◆◆◆
窓に打ち付ける吹雪の音が妙に大きく聞こえる。
「それじゃ話すわよ。この村で起きている出来事を」
「ああ、頼むよ」
リンドウの表情にはいつもの気だるげな様子はなかった。カンナは頷いて口を開く。
▼▼▼
その昔、世ノ島ではポケモンと人々が助け合って暮らしていた。
互いに尊重し合い笑い合って生きていたのだ。
それが変わってしまったのは、カントー本土から来た一人の商人の言葉からである。
『ここの生態系は独特で珍しいポケモンが沢山いる。特にラプラスが素晴らしい。価値があって人間に従順であり何よりも強い!売れば途轍もない財を成せますよ。どうです?私が仲介しますのでラプラス達を捕まえて売っては貰えませんか?』
勿論、村人達は反対した。ラプラスは海へ漁をする上でのパートナーであり、そんなラプラスを村では神の化身として大切に扱われていたからである。
商人は口惜しそうに帰って行った。そして、いつしか村人達もそんなことは忘れて今まで通りの生活を送って行く。
しかしある時、事件は起きた。
海で獲物が全く取れなくなったのである。
村人達は困り果てた。そこへあの時の商人蛾あらわれる。
『お助けしましょう。ラプラスを売ってください。お金は直ぐにお支払しますよ』
村人達は泣く泣く相棒であるラプラス達を手放した。
そして、今まで見たことがない金額を手にしたのである。
買えないものはなく、不自由のない生活を手に入れてしまった村人達はしきりにラプラスを捕まえて売り払う様になった。まだ親離れ出来ていない幼いラプラスさえも売り飛ばしたのだ。
争いを嫌うラプラス達は村の外れにある凍て滝の洞窟に逃げ込む。
村人は神を祀っていた神聖な洞窟に大挙して踏入り、ラプラス達を捕まえてた。抵抗を示す者には危害を加える事も辞さずに。
ラプラス達は、人間の意のままになってしまう悲劇を唄った。
まるで無念の想いを吐き出すかのように。神に祈るかのように。
その声は聞き届けられたのだ。
ある日、ラプラス狩りを主体的に先導していた村の男が姿を見せない事を不審に思った仲間達が自宅を訪れた。
男は凍り付けになっていた。家族もろとも....
仲間達は慌てて村中にこの事を知らせ、駆け付けた村人によって氷ってしまった一家を運びだそうとして氷に触れる。
すると氷に触れた指先がくっ付き、まるで這うように触れた者を凍り漬けにしてまったのだ。
村中は恐怖に包み込まれた。そして、何処からともなく聞こえてくる不気味な歌声に恐れおののいた。
人々はラプラスの呪いだと口々に噂をした。村人は有志をつのりまだ洞窟に隠れているかもしれないラプラスを見つけて殺す事にした。破滅の唄を止める為に...
討伐隊が洞窟に入って暫く、絶叫と悲鳴の後に唄は止んだが、洞窟に向かった者は誰一人として戻らなかった。
その翌日からだ。
温暖な気候の筈の世ノ島で雪が降った。強烈な寒波は草木を枯らし、海を凍らせて村人を追い詰めた。
お金に頼り、作物を作る事も漁をすることも忘れてしまった村には当然ながら備蓄などない。
村人達は、ぺリッパーに商人へ救援を求める手紙を持たせて飛ばし、更に村の男達が凍った海を超えて他の島へ助けを求めに行く事になる。
少ない食糧を男達に持たせ、女子供と年寄り達が彼らを見送る。だが、彼等は直ぐに絶望する事となる。
出発して一時間も経たない内に村の女が氷の海を指差した。
彼方に見える男達の一団。その距離が先程と全く同じ位置にいるのだ。双眼鏡で覗いた老人が腰を抜かす。
彼等は氷っていた。
そして残された村人が唖然とする中、男達はひび割れた氷の割れ目から海へと沈んで行ったのだ。貴重な食糧と共に...
頼みの綱は、商人からの救援であった。
絶食状態で3日が過ぎ、ぺリッパーが手紙を持ち帰る。
村人達はその内容を固唾を飲んで見詰めた。
『助けて 助けて 私が悪かった 海を汚染して 村人がラプラスを捕まえるよう仕向けた私を許して 凍りたくない 許して 許して 助けて 許して タスケテ ユルシテ.....』
村人の目の前でその手紙は凍り付いて砕け散った。
それは希望が砕けたのも同義だったのだろう。村人は自分達の行いを後悔した。誰もが赦しを乞い願ったのだ。
『神様 この地獄を 終わらせて下さい』
願いは聞き届けられた。村人達の前に1羽の巨大な鳥が舞い降りたのだ。
雪の様な純白の体毛と羽、たなびく長い尾は優雅で見とれるほど美しく、頭部には氷の結晶のような冠羽があり、瞳はルビーの様な深紅の輝きを放つ鳥だった。
村人達は皆涙を流して跪き赦しを乞うた。
鳥の形をした神は透き通る声で唄うように囀ずると、彼等の地獄は終わりを告げたのだ。
*凍死*という救済をもって
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カンナはそこで一息ついた。
「おかしくないか?」
リンドウが首をかしげる。
「怪談でもよくあるが、全員死んだなら誰がこの話を村に語り継いだんだよ」
「この島の住人は全員が移住者なのよ。元の島民は全員死亡しているわ。ラプラスの売買に関わった商人も含めてね」
「.....」
「世ノ島と連絡が途絶えた事を心配した他の島民がここを訪れた時には全員凍ったままで亡くなっていたそうよ。この話は、亡くなった島民が自身が凍り漬けになる直前まで書いていた手記によるものなの。とうぜん世ノ島には、人が寄り付かなくなったそうよ」
「まぁ、当然だろうな」
「でも、独自の環境や海の幸を求めたカントーからの移住者がここを再び開拓して済み始めた。恐らくは後から事実を知ったのでしょうね。ナナシマの人達は世ノ島の事を話すのはタブーにしていたみたいだし」
「ふむ、話からして相手がフリーザーの上位個体である事は間違い無さそうだが、ここからがアンタが実際に体験した印象の話になるんだろ?」
「ええ....」
カンナは声のトーンを一層落とす。
▼▼▼
青い海を進む一隻の船。
そこには海を見つめる家族の姿があった。
「わぁ!綺麗!」
薄い紫色の髪を後ろで束ねた眼鏡をかけた少女が瞳を輝かせている。
幼きカンナである。それを両親が優しく微笑んで見守っていた。
元々身体の弱かったカンナを心配した両親は、思いきって仕事を止め、空気の綺麗な離島への引っ越しを決意した。
当時のカントーでは急激に開発が進み、大気が汚染された環境でカンナを育てるのは限界があると感じての事だったのだろう。
しかし、本来なら離島とは言え土地や住宅を手に入れるのは金銭的にも容易ではない。ところが、世ノ島の地価は奇妙な程に安価であり、その値段に少々疑問に思うところはあったものの、背にはらは変えられないと購入を即断した。
移り住んだ世ノ島は自然が豊かであり、人の温かさも感じられた。カンナの父は、漁師の仕事を慣れないながらも必死にこなして働き、母も自らが先生となって家事とカンナへの教育を真剣にこなして行くのである。
カンナ自身はと言えば、内気な性格で島の子供達と距離はあったものの、島の守り神であるラプラスの幼獣に懐かれた事で、子供の輪に受け入れられ、自然と仲良くなっていたのだった。
そんなある日、カンナがラプラスと遊んでいると大人達の会話がきこえて来た。
「今年も誰かが犠牲になるのか。もう沢山だ」
「おい!滅多な事を言うもんじゃない。」
「だって今年は俺かもしれないんだぞ!家族も巻き込む。穏やかでいられる筈がない!」
「だとしても耐えるしかない。この島と縁を持った時点でな」
「クソッ!」
幼いカンナには彼等の会話の意味は理解できなかったが、その後すぐにこの言葉の持つ重大さを思い知ることとなる。
その夜、カンナと両親は夕飯を済ませて楽しく会話をしていた時だった。
「ん?なんだ?」
カンナの父が違和感に気付いた。
静かすぎるのだ。音が何かに吸収された様に耳が締め付けられている感覚がする。
その正体は窓の外で降りしきる雪であった。温暖な気候で雪など降る筈もないというのに。
「カンナ見てごらん。雪が降っているよ」
「ホント!?わたし雪を見るの初めて!」
カンナは束ねた髪を左右に振りながら窓に飛び付く。
一面の銀世界。窓を開けて手を伸ばすと手の平に一粒の雪が舞い落ちて消えた。とても冷たくて、そして綺麗だった。
「なんだろアレ」
雲っている筈の空に何か輝く何かが飛んでいるのが見えた気がした。それはどんどん近付いてくる。
「カンナ!危ない!」
父の怒声と同時にカンナの身体が強く後ろへと引かれる。
彼女には何が起こったのか理解できなかった。父が何かを叫び、母が悲鳴を上げる。カンナはただ目を閉じて震える事しか出来なかった。
家具が滅茶苦茶になる音が響いた後に訪れた静寂に彼女は目を開く。
「ひっ!」
目の前には彼女を守るように立ち塞がって凍っている両親の姿があった。
「い、いやぁあああっ!」
カンナは絶叫していた。床には両親だったであろう血肉の交じった氷がころがっている。
そこへ大きな何かが現れた。
言うなればソレは氷の鳥だ。雪の様な純白の体毛と羽、光りたなびく美しい尾羽と氷を象った冠羽、そして血の様に赤い深紅の瞳を怪しく光らせている。
「あ、あなたがお父さんとお母さんを....」
ピキィ!
「あうっ!?」
鳥が放つ威圧感に身体が凍ってしまったかの如く固まってしまう。
震える事すら叶わぬ彼女に鳥は一歩近付いた。足を床に付けた瞬間に周囲がスケートリンクの様に凍りつき、周囲の水分が瞬間的に氷結してキラキラと輝いている。
フォーアァ....
その囀ずりは唄の様に聞こえた。氷の鳥は顔をカンナに近付けて嘴の先を彼女の唇にそっと当てる。
身体が痺れ、心が凍って行く。両親が無惨に死んだ恐怖すらも消え失せ、いしきが暗転した。
翌日━━━
村人達は広場に集まっていた。
「おい、誰もやられてないぞ?」
「いや待て。去年に引っ越して来た一家の姿がないぞ!もしかしたら....」
「村長!どうする!!?」
「確認するしかあるまい」
村人は総出でカンナの家へ向かう。
「こ、これは.....!」
家を訪れた村人達は驚愕した。内部は凄惨そのものだったのだ。砕け散った肉片とこの中で倒れる一人の少女の姿だ。
「こいつは酷い....」
「娘は?死んでるのか?」
「当たり前だろ!今までアノ方に狙われた家は全滅してたんだ。例外があるわけが━━━」
「待て!おかしいぞ。この娘、凍っていない。いままでそんな事あったか!?」
「おい!早く誰か確めろ!」
「解った。俺がやる!」
坊主頭の体格の良い男がカンナの首元に触れる。
「温かい...息もしてる。生きてる....おい!この子は生きてるぞ!」
「な、なに!?」
「そんな馬かな!」
「みんな聞けぇええっ!」
「そ、村長!?」
村人のざわめきを村長の怒声が沈める。
「恐らく、この娘はアノ方に魅入られたのじゃ!もしかすると、我々に降りかかった災禍が終わりを告げたのやもしれん」
「どういう事なんだ!説明してくれ!」
「アノ方をお祀りしている凍て滝の洞窟に毎年この娘を氷の巫女として奉公させれば、村に降りかかる呪いが無くなるかもしれんという事じゃ」
「ほ、本当なのか!!?」
「試してみる価値はあるじゃろう。信じぬ者はそれでも良いが、賭けてみるべきなのではないか?どの道、我らにはアノ方に勝てはせんのだからな」
村人達は無言の肯定を示す。それにすがるしか無いのだろう。
「解った。村長を信じよう。来年のこの日にその娘を凍て滝の洞窟へ向かわせる」
「うむ。決まりじゃな」
「う、うぅ....」
「お、おい!気がついたぞ!」
目を覚ましたカンナを一同が凝視する。
「わ、わたしは...ねえ!お父さんとお母さんは?」
「それは....」
村人達は押し黙ってしまう。そこへ口を開いたのは、他ならぬ村長であった。
「カンナよ。お前の両親は氷の神の怒りを買って死んだのだ」
「そ、そんなの嘘よ!」
「ではもう一度家の中に入って確めてみるか?」
「それは...」
記憶が鮮明になる。あのおぞましい鳥によって大切な両親が殺された事実を。
「カンナよ。いや、カンナ様。あなた様は両親の罪をその身で償わねばならぬのです。氷の巫女としてアノ御方の声を聞き、怒りを鎮め、この村に平穏をもたらしてくだされ!」
「いや!そんなの勝手すぎるわ!」
「ではこの村の者達はあなた様のせいでみんな死に絶えるのを良しとすると!ご自身の両親の様に!」
「━━っ!」
カンナは悔しさとやるせ無さに唇を噛んで涙を流す。耐えているのだろう。
「良い心がけですな。あなた様のお世話は村の者全員で行います。くれぐれもアノ御方に粗相などなさらぬ様に教養も身に付けねばなりません。時間は御座いませんぞ!」
村人達は去って行く。彼等の中で哀れみの表情を浮かべる者は、彼女の生死を確認した男だけであった。
時は過ぎ去り━━
15歳となったカンナは、その落ち着いた雰囲気と少女とは思えない憂いを帯びた顔立ちも相まってすっかり大人びた様相を呈していた。
「もう、明日なのね...」
明日は氷の神を慰める儀式の日。それは否応なしに彼女の両親が亡くなってしまったことを思い出させてしまうのだ。
悲しみと苛立ち、そして氷の神やそれに準じて自分を祭り上げる村人達への恨みが込み上げてくる。
「もう、いや....」
思わず口に出してしまい、そんな自分に嫌悪感を抱いてまた気持ちが沈んだ。
明日の支度をするために家に帰ったカンナは扉に何かが挟まっている事に気付く。
「これは、手紙?」
内容は、夜に船着き場まで来いという内容だった。儀式の前日は誰もカンナに会おうとはしない。不測の事態を避ける為だ。ある意味タブーとされていたカンナとの接触をわざわざ望む者とは誰なのかと気になってしまい、夜に家を抜け出すことを決める。
その夜、早々に明かり消して自宅を抜け出したカンナは船着き場へとやってくる。
「待っておりましたカンナ様いや、カンナちゃん」
「あなたは....イカリさん」
目の前には体格の良い男が立っていた。カンナの生死を確認した男である。
イカリと呼ばれた男は何も言わずにカンナへと近付いて手を取った。
「え、何を!!?」
「逃げるんだ!船は用意してある!」
「逃げるって、島を!?無理よ!」
「無理でも逃げるんだ!君はまだ若い。今からでもやり直せる。こんな島で腐ってちゃいけないんだ!」
「勝手な事を言わないで!両親を侮辱して私を勝手に祭り上げたクセに!」
「許して貰おうなんて考えてない。ただ悪かったとずっと思っていた。そして、決心したんだ。この島は狂っている。君はこれから本土に渡り、色々なものを見て学ぶんだ。俺達が見られなかったものも全て」
イカリは強引にカンナを自身の漁船へとの乗せると、素早くエンジンを掛けて沖へと突き進んで行った。
儀式の前日は静かな島に突如響いた轟音に島中の明かりが灯るのが遠目でも見える。恐らくは騒ぎになっているだろう。
「本土に知り合いがいる。俺の....俺の本当に大切な人だ。カンナちゃんをそこに預ける。きっと君に多くを学ばせてくれるだろう」
「今度は自分達の願望を私に押し付けるの?自分達が世ノ島に縛られているから!」
「そう...なのかもしれないな」
「本当に、本当に勝手過ぎる!」
「ああ、そうだよ。大人は勝手なんだ。君たち子供よりもずっと我が儘でズルいんだ。だから君はそうなっちゃいけない。それには教育が必要なんだ。何が悪くて何が良いのかそれを知らなくちゃならない。"彼女"ならきっと君にそれを教えてくれる」
「彼女?」
イカリの顔が少しだけ緩んでから切なげな表情へと変わって行く。
「カンナちゃんは四天王って知っているかい?」
「四天王?」
「そうだ。リーグチャンピオンに次ぐ最強のトレーナー達の一人だよ。その一人が俺の幼馴染みなんだ。名前は『ロメリア』。トキワシティ出身のトレーナーさ。今はトレーナーズスクールの教師もしているらしい」
「先生をしているの?」
「ああ、だから彼女から色々と学ぶといい。あっ、それとなんだが....」
「??」
「ロメリアに伝えて欲しい事があるんだ」
「何を伝えるの?」
「俺は君を...いや、流石に勝手過ぎるな」
「待ち合わせをしているのでしょう?直接伝えてたら良いじゃない」
「無理だよ」
その言葉に、悪い予感がするとカンナは本能的に感じた。
「ど、どうして?」
「それは....ああまずい。どうやらここまでみたいだ。ごめんな、カンナちゃんここからは自分で進んでくれ」
「え?」
「いいかい?グレン島を目指すんだ。そこにイキシアはいる。ポケモン達にこのまま真っ直ぐ進んだ方角にある島を目指す様に伝えるんだ。海を知っているポケモンならコンパスが無くても迷う事はない」
「待って!急にどうしたの?」
そこまでいって、イカリが何に焦っているのか気付いた。
彼の足が凍りつき床に張り付いていたのだ。
「イカリさん!これ....」
「島を離れる事は許されないからな。覚悟はしてたんだよ」
「そんなっ!」
以前、カンナが巫女となり島民が凍り漬けになる事無くなったある日、島を出ようと船で脱出を図った家族が、翌日に凍ったまま海岸へ打ち上げられていたことがあったのだ。
故に、カンナを連れてグレン島へ共に行くことなど最初から出来なかったのである。
「どうして....どうしてそんな事をっ!」
涙を流してすり寄るカンナにイカリが優しく笑顔を向ける。もう、生きていられる時間は殆んど無いというのに。
「俺達は呪われた。でも君のおかげお陰で今日まで生きてこれたんだ。でもねカンナちゃん。それは飽くまで君を犠牲にした時間稼ぎでしかない。呪いは解けていないんだよ。それに一生付き合う事はないんだ」
「...」
「ずっと後悔してた。君の両親を悪者にしてしまった事も、君をあんな化け物に捧げなくちゃならなかった事も。両親はね、きっと君を守りたくて亡くなったんだ。君を心から愛してた。村人だったら誰だって知っていたよ」
氷が彼の腰から上へと徐々に這い上がって行く。
「知っていて悪者にしたんだ。怖くて自分達だけども助かりたくて。でもそれじゃ許しは貰えない。もしかしたら神様は、俺達人間の絶滅をもってでしか呪いを解いてはくれないのかもしれない。だから終わらせるんだ」
「そんなのって無いわ!やっぱりあなたは勝手よ!ズルい!私だけ生きさせるなんてズルい!」
「そうだよカンナちゃん。大人はズルいだ。だからね...」
イカリは切なげに笑う。
「立ち向かうんだ。人間の、自分自身の穢れに....」
その言葉が最期だった。イカリの身体は氷に覆われてしまう。カンナの悲痛な叫びも、最早届くことはないのだ。
涙と嗚咽が溢れる。
しかし、現実はカンナを悲しみに暮れる事すらも許さない。イカリを覆った氷は船内を侵食するかの様に拡がっていた。
「━━━っ!」
彼女は船外へ駆け出した。ラプラスを繰り出して飛び乗る。それと同時に船は氷に覆われて砕け散った。イカリを乗せた残骸が海へと沈んで行く。
「.....」
ゴボゴボと沈み行く船の様子を見ていられずに、カンナはその場を足早に立ち去った。
月明かりが水面を照らし、ラプラスと涙に濡れたカンナの瞳を照らす。
どこまで進んできたのだろうか、夜は明けていたいのだから数時間といった所だろうが、彼女にはまるで数ヶ月の時間を漂流しているような絶望感につつまれていた。
不意に、ラプラスの動きが止まる。
「どうしたの?」
ラプラスは明らかに怯えていた。波が止まって辺りの音が鎮まりかえる。
「あっ!」
自分達の真下に巨大な何かがいる。
「大きなウミヘビ?違う!これはっ!」
最悪の展開だった。水辺において決して遭遇してはならないポケモン。それは...
グォォオオオオ!
ソイツが顔を水面から出し、巨大な体躯と咆哮を轟かせる。
「ギャラドス!」
凶悪な眼光がこちらを見据えていた。海でソイツにであってしまったら覚悟を決めなければならない。それほど迄に危険なポケモンなのだ。航行する船舶ですら、複数のトレーナーを護衛として雇う程に....
「ウソ...でしょ?」
カンナが自身の運命を悟った時だった。
「ギャラドス!およしなさい!その子よ!」
声と同時にカンナの上空を大きな翼を持ったナニかが通り過ぎる。
尻尾に紅蓮の炎を灯した竜のようなポケモン『リザードン』である。
リザードンは空中で身体を翻してカンナの真上へとやってくる。その背中には誰かが乗っているようだ。
「あなたがカンナちゃんかしら?」
声は落ち着いた女性の様だった。
「あ、あなたは誰なの?」
「怯えなくても良いわ。私はイカリ君に頼まれてあなたを保護しにきたの」
「じゃあ四天王の?」
「ええ」
そこまで言うと、声の主は透き通る音色の笛を鳴らした。
「見つけたわ。皆戻ってらっしゃい!」
掛け声と共に彼女のポケモン達が大空を舞ってリザードンの周りに集まってくる。その圧倒的な雰囲気にカンナは固まっていた。
プテラ ストライク ピジョット そしてバタフリーが集う。あのギャラドスも今は落ち着いていた。どうやら彼女の手持ちであったらしい。
彼等の羽ばたいた風が、リザードンの身体から発する火の粉と、バタフリーの鱗粉を空中に舞わせて月光がそれらを神秘的に輝かせている。
リザードンがラプラスの目の前まで高度を落とし、声の主が姿を表した。
銀色のショートヘアーにスカイブルーの瞳、そしてその場に不釣り合いな黒いスーツを待った美しい女性。
「私は四天王の"大将"を勤めているロメリア。〖ひこうタイプ〗を専門としているの。もう一度聞くわ。あなたカンナちゃんね?」
「は、はい」
ロメリアは優しくカンナを見つめた。
「もう大丈夫よ。さぁ!いらっしゃいな」
伸ばされた手を握り、その温かさに懐かしさを覚えた時、カンナは今までの感情が放出された。
泣きじゃくるカンナを、ロメリアは落ち着くまで優しく抱き締めるのであった。
お付きあい頂きありがとうございます。
ポケットモンスター 天
四天王 大将『ロメリア・アルスト』
好きな花言葉『未来への憧れ』『援助』
戦闘開始の掛け声『では、勉強の成果を見せて貰うかな』
特性 ホークアイ
使用タイプ ひこう
性格:明るい性格 教えるのが好き
H 80
A 110
B 75
C 65
D 70
S 100
持ち物 羽ペン
技
速筆
フェザーダンス
みやぶる
心の翼
パーティ
バタフリー 持 光の粉
技 ねむりごな 暴風 蝶の舞い 光の壁
ギャラドス 持 ソクノの実
技 滝登り 竜の舞い 跳び跳ねる 地震
プテラ 持 力の鉢巻
技 ストーンエッジ 地震 フリーフォール アイアンヘッド
ピジョット 持 ピントレンズ
技 ゴッドバード まもる 影分身 すなかけ
リザードン 持 拘り眼鏡
技 ブラストバーン オーバーヒート 竜の波動 シャドークロー
ストライク 持 きあいのタスキ
技 剣の舞い バトンタッチ こらえる 起死回生