ハヤテのごとく!~another combat butler~ 作:バロックス(駄犬
「ビッグバトルドーム、アルティメットバトル?」
一同が白銀の言葉に呼応するように首を傾げると、白銀が嬉々とした表情で続けるのだ。
「そう! 今しがた、チームとなった二人でこのドームを動かすのだ! まず使用方法を説明しよう」
そう言うと白銀は手すり付近に設置されているコントローラーを握りボタンを一つ押した。 押したと同時に白銀の付近にある羽役物が大きく作動する。
「おおっ! なんてダイナミックな作り!」
「無論、連打をすることにより羽役物の高速可動が可能だ!」
目を輝かせるナギに対し、説明するように白金は続ける。
「この盤面はひたすら広い。 一人で二つの羽役物を動かすよりもう一人のペアで一つずつコントローラーをもって連携を取りながら役物を動かしてボールを弾いた方が良いのだ」
「なるほど、コントローラーが二つあるのはそのためだったんですね」
ハヤテも感心してコントローラーを手に取る。 見た目はW〇iについているヌンチャクにボタンをつけたようなものだ。 しかし、ここまでの手間を掛けて三時間なのだからこの白銀という男、底が知れない。
「では最後にルールだ。 従来の通りに中央に設置されている籠から大量のボールが落ちてくる。それを羽役物で弾いて相手のゴールにボールを入れていく。制限時間以内に誰がポイントを多く取れるかで勝負は決まる君たちにはそれぞれ持ちポイントがあり、最初は100ポイントだ・・・ゲームは三分後だ、皆、心して待つといい!」
白銀の真後ろに設置された巨大液晶から残りの時間がカウントダウンされた。 あの時間がゼロになったとき、決戦の火蓋が下ろされる。
ナギ・咲夜チーム
「ナギ、ここは幼馴染同士の最強タッグで蹴散らすで!」
「あぁ咲夜! 高橋名人ばりの連打技術をあいつらに見せてやるのだ!」
ハヤテ・マリアチーム
「さぁマリアさん、楽しんでいきましょう―――」
「ハヤテ君、無闇に連打して隙ができないようにお願いします。あと、タイミングを見計らって、障害物に当てながら軌道をずらしていきましょう」
「あ、あれ・・・マリアさん、ガチなんですか?」
「ええ、ガチですが・・・何か?」
テル・千里チーム
「王様、俺が左のコントローラー持つから!」
「いや、俺が左だ! 貴様は黙って右をもて!」
「なんでそんなに左にこだわるわけェ!?お前あれだろ! 右か左か選べって言われたら取り敢えず左選ぶタイプだろ! お前は右! 俺は左!」
「いや、お前が右だ!俺が左!」
相変わらず噛み合わないチームである。
白銀・黒羽チーム
「では黒羽お嬢、分からない所は私に聞いてくれ」
「分かりました。 でも、さっきの手順でいいのでしょうか」
「ああ、これさえ行っていれば上手いこと勝てるだろう」
「ついでに私、センスとか体力がないので・・・」
「ご安心を、弱点を補い、勝利に導くのも執事の役目・・・ついでに、最後の方では素敵な余興も用意してある。 楽しみにしているといい」
「・・・・?」
『バァトォルゥ、開始ィッ!』
カウントがゼロとなった瞬間、某世紀末アニメのナレーションの声と同時に究極の戦いが今始まった。
「うぉぉぉおおお!!」
「なんじゃこりゃあああ!!」
千里とテルが見たのは巨大ボール達が波のように襲い掛かってくる地獄の光景だった。
前の視界を覆い尽くすのではないだろうかという玉の大群が様々な角度から襲い掛かってくる。 羽役物の性能が良いためか、ある程度返すことができるものの数が数だ。 こぼれたボールは防ぎようがなく中に入ってしまう。
「こ、コイツはタイミングがシビアだぜ! ただ連打すればいいってもんじゃねぇ! 無限軌道から繰り出される玉に一つ一つタイミングを合わせて弾かないと球がどんどん入っていっちまう!」
「おい善立! さっきからボールがこっちに集中してきていないか!!」
何かの異変に気付いたのか、千里の言葉にテルがボールを弾きながら辺りを中止する。 よく見ると、ほかのチームのポイントは減ってはおらず、微動だにしない。
「おい、まさか狙われてるのか!?」
「ば、馬鹿な! こんな広い所でピンポイントに俺たちを狙うことってできるのかよ!?」
『いやぁ、それが以外とできるものでな』
突如、正面の巨大液晶にナギの顔が映し出される。
『上手いことに障害物となるベルとか風車があるだろ? ある一定のタイミングでそこに打ち込むと決められた方向に球が行く仕組みになっている。上手く利用すれば誰かを狙い撃ちすることなんて造作もない』
「ば、馬鹿! そんなどうやってお前わかったんだよ!」
液晶に向かって叫ぶテルにナギは表情を変えず淡々と言った。
『そりゃ計算すればできるだろ』
・・・忘れてた。 こいつそう言えば一応頭良かったんだ!
となるとだが、残りのチームはどう対応しているのか。 だが、そんな考えもすぐ失せてしまった。なぜなら向こうのチームには。
「ま、マリアさん・・・テルさんばかり狙うのは」なんでなんですか?」
「いやですねーハヤテ君、ここで私たちがターゲットを変えたらそれは空気読めないKYってやつですよ?流れのままに、あくまで流れのままにですわ♫」
天才的、なおかつ遊びに本気な最強メイド。
「白銀さん、この調子で宜しいですか?」
「完璧だ。 こういった作業は君に任せて正解だった。 寸分の狂いもない。 なぁに、君のようなハンデがいればこれくらいの戦術は用いても問題ないさ」
制作陣ことセコ執事たちがいるのだ。 これでは計算されて狙い撃ちされても仕方がない。
「だ、だとしても・・・この仕打ちはあんまりだァァァァァア!!」
まるで炎を操る古代人が腕を破壊された時のような顔でテルは叫んだ。 この世に神などいるわけがない。いるのは敵、全方位、敵のみ。
「王様! お前も一応白皇の生徒だろ! あいつら見たく角度計算して反撃してくれよ!」
このまま負けてなるものか。とテルは最後の望みを千里に託した。 帝王学を自ら学び、白皇学院に通う彼ならこの絶望的状況を打破できるはずだと・・だが。
「・・・・」
黙り込んだ千里にテルは額に汗を浮かべている彼を見て伺った。
「王様・・・まさか、こういう計算は苦手?」
「うぉおおおおおおおお!!!」
まるで何も聞こえなかったかのように千里はひたすらボタンを連打。 だがその連打も虚しく、数の暴力によりみるみるポイントが減らされていく。
「チクショー!脳筋でチームなんて組むんじゃなかったァ! こうなったのも全てあの白銀とか、いや、俺に敵対する全ての勢力のせいだァ!」
テルは自分たちのチームの残りの得点が既に半分になっているのを見て、覚悟を決めたようにコントローラーを手放した。
「おい! 善立、なぜコントローラーを破棄する! 勝利まで破棄する気か!?」
傍から見れば、敗北を受け入れるようだと思うのは当然だ。 だが、テルはゆっくりと振り返る。 そこにはいつもの悪い笑みを浮かべた彼の顔があった。
「馬鹿言っちゃいけねぇよ。 頭が悪くても俺らには俺らのやり方がある! ついでに、向こうがワルなら・・・俺たちはその上を行くワルになる」
そう言いながら彼はポケットに手を入れてもう片方のコントローラーを千里へ手渡した。
「貴様ら全員、駆逐してやる!」
〇
・・・最初にテルくん達を狙撃しちゃったのは少しかわいそうでしたか。
向こうで反撃の狼煙を上げていることも知らないマリア。 ゲーム開始早々に偶然とは言え、テルのチームを袋叩きにする結果となったことには少々心が痛んだ。
・・・残り時間を考えると、そろそろ別のチームから攻撃が来そうですが。
マリアがそう懸念していた時だ。 不意に目の前にボールが飛んできた。 一発ではない。 数は三発。 その全てが羽役物をすり抜けてゴールへと入った。
「なっ・・!」
「これは一体どこから・・・?」
マリアとハヤテは自分たちの点数が初めて減少したのを確認し、再び視線を前へと向けた。 よく見ると以前ボールはテルたちのチームに集中しているが、同時に大量のボールがほ散乱していた。
・・・向かったボールが殆ど返されている、一体これはどうやって?羽役物だけじゃあの数は捌ききれない!
「ま、まさか!?」
ハヤテが何かに気付いたようにテルたちのチームへと視線を向けた。 そこにはなんと
「どおぉりゃああ!!」
向かってくるボールを鉄パイプで打ち返しているテルの姿があった。
「そう、真にこのゲームを制する方法・・・それは、俺自身が羽役物になることだったんだ」
「どういうことだ?」
千里が険しい顔で聞いてくるがテルは鼻で笑って次々と来るボールを愛刀撃鉄で打ち返していく。
テルが弾いたボールが他のチームが放つ射線に入り、その射線を通るボールがお互いに弾き合った結果、全てのボールを邪魔してランダムに散乱するようになったのだ。
「ふむ・・・身を使って遊びにあそこまでするか。 噂通りと言ったところか」
「まったく・・・」
遠くで果敢にもボールを弾き飛ばしていくテルを見据えて、コントローラーを作動させながら白銀は呟く。
隣にいる黒羽も呆れたような口調で言うのだ。
「負けず嫌いのとこう言った小さな事でムキになるのは相変わらずです。 袋叩きは嫌だったのでしょうね」
「というと?」
「以前、スマブラでファルコン三体とオリマーでテルを袋たたきにしたものですから。流石に二回目は耐えられないでしょうね。 煽り耐性低いですから」
「言ってくれるねぇ・・・とはいえ、反撃されるとは思わなかったな」
少しだけ、白銀は驚いていた。 よく見ると、テルの弾き方はちゃんと反撃に転じているものであった。 弾いたボールで場を撹乱させ、自分らだけでなく全体へと攻撃する。 そしてボールを叩きつけるように弾くことで大きくバウンドしたボールは羽役物の上を超えてゴールへとシュートされていく。
「くぉらぁ! テル、それは卑怯だろ!」
「そこまでする必要あるんかこのボケェ!!」
液晶画面にナギと咲夜が怒りを露にして映りだした。 今にも画面から飛び出てきそうである。
「勝てばいいんだァ!! 今は悪魔が微笑む時代なんだぜェ!!」
しかし、この執事は外道。 勝つためならどんな手段でも使って勝とうとするまる世紀末漫画、羅漢擊の使い手の如く彼は高らかに笑うのであった。
そんなやり取りも束の間、テルが止めとばかりにナギたちの方へ最後のボールをシュートさせた。 その瞬間、脱落を知らせる激しいブザー音が鳴り響く。
「やったぞ善立! 反撃成功だ!」
劣勢から一気に巻き返すことで顔をしかめていた千里も声量が変わる。 彼もひたすら連打を行ってテルのこぼしたボールをうまく弾いてくれた。
「まだまだだぜ王様、こんな支配じゃ生温い、ぬるいぬるい、ぬるすぎるッ! 次はマリアさん達だ!今からでも十分逆転可能だぜ!」
二人が次の狙いをマリアたちに絞ろうとした瞬間、二人の動きが止まった。 突如として脱落を告げるブザーが鳴り響いたからだ。
「な、なんだ!?」
慌ててテルが確認すると、そこにはポイントをゼロにされ、脱落してしまったマリアとハヤテチームの姿があった。
「くっ、いつの間にこちらを狙い撃ちしていたとは・・・」
コントローラーを置き、不覚をとってしまったという表情のマリア。 その視線の先には白銀と黒羽チームだ。
「フッ、戦いは柔軟な思考をもって当たるべし。 この状況を作るために狙いを変えさせてもらったよマリアさん。 そしてありがとう黒羽嬢、君の正確な計算の元、手ごわいマリアさん達を倒すことができた」
小さく笑みを浮かべて白銀は呟く。 そして横の黒羽に対し最大限の感謝を述べると彼女はいつもの表情でコントローラを動かしながら彼の顔を見る。
「いえ、朝飯前だ・・・とでも言っておきましょうか。 これでマリアさんに一つだけ上手いこと勝てる要素が見つかったのではないかと、私の自信へと繋がります」
「そ、そうか・・・よほど日頃劣等感を感じるようなことがあったのか。 ま、この状況を作り出せたのは好都合、黒羽嬢」
と、彼はコントローラーを黒羽に渡す。
「・・・?」
突然の事に訳が分からず、ただ渡されたままにコントローラーを受け取る黒羽に構わず白銀は続ける。
「私は確か言ったな、『素敵な余興をお見せしよう』と」
ニヤリと笑った彼はすぐさま視線をテルたちへと戻して液晶画面を駆使して言った。
『テル、と言ったか・・・一騎打ちという結果になってしまったが、ここで一つ提案がある』
〇
「提案?」
目の前の液晶画面に映し出された白銀を見据えたテルに、白銀は続けた。
『最後にただ時間を持て余してただ打ち合うのではつまらない。 だからこうしよう、負けた者は勝った者の命令をなんでも聞くというのはどうだろう?』
「はっ?」
少し威圧感を込めた一言に対し、彼はその表情を崩さず続けた。
「なに、そこまで酷い事はしない。 三千院家と愛沢家が双方納得できる無理のないレベルの命令だ」
・・・何を企んでる?
明らかに無理ある命令を出すのが丸分かりだ。ほぼ直感だが、テルの野性的直感は結構当たる。当然、その本能に従い、彼は断るはずであった。
「悪いが野郎の誘いに乗るつもりは――――」
「いいのか? いつまでも私に見せ付けられていて」
その一言が耳に刺さり、テルの言葉が区切られた。
「ここで一つ勝てる要素を見つけておかないと、これから私が来るたびに常に比べられると思うが?」
いいのかい?と悟らせるようなその笑みを見て、テルは口元を引きつらせる笑みを浮かべていた。
「いいぜぇ? 別に見せ付けられるのなんともねーしぃ? でもこれ一応勝負だからぁ? アンタがどうしてもって言うから仕方なくだしぃ?」
・・・煽り耐性低いな。
と自らの提示した条件に乗ってくれたのを感謝するとともにテルの煽り耐性の低さに呆れる白銀だった。
『では最後の決戦をしよう・・・と、その前に我々に少しハンデをくれないか?』
「ハンデ?」
『ああ、君はどうやらあまり必要のない要素の戦闘できる執事らしいから、そういう力技ができるのだろうが、こちらは生憎そういうのができないのでね、ちょっとした戦術を使わせてもらってもいいだろうか?』
・・・戦術だと?
テルは考える。 今までに制作した本人による攻略法を駆使して点を削ってきたのに、ここで加えて戦術を用いる必要があるのだろうか。 本来なら深く考えるべきだったが。
「いいぜ」
彼は心境は先程の白金の挑発で冷静な判断をくだせていなかった。 簡単にもその案を通してしまう。
「いいのか善立?」
睨むように、千里がこちらに訪ねるがテルはへらっと笑って返した。
「構わねぇよ。 こっちが勝てばそれでいいんだから」
『では、了承を得た。これより最終決戦を行う』
〇
「フゥ―――――ッ」
液晶画面から白銀は姿を消した後で小さく、そして長く息を吐いた。
・・・上手いこと、ここまで持って来れた。 私にとって、この先を左右する一つのポイントが・・・ここだ。
目を閉じて、意識を集中させる。 一瞬、失敗という不安が肩の動きを鈍くした。力が入っているからだろうか。
「白銀さん、何やら肩に力が入っていると見受けられます」
こちらを気にかける・・・とは程遠い黒羽の無機質な声が聞こえ、彼は反応する。
「所詮、遊びなんですから。 楽しまなければ損損・・・あの野蛮人には少しお灸を据えてやらなければなりません」
「・・・・」
ふと、白銀は我に返った。 一瞬、自身が作り上げた天井を見上げて迷いを捨てるべく息を吸い、吐く。目の前の少女に気づかれないようにだ。
「いやぁ、勝負事にはどうやら弱いらしくて・・・威勢良く啖呵を切ったのは良いものの、一瞬緊張していたようだ・・・」
先程の緊張をそよ風と感じるかのように、彼は本来の落ち着きを取り戻した。 やれることはやっておかなくてはならない。 今は目の前の事に集中するのだ。
「では黒羽嬢、これをつけてくれ」
「・・・・これは、耳あて?」
黒羽に渡されたのは黒の耳あてであった。
「ただの耳あてではない。これはイヤーマフと言いい、耳あてと耳栓もできる物だ。 軍隊の射撃訓練などでよく使われているらしい・・・ちょっとこれから必要になるからつけ―――――」
「・・・?」
既に黒羽はイヤーマフを説明される前に装着。 なので、白銀の言葉は彼女にはまったく届いていない。理解できないといった表情である。
「まぁ、いいだろう」
「おーい! まだかよー!」
と、準備が整ったと同時に遠くでテルが叫んでいた。 やれやれこれだから血の気の多い奴は困る。と内心で苛立ちを抑えながら平静を装いつつ、彼らと向き合う。
「いいだろう。 ならば、ここからは私の全力の戦術を・・・お見せしよう!」
ゴンッ。
と、鈍い音と共に黒の細長い筒が白銀の足元に現れる。 筒からさらに一本の物体を取り出し、テルはそれを確認して絶句した。
「オイィィィイ!」
「どうした?」
「どうしたもこうしたもあるかァ! なんでそんな物騒な銃持ってきてんだよォ!!?」
筒から取り出された黒い物体、それは長く、そしてごつい形状をした銃であった。 一方の持ち主である白銀は何食わぬ顔でそれを組み立てると、こちらに向けて構えてみせた。
「これが我々の戦術、もといタクティクスだ」
「タクティクス(物理)じゃねぇか!!」
テルから容赦ないツッコミが入るが、彼は物ともしない。
「君だって了承したはずだ。 大丈夫だ、射撃の腕には自身がある」
・・・そういう問題じゃねぇって。
心の中で再びツッこんで見るものの、白銀にまんまとハメられたとテルは悟った。 そうしている間にもゲームが再開され、止まっていた時間が動き出す。
ならば、とテルは動いた。先手必勝、相手のポイントは削りきれてないし、時間を考えると攻撃に時間を費やしたほうが良い。
「ボールを相手のゴールにシュウウウウウ!!」
向かってきたボールの一つを撃鉄で打ち返す。 盤面を転がっていた幾つかのボールにも当たり、反射を繰り返して三つのボールが奇跡的に白銀達の方へと向かっていく。
「おお、三つ揃ってなんとやら・・・上手いこと捌くとするか」
だがこの三つの軌道、バラバラなのでそれでこそピンポイントに射撃をしなければ捌くどころかヘタをすれば点を取られることになる。
・・・鈍っていなければ問題ないのだが。
と銃を握った感触がマッチしたのを見て、彼は確信した。 直感的にいけると。
迫ってくるボールを冷静な瞳で捉えると彼は持っていたケロベロスを構えて狙いを定める。そして一瞬ほど考えたあと引き金に指を掛けて
「では」
第一射。 狙ったのは三つのうち右側のボール、掠めるように端に当ててボールの軌道を変更。
「次」
第二射。 次は一番手前のボールを狙い、当てて、軌道をずらして後ろのボールへと当てさせた。 こうした結果、すべてのボールはゴールへまっすぐ向かうことはなく羽役物の可動のみで十分対処可能となった。
「いやぁ、無茶苦茶だよ。 何アレ?コマンドー?」
呆気にとられているテルの目の前にボールがやってくる。これをまた同じく打ち返したのだが。
「なっ!?」
ボールを弾いたのにすぐその後ろからもう一つのボールが現れる。タイミングを狂わされたこともあり、ボールはテルを下敷きにしてゴールへとシュート。
「なんだこの軌道ッ!?」
千里も羽役物で弾こうとしたが、ちょうど二つの羽役物の間にある絶対の死角に球が入ってしまったため、為すすべがなかった。
それからというものの、ボールは真っ直ぐにピンポイントでその羽根物の死角を目掛けて飛んでくる。確率はどれくらいのものだろうかと、殆どの人間が疑念を抱いていた。 そう、白銀を除いて。
・・・良好だ。
目の前の光景を見て、手応えを感じながら、彼はそう思う。 今テルが苦戦しているこの軌道は全て偶然ではない。 全て、白銀による精密射撃が可能にしていた。
一つのボールの軌道を変えて他のボールへとぶつけて相手のゴールの中央へ向かわせる。 傍から見ればイカれてると思っても仕方がない。 だが、他の役物の特性、跳ね具合など全て計算に入れた射撃が彼、白銀 拓斗にはできる。
・・・だが、彼もしぶとい。
そう言って彼はテルを見据える。 先程から大量失点しているものの、相変わらず来るボールは零しはあるものの打ち返している。 まだ諦めていないようだ。
・・・まだあんな目をしている。
逆転可能だ、まだこれから、終わっていない。そんな意思が滲んで出るような瞳だ。
「チッ」
忌々しそうにそう舌打ちをして彼は最後の仕上げに入る。 何も抵抗出来ないくらいに一瞬で決める。 そう決めて彼は銃を構え、狙撃した。
「ぬおおおおお!なんじゃこりゃああああ!」
軌道をずらし、ゴールへと確実に入るように調整されたボールを数珠つなぎになるのではないかという位に一直線になったボールがテルたちへと迫る。
その数十。 一つでも弾こうとテルが撃鉄をぶつけるがその一瞬で後ろのボールがぶつかり合って威力が増大し、一気にテルを押し込む。これを入れられたら、テルたちは終わりだ。
・・・落ちろ、落ちたな。
連結されたこの力に抗う術など存在しないと、勝利を確信した白銀だったがそれは予想外の結果をもたらす。
「おおおおおおおおおおお!!」
叫びとともに彼は耐えていた。 力の限り、鉄パイプで受け、その二本の脚でその勢いを殺している。 やがてボールは勢いを完全に殺し、力なくすべてのボールが辺りに転がった。
・・・なんて奴だ。 力技だけでなんとかできるものか?数個だけ弾くだけならまだしも。やはり、潜在能力だけは馬鹿にできないようださすが・・・。
と最後に出かけたその一言を胸にしまった。 今は全ての筋書きを揃えて進めることが大切だ。
「王様! まだやれる余力はあるだろうな? こんなんで負けたら王族の名に傷が付くぞ!」
「そんな小さな猫に引っ掻かれたような傷ごとき、いくら付けられても効かぬわ! 貴様こそ、この程度で根をあげた訳ではないだろうな」
「当然よ・・・なら」
行くぜ。 とテルと千里が勢い良く構えた瞬間。
ブッ―――――――!!。
甲高いサイレンに、二人は身を固めた。 いや、二人だけではない。 その場にいた全員が唖然としただろう。
「ちょ、え? アレ? 」
鳴り響いたのは、制限時間が無くなったという事を知らせる・・・試合終了のサイレンだった。 遠くでその瞬間が確認できたことを理解した白銀は静かにケロベロスを構えていたのを下ろし、安堵した。
「点差は圧倒的・・・とまではいかないな。 我々もいつのまにか29ポイントしか無かったとは。 いやぁ、君たちも頑張ったよ残り8ポイントじゃないか。 うん、踏ん張った踏ん張った」
うんうん、と両腕を組んで頷いている白銀など気にも止めずサイレンが鳴ってからずっとフリーズの状態を貫いていたテルだったが遂にそのフリーズを解いた。状況を確認し、夢か現実かの区別をしっかり脳内で行い、頬を抓っても、変化しない点数と遠くでナギが咲夜と一緒に『YOU LOSE』という画用紙を掲げていたのを書くにし、これは現実なんだと受け入れて、彼は絶叫した。
さて、無事投稿することが出来ました。 白銀さんが思わせぶりな不穏な動き、どう物語に響いていくか注目です。 さて、敗北したテルを待ち受けているその命令とは!?