ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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無言の投稿(たしか二回目)


第128話~白銀拓斗は人間を辞めたようです~

 男が世界の果てに得た物は、ある意味一つの答えだった。 それは、自身の我を通して尚、変えられない運命というものがあるということである。

 

 まさしく己の人生がそういうものだったと理解することは簡単だった。 自分が犯した”過ち”の後で、己が身を持って味わったからだ。

 

 その過ちを清算、または償うというのだろうか、その為に男が取った行動は世界の果てまで旅をすることだ。 勿論、気ままな風来坊気取りで一人旅を希望していたのだが、どこぞの関西人の付き人がおせっかいを働かせて、学業を放棄する一歩手前までして付いてきた。

 

 何をする事もなければ、何かを成し遂げるのだという目的のある旅でもない。 ただ男は少しでも、”この救われた命”を、与えられた”呪い”を有効活用する為に、世界を渡り歩くことを考えたのだ。

 

 

 与えられた”命”と”呪い”後者は人間を超越した力である。 それを持ってしまえば、自然と欲というものが生まれた。

 

―――――どうしてこんなものが手に入ってしまった。

 

 

 身に着けた”呪い”とはその名に相応しく、己の身に不幸を及ぼした。 とにかく、ロクな想い出はない。

東西南北、あらゆる地方へ飛んで行っては、数々の国の諸事情に巻き込まれていく。 時には命のやり取りまでも強いられる旅路。

 

 

 戦火、飢饉、病魔、政治。 あらゆる要素がこちらの命を奪いにやってくるが、自身は死ぬことはなかった。

 

 

――――否、”死ぬことはできなかった”。

 

 与えられた運命から逃さぬように、永遠の螺旋階段を上り続けさせるように、自身は命を落とすことはできなかった。

 

 

 

 道中、何度死のうかと思った事だろう。 正直、嫌な物を見すぎた。 そのせいだろうか、髪の毛は精神的な原因により白髪へ、眼の網膜は強力な爆弾の熱風により焼かれ、全身の肌の色は強力な紫外線を受けて変貌した。

 

―――――そして、何より心が圧倒的に擦り減っていた。 

 

 

 嫌な物とは、数えきれないほどもある。 それはかつての学友たちの死も含まれている。それは自身が原因であるということも。 最初は心が痛かった。身が引き裂かれるかのような痛みだ。

 

 だが、人間とは”慣れ”という非常に無慈悲な機能を持っている。 死ぬ者を見すぎた結果、自身は傷による痛みすらも、心の痛みすらも感じなくなってしまった。

 

 

 男は自身の笑顔にさえ、今はしっかり、心の底から笑えているという確信も持てないほど、人間的な機能を失っていた。

 

 

 男を追っていた敵は抽象的にいうと、”世界”だった。 組織的な物でもない。 ただ自分を取り巻くその”世界”が己を全力で排除しにかかってきた。

 

 自分は死なないが、周りはそうではない。 自分の身代わりになるように、自分に関わって来た殆どの人間が死んでいくのは見るにも、聞くにも堪えない、だがもうそれも殆ど感じない。

 

 

 

ある日、どこかの崖の上で快晴の元、景色を眺めていた時、ふと思った。

 

 

―――――どうして、こうなってしまったッッ!!

 

 

 答えなどは明白だ。 口に出さずとも分かっている。

全ては”あの日”、己が導き出した選択がこの絶望した未来を作り出したのだ。

 

 明日なんて来なければよい、こんな結末は絶対にあってはならない。 

悲痛な叫びと共に、崖から身を投げた。 どうせ死ぬことはないのに無駄なことをする、と男は思っただろう。

 

 

 

 

 

 

―――――だが無駄ではなかった。

 

 

 

 

 気づけば、そこは自然生い茂る林の中。 印象的だったのは目の前に冷たくなっている人間が居たということだ。

 

 外傷は全く持ってない。 死んだ理由は持病の悪化だろうか。 

死体はそのまま放置していた。 自分がいるその国では日常茶飯事な光景だ。 せいぜい祈ってやるぐらいが精いっぱいで、それ以上そこに留まる事は、その国では”死”を意味するからだ。 

 

 速やかに林を駆け、驚愕したことがある。 平らなコンクリートの感触に一瞬躓きかけて、いつの間に市街地へと出たのかと思った男が見たものは。

 

 

 

―――――かつて男が暮らしていた国、日本だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第128話~白銀拓斗は人間を辞めていたようです~

 

 

 

 

 

 

 

 桂ヒナギクは、忽然と姿を現した白銀拓斗に正宗を構えなおしていた。

 

「そんな要求、私たちが素直に聞くとでも思ってるのかしら?」

 

「無論、聞き入れてもらえない条件なのは分かっているつもりだ。 だが時間が惜しい・・・・最悪、黒羽嬢だけ渡してもらえればそれでよい」

 

白銀はうっすらと笑って、淡々と説明をするがこれを聞いてヒナギクは全く持ってこれが未来のテルだという実感が湧かない。あまりにも、現在と未来とで性格がかけ離れているからだ。

 

「だが、恐れ入ったよ。 まさか、伊澄と咲夜の術が解けることになるとはな。 おかげで味方はこれで私だけだ・・・・」

 

 

自嘲気味にそう言って、白銀は殺意など全く見せない状態だった。 それは自然体というものである。 だが徹底的に隙というものをなくしているからか、こちらが全く踏み込むタイミングがつかめなかった。 

 

 

「ヒナギクさん、この人・・・・・」

 

「ええ、読めないのは相変わらずだけど、ここまで強そうに見えるなんて思わなかったわ」

 

 隣のハヤテもその異常性は察知しているようだ。 嫌な汗を通して伝える事は、こちらが隙を見せたら物の数秒、殺されるのではないかと言うもの。

 

 だが、ここで怖気づくのは相手の思うつぼであろう。 今は後ろの伊澄が援護してくれるが、霊力の消耗からか息が若干荒い。 黒羽を護るには逃げるという選択肢を虚無の彼方へ葬り去り、相手を逆に仕留めるくらいの器量で挑まなければならない。

 

 現在、ヒナギクたちが置かれている状況はそういった不利な状況である。 

策を練るしかない、そう思っていた矢先のことだ。

 

「ではこちらから行くとしよう・・・・・!!」

 

 白銀拓斗は単身で、怪物達を使うこともなくこちらへ飛び込んできたのだ。 丸腰、何か武器を携帯しているようには見えない。 

 

慌ててヒナギクも前へ出ようとした時、自身の真横を駆け抜けていく一人の男が居た。

 

 

「ハヤテくんッ!!」

 

 

綾崎ハヤテが丸太を持って白銀拓斗へと迫っていた。

 

 

 

 

 

 白銀拓斗が前へ飛び出すために身を屈める動作を見た綾崎ハヤテは、一つの動作を生み出していた。

それは単純に”前へ出る”ことである。

 

・・・・・標的は出来れば、こちらに絞らせてください。

 

 そう思う理由はただ一つ、ヒナギクや伊澄、黒羽への被害を考えたためだった。 それはハヤテの執事としての性だろうか、常に誰か大切な人を護るという事を念頭に活動するハヤテにとっては自然な行動かもしれない。

 

 

 狙うのは相手の機動力。 丸太を構えて、目線は白銀の脚へと定められていた。 初速は圧倒的にこちらが上だ。 それ故に威力が桁違いである。 最悪、足場だけでも破壊して逃げ場を一つに絞らせる。 そこを仕留める、これがハヤテの狙いだった。

 

「手ぬるいのではないのか、ハヤテ」

 

だが丸太を突き出す瞬間、ハヤテは不敵な笑みを浮かべた白銀を見た。

 

 

 

 

突き出された丸太の一撃はその大地を深く抉った。地面のコンクリートは丸太が突き刺さるというより、”割る”と言った印象が強く、水面を真上から叩いたかの如く、空中にコンクリートの破片が飛び散った。

 

 

ハヤテは外した事にさほど疑問は持たなかった。 彼ほどの身体能力の異常性は分かっていたのでこれくらいできても驚かない。 それよりもすぐに目で白銀の姿を追う、がその行く先は空中である。

 

 

ドンピシャ、前へ出て白銀を迎撃する際にハヤテが描いていた理想の展開。 空中ならば逃げ場は絞られる。 体中にジェットパックでも付いていない限り、その体制からの回避は困難だ。

 

 

「眠っていてくださいよッッ!!」

 

 

 足を大地に根付くように構えて丸太の先を宙に浮かぶ白銀へと向ける。 ここでも狙うのは急所ではなく、腹部だ。 タフな男だとは知っている。 だからこそ、全力でやらなければならない。 だがその行動に迷いなど無かった。 ハヤテにとっての友人たちが狙われているのだ。 今はハヤテは顔では冷静を装っていても、内心では怒っているのだ。

 

 

 咲夜や伊澄を利用してこの時代のテルの暗殺を謀るという卑劣な手段、今のテルからでは考えられないようなこの変貌。 その領域に至った理由は何故なのか。 何がそこまで、彼を変えてしまったのか。

 

 

その真実を知るために、ハヤテは丸太を白銀へと打ち出した。 さながら初代ガンダムのラストシーンでジオングを撃ち落とすかのようなラストショット。

 

 

「ふぅ」

 

 またしても、白銀は笑う。 直後に、ハヤテは自身の目では信じられない物を見た。

 

「やはりお前は、一番強敵な男だ」

 

空中の何もない空間を蹴り、丸太を回避したのだ。

 

 

 

 

「空中だけに私を逃せば仕留められると思ったか? 残念、それでは猿も仕留められないぞ。 せいぜい倒せてカエルくらいだ」

 

 鮮やかにハヤテの背後へと着地を決めた白銀は余裕たっぷりにこちらへと挑発した。 だが、その前にハヤテは先ほどの一瞬の出来事をビデオテープでリプレイするかの如く思い返し、一言。

 

 

「テルさん、いつからロックマンになったんです?」

 

 まさに、秘密のパーツを手に入れた岩男のような二段ジャンプだった。 最初は、ただ宙に浮いているだけだった。だが、確かに白銀は空中に足を着いて”着地”をし、そこから力強く蹴って丸太を躱したのである。

 

「こんな空間とか式神を扱えるようになっているんだ。 ”空気を魔力で固定した足場”を作る事くらい造作もないと思え」

 

 

 

 ロックマンかと思ったら、実はダンテだった。 と、ハヤテは苦笑いで応じた。 魔力って凄い、その内ロックバスターとかもできるのではないか。

 

「だが、これもなかなか難しい。 空間を固定する際に座標と体積の計算をミスって私の脚を固定してしまうという珍事になりえるのだ」

 

自嘲気味に言うのは、体験談があるのからか。 今度は本気で笑いかけたハヤテである。

 

「・・・・・だが、私の考えは誤りがあった。 流石だハヤテ、私は挟まれてしまったぞ」

 

 

白銀の余裕綽綽といった表情の背後に立つのは正宗を持って再び突進してきたヒナギクだった。

 

 

「ハヤテくん、構わず脚を狙って! 私は頭を叩くからッ!!」

 

 

 

 

桂ヒナギクの、頭を叩くという表現には若干語弊がある。ハヤテが足を封じる為の攻撃に対して、ヒナギクの頭を狙うという目的は叩くというより、叩き斬るという殺気を持ったものだった。

 

 どこぞのゲームの岩男のような二段ジャンプからその異質な強さを感じ取ったヒナギクは、ハヤテ一人では危険な存在だという事を理解したうえで行動を起こしている。 

 丁度白銀の真後ろに陣取っていたことが幸いし、こちらはハヤテと挟撃という形で、そのタイミングを合わせる。

 

「私を無視して盛り上がらないでくれるかしら」

 

最大のポイントは戦闘職であるにも関わらず、全く持って蚊帳の外だったということだ。 ハヤテの独断で一対一を持ち出されたのはまだ善しとしよう。 だが、別の捉え方をすれば女性だけをハブにするというものだ。 ヒナギクはそれが許せなかったのである。

 

 

「まったくもって恐れいる。 実に力強い、君らしい攻めだ」

 

「褒めてくれてありがとう」

 

「皮肉で言ってるのだがな」

 

 眼前の白銀はハヤテを無視してヒナギクの方へと視線を移した。 それを見て、白銀の後方のハヤテはここぞとばかりに距離を詰める。 

 丸太を構えたハヤテが図ったかのように挟撃を仕掛ける。 それを見て、合わせないヒナギクではない。 だが、ただ二人で同時に仕掛けてはお互いの攻撃を食らうという馬鹿らしいほどのリスクがある。 それを考えると、闇雲に突っ込むわけにはいかないのだ。

 

 

 だが、ヒナギクのパートナーであるハヤテは恐らくテレパスなどでも体得してるかもしれないほどに、”こういった”場面だけは他人の思考を読むことができる。 ぶっつけ本番でもその無理難題をやってのけてくれるほどにだ。

 

 そのやり取りは既に始まっている。

 

 

 

 

「テルさんッ」

 

ハヤテの合図と言える言葉に白銀の肩が震えた。 その狙いが分かっているのか、ハヤテが突き出した強烈な丸太による突きを後ろを確認することもなく。

 

 

「まだ甘いのだ」

 

躱す。 今度は最低限の、こちらの腰の高さまでジャンプしてだ。 だがハヤテは今度こそ、と取った行動は全身を大きく捻って力任せにフルスイング。 これで軌道修正を行い、白銀を狙いに行く。

 

 

だが、これもまだ足りない。 今度は謎の二段ジャンプだ。 その正体は魔力で空気を固めて見えない足場を使ってジャンプさせるというものだ。 どこのファンタジー世界の設定だ。 

 

空高く逃げた白銀は地面のハヤテを見てあざ笑った。 距離にして数十メートル以上。 丸太を抱えたハヤテでは届かないだろう。

 

だが空の白銀に対してハヤテが見せたのは不敵な笑みだった。

 

 

「ハヤテくんッ! 上出来よッ!!」

 

眼下から響いた声はヒナギクのもの。 宙に浮いた白銀へと迫っているその姿はほぼ一メートルと距離はない。

 

「驚いた・・・・・」

 

 やはり、ハヤテとヒナギクは対を成すほどの強敵であるということは理解できている。 それは過去の記憶からでも十分に警戒すべきものだと。 だが予想以上に、と言った所だろう。 

 

「私の作った足場を利用してここまでの跳躍をッッ」

 

思い返せば、挟撃と言う手段に入った時にハヤテが最初にこちらに呼びかけて攻撃してきたかの意味がようやく理解できた。

 

もう一度こちらに注意を惹かせるためだ。 そして、同じように白銀を空へと逃がす。 同じパターンだと油断させるように、白銀はまんまと嵌った。

 

 そして数十メートルほど跳躍して見せた白銀の作り出した魔力の脚場を利用して、ヒナギクはこちらに迫ったのだ。 正直、この魔力の足場は術者にすらその姿を認識できない。 最初扱うにしても場所が分からず、崖を渡ろうとした時は何度か足を踏み外していた。

 

慣れるのにも相当時間がかかるというのに、ヒナギクはそれを物ともせず一度で見えない足場を認識して、それを利用した。 もっとも恐れるべきことは、この展開をお互いが予想していたということだろう。

 

・・・・・やはり天才か。

 

「ぜえええええええっ!!」

 

 気合十分、その迫力とともに突き出される正宗は白銀の頭部を確かに目指していた。それを食らえば、こちらは死にはしないが、ただでは済まない。

 

・・・・・やはり、”オレ”はお前と戦えて良かったぞ。 ヒナギク!

 

思わずわざわざ変えた口調が、当時のものに戻ってしまう程に、この時代に来て初めて昂ぶるものを感じた白銀はまたしても笑みを浮かべて見せた。

 




久しぶりに戦闘シーン書こうと思って、構想練りまくってたら分割で投稿することとなってしまった。 雑にならないようにまとめたつもりです。 何か不審な点があったらご報告お願いします。


あ、あかん、未来テルくんが完全に俺TUEEEE状態になってる! 
この調子だと綴ってもおかしくない!

ロックマンのエアダッシュを見たら、俺もできねェかな、と家の壁を蹴っていた痛い思い出がある小学校低学年時代。


ダンテに至ってはまずあのCMの影響で敵を打ち上げてからの銃乱射というシチュエーションがすごく好きになりました。
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