「パンが無いならみんなでタコパをすれば良いいいじゃ無い!」
「王女様!民はみな今日食べるパンすらなく大変困っています!」
「パンが無いならみんなでタコパをすれば良いいいじゃ無い!」
王女マリーアントワネットのその一声により、
ここに国家プロジェクト【MAN-PUKU】が発令されのであった。
国民の空腹を満たす戦いが今、始まったのである!
***
「王女様!伝説の満腹食TAKO-YAKIとはいったいなんなのでしょうか!」
「王女様!TAKO-YAKIをつくるための小麦が足りません!」
「タコもです!」「キャベツやネギもです!」「油はどうすれば!」
「料理人も到底足りる数ではありません!」
「王女様!何より国民はTAKO-YAKIを口にする前に飢え死にしてしまうでしょう!」
「王女様!」「王女様!」「王女様!」「王女様!」「王女様!」
大勢の人がマリーの元に押し寄せました。
「落ち着きなさい!そして私の話をよくお聞きになって!」
マリーの張りのあるハスキーボイスの前に民衆も落ち着きを取り戻しました。
「これから市民には一家に一つほどほどの大きさ水瓶や壺の供出を求めるわ!」
「そのかわり提供してくださる方々には食料の支援を差し上げますわ!」
この時代、壺は生活必需品!人間は多くの水を生活で必要とするのだ!
需要もあり、生産も進み、非常に安価に買い目求められる。
路頭で悪さをするガキどもでも何処かに確保している品である。
それをたった一つ差し出せばしばらく食料に困らないときた。
みな喜んで差し出し、久々の食事に舌なめずりをするのであった。
「いいこと!これからはデラックススペクタクルウルトラ輪栽式農業の時代よ!」
デラックススペクタクルウルトラ輪栽式農業!
頭が悪そうだとか、小学生かよとか侮るなかれ!
成功すれば休耕期がなくなり、食糧生産高は爆上がり鰻登り。
全国民分の小麦粉確保も間違いなし!
ついでに野菜もザックザク!
長ネギ、カブ類、キャベツに、生姜、それに菜種…TAKO-YDKIの素材がどんどんと備蓄されていくぞ!
すごいぞデラックススペクタクルウルトラ輪栽式農業!!
「それからフランス近海でおいたする海賊どもにこう言ってやりなさい。『人攫って財を得るより海を浚ってタコを得る方が稼げるわよ。』って!タコを高く買い取るのよ!そして漁獲のための蛸壺も無料で貸し出すとおふれを出すのよ!」
海賊達は武器を放り投げ目の色変えて網や竿を持ち、蛸壺を設置してタコが取れるのを今か今かと間違える様になりました。
採れたて新鮮なタコや魚はパリの地下深くに作られ、冬の間に天然の雪を集めて集めて放り込んだ自然に優しく冷蔵庫にこれでもか!と放り込まれる様になりました!
結果他の漁師や商人も安心してフランスの海を航海することができるようになり漁獲高がさらに増し、貿易が活発化しフランスの街はますます栄えていきました。
料理人も積極的に育てられ、仕事にあぶれた者も手に職をつけられる様になり、ちまたでたむろしていた悪ガキやごろつきどもも今では立派な職人となり、フランスの美食をさらに前進させています。
人々が職につき、飢えを凌ぎ、生活に余裕が出てくると芸術に興味を持つ人口も増えていきました。オペラが活発に鑑賞され、名画を生み出す画家や後世に名を残す音楽家達が次々に誕生しては世の中を席巻し、市民は人の生を高らかに歌い上げたのです。
『芸術の街、パリ』この呼び名はこの頃生まれたと言います。
「そしてこれから食事は少なく質素、そして宴やダンスパーティーは当分お預けよ!なぜかって?」
「空腹こそが香辛料を超える料理最大のスパイスだからよ!」
財務大臣の頭を悩ませつつげた王宮での浪費という問題が解決され、余剰の資金はマリーの政策を強力に押し進めた!
成功に次ぐ成功!
毎日報告される明るい報告に文官もマリーもにっこり!
太陽の様な笑みに周りの人達もにっこり!
家に帰ってきた召使いの家族や親戚もこれをみてにっこり!
国中にニコニコ笑顔の輪が広がりました。
人々はよりいっそう仕事に精を出す様になったのです。
結果!
フランスの繁栄ぶりを知ったEDOの天下の大将軍、徳川家治の態度も軟化。
フランスの特使たちはとうとう伝説のパーティー飯『TAKO-YAKI』のレシピを祖国に持ち帰る事ができたのです。
料理人たちも奮ってこれの習得に挑みました。
国家プロジェクト【MAN-PUKU】もいよいよ大詰め!
国民みんなで腹一杯で笑い合える日も近い、そうみんな信じておりました。
しかし、不穏な空気がお隣の国で燻っておりました。
「なに?フランス王国に戦争の予兆ありとな?」
ドイツのプロイセン王国現国王、ヨーゼフは額に皺を作りながら言った。
「はい、近頃などは食料を溜め込んでいるとか。それに海賊たちと国の一部が接触したとか、はるか東方の国と何やら貿易を始めたとか色々と匂うのでございます。」
「なに、あの国は我が愛すべき破天荒な妹、マリーアントワネットがいる。特に問題はないだろう。下がれ。」
「しかし…」
「くどい、二度も言わせる気か。」
「ここで間違えればいっかんの終わりですぞ、陛下!」
「つまみ出せ。」
「うわっ、何をする。やめろ、やめ、この私に触れるな下郎!おやめください陛下、陛下ああぁぁぁ…」
ふむ。
しかしマリーはいったい今度は何をしでかすつもりやら。
---------------ー--
----------ー
----ー
「これで粗方下準備の方は終わったかしら。」
ここ最近はずっとプロジェクトにかかりきりでマリーも疲れていた。
それでも会議にはキッチリと欠かさず出席していた。
そんなマリーに大勢の中の一人の文官が尋ねる。
「そう言えば、一息に調理をするための鉄板はどうなっているのです?」
「「「「………………………」」」」
みな一様に黙りこくる。
「……」
そしてマリーも黙り込んでしまった。
重い重い沈黙が横たわった。
「すっかり忘れていたわ!」
マリーの叫びが王宮にこだました。
マリーは変な所でおっちょこちょいであるのでした。
マリーの緊急命令で各地から鉄がかき集められた。
それらは工房にて溶かされ、次々鉄板へと姿を変えていった。
これでいよいよ全てのピースが揃ったのである。
ご馳走はもう目と鼻の先。
--------------
--------
----
先日摘み出されたプロセインの貴族、ウィーブの方では。
「何⁉︎マリーアントワネットが今度は鉄をかき集めているだと!
やはり私の考えに間違いはなかった様だな!このタイミングで鉄を集めるなどやる事は一つだろう。武器を作って戦争をする!王は頼れぬ!私だけで絶対にこの国を守らねば!」
そして民達からの求心力を高め、私が英雄となりプロセインの新たな指導者となるのだ!
「先手必勝、やられる前にやれ!全軍、目標パリへ!いざ進めー!」
ウィーブの軍隊が動き出していた。
魔の手が迫る。
------------
------
ー-ー
「それにしても不思議だな。」
ウィーブの進軍は快調だ。驚くほど順調だ。
今頃、王の耳にもこの話は届いているだろう。
しかし、王の軍勢は追いつくのは、私がパリを落とした後になるだろう。
ウィーブはそう考えた。
(しかし何故だろうか。)
ウィーブの疑念は晴れない。
進軍は快調だ。順調だ。しかし順調すぎるのだ。
なぜがフランスの街街には誰一人として人がいないのだ。
それでウィーブはかつて無いほどのスピードでパリへ迫っているのである。
「さてはこのウィーブ率いる精兵に恐れをなしてみな逃げてしまったか。まぁ、それも仕方ないか。はっはっは!!」
ウィーブは一人で勝手に自己完結して悦に浸った。
ただ一つだけウィーブには懸念すべき事があった。
それは一切の略奪ができていない事である。
元々持ってきた食料だけで、全ての兵の口を満たす事はできない。
ゆえに進軍しながら街を襲い、民間から食料を強制徴収しとうと思っていたのだ。
しかしながら今は人もいなければ、食べ物や貴重品はみなそっくりどこかに隠されていた。
戦利品はほぼなきに等しかった。
故郷からの長い道のりに兵の顔には疲れが出始め、空腹から士気も下がり始めている。
しかし、大丈夫だ。
とウィーブは自分に言い聞かせた。
パリはもう近く。
明日の昼には私の兵士がなだれ込み、蹂躙しているだろう。
ウィーブはそう考えたのである。
はたして、その予想は悉く裏切られることとなる事をウィーブはまだ知らない。
***
次の日は目も眩む様な太陽が燦々と輝く快晴であった。
心地よい陽気に鼻唄を歌い、踊り出したくなる様な良い日であった。
そしてウィーブの軍隊はとうとうパリ郊外まで辿り着き、そして目撃する。
海の様な沢山の人々が楽しそうに酒を飲み、言葉を交わし、TAKO-YAKIをほおばる。他の町に人がいなかったのはこの街に全ての住人が集結していたためだったのだ。
踊りを踊り、肩を組んで歌い出し、素晴らしい楽器の演奏に拍手を打つ。
人が最高潮に生を爆発させ、歓喜に満ち満ちていた。
兵士たちはみな呆気に取られた。
そして俺の家族もこんな風にしてやりてなぁ、と心の中で呟いた。
そして立ちすくむ兵士たちの前に、一人のそれはそれは麗しい美女が姿を表した。
今日の太陽にも劣らぬ輝きを放つ美貌だった。
「プロセインのみなさん!」
張りがある凛とした声が場によく響いた。
「ころせぇ!」と叫んだ誰かの声はかき消された。
「楽園に国境はありません!」
「私達はあなたがたを歓迎します!」
「自分に素直になっていいんです!」
「今宵ともにこの人生を謳歌しましょう!」
そして最前列の兵士に散歩でもするかの様に近づき、手にしていたできたてホヤホヤのTAKO-YAKIを一人の兵士に差し出す。
見たことも聞いたこともないまあるい料理を、兵士は女性の顔を伺う様におそるおそるとり、口に放り込む。
「美味しい!」
次の瞬間、無意識のうちに兵士は叫んでいた。
タコがグニュグニュと不思議な所感を伝え、ざくざくとしたキャベツが歯応えを充実させて、紅生姜が良いアクセントとなっている。
周りの皮は脂でカリカリに仕上がっており、兵士は食べるのをやめられなかった!
ぱくぱくと次を求めてしまう。
「美味しいでしょう?」
ぶんぶんと兵士はいつうなずく。
「だって、私達みんなで頑張って作ったTAKO-YAKIだもの。」
美味しそうにたこ焼きにぱくつく兵士の周りの兵士達は、それを羨ましそうに口の中にいっぱい涎を溜めながら見ていた。
「我慢する事はないわ!まだまだいっぱいTAKO-YAKIはあるのよ!
パンがなくてお腹が空いているのなら、TAKO-YAKIを食べればいいのよ!たんとあるから美味しく召し上がれ!」
そしてマリーはスカートの両端を持ち上げ、一礼してみせる。
その優美なカーテシーを皮切りに、兵士達は武器も鎧もみな放り捨てて美味しい匂いのする方へ飛びたじていった。
そしてパリの町も、それを包み噛む様に受け入れた。
国も文化も、生まれも育ちも関係なく、街の人とドイツからのお客さんは大いに食べ、飲み、絆を育み、これからの明るい未来を語り合った。
地上の楽園が、そこにはあった。
一人で成り行きについていけず、呆然と独り放心している男がいた。
軍を差し向けたウィーブその人である。
ウィーブにマリーはさして気にした風でもなく近寄り、たこ焼きを優しく差し出す。
「なんだ、なんなんだ…これは。」
「タコパ、人と人が最高盛り上がれる宴よ!あなたも一口どう?」
「私は…私は間違っていたのか…」
これからの暗い未来を想像し、ウィーブは崩れ落ちる。
「そんな難しい事は考えなくていいの。冷えちゃうわよ!」
そしてたこ焼きをウィーブの口にツッコム。
「………うまい。」
何度も何度も、ゆっくりと咀嚼し、味を噛み締める。
「大丈夫、あなたはきっと大丈夫よ。」
優しくマリーがウィーブを抱きしめる。
思いがけない優しいさに、ウィーブは思わず涙をこぼした。
そして母の手のようなぬくもりの揺り籠の中で、ウィーブは貴族としてのプライドも忘れて泣き出した。
とても暖かった。
「さっ、一通り泣いたらお腹が減ったでしょう?それなら私達も行きましょう!」
「だって空腹こそ最後のスパイスよ!これ以上ないほど美味しいわ!人と楽しむTAKO-YAkIは!」
一人の少女と、一人の男が喜びの街に消えていった。
宴はまだまだ始まったばかり。
ある男を追ってきたプロイセンのお客さま方も加わって、楽しい楽しい宴はますます盛り上がっていく。
笑い声だけが、いつまでもいつまでもその街に響いている。
読んでくれてありがとサンゴ