ハヤテのごとく!~another combat butler~ 作:バロックス(駄犬
─あらゆる困難を科学で解決するこの平成の時代。
─人々の閉ざされた心に魑魅魍魎が存在していた。
─科学ではどうしようも出来ない、そんな奇っ怪な輩に立ち向かう、清廉で可憐な少女と胡散臭い男が一人。
─少女は鷺ノ宮 伊澄、男は善立 テル。 人は彼らを陰陽師と呼ぶ。
第21話~レッツゴー鷺ノ宮~
「悪霊退散…悪霊退散……陰陽なんとか困ったときは・・・どーまんせーまん」
夜の学校、月明かりが少しあると言ってもそれでも十分暗い。
テルと伊澄は悪霊退治の為、廊下を歩いていた。
「……テル様、さっきから何か音楽が」
呟き気味に歌うテルが気になったのか伊澄が一度立ち止まった。
「いや、悪霊退治ならこの方が盛り上がるかと……」
テルは頭を掻きながらなははといった表情だ。
「あまり幽霊を刺激する事は宜しくないかと……短気な幽霊もいますので」
「そ、そうなのか?」
「はい、ほら……すぐ後ろに……」
ゆっくりと頷く伊澄はテルの真後ろを指差す。
「………」
テルが振り返ると三人組の男達の幽霊が完全武装で立っていた。
「フシュウウウッッッ」
「ウウウ……ッッッ」
「ルゥゥ……ッッッ」
三人とも奇妙な呻きを上げる。 更には目を完全に見開き、テルに視線をロックオンしていた。
「あの~伊澄君? やっぱり彼ら……」
「はい……五月蝿くて怒り狂っています……」
そう答えた瞬間、大体お分かりと思うが当然三人の幽霊は襲ってきた。
「アッ────!!!」
「悪霊……退散っと……」
両手を挙げて叫んでいるテルをよそに全く動じずにお札を取り出すと三人の幽霊に投げつけた。
「あべしッ!」
「ひでぶッ!」
「カペッ……」
額にお札が張られると三人はだんだん溶け出して霧散していった。
「次行きますよ……」
まるでいつもの事のように終えると伊澄はテルに奥へ行くように促した。
「ゴメン、伊澄……やっぱ帰りたい」
「無理です。 ここで帰ったらテル様が死にます……」
「はい?」
伊澄の『死ぬ』という意味がどういう意味か分からず、テルは目を丸くした。
伊澄が加えて説明を入れる。
「ここで帰ったら悪霊に取り憑かれて死ぬ……という意味です」
「マジで?」
「はい……」
その言葉にテルは何も返せなかった。 というよりも既に諦めに入っているかもしれない。
こんなやり取りが何度か続いている。 テルが叫んでは伊澄が札を投げ、除霊。 テルが叫んでは伊澄が札を投げて除霊。
しかもテルは伊澄の後ろを警戒しながら歩く始末。
本来なら前を歩くのは年上のテルの筈だが、見事なまでに先頭を伊澄に譲っている……なんと情けない。
(しかし……幽霊なんて存在しねぇと思っていたが……)
伊澄の後方を歩きながらテルは目の前で起きている状況を信じつつあった。
幽霊はせいぜい、本や幻覚だと思い、信じてこなかったが現状が現状だ。 受け入れざるを得ない。
「しかし……伊澄」
「はい?」
後ろからテルの声に伊澄がチラッと反応してみせた。
「お前が鷺ノ宮の光の巫女だとか話されてなんとか言われても俺はどうとも思わねえけど……怖くねぇのか?」
「………」
一瞬振り向いたかと思うと伊澄は黙って視線を前に戻した。
「ま、怖くなんかないよな。 あんだけ肝が座ってるなら……」
「どうでしょうか……」
続けるテルの言葉を伊澄が遮った。
「私ってそんなに強く見えますか?」
立ち止まった伊澄は今一度テルといつもの表情で向き合う。
「恐がってないように見えますか?」
「…………」
いつもの表情……なのだが、なぜかそうでもないとテルは感じ取った。
その言葉を、深く詮索するべきなのか、しないべきなのか、テルは迷ったという。
だがそんな迷いを抱えている内に
「まぁ、今日は平気ですけど……それでは奥に進みましょう」
「お、おう……」
クルッと伊澄が背を向けて歩き出したのでそんな考えも無駄に終わった。
―そして数分後……
「やっぱり迷子か……」
見渡す場面、誰も居ない事が確認できた。 今ここには伊澄がいない。 案の定、伊澄は迷子になった。
「なぁ神よ……放置プレイだろコレ?」
さっきとは打って変わってこの状況。 侮っていた。 仕事のなかでなら伊澄は仕事人顔負けの集中力で迷子になることはないと思っていたが
訂正。 やっぱり伊澄は伊澄だ。
(それよりも……な……)
テルが頭を掻きながら考えるのはさっきの伊澄の表情。
─怖くないように見えますか?
違う。 怖くない訳がない。 いや、一方的かもしれないが……
仮にもナギと同じ、13歳の女の子だ。 ただただ普通に今の時間帯なら寝ているはず。
その筈なのに、今こうして夜に闘っているのだ。 鷺ノ宮の光の巫女として……
そういう責任もあるから普通より精神をすり減らす筈だ。
昔からこんな仕事をしていたのかと思うと苛ついた。
軽率な発言だったかも知れない。 何も分からない小さき頃から光の巫女として悪霊と闘っていた。 怖くない筈がない。
テルなら完璧トラウマだ。 それを13歳の少女がやってのけている。
(光の巫女……か)
他と大きな違い。 同じ13歳でこの立場の違い。 酷ではないのか? 普通の少女、鷺ノ宮 伊澄がナギと一緒に普通に歩き、普通に学校生活を過ごす日が来るだろうか?
「面倒くせぇ……」
そう呟きを入れた時だった。
「キャアアア──!!」
テルの耳に甲高い声が響いた。 その瞬間、体を震わせて近くの壁に張り付く。
「な、なんだ?」
張り付いたテルは冷や汗を掻きながら驚く。 女性の声に近いものかも知れない。
「伊澄か?」
そう呟いた時には廊下を走り出していた。
伊澄だから除霊に失敗したのかもしれない。こんな状況だ。命の危険だってある。急がなくてはならない。
「なんなのよもうっ!」
廊下を駆ける一人の少女。 ピンクの髪が特徴的で腰にまで十分届いている。
だがその長髪も今は真後ろに流れていた。
ご存知の通り、彼女、桂 ヒナギクである。
彼女もまた、この旧校舎に入り込んでしまった一人。
本来は生徒会三人娘の勉強を見に来たのだが、ハヤテが来ていると聞き、危険なので心配したとのこと。
─大丈夫。私、オバケとか平気だから
と言っていたが、今宵、彼女の世界は一変する。
彼女は見てしまったのだ。 宙に浮く、無数の人魂の姿を。
そんな非科学的な現状を見て、冷静でいられる訳がない。 当然即ダッシュ。
『オバケとか平気だったのでは?』
「あんなの平気な女の子がいるわけないでしょ!!」
『火の玉はプラズマという科学現象だという話ですが?』
「怖いものに理屈なんてないわよ!!」
『それでは最後の質問です』
「へ?」
『さっきからあなたに質問しているのは誰でしょう?』
「………」
(言われてもみれば……)
ヒナギクはさっきから聞こえる声に疑問を抱いた。
そして横を向いたとき、ヒナギクの顔から一気に血の気が引いていく。
カシャンカシャン
「………」
ヒナギクの横で併走するその何かは半分が肌を露わにし、半分が肌より肌自体が無くなり、皮膚が露わになっていた。
人体模型。 夜の怪談話の定番である。
人体模型がヒナギクと併走するという全く持って奇妙な光景。
「キャアアア──!!」
再びヒナギクは悲鳴を上げる。 そのまま壁にもたれ、腰も下ろした。
「あ…あ……」
迫り来る模型に対して、ヒナギクはもう立つことすらままならない。 逃げることも
(誰か…誰か――)
そんな時、恐怖に支配されつつあるヒナギクの脳内にある言葉が響いた。
―言ってくれれば、助けに行きますよ。
それは、最近自身が出会った一人の少年。
「ハ……!!」
その言葉を信じて、名前を叫べば。
「ハヤテく――ん!!」
彼は疾風のように現れるという。
ドガッ!
ヒナギクの前に文字通り、疾風が駆け抜けた。
人体模型に炸裂した蹴りはいとも簡単に人体模型を粉々にする。
綾崎 ハヤテの蹴りだ。
「大丈夫ですか? ヒナギクさ―――」
ガシッ
「え?え?え? ちょっ、ヒナギクさん……!?」
ハヤテは自分の今の状況に戸惑う。 ハヤテの体にヒナギクがヒシッと抱きついているのだ。
抱きつかれたためハヤテの心臓は急激に上昇する。
上昇、上昇、上昇……
「上……昇ッッッ!」
曲がり角の影からその光景を見ていたテルは持っていた花瓶にヒビが入るほど力を込めた。
(伊澄かと思って来てみればまさかヒナギクが居て、ハヤテが居て? 何故か抱きつかれている?)
両手に力が更に込められた。 花瓶のひび割れが広がっていく。
(あー やっぱこの前のお茶会のコメント撤回しようかなー、ハヤテはとんでもない野郎であると)
完全にもう妬みしか感じられないこの心情。 流石はハヤテだ。 不幸ながらにしてラッキーな野郎である。
「……ん?」
ここである事にテルは気付く。 ハヤテとヒナギクの更に奥の曲がり角で隠れている人影を見つけた。
「この事は絶対に内緒だからね ハヤテ君」
「はい? なんの事ですか?」
視点が変わるが今はヒナギクとハヤテ。 ヒナギクの言葉にハヤテは訳が分からず返した。
「だから…その……さっきの……」
「へ?」
言うのをためらっているヒナギクの様子にハヤテはまだ分からない様子。 外ではカラスがギャーギャーと鳴いていた。
「あ、あれですか?」
ハヤテはヒナギクに抱きつかれた事だと推測したがヒナギクは首を振って否定した。
「それもそうなんだけど……」
「え?」
「その前の…後の事も含めて……」
恐らくヒナギクが指しているのは自身が幽霊に驚いて逃げ出し、最終的に幽霊を前に座り込んでしまった事だろう。
「私があんなふうに怖がっていたなんて誰かに言ったら、本気で殴るわよ!」
「まぁさっきも思いっ切り殴られましたが……」
吊り目で迫るヒナギクにハヤテは苦笑いで返す。 実は抱きつかれた際、ヒナギクに理不尽な理由で殴られたのだ。
「でもこんなのに追いかけられて怖がるのは普通ですよ?」
ハヤテは自身の蹴りで粉々になった人体模型を見る。 確かに、動かないだけでも気味が悪いのに走って追いかけられたらテルなら即失神しそうだ。
「関係ないの!」
宥めるハヤテの言葉をヒナギクはまた否定した。
「生徒会長は威厳が大事なの! 威厳が! ちょっと幽霊を見たからって!」
その言葉を言い終えた後、何故か口ごもった。
「あ、あんな…醜態を……」
ヒナギクにとって生徒会長に必要なのは威厳だという。 生徒を纏めあげるためには大切な物だ。
それを幽霊という、普段信じれない物の前で台無しにされたと思っているのだろう。
「まぁ格好良く無かったかもしれませんね、いつものヒナギクさんに比べたら……」
ビキッ!
そう言うときはどうにかして慰めてやるべきだが、ハヤテは色々と抜けている。 彼の発言は彼女のプライドに少なからずとも半分以上はヒビを入れただろう。
「でも、ここが旧校舎だって分かりましたから、もう用もないし、出ましょうかヒナギクさん」
ハヤテは辺りを見渡しながらヒナギクに促す。 もともとナギのノートを取りに来たのだが、旧校舎はノートのある場所ではなかったのだ。
しかし
「何を言っているのかしらハヤテ君」
「は?」
ヒナギクの言葉にハヤテは苦笑いしながらも振り向いた。 嫌な予感がしたからだ。
「このままオバケの正体もつかめないまま……かっこ悪いまま……この私が負けっぱなしで帰るなんて…していいと思って?」
その背中から感じるオーラは物凄く怒りを凝縮させた物であると同時に、ヒナギクのなかで何かが燃えているようだった。
「いや…でも僕、お嬢様の忘れたノートを取りに行かないと…」
本当に嫌な予感しかしないハヤテはできるだけオブラートにその状況を回避するように努めた。
だがそれも……
「却下よッ!」
(………)
ハヤテは苦笑いで諦めた。 もはやこうなったヒナギクを止める事は誰にも叶わない。 自身のプライドの回復のため、とうとうハヤテの拒否権まで奪取された。
「とにかくあんなものを放っておくわけにはいかないわ!! だからハヤテ君…!!私と一緒にオバケ退治よッ!!」
そう高らかに言い放つと生徒会長こと桂 ヒナギクは夜の旧校舎を突き進んで行った。
「あ、ちょっ…ヒナギクさん!!」
その後ろを急いで追うハヤテ。 やがて二人の姿は暗い世界へと消えていった。
(………)
その二人が消えたのを見計らって角から一人、粉々になった人体模型を拾い上げた。
「このままでは…いけませんね……」
そう呟きを入れるのは伊澄だ。 先ほどからヒナギクとハヤテを追っていたらしい。
「なんとかしてハヤテ様や生徒会長さんにはこの場を立ち去って貰わないと……」
伊澄は首だけの人体模型に向けて一人呟く。
「なんでそんなに立ち去ってもらいたいんだ?」
「それは色々と……まぁ」
伊澄は手に持っていた人体模型を見て驚く。
「術を使っていないのに喋りだしました……これも悪霊でしょうか?」
「いやいや、俺だって、俺……」
「この模型も早めに除霊したほうが良さそうですね……」
伊澄はそう呟くと袖から札を取り出し、罪も無い模型にかざそうとした。
「だからこっちじゃアアアッ!!!」
「!!」
ハッとなって振り返るとそこにはテルがいた。
「………」
だが何を思ったのか、伊澄は暫く見て一言呟いた。
「悪霊?」
ぐにっ!
「ふひっ……」
半ば疑問系の言葉にテルは伊澄の両の頬を軽くつまんだ。
「だ~れ~が幽霊だコラ、この目で判断してんのかコラ」
テルは額に青筋を浮かべて怒り心頭。 やがて伊澄のつまんでいた頬を離す。 伊澄は半分泣き目で頬をさすっていた。
「い、痛いです……」
テルの耳に震えた声が戻ってくる。
「人を見かけで判断するからだ。 後、勝手に迷子になるな」
頭を掻きながらそう言うテルに伊澄はキョトンとした。
「私は迷子になってはいませんよ?」
「どこまで認めたくないんだよッ!? 頑固にもほどが……まぁいいや」
突っ込んでみるテルだがまたこのくだりは長くなりそうなので途中でストップした。
「んで? 立ち去ってもらいたい理由は?」
「え~っとですね……」
伊澄は涙目ながらも事情を説明する。
掻い摘んで説明すると、あの二人にはまず自分の裏業はあまり知られたくはないとの事。そのために人体模型を自分の術で動かし、ヒナギクを追い出そうとしたが。
「そこにハヤテが来てしまったワケか……」
「はい、さすがにハヤテ様は一筋縄ではいきませんでした」
「まぁ、アイツなら幽霊が来ても蹴りで倒すわ」
人体模型の首を持ち上げ、残りのパーツにも目をやる。 これぐらいの威力が込められた蹴りだ。 バラバラの人体模型が全てを物語っている。
「なんか方法はないのか? あの二人に簡単に帰ってもらう方法は……」
「それで先ほどから私の術でなんとか帰らせようとしたんですが……」
伊澄のいう『怖がらせて帰って貰おう作戦』はとりあえず怖がらせて帰ってもらうという、なんか小学校で使われそうな物だ。 果たして、ハヤテやヒナギクにコレ以上通用するのか……
「実は一つ方法が……」
「お? なんだ? 言ってみなよ」
テルが人体模型の首を持ちながら聞いた。
「でもこれはちょっと……」
「なんだよ。 喋ってみなきゃ始まらないぜ?」
テルが出し惜しみするように言う伊澄にじれったさを覚えた。 伊澄はテルの方から顔を背けて呟く。
「元々私の都合で無理に来てもらっているテル様に危険な真似はしたくありません……これは私の問題なので……」
伊澄の危険という言葉にテルは少なからず戸惑ったがため息をまた吐き、頭を描いた。
「バ~カ、そう簡単に帰られっかよ」
「ですが……」
あくまでテルに遠慮しているのか伊澄がまだ戸惑っている。
「俺がいなかったら誰がお前の迷子の回収にいくんだよ」
テルは更に付け加えて続ける。
「それにな……なんでも抱え込んでっと、いつかそれに押しつぶされんぞ。 だから言え、その俺を巻き込んでしまいそうな作戦を。ちなみにお前に拒否権は無い」
「………」
伊澄はこれ以上テルに何を言っても仕方ないと思ったのか、クルッとテルと向き合う。
「分かりました……その方法を教えましょう……」
珍しく伊澄がため息をつく。もう伊澄が折れるしかなかった。
○
「…………」
善立 テル、16歳。現在、『とある作戦』に参加中。
伊澄の言っていた、その危険な作戦、テルは恐れずに参加した。
……後悔はしていない……ハズである。
「暑い……」
特に夏だからとか、そういう気温の問題ではなく、純粋に体温が暑い。
善立 テルは白皇学院の旧校舎で異形の姿をしていた。
単刀直入に言おう。
─彼は人体模型になった。
第25話~幽霊役の人が客にボコられるのは仕方ないと思う~
人体模型になった。 ストレートに言えばそうなる…が端から見れば確実に『どうしてこうなった』と疑問が浮かぶので経緯を説明したい。
―それは数分前。
「俺が人体模型に?」
「はい。 私のさっきの術を遠隔操作で動かしていました。 ですがテル様に人体模型になってもらう事で、よりキレのある動きができます……」
伊澄の言わせれば、遠隔操作は難しいとのこと。 しかし、テルが人体模型になることでテルの意志で人体模型に生き生きとした動きができるとのこと。
(でもコレってさっきの作戦とだいぶカブってる気が……)
そんな疑問をよそに、伊澄は続ける。
「それでは早速人体模型になって貰いましょう……」
そう言い、伊澄は札を取り出してテルにかざした。
「ちょっ、待て! まだどうやって人体模型になるか方法も聞いてない! 痛いのか!?まさか痛いのか!?」
「………」
「なんとか言えぇぇぇえ!! 何かと不安になるだろうがぁぁぁ!」
何も答えない伊澄にテルが叫んだが伊澄は構わず札に握る力を込めた。
「いーくいっぷ!」
「うおっ!?」
突然伊澄の札が輝きだし、辺りが明るくなった。
カタカタカタ……
「ん?」
テルは何かしら聞こえた方向を見て驚愕する。
「ッッッ!」
見たのは下。 そこにあるのは無数の人体模型のパーツ。 そのパーツが今小刻みに動いていたのだ。
そして次の瞬間。
「うおッ!?」
信じれない事が起こった。 小刻みに動いていたパーツがふわっと浮かんだのだ。
更に。
「え、いや、ちょっと……」
テルは思わず後ずさる。 人体模型のパーツがだんだんとテルに近づいて来ているのだ。
そして……
ガッシーンッ!
「ギャアアアア! 俺の腕がァァァ!」
これまでにないほどの絶叫。 テルの右腕に人体模型の右腕が重なるようにくっ付き、その瞬間、右腕が完全に人体模型の右腕と化した。
ガッシーンッ!
「俺の足ィィィィ!」
今度は左足が人体模型の左足と同化。 テルは更にはパニックに陥る。
「安心して下さいテル様……見た目はその姿でも中身はちゃんとテル様の体ですよ……」
「どういうこった!?」
落ち着かせようと伊澄は説明したがテルは未だに理解不能状態。 伊澄はさらに説明を加えた。
「この術は肉体強化が目的です。 周りの物体を自身の肉体に武装させてテル様はエ○ォリュダーになるのです……」
「俺はどこの勇者王だ?」
そう言われて見ると覆われた真っ白な硬い物質の下には自分の本当の腕がある感覚が分かる。
伊澄のこの術は体に武装するようなもの。 簡単に言わせれば勇○王ガ○ガイガーに出てくるサイボーグのお兄さん。
「確かに……体自体は変化がないんだな」
体が安全だと分かって納得したのかテルは右腕で頭を掻く。 いつものような感覚ではなく硬いのが頭にカツカツと当たっている感覚だ。
「ではどんどんいきますよ……」
「おう、どんとこい」
テルはドンと胸を張ってみせる。 なんやかんやでテルの改造? は進んでいった。
ガッシーンッ!
ガッシーンッ!
ガッシーンッ!
「……なぁ伊澄、コレはどういう事だ?」
「えーっと……」
伊澄も戸惑いを隠せないでいる。
「なんか腕と足が逆な気がする……」
「申し訳ありません」
テルの右腕はちゃんと人体模型の右腕だが左腕は右足がついている。 そうなれば右足は左腕、とまぁ色々と違っていた。
「あと重大なのは頭、なんで頭が後ろむいてんだよ。 俺が真っ暗で何も見えねぇじゃねーか」
テルは反対方向にはまっていた頭を強引に180度回転。 ゴキンという音とともに定位置に戻した。
「ついでに言うとボロボロなんだけど、そこんとこ何とかならない?」
よく見ると体は所々ヒビが入っており、頭なんて顔が半分割れている。
「そこはガムテープで補給ということで……」
「いや! なんでそこだけ現代技術なんだよ!? 鷺ノ宮の術でなんとでもなるだろ!?」
伊澄は突っ込むテルを無視してどこからともなく取り出したガムテープをペタペタと張っていく。
「これでなんとかお願いします……!!」
突然何かに気づいたのか、伊澄は目を細めて袖で口元を隠した。
「誰かが来たようです。 ハヤテ様達でしょう……テル様、頼みます」
そう言うと伊澄はそそそと奥に隠れた。
「オイコラッ! 待てッ! 面倒くさいとかそう言うのじゃないだろうな!?」
そして現在に至る。今はこうしてやって来る二人を待ち伏せだ。
「あの…やっぱり帰りませんか?」
「ダメよ!! 絶対、正体つかんで見せるんだから」
「で…でも、危ないですし……」
「何言ってるの?危ないから退治するんでしょ?」
「む……来たか」
テルも息を潜めた。 途中、カツカツと硬い音がした。 なんともこの姿では動きにくい。
暗い奥からやって来たのはやはりハヤテとヒナギク。
ハヤテは若干、この状況に戸惑っているがヒナギクは逆だ。 全身から殺気のオーラが溢れている。
しかし、ヒナギクが少しちらっとハヤテを見た。
「だいたいさっきから帰りたがってるけど…せっかく夜の女の子と二人きりなんだから……もう少し嬉しそうな顔してもいいんじゃない?」
(そうだ。 なんせ白皇の生徒会長だ。 なんせ若い男女二人が学校にいるんだ)
遠くで見守るテルの心の声。 実際若い男女はハヤテ達だけでなく、テルや伊澄もだ。
「いや、でもなんかヒナギクさんとはなしていると……お嬢様と話をしているような気がしてきて……」
「な!! なに子供扱いしてんのよ!! 私、生徒会長なのよ!!」
(いや、生徒会長をそこで誇示する理由は何だよ)
「ふん!! まぁいいわよ!! 一人でも退治して見せるんだから!!」
「まぁ一応ご一緒しますけど……」
二人は取り敢えず歩きだす。
(は~ ヒナギクさん、やっぱりお嬢様と同じで……すごい負けず嫌いだなぁ~)
「それにしても…冬だって言うのに、なんか暑いわね~」
周りの気温に耐えきれなくなったのか、ヒナギクは胸元の服をパタパタとさせた。
「!!」
ハヤテはその行動にすぐさま顔を赤らめる。
「ん?」
ヒナギクもハヤテの顔に気付いたのか、急にニヤニヤしだした。
「な~に赤くなってるのハヤテ君?」
「べっ!! 別に赤くなんかなっていませんよ!!」
ハヤテは必死に否定するがその言動からして動揺しているのは分かり易い。
「何よ? 人の事子供扱いしておいて……やっぱり私の事意識してるのかしら?」
なぜだかヒナギクも楽しくなってきたので更に茶化してみる。
「別にヒナギクさんの事なんか、意識してませんよ!!」
カッチーン
何かと気に障る発言にヒナギクの顔が一気につり上がった。
ハヤテは更に続ける。
「だ…だいたい前も言いましたけど…ヒナギクさんは少し無防備すぎます!!」
(無防備もなにも、元からサ○ヤ人より強いじゃん……)
隠れているテルは突っ込んでみるがそれは誰にも聞こえない。
「ヒナギクさんの事、なんとも思っていない僕だからいいようなものの……普通の男の子前では、もう少し恥じらいを持たないと……」
いつの間にかハヤテは説教モード。 黙ってヒナギクは聞いてはいるがまるで自分がアウトオブ眼中かのような言い方に彼女の怒りのバロメータは上がりっぱなしだ。
「そんな軽い事では……何をされたって─」
「いいわよ」
「へ?」
ヒナギクの言葉にハヤテの間の抜けた声。
「ハヤテ君になら……何されても……」
窓から差し込む月の光が二人を照らし出す。 二人の距離は近い。
後ろにいるヒナギクの手がハヤテの執事服の背中に触れた。
細いヒナギクの手がぴとっと止まる。
そんな端から見て危険な展開を迎えている二人だがこちらも危険だ。
「野郎 そんな事を……ッッ!!」
今なら地上最強の生物並と殺気を醸し出すテル。 幽霊は絶対に近寄らないだろう。
あと、そんな事は始まってすらいない。
「─なんて冗談を言うと男の子は真に受けるのかしら?」
「う゛っ!!」
クルッと振り返ってハヤテの目に映ったのはヒナギクのクスっと笑った顔。
ハヤテははめられた。 一手とられたと思わされた。
「ご忠告ありがとう。 今後、注意するわ。 ハヤテ君みたいな男の子には」
膝をつくハヤテを前にヒナギクは勝ち誇った笑みを浮かべる。
(ヒナギクさんの事、お嬢様と同じくらい負けず嫌いだって思っていたけど……)
ハヤテは自身の目測が誤っていたと気づかされる。
(お嬢様以上に負けず嫌いだ……)
「あー! もう面倒くせぇ! 俺は出るぞ!」
テルはこれ以上待たされるのがいやだったのか、たまらず飛び出した。
「うわっ! あれさっき僕が倒した人形!!」
「え? ウソ!? あ!! ホントだ!」
ヒナギクとハヤテが若干動揺している様子。
「まったく、動きづれぇな……」
カクカクと近づくテル。 人体模型なので関節が固定されており、動きにくいのだ。
『帰れー!! 人間どもー』
(あれ?これは伊澄の声か?)
自分が喋っていないのに発せられた声は伊澄の声だ。 多分、これも伊澄の術なのだろう。
テルは声に合わせて両手を掲げるポーズを取って威嚇する。
「ひぃ!!」
(お? 意外に効果あり?)
威嚇が効いたのかヒナギクとハヤテが悲鳴に近い声を上げている。
『帰らないとお前たちを……た…食べちゃうぞ!!』
「そうだ帰れ帰れ」
伊澄の声に続き、テルも喋り出した。
「ところでさっきから出ているナレーションみたいなのはなんですか?」
「あと一人なのに声が二つあるのも気になるわ……」
ハヤテとヒナギクもこれにはすぐ気付いた。
『あ、これは…脳に直接話しかけているという描写で……』
「そうだ。 マジ○ガーZだったかに一人で二つの人格をもつ人間もいたようないないような……」
伊澄とテルは互いにバレないように気をつける。
「へぇ~………てぇ!!」
「ぐほぉ!」
ふーんという顔をしていたヒナギク。 そこから一変、どこからともなく鉄パイプを取り出して不意打ちの一撃を与える。
テルの体が床を転がった。
「不意打ちはズルいぞ……」
「さっきはよくも驚かしてくれたわね!!」
「俺は関係ない……」
「このままじゃすまさないわ!! 覚悟しなさい!」
テルはなんとか体を起こすがヒナギクの一撃が重い。
「でもさっき倒したはずなのに…なんで元に戻ってるんですか?」
『そりゃ頑張って修理を……』
ハヤテが一番疑問に思ったことに伊澄が答える。
「え? 修理? 自分で? それとも誰かが修理を……?」
「―と!! とにかく!! ハヤテ様!」
これ以上詮索されるとまずいと思ったのか伊澄が声を張り上げた。
「ここから早く立ち去って下さ…いや…た…立ち去れ――!! の…呪うぞ――!!」
伊澄の声に合わせてテルはまたしても威嚇のポーズ。 だが生徒会長には通じなかったようで……
「ふん!! 呪いが怖くて生徒会長は勤まらないのよ!! さっき受けた屈辱!! 百倍にして返してあげるわ!!」
「だから俺は関係ないって……ん?」
必死にヒナギクの言葉を否定しようとしたとき、テルの視界が歪んだ。
―なんだ? アレ?なんかコイツ見たことある……
―アレ? 見たことあるって言っても、違う……こんな感じの奴を見たことある……だな
なぜかだが、鉄パイプを構え、鋭い目でこちらを見るヒナギクの姿が誰かと重なって見える。
―誰だろう……
―思い出せない……
「たぁ!!」
「グギャ!」
テルが呆けている間にヒナギクの鉄パイプによる一撃。
『の…呪ってしまいますよ~』
「うるさい!」
「ギャース!」
『お…オバケは怖いから帰った方がいいですよ~』
「あなたを倒したら帰るわよ!!」
「ギャアアアア!!」
攻めるヒナギク、受けて絶叫するテル、頼りない伊澄。 場はもう混戦状態だった。 一方的にヒナギクの攻めだったが。
(ハヤテ……様?)
そんな戦い? を眺めていたハヤテは一人疑問が浮かんでいた。
(もしかしてこれは本当に立ち去って貰いたいだけの……ただの脅しなんじゃ……?)
「ぐおお……」
(この剣道バカが……こちとらなんもできない無防備な男だぞ!? )
体のパーツにヒビが入ってきた。 中身のテルもダメージがキツい。
(何とかしてあいつ等には帰ってもらわないと……特にコイツ!)
テルは震える足で立ち上がりながらヒナギクを見た。
(コイツが納得するやり方で帰ってもらわねぇと……)
「ヒナギクさん! そんな恐ろしい化け物、放っておいて帰りましょうよ!!」
「ダメよ!!今度こそ絶対私が倒すんだから!!」
ハヤテが遠くでヒナギクに促すがそこは会長、一歩も引く気はない。
「そんな…『その人形をヒナギクさんがかっこよく倒さないと、僕たちがここを立ち去れない』なんて事言わないで帰りましょうよ!!」
ズキューン!
(ソレだァァァァァ!!)
コ○ンが閃いた時にでる効果音と共にテルはすかさず伊澄を見た。
「………」
伊澄はそれがしっかりと聞こえたようで二回ほど頷いて見せた。
簡単な理屈だった。 ヒナギクのプライドの高い人物がこの状況で納得してもらうこと。 それはヒナギクが人体模型を完膚無きまでに倒せば、彼女の面目も立ち、満足して帰ってもらう。
(なにも怖がらせて帰らせる必要は無かったんだな、よーし後は適当にやられて……ってアレ?)
ここでテルはあることに気付いた。 なら、やられる程の一撃を受けるのは誰だ? 自分だ。 そう、テルだ。
(え? 最後までこんな扱いなの?)
バキャ!!
「「へ?」」
そう声を出したのはヒナギクとテルだ。
さっきの砕けたような音は人体模型からだった。
伸びる両手、何故か飛び出している肋骨(テルのではない)、更には腕の数まで増えていた。
明らかにかかってこいやと言っているような物だ。
挑発もいいとこだ。ヒナギクがそれを見て闘志が上がらない筈がない。
(ギャアアアア 伊澄ィィィ! 俺に何か恨みあったかァァァ!!)
「ふん!! そんな姿を変えたところで……」
ぐるんぐるんと手元で鉄パイプを回転させ、覇気を飛ばすかのように構えると一気に踏み込んだ。
(アア――ッ! 死ぬ――!! ……ん?)
シュウウウ……
背中の部分に何かムズムズするような違和感。 背中には一枚の札。
「コレってまさか……」
勘がイイ人はお気づきかもしれないが、この札、ナ○トで使われている……
「起爆符ッ!?」
「覚悟しなさい! 私が……やっつけて──」
ドッカーン!
何とも間抜けな効果音だが気にしない。
ヒナギクが鉄パイプを振り下ろす前に人体模型は爆発してしまった。 明らかにワンテンポ早い。
「………」
「………」
ヒナギクは訳が分からない様子。 ハヤテは苦笑いだった。
『やられたー』
伊澄が必死に負け宣言。 テルの姿はない。 爆発と共に何処かへ飛んでいってしまった。
「え? まだ私何もしてないのに……」
ヒナギクは疑問の眼差しを人体模型の頭に向けた。
「や!! ああ!! ス…スゴイですねヒナギクさん!!気合いだけで霊をやっつけるなんて!!」
『ホントホント!!』
ハヤテと伊澄が笑いながら返す。ヒナギクは首を傾げた。 ハヤテは更に続ける。
「きっと今のが『気』ってやつですよね? 『覇気』とかにも似てますし!」
「でも私別に……」
「ル○ィだって無意識に使ってたんですから!! いやースゴイなーヒナギクさんは!!」
「いや……『気』なんて普通使えな―」
「使えますよ!!」
ハヤテは両手を大きく広げた。
「いやー僕も今必殺技覚えたいと思ってるんですけど……やっぱ必殺技は『気』とかじゃないと!! 僕も修行とかして早く覚えたいな─!!」
「………」
何かを隠してそうなハヤテの言動にヒナギクはじーっとハヤテを見つめる。
ここまで来て状況が悪化したら不味いが……
「じゃ会得したら見せてね」
「へ?」
ヒナギクは笑ってみせた。
「『気』を使って相手を倒す必殺技……ハヤテ君が会得したら必ず見せてね」
「え゛…? え゛…?」
危機は回避した。 回避したはずなのだが……
「じゃ!! ハヤテ君、いっぱい修行しなきゃいけないだろうから……帰りましょうか!!」
ヒナギクはそう言うと楽しげに踵を返して歩き出す。
「ちょ……!! ま…!! ヒナギクさん!!」
ハヤテも後を追う。 また厄介事を抱えてしまったらしい。
「ようやく帰ってくれるようですね……」
「………」
二人が消えていった後、伊澄がひょっこりと出てくる。 しかしテルは動かない。白目を向いて倒れている。
「……ほっと」
伊澄は札をかざすと 蒼色の光がテルを包んでいく。
「……ブッハアアアッッッ!」
まるで死の淵から蘇ったような起き上がり方。 テル復活。
「ホ○ミの次はザ○リクか、まるで賢者だな」
「………」
「ん? どした、伊澄」
伊澄の表情が少し沈んでいた。 伊澄が頭を下げる。
「申し訳ありませんでした……危険と分かっていながらテル様にこんな役を……」
「こんな役?」
ボロボロの体を見て伊澄が言っているようだ。
「やっぱりテル様を巻き込んでしまうのはいけません……ここからは私が一人でやります」
伊澄は暗い表情でどこか悲しげだった。 間違ってもテルを爆破させたりと危険な目には合わせたく無かったのだろう。
それほどまでに彼女は責任感が強いのだ。
責任感が強いというのは別に負のステータスではない、誰かをまとめたり、物事には真剣に取り組める。 むしろ今の若者たちに必要なくらいだ。
しかし、責任というのは背負いすぎるとどこかでつまづく……そうなるとなかなか立ち直れない、人間というのは。
ずっと一人で戦うのだろう、これから先も……
巻き込みたくない、支えてやれる人がいない中、強い責任感だけを抱えて……
若いのにご苦労なこった……とテルはつくづく思わされた。
「バカが……」
ポンと伊澄の頭にテルの頭が乗っかった。
「巻き込みたくないなら最初から俺を連れてくんじゃねーよ」
伊澄の頭がいっぱいになるほど覆われしないが
「だが最終的にお前に付いていくと決めたのは俺だ。 だったらいちいち気にしてんじゃねぇ……」
どこか暖かくて、大きい。
「使うなり囮にすらなりなんなりしやがれ、まだ帰らねーぞ俺は」
誰かが支えていかなくてはならない、力不足かもしれないがテルなりの力添え。
「いいんですか?」
「あ?」
伊澄はテルと向き合いながらオロオロした感じで呟く。
「また危険な事に会っても……」
「うるせーな、ぐだぐだ言ってっとまた抓るぞ」
頭を掻きながらテルは伊澄に言い放つ。
伊澄は今度は別に折れた訳でもなく、ため息をつかずに笑顔で答えた。
「わかりました……」
「おう」
「では依頼された本物の悪霊を倒して、私達も帰りましょうか……」
「まだいんのかよ……」
あからさまに嫌な顔をするテルを伊澄がじーっと見ていた。
「わーった!わーったよ!」
面倒くさそうにテルは伊澄の後ろについて行く。
夜の旧校舎はやはり怖い。
「なぁ伊澄」
「なんですかテル様?」
「この世から悪霊とかが居なくなったらお前もこういう仕事やらなくてすむのか?」
「さぁどうでしょう……生き物に生がある限り、必ず死があります。 その死が受け入れないものだったりすれば未練となってこの世に留まる輩は必ずいますから」
「うん、大体分かんない」
「でも……」
「ん?」
「私は別に悪霊や霊が別に消えなくてもいいと思います……」
「お前、案外こえーな。 こんな怖い空間なくならなくていいなんてよ……どういう意味だよ」
夜の廊下を二人は歩く、少ない人数だが、百鬼夜行にもまけないかもしれない。
「それは……内緒です」
次回からは原作でもあったクルージング編をお送りします。