◆◆◆
異界を脱出し、七日島へと到着した二人は宿屋を訪れていた。店の店主がカンナを見て目を輝かせている。
「これはこれはカンナ様!ようこそこんな小さな宿屋にお越しくださいました!お泊まりですか?」
「ええ、四天王を引退して地元に帰ることにしたの。今日は久しぶりに他の島を見たくなってしまって」
「それは光栄です。それで....その」
店主がリンドウの方を訝しげに見つめた。
「ああ、旅のパートナーよ。この人の分の部屋もお願いするわ」
「いや、悪いが俺は宿は取らないんだ。シャワーだけ貸してくれないか?」
「え、ええ。もちろん大丈夫ですとも」
「ちょっと待ちなさい!」
カンナは頬を膨らませている。
「宿代の事を気にしているの?でもアナタは私を助けてくれたし気にしなくても良いのよ?それに物資を揃えるのでしょ?だったらここは甘えておくべきだわ」
「いや、落ち着かなくてね。ポケモンもこれからは6匹手持ちが基本になるだろうし、遊ばせてあげる機会も少なくなる。砂浜でキャンプを張るから心配はいらない」
「そう言えば、アナタはボックス無しに手持ちをかなり持っているみたいね。仕方ないわ、でもお礼は必ずするから」
「ご自由に。あっそうだ。俺が買い物をしている間、トランクを預かってくれ。リュックを持っていけば間に合うからな」
「解った。そうしておくわ」
リンドウは店主にコインランドリーの場所を聞き出すと足早に出ていってしまう。
「あのぅ、変わった方ですね。言っちゃあ何ですが四天王だったカンナさんに付いて行けるだけで行幸というものですが」
「まぁ、悪い人では無いわ。うん、でも少し変わってるかもしれないわね。バトルも結局は断られちゃうし」
「ええっ!そんな勿体ない!トレーナーとしてこれ程の機会はないのに!」
「そうね。では荷物を部屋に運んで頂戴。早くシャワーをあびたいの」
「かしこまりました」
店主はカンナとリンドウの荷物を手際良く部屋へと運び入れる。カンナは直ぐにベッドへ飛び込みたい衝動をなんとか抑え、衣服を乱暴に脱ぎ捨ててシャワールームへと入って行った。
◆◆◆
自身の瞳の色が目立つのを嫌っていたのだろうか。リンドウは左右に細長い四角いサングラスを掛けて観光の売店で適当なTシャツと半パンを買い、洗濯物をランドリーに放り込むと買い出しに出かける。ブッキーは久しぶりの街並みに興味津々で辺りを見渡していた。
「取り敢えずフレンドリィショップで薬だ。あとはハーブ店によって希少なハーブを買おう」
ブッキーはキュッキュと鼻を鳴らして彼に答える。
「それにしても、お金を使って買い物も久しぶりだな。正直言うと根の島でずっと暮らすと思ってたから紙幣なんてただの紙切れくらいにしか思ってなかったんだけど」
まぁそれは良いとして━━
「どうだブッキー。フリーザーを感じるか?」
ブッキーは頷く。一瞬だけ月輪紋が光った気がした。
「やはり近いか....初見殺しの相手にどうやって生き残るか。相手は氷だ。どんなタイプにも攻撃は通る。しかも縁を通じてな」
どうしたもんかねぇ...
リンドウは気だる気に溜め息をつく。
「見たら死ぬ...か。いや、待てよ。見た者は確かに死ぬ。でもそれは、同時に相手にも見られているって事か?だとしたら....」
口元がニヤリと緩み、普段はタレ気味の目が鋭さを増す。
「方向性は決まったな。メンバーを選別する。いつもの"日課"を浜辺でやろう。取り敢えずホテルに戻って....」
ギィギィ!
「ん?」
彼が振り返った先にジュペッタがいた。両腕を振り回し、仕切りにホテルに行けとジェスチャーをしている。
「まさか!やらかしたんじゃないよな....」
リンドウは辟易としつつホテルへと駆けて行く。
◆◆◆
シャワーを浴び終えたカンナはバスローブに着替えた。脱ぎ散らかされた衣服は洗濯物として回収されたらしい。
「ふう、気持ちよかった」
そのままベッドへとダイブし、しばし柔らかで心地よいベッドの感触を謳歌する。だが、ふと気になる事があって起き上がると、リンドウのトランクへと目を向けた。
6匹以上の手持ちと、明らかに大量の荷物を所持しているのに溢れる様子を見せない不可解さ。
更にだ。
リンドウのポケモンはカンナの目から見ても戦い慣れていたしレベルもかなり高く見えた。しかし、彼自身を観察してみたもののジムバッジの存在を窺わせる物を所持していなかったのだ。
ポケモンは自身の力量が主人を超えると主とは見なさなくなる習性がある。故にジムバッジでの精神拘束が必須となるのだ。
ドラゴンタイプのポケモンには特に顕著であり、彼の手持ちにいるサザンドラなどは、進化レベルが高い事も相まって、進化と同時に暴走、主人を襲う事もある獰猛なポケモンだ。
故にバッジの所持はそのトレーナーの力量を量るうえでは必須となる。彼とのバトルを切望していたカンナにとってはどうしても知りたい事なのであった。
「す、少しくらい覗いても....いや、でも流石に悪いかしら。でも気になるわ」
誘惑に負けたカンナは少しだけトランクを覗いて見ることにする。ロックに手を掛け、開いた瞬間....
「え、あっ!ひゃああ!?」
彼女の身体がトランクへ吸い込まれた。
◆◆◆
リンドウはカンナの部屋へと飛び込もうとするも鍵が掛かって開かない。呼び掛けにも応じなかった。
「オイオイオイ。こりゃ間違いなくやってんなぁ....迂闊に歩き回ってないといいんだが」
「お客さんお早いお帰りで」
宿屋の店主だった。リンドウは店主の胸ぐらに掴み掛かる。
「おい!ちょっとトラブルなんだ。悪いがマスターキーで扉を開けてくれ!」
「と、トラブル!?一体なにが」
「一刻を争うんだ早くしてくれ!」
「わ、解りました!」
店主は急いで鍵を取り出してドアを開ける。飛び込む様に部屋へと入ったリンドウは眉を潜めた。
「誰もいませんよ?お客さん勘違いでは?」
「ん?あ、ああそうかもしれないな。お騒がせして申し訳ない」
店主は不機嫌そうに部屋を出ていった。
リンドウは辺りを見渡す。部屋の鍵はテーブルの上に置きっぱなしになっていた。
外出はしていない、私物もそのまま。だとすれば━━
彼の視線がトランクへと向けられる。ロックが解かれた形跡があった。
「全く...立て続けに勘弁してくれ」
大きな溜め息が部屋に響く。
「まぁ、このままにはしておけないよな」
険しい表情のリンドウはトランクを開いた。中には底が知れない闇が口を開けている。
「なぁジュペッタ!お前カンナと縁がある奴なんだろ?少し手伝ってくれよ」
ジュペッタは千切れんばかりに首を縦に振っていた。
◆◆◆
浮いている。直感的にそう思った。
いま自分が上なのか下なのかすら判別できない。果ての見えない暗闇の筈なのに自身の姿が見える。
「一体どこなの?」
言い知れぬ不安が彼女を包んだ。
「誰かいるの!!」
山びこの様に反響する声に答える者はいない。
試しに足をバタつかせて泳いでみる。だが、同じ場所で足掻いているだけで進んでいる気がしない。
「どうすればいいの....」
◆◆◆
部屋ではトランクをリンドウが見つめていた。開かれたトランクの闇を見つめて人差し指と親指を何か掴んでいる様に引っ張ったり伸ばしたりの動作をしている。
"縁"の手繰り寄せだ。
キクコであるなら、関係の薄い細い縁の紐をかなり長距離まで辿って行くことが出来るが、リンドウ自身にそこまでの力はない。況してやリンドウはフリーザーとの縁を繋がない為にカンナとの距離を置いているせいもあって彼女の居所を探ることが出来ないのだ。
そこでジュペッタの出番となる。
カンナと何らかの強い縁を持っているジュペッタを仲介するのだ。縁を辿ってカンナを発見したら、ジュペッタに呪いと言う縁で繋がっているリンドウが糸を引く。現時点でそれ以外にカンナをすくう手立てがないのである。
「急いでくれよジュペッタ」
額に汗が滲む。
◆◆◆
一体どのくらい時間が経ったのだろうか。
解らない。数十分である気がするし、数年である気もする。
とにかく、記憶が曖昧なのだ。いくら遡っても思い出されるのは暗闇だけ。まるで記憶に意図的な妨害を喰らっているかの様な不快感だけが心を支配していた。
「あれ?わたし、どうしてここにいるんだろう。思い出せない。でも、何故かもうどうでも良い気がする.....」
虚脱感が身体を覆って行く気がした。今は何故かどうしようもないくらい心地よく、なんだか眠たい。
◆◆◆
キー!キー!とブッキーが首を振る。リンドウ自身も同感であった。明らかに縁が薄くなっているの感じる。具体的に言うならカンナの顔を思い出せないのだ。
「まずいな。俺との縁が深くない"存在"をこのトランクは自動的に喰っちまう。全く!とんでもない曰く付き物品を掴ませやがってコガネシティの婆さんめ!」
リンドウは舌打ちをしつつイトマルの糸の様に細い糸を操る。
その時だった。ブッキーの月輪紋が反応したと同時にリンドウの脳内に記憶が甦ってくる。
「来た!見つけた.....ぞ」
ギロリ.....
殺意に満ちた冷たい赤い目が此方を見た気がした。
「ヤバい....『心の目』かっ!アイツ!逆探知して辿って来てる!急げジュペッタ!」
◆◆◆
眠い。とにかく何もかもを忘れて眠ってしまいたい。
最早その衝動に抗う事など出来はしなかった。力が全身から抜けて行き、心地よい温かさと闇が彼女を眠りへと誘おうとしている。
ギィギィギィギィ!
「うるさい。どうして邪魔をするの?もう少しで眠れそうなのに」
ギィギィ!ギィギィ!
「お願い。眠らせて....」
「ギィ!ギィギィギィ!」
「ん....」
自身の身体に何か冷たい何かが触れたと同時に、頭の中の黒いモヤが晴れて行く気がした。数ある思い出や不思議な体験。
そうだ。根の島での体験は正にこの世の裏側をこの目で体験した事なのだ。そして私はリンドウと共にあの場所を脱出して...
「━━!!」
そこまで記憶を辿って漸く思い出した。自身はリンドウのトランクの中に迷い混んでしまったのだと。
我にかえって辺りを見渡すとジュペッタが自身の手に何やら光る糸の様なものを巻つけていた。
「アナタはジュペッタ!?」
グキグキと音を鳴らして首を縦に降っている頷いているジュペッタの身体には、カンナの手に巻き付けたのと同じ光りの糸のが巻き付いており、しきりに手を振り回して糸が続く闇の彼方を指差している。
「付いて来いと言うの?」
カンナはしっかり糸を握ると、ジュペッタが糸を引っ張る。どんなに足掻いても進まなかった身体が滑るように動き出すのを感じた。
「この光る糸は、もしかして縁?手繰り寄せているのはリンドウなのね?」
ギギィ!とジュペッタが頷こうとしてその動きが止まった。その表情には焦りの様なものが滲み出ている。
カンナはジュペッタの焦る意味に気付いた。
彼女の手から伸びる糸が氷付き、徐々にジュペッタの方へと侵食擦るように伸びて行くのだ。
根の島を脱出する時、氷は関係の達を援護していた。いや、正確に言えばカンナを援護していたのだ。命の危機にあるカンナを━━
そして彼女を引き込もうとする島々や黒い人影達を氷付けにしてしまったのだ。
もし今回の事件がカンナを脅かすとアレが判断した場合、直接的な原因のトランクではなく、それを彼女に預けたリンドウ自身だと思っているのだとすれば、この縁の先にいるであろうリンドウは....
「そ、そんな!」
顔から血の気が引いて行くのを彼女は止められなかった。
◆◆◆
何故こんな事になった!とリンドウは歯噛みする。だが悔やんでも事態は好転などしないのだ。カンナを発見した確信が得られた以上、あとは全力で手繰り寄せるのみ。
『ジュペッタ!伝わるか?』
『ギィ!』
『お前も気付いてるな?ヤツが気付いた。縁を逆探知してるんだ。それがお前の所まで到達したらお陀仏になる。お前も俺の縁を手繰り寄せてくれ!その方が効率がいい』
『ギギィ!』
糸の反応が強くなると同時に、絶対零度の氷が忍び寄ってくる冷たい悪寒が身体を覆うのを何とか思考の片隅に寄せながら必死に手繰り寄せて行った。
「ジュペッタ!この糸を切って頂戴!そうすればリンドウは━━」
ゲギゲギィ!とジュペッタが不気味な軋み音を立てて首を横に振る『ダメだ!』と言いたいらしい。
「どうして!どうして諦めてくれないの!?もう、"私の前で誰かが凍る"のを見たくないのにっ!」
悲鳴に近い嘆きをぶつける。しかし、ジュペッタは目の前の糸を必死で手繰り寄せていた。
「アナタ、どうしてそこまでして....」
『君の帰りをいつまでも待っているからだよ』
「!」
カンナは目を丸くした。子供の様な声だった。その声は何処か優しく、温もりすらも感じられる。
ジュペッタと自身にどんな縁があるのかは解らない。しかし彼女は、信じてみようと思ったのだった。
いつの間にか糸の先には光が輝いている。恐らくは出口なのだろうが、氷は今にもジュペッタに届きそうだ。
カンナは祈る様な気持ちで拳を強く握った。
◆◆◆
近い!
勿論二つの意味でだ。カンナの救出と得たいの知れない冷たさの両方が同時に近付いてくる。
しかし、躊躇は時間を浪費させるのだ。ここは攻めるしかない。
必死に糸を手繰り寄せる。
「あれは!」
糸の先にカンナとジュペッタの姿を見た。カンナの手から伸びる氷がジュペッタに通達しようとしている。
「ちっ!」
リンドウは更に手繰り寄せる速度を上げ、そして━━
「うわっ!?」
カンナが悲鳴をあげながらトランクから飛び出した。リンドウはそれに構わずジュペッタに叫ぶ。
「ジュペッタ!まだ終わっちゃいない!俺を呪っている呪具をトランクの中に投げ捨てろ!」
ジュペッタは口の中から木槌と五寸釘を取り出した。なんと、半分以上が凍り始めている。
「おい!早くしろ!」
怒鳴り声に反応してジュペッタが呪具を投げ入れる。完全に凍り付けになった呪具から氷の手が伸びて来ていた。
「届かねぇよ」
彼はトランクの蓋を閉めてロックを掛ける。ガタガタとトランクが跳ね回るものの、暫くすると動かなくなった。
「終わったな」
安堵の表情がリンドウに浮かぶ。
「あ、あのっ!」
バスローブ姿のカンナは、申し訳無さそうに彼に顔を向ける。
「ご、ごめんなさい。私....」
「いいよ。説明してなかった俺の落ち度だ。まぁ、説明したとしても、結局は好奇心で開けてた気もするけど」
「う...」
「で?何で開けてのさ」
「気になる事が多すぎたのよ。もしかしたら、リンドウを知る手掛かりになると思って」
四天王ほどの実力者となれば、バトルの中でその者の本質を見極める事は容易いだろうが、確かにバトルも断ってしまった上に何も話さなかった事が彼女の強すぎる好奇心をくすぐってしまったのは事実なのであろう。
「解ったよ。流石に今回のは参った。参考になるかは解らないが、所持しているバッチでも見れば納得してくれるかい?」
「え?ええ....それなら良いのだけど、もしかしてトランクを開けるの?」
「そうだよ」
「ま、待って!そんなことしたら━━」
「安心しなよ。あの氷はもういない」
「どうしてそんな事が解るの?」
「このトランクは"縁を喰う"んだ」
リンドウはトランクをカンナの自身の間に引き寄せる。
「こいつはジョウトのコガネシティで手に入れた物だ。地下通路に薬草の出店を出してる『マダム・バーベナ』とか言う胡散臭い婆さんから貰った物でね、貴重なハーブや木の実の粉末を薬にするから譲ってくれと言われたんだ。代金の代わりに貰ったのがこの曰く付きのトランクだったのさ」
「曰く付き?」
カンナは首をかしげる
「ああ、とにかく何でも入るんだ。俺がポケモンセンターのパソコンを利用せずに6匹以上の手持ちを持ってるカラクリがこれさ。だが、コイツにはとんでもない力があってね。自分が興味ないとか人から貰ってあまり使わないとか縁が薄いものを取り込んじまう」
「え?」
「ほら、いつか何かに使うだろうって感じで小物入れに物を入れたりするだろう?優先度が低く、取り分け執着のない物は無くなっても気付かない。それと同じさ。トランクに何かは入れた気がする。でも何を入れたのかは覚えてない。コイツがその記憶や縁を喰ってるからさ」
「じゃあ!もしかしたらポケモンを入れたりしたらっ!」
だからさぁ━━
「縁が薄いとって言ったぜ?俺のポケモン達は捕まえたんじゃない。付いてきたんだ。自分からボールに入ったんだよ」
カンナは驚愕した。確かにそう言う事例はゼロではない。しかし、手持ちの全てがとなれば話は別だ。
野生のポケモンは、大なり小なり人間に警戒心を抱いている。モンスターボールはそんなポケモン達を一種の自己暗示状態にして、主人を自分と同種の上位存在と思い込ませる様に設計されているのだ。
故に、レベルが上がると暗示状態が希薄になって暴走する。それを抑止するためにジムバッジが存在しているのだ。
だが、リンドウはそれをせずにポケモンと触れ合うのだと言う。
具体例が彼の相棒であるブッキーだ。彼はブッキーをモンスターボールに入れようとはしていない。だがそれは暗示状態が解けてしまう事から推奨されていない行為なのだ。
思えば、今でこそ人目もあってブッキー以外をボールに入れているものの、根の島では殆どのポケモンを放し飼いにしていた。
それは彼等の絆の強さが強固であることを意味し、トランクに入れても縁を喰われる事はないと言うことでもある。
「ほら、バッチケースだよ」
カンナは彼から手渡されたケースを開く。
他地方を旅して来たせいか、見知らぬ物も多いがそれよりも気になったのがその数だ。
余りにも少ない。
カントーにおいての公認バッジは、グレーバッジとクリムゾンバッジの2つのみで、どちらもレベルに関する縛りのないバッジであった。
「ね?大した事はないだろ?俺はバトルに向いてないんだ。だからアンタの相手はしたくなかったんだよ」
正直に言えば落胆した。ポケモンとの連携は見事だったし、レベルも高い。リーグへの参加資格も当然あるのだろうと思っていただけに肩透かしを食らった気分だ。更に言えば、実力があるのに挑戦をしないのは、チャンピオンを目指して日々や努力を続けるトレーナー達への冒涜に等しい。
だが不思議と怒りは湧いて来なかった。
ポケモン達はとても幸せそうに見えたし、この世はバトルだけが全てではないと、彼と過ごした時間がそう言っていたからだ。
「いいえ、そんな事ないわ。見せてくれてありがとう」
ケースをリンドウに手渡す時、ページの一部が捲れてメダルの様なものが一瞬だけ見えた。
『ポケモンワールドトーナメント オールバトルクラス優勝 リン.....』
リンドウがケースをトランクへと放り込む。
疲れが出たのだろうか、カンナは急に眠気に襲われた。
「じゃあ俺は行くよ。明日の朝、港で会おう」
「ええ」
リンドウが部屋を出てすぐに、カンナは眠りに落ちた。
◆◆◆
リンドウは船着き場へと向かっている。その顔は不敵な笑みを浮かべていた。
「漸くオサラバだな。とんだ回り道をしてしまったよ」
港に着き、チケット売り場へと並ぶ。
「クチバ行きのチケットを"1枚"下さい」
「ありがとうございます。出発までロビーでお待ち下さい」
彼は椅子には座らず、喫煙コーナーで煙管に火をつけて紫煙を吐いた。その煙が消え去った所にジュペッタが浮いていた。血走った目でリンドウを睨んでいる。
「そんな目で見てもダメだぞ。もう呪いは解かれている、お前が俺を呪った呪具をトランクに放り投げた時にな」
ギギ、ゲギギィ!
「呪いたけりゃ呪えよ。2回やられるほど間抜けじゃない。今度は呪詛返しをする。跳ね返った呪いはお前を苦しめるか、お前と縁のあるカンナを苦しめるか。さてさてどうなるんだろうな。信じないなら試しに呪ってみるか?」
ググググ...!
ジュペッタは目から涙をボロボロと溢れさせて悔しそうな顔をしている。
「悪いな。でも俺にもやらなくちゃならない事がある。ここで足止めを喰らってる場合じゃないんだ」
「お客様!」
係の女性が慌ててこちらに駆けてくる。ジュペッタとのやり取りに気を取られていたが、辺りが何やら騒がしい。
「どうしたんです?」
「それが、シーギャロップ号は悪天候により暫くの間、運航を見合わせる事になりました」
「悪天候?」
「はい...詳細は調査中ですが、どうやら世ノ島周辺の海域が一面氷に覆われてしまって、その気温差で周辺で嵐が多発し船の運航が出来ないようなのです。チケット払い戻しは受付でお願いします」
「は、はい。解りました」
ジュペッタの顔を見ると満面の笑みを浮かべていた。それと全く対照的な表情を浮かべたリンドウは、荷物を手に船着き場を後にする。
「縁を辿れないなら直接殺すってことか。成る程....」
ジュペッタはリンドウにゾクリとするものを感じた。
いつもの気だるい表情は微塵も無く、凶暴性を秘めたどこまでも暗い顔。
「ジュペッタ、お前はカンナの所に戻ってろ。"予定どおり"明日の朝に船着き場で落ち合う。俺達は砂浜でやることがある」
ギロリと睨まれ、ジュペッタはやむ無く姿を消した。
「ポケモンは戦わせるもんじゃない。互いに導かせるものだ。神?悪魔?そんなの勝手。俺は俺のやりたいように全てを見て、感じて、そして生き抜くだけだ...」
リンドウの紫色の瞳とブッキーの月輪紋がギラギラと光っていた。
お読み頂きありがとうございます。次回は本拠地に入りたいですね
ポケットモンスター 冥
薬草カンポーのエキスパート 『マダム・バーベナ』
好きな花言葉『魔力』
戦闘開始の掛け声「ひっひっひっ!」
コガネシティの地下通路でであった
特性 曰くの付きの薫り
性格:読めない性格 笑い声が不気味
H 40
A 30
B 20
C 100
D 30
S 40
持ち物 巨大な鍋
技
ふっかつ草
万能粉
力の粉
力の根っこ