べ始める。
「カナメさんに一本取られたな!ハルキ!まあ今回呼び出したのは、お前の今後の処遇についてだ。まだ正式に決まった訳じゃないが、おそらく今回のウィンダミアの件で俺達の契約は更新されるだろう。その時再び確認することになるとは思うが、現状お前は正式にΔ小隊のメンバーと言うわけではない。復隊する気が在るのかどうかを確認しておこうかと思ってな。」
「つまりレディMから俺に与えられた任務も更新されると?でしたらもちろんΔ小隊に戻りますよ。」
答えたハルキの目には一縷の迷いも無かった。
それを見たアラドはまた豪快に笑いながら口を開く。
「まあ、お前ならそう言うと思ったんだが、ただ急に復隊したんじゃ下の者に示しが付かないだろ?そこでメッサ-の出番だ!」
「俺の?」
アラドの言葉の真意が分からず、また急に自分に振られたことに驚いたのか、珍しくメッサ-が目を丸くしている。
「Δ小隊恒例!模擬戦を行ってもらう。メッサー対ハルキでな。かなり面白いカードだぞこれは!」
「さすが隊長。俺もしばらく前線から離れていましたから、同じような提案をしようかと思っていました。まさか相手がメッサーになるとは思いませんでしたが...まあとりあえずよろしくな!メッサー!」
「やるからには容赦しない。せいぜい着いてこい。」
アラドは少し面白がっているような雰囲気があるが、ワクワクしたようなハルキは笑顔でメッサーに向き直り、メッサーは呆れたような顔をしていたが、観念したのか真剣な顔でハルキに拳を付き出した。
その意味を理解したハルキも、笑顔で拳を合わせた。
次回はメッサー対ハルキの戦闘回を予定しています。