ハヤテのごとく!~another combat butler~ 作:バロックス(駄犬
合いと共にトンファーがテル目掛けて降り下ろされる。
バキィンッという音が響く。 シスター渾身の一撃はテルに届くことなく手すりを代わりに破壊した。
「どんなパワー持ってんだよ!?」
完全に破壊された後を見て、背筋が凍りついた。 女性の腕力で成せる物だろうか。
シスターの追撃が更に続く。
右手のトンファー、左手のトンファーが交互にテルの顔面に迫ってきた。
「チッ!」
舌打ちの後、身をかがめて右手のトンファーを避ける。 だがシスターは見越していたように左手のトンファーを振り上げてしゃがんでいるテルに振り下ろした。
ドゴンッ、という破壊音が響く。 テルはなんとか一撃を避けていた。 振り下ろされた場所は小さなクレーターが出来ている。
お互いが距離を開けた。
「なかなかやりますね、流石は三千院家の執事と言った所でしょうか……」
先に口を開いたのはシスター。 トンファーをブンッと振って払うと床に血がつく。 テルの血だ。
「避けても下手すればキズが増えるか……」
テルの頬から少量の血が流れている。 シスターのトンファーにはトゲトゲが付いている。 かすればそれだけでダメージを受ける仕組みだ。
「迷える仔羊を導くのが役目ですから、救済は速い方が良いでしょう?」
「聖職者としての職務を全うするのは構わねえがやり方がえげつねぇ……」
吐き捨てるように顔の血を拭き取る。
「ここには関係ねぇ奴らがいるってのにな」
「私の悲願を考えれば犠牲も致し方なし……」
祈るように両手を合わせる。 その姿はまさしくシスターそのものだ。
「悲願だとかなんだか言おうが関係ねぇ……最初からハヤテだけを狙えばいいのによ」
そう呟きをいれて、シスターはまた駆け出す。
何時までもやられっぱなしのテルではない
「調子のんなよ……ッッ!!」
テルは近くにあったテーブルを持ち上げてシスターに向けてブン投げた。
「そんなものが……」
シスターは特に避けるような仕草を見せる訳でもなく、投げられたテーブルに突っ込んだ。
バキィンッと木製の白いテーブルがトンファーにより破壊された。
「通用するとでも思っていたのですか?」
破壊したテーブルの中を駆け抜けてシスターは跳び蹴りをテルにお見舞いする。
跳び蹴りはテルの溝落ちに突き刺さるように入った。
「ぐえっ!」
苦痛の表情と共にテルは後方へ吹っ飛び、床を転がった。
着地を決めたシスターは不適な笑みを浮かべる。
「さぁ息の根を止めてあげましょう」
トンファーを回転させながらシスターが迫る。
(ダメージが深い……直るまで後何分、いや、そんな事は関係ねぇ……)
今度は避けられないようにシスターは今まで以上にスピードを上げて接近してトンファーの一撃。
ふらつくテルはマトモに食らってしまった。 その気を逃さまいとトンファーが執拗な連撃を繰り出す。
(俺はコイツを許せねぇ……他人の事なりふり構わねえで好き勝手やるこいつ等を……そしてなにより)
連続する一撃に必死に耐えるが、確実にダメージは蓄積される。
(俺が折れちゃ……しまいだろうがよ……)
「ふんッ!!」
連撃の締めとしてシスターは頭部へ蹴りを直撃させた。
なす統べなくテルは床に仰向けに倒れる。
「武器を持っていれば良い勝負になっていたかもしれませんが……ここまでのようですね」
シスターは倒れているテルにトンファーを振り上げた。
「私の一撃はコンクリートブロック三枚を軽くぶち破る位の威力があります……」
シスターにとって、それは神の宣告、否。 死の宣告だ。
目の前に死という物をちらつかせる時、人間は最大の恐怖を覚える。 そして死ぬ瞬間、今までの出来事が流れてくるのだ。
歯を震わせ、涙ながら顔を歪ませるだろう。
「………」
だが、テルは引かない。
そこに絶対的な死が待っていたとしても……
「やってみろよ……」
どこかでシュトロハイムが言った一言と似ている。
鋼のような強い意志。
決して砕ける事のない魂。
だがそれを具現化する象徴がない。
「虚勢を張った所でどうしようもありませんよ?」
「うるせーな……」
例え虚勢と言い張られても、彼は諦めない。
「何が何でも邪魔してやるよ……」
己が己自身を通す為に……
「哀れね……貴方は」
最後にトンファーを回転させると、そう呟き、頭部へ振り下ろした。
ゴキン!と聞こえてはならないような音がした。
テルの右腕が空を掴むように震えながら伸びるが、ガタッと糸が切れたように崩れ落ちた。
「……テル君?」
ボート付近では皆の帰りを待つマリアが不安げな表情で呟いた。
〇
「テル! 起きてるの? 早く来なさい!」
早朝。 やたらと五月蝿い声が部屋に響いた。
「なんだよ、まだ6時だろ? ゆっくり寝かせてくれよ……」
「あんたに拒否権はない」
寝ぼけ眼のテルを布団から引き剥がし引きずっていく女性。
朝食をとり、支度をしてみるがなかなか眠気は取れない。
「んで、どうして朝っぱらからココ(道場)なんだよ……
くあっと欠伸をするテル。女性は腕をくんで説明する。
「決まってるじゃない。 朝稽古よ」
「いや、道場に来る理由はそれしかねぇけど、あまりにも時間が早すぎやしねぇか?」
「そうね……」
と女性は組んでいた腕を解いた。
「アンタがこれから生きてく上で沢山の壁にぶつかると思うの、テルには鋼のように固い意志と砕けない魂を持ってる……精神論的な事を言うと、いかに屈せず立ち向かえるか……それを身に付けていく事がこれからの課題――」
「んぐが~ごぉぉ……」
「………」
ゴキン!とテルの頭に拳骨が飛ぶ。
「なんで寝てるのよ……」
「わざわざ殴んなよ!!」
床に頭を突っ伏しているテルは女性に言う。
女性はため息をついて一言。
「アンタが誰かを守る為の力を身に付けるって言った方が分かりやすいかしら?」
「………」
守るという言葉に、テルはなるほどと頷く。 そして女性と向き合った。
「分かった…… 教えてくれ先生」
その瞳は力強い意志を宿した瞳だった。 それを見て安心したのか女性も頷く。
「よろしい。 じゃあ死ぬ覚悟は出来たわね?」
「へ?」
謎の一言にテルは顔をへの字にする。
「なんで朝早くからやると思ってるの? その頭に今日からじっくり叩き込んでやるためよ」
「ちょ、ちょっと待て! 今日からって、明日もやるのか!?」
「多分、未来永劫?」
至極当然のように女性は返す。
「後、相当な激痛を伴う事を頭に入れておいて? 一応、湿布と薬は山ほどあるけど……」
「何がこれから始まるんだよ!? 何が俺を待ってるんだよ!?」
「よーし、始めるぞぉ」(棒読み)
「無視するなァァァァ!!!」
最後に女性は振り向きざまに笑って見せた。
「それじゃ、私が一番得意であるのを教えるね」
その笑顔をテルはよく覚えている。
〇
場面は戻り、船の甲板。 シスターが目の前のテルを見つめていた。
テルは動かない。
「……アーメン」
最後にシスターは胸の前で十字架を指で作って祈った。
そして何事もなかったように、その場を立ち去ろうとした。
その時である。
「待て……」
まさかの、ここで聞いたことがある声。耳を疑った。
「ッッ!!」
素早く振り返るとそこには有り得ない光景が……
「ま~だ終わってねぇんだよ」
立っている。テルが立っているのだ。
「貴方は何でできてるんでしょうか?」
不気味にシスターはテルに聞いた。テルは血を流しながらも返す。
「俺は昔からガンダニウム合金でできてる位頑丈なんだよ」
いつものテルだ。 シスターは戸惑うがテルの状態を見てフッと笑う。
「ですがもう虫の息……立ち上がった所ですぐやられるのは見えてます」
テルの状態ははっきり言ってマズい物だ。 頭はとめどなく血が流れている。
出血多量で倒れるのは明白だ。
「言われなくても、すぐ終わらせてやるよ。 丁度、思い出したな……」
『思い出した』という言葉に、シスターは顔をしかめる。
テルは一人ある所に向かう。 先ほどシスターが破壊した手すりだ。
「お、コレ良い感じじゃん」
そこで拾い上げたのは破壊された一本の棒。 壊された手すりが一本の鉄の棒になっていたのだ。
そして……
テルは構えた……
「なんのつもり……ッッ?」
その姿はまるで刀を持った日本の武士、サムライ。
鋼のように固い意志を持ち、自分を通す姿に似ていた。
「俺は一番大事なのを忘れてたな……」
先ほどとは違った表情を見せるテル。
笑っている。 だがその内を読み取る事は出来ない。
「なら、そんな棒切れ持った所でッッ!!」
シスターは一気に駆け出す。 先ほどと同じく、スピードで迫り、トンファーを殴りつけるように繰り出した。
当たった。 確かな手応えがある。 加えて、テルはただ水平に構えていて振り抜いていたが全て避けたのが分かる。
(ただの虚勢……のハズッッ)
勝利を確信したシスター。しかし……
バキィンッ!と破砕音。 シスターは目を疑う。 自分の左腕のトンファーが折れたのだ。
「~~~~ッッ!!?」
シスターは驚きを隠せない。 テルはシスターの一撃も避けて、尚且つ武器をも破壊していた。
「貴方……一体何者?」
シスターが疑問の言葉をテルに投げかける。
テルはニヤリと笑って答えた。
「簡単に教えてやる……俺が三千院家の執事だ」
その強く、気高い魂、鋼の意志はより一層、輝きを増す。
その力を伝って、鉄パイプが黒い輝きを増す。
―剣術は私の専売特許、ついてこれるかしら?
「遅くなったけど悪いな先生、ようやく思い出したしぜ……」
またテルは不適に笑った。
○
潮風が靡く。シスターがいる場では信じられないことが起こっている。
確かに奴は自分の一撃を貰い、倒れた。
なのに立ち上がった。
驚くのはそれだけじゃない。自分が見切れないまでに、奴の攻撃が自分の武器を砕いた。
「剣術……ですか?」
「ん、まぁな……昔ちょいとな?」
慎重に伺いながらシスターは問うがテルは素っ気なく返す。
あまりにも可笑しい話だ。シスターにとっては……
仮にも、先ほどはパワー、スピード、どれをとっても上回っていた。
それをちょっとやった程度に学んだ剣術で自分が翻弄される訳がない。
(この男は危険過ぎる……計画の邪魔にならないようにするために、消す!!」
今、ここでッと言わんばかりに、シスターは残ったトンファーを片手に駆け出した。
「そろそろ、終わりにしようや……」
駆けてくるシスターを見て、テルもまた構えた。 といっても目つきや雰囲気が変わっただけで鉄パイプの位置はなんら変化はない。
普通なら真上に構えるか、両手で臍の辺りで構える。
だが、彼はそうしない。
それが彼なりの、テルの構え方なのだ。
「これで……」
唸りをあげたシスターのトンファーがテル目掛けて迫る。
放ったトンファーは頭から振り下ろされた。
轟音と同時に、激しい土埃が舞うがそこにテルは居ない。
「消えた……ッ!?」
呆気に取られたシスターが真横に感じた気配に目を向けると鉄パイプを振り上げているテルの姿が見えた。
「………」
鋭い目はしっかりとシスターに向けられている。 今までのような死んだ魚の目ではない。
完璧な隙。 タイミングを計られて避わされ攻撃される。
(ま、マズい……)
回避不可能。そんな言葉がよぎるなか、鉄パイプが振り下ろされた。
バキィンッ!!
「……?」
空に響く破砕音にシスターは耳を疑う。
体を殴られた訳でもない、シスターの右腕のトンファーが破壊されていたのだ。
(最初から武器だけ……を?)
「ふぅ~」
武器から破壊した理由を考えている時、テルはいつものようにダルそうに息を吐いた。 そして
「ハイ、終了~~~」
と言い放ったのだった。
「え?」
シスターはまたしても訳が分からない状態だ。
「もう終わったんだっつうのが聞こえてねぇのかコノヤロ―。 お前はもう戦える武器が無い……なら、もうこれ以上やり合った所で無駄じゃねぇか……」
テルはシスターに対してダルそうに返す。
「……情けのつもりですか?」
シスターが怒り混じりに投げかける。シスターにとって、それは侮辱とも捉えられたのだろう。
「バーカ。 そんなもんかけるぐらいならご飯にでもかけるわ……」
頭を掻きながらテルは続ける。
「俺は俺のルールを守った。 ただそんだけ……」
「くっ……!!」
テルの言葉にシスターは歯を食いしばった。
一向に訳が分からない。 なぜ、トドメをささないのか、そんな美意識を貫いた所で自身の得になる事があるのか?
シスターは困惑するばかりだった。
だが分かっているのは、自分が目の前の少年に負けた事。
「んじゃ、お縄に掛かって貰うとするかね」
自分がまだ捕まってはいけないという事だ。
「簡単に捕まると思ったら大間違いですよ……と!」
シスターは一歩下がると懐から丸い球を地面に投げつけた。
打ちつけられた球はバホッと音を立てて、白い煙が辺りを包んだ。
「好きだよな、煙幕……」
煙に包まれた場は何も見えない。 やがて煙が晴れて辺りを見渡すと、そこにシスターは居なかった。
遠くの方でモーターボートが海を突っ切って行くのが見える。 恐らくシスターの物だろう。
「チッ……逃げられたか」
舌打ちをするが直ぐに頭を切り替える。 早くハヤテ達を見つけなければマジメにディカプリオになってしまう。
「多分コッチか?」
テルは持っていたパイプをポイッと放り投げて走り出した。
〇
方向をほとんど勘で走っていたテルは船内の広い場所に出た。
「俺の勘も捨てたもんじゃないな……」
テルの見据える先には伊澄が、ついでに何故かナギがいた。
疑問を抱いたが悩むだけ損というやつだ。 テルは二人に近寄る。
「おーいお前ら!」
「テル!?」
「テル様?」
二人が驚いてテルを見る。 それもそうだ。 シスターとの戦いで血だらけになったままだったからだ。
「事故にでもあったのか?」
ナギがそう言ってテルに聞く。
「まぁ、そんなとこだ」
テルがなんともないと言った表情だ。ナギとしては相変わらず訳が分からないと言った様子である。
「なんでお前らこんな所にいるんだよ?」
「ああ、そうだ! ハヤテが!!」
ナギが思い出したかのように声をあげた。
ナギは掻い摘んで事情を説明。
「おいおい、どうしたらハヤテはそんなファンタスティックとは程遠いトラブルに巻き込まれるんだ?」
「ハヤテが鮫を倒して沈んでから全く上がってこないのだ!」
ナギは不安そうな表情でハヤテが沈んだ海面を見つめる。
「……ったく、しょうがねぇな」
そう呟くと、テルは頭を掻きながら近くのコンクリートの残骸を持ち上げた。
「な、何をやっているのだテル!?」
テルの行動にナギはもはや馬鹿をやっているとしか見てはいないだろう。
「時間がねぇ、早く沈めるように重りを持っていくだけだっつうの」
身の丈の半分の残骸を持つテルはふらふらと歩きながら海面を見据える。
「んじゃ、なんかあったら頼むわ……」
「え、ちょっ……」
ナギが言い終える前にテルは水の中へダイブした。
―数分後。
「ぷはぁぁぁっ!!」
海面から勢い良くテルが浮かんできた。 ハヤテも一緒だ。
「ハヤテ、ハヤテ!!」
ナギが涙目になりながらハヤテに問い掛けるが返事はない。気絶しているようだ。
「流石ですね、テルさま……」
落ち着いた口調で伊澄が言うがテルは頭を描いた。
「ま、いろんな借りがあるからなコイツには……」
テルは引き上げたハヤテを背に乗せた。
「早くしねえと、見事なまでにディカプリオの作り出したワンシーンになっちまうぞ」
「安心しろ、私達は女だ。 最後は生き残れる!!」
「バカ言ってねぇで行くぞ……ん?」
テルが階段に足を掛けた瞬間、近くに倒れている男が目に入った。
「なんだあの男は……」
まるで初対面のような顔だが一度は出会っている人間だ。
「誰だじゃない! バルトだァァァ!!」
ナギの声が聞こえたると男はガバッと身を起こして叫んだ……が。
「………」
ワンテンポ。
「………」
またワンテンポ。
「……誰?」
「だぁぁぁ! そこまでテンポを置いて誰も覚えてないのかぁぁぁ!!?」
「いや、テンポ、関係ないし」
ナギが素っ気なく言う。 バルトは膝をガクッとついた。
「クソッ! 爆弾配置したらすぐ目の前で爆発して気付いたらこんな所に……」
「お前が爆弾配置した犯人か……」
ナギが目を細めて迫るがバルトは顔を俯かせたままだ。
「おいコイツ反応しないぞ」
「この人誰でしょうか……」
「伊澄、そのリアクションは今やるには遅い」
バルトを除いたトライアングル会議が開始されている最中、テルが呟いた。
「とりあえず、帰るか?」
その言葉にはみんなが首を縦に素早くスイング。
皆それぞれに階段を上っていく。
「お前も早くこないのか?」
ナギや伊澄が上っていく中で、テルがバルトに尋ねた。
「フ……作戦も失敗した。 上司に見捨てられ、希望も明日もないこの世界で俺が生きていく必要はない……」
まるですべてを悟った詩人のような境地を垣間見せるバルト。
「分かってねぇな……」
テルが頭を掻いた。
「希望も何も、それらを見出すのはお前自身だ。 いつまでも上に捨てられたとか言ってんじゃねぇ、好都合だ。 上司にも頼らないで明日を切り開く事ができる瞬間じゃねぇか……」
「………」
紡ぐ言葉に、バルトは言葉を詰まらせた。
そうだ。今、出番が少ないとか、上司が捨てたという理由で明日を諦めるのは実にくだらない。
自分の目の前に新しい場所がある。 境目を前に自分は佇んでいた。
今までに見切りを付けて、己の道を歩むまでだ。
なら……
「分かってるじゃねぇか……」
境目を越えるためには何をする?
「決まってんじゃねぇか、その足は上がってんだろ?」
そうだ。 今、新しい道をバルトは行く決意する。
「なら、その一歩を踏み出すのになんの迷いがあるんだよ」
気付けばバルトは立ち上がっている。
新しい決意のある顔に。
〇
少年、綾崎ハヤテは海に沈んでいた。
(お嬢様、大丈夫だったな……良かった)
自身の事より、他人の心配をするのはこの少年のサガだろう。
体には全く力が入らない。 瞼も重くなってきた。
(お嬢様……すいません)
そう呟いた後に何かが自分の腕を掴んだのが分かる。
それが最後に見たハヤテの映像だった。
「……おーい、謝るなら早く目を覚ませってんだコノヤロ―」
「アレ?」
「アレ? じゃねぇよ。 アレキサンドリアがそんなにいいかコノヤロ―」
朧気な眼を開くとテルがいた。 更に周りにはナギが、マリアが、伊澄が、咲夜が、マユミが、シュトロハイムがいた。
「ハヤテ!!」
「テルさんが助けてくれたんですか?」
「ま、お前をサルベージしたのはそうだけどよ。実際治療したのはマユミの医療スタッフだ。感謝しろよ」
ナギはハヤテに声をかけるがハヤテはテルに聞いている。
気を取り直して
「ハヤテ……」
「まったく、鮫と戦えるのはなァ世界が変わったとしても花山薫だけなんだよ」
今度はテルによりナギのコンタクトは遮られる。
それを聞いたハヤテはシュンとする事はなく逆に
「でも、助けてくれて……ありがとうございます……」
「ッッッ!?」
突如として、ナギの全身を雷撃が突き抜けた。 その電圧、約百億ボルト、雷に匹敵する衝撃だ。
何故か素っ気なく返したテルに対して、ハヤテが胸キュンした可愛らしい乙女に見えてしまったのだ。
「お前からの礼はいいや、不幸をもらうのと一緒だからな」
更にテルのこの連れない態度。 ハヤテの背景にはジャポントーンが見えた。
(いかん、いかんぞ……)
では皆さん、ここらで今回のナギの作戦の内容を思いだしてみよう。
分からなかった人は廊下に立とう。 もしくはメダパニダンスを友人に披露してこよう。
マリアは苦笑いをしている。
マユミはDS片手に厳選作業(ポ〇モン用語)
シュトロハイムはクラウスと年寄り談義。咲夜と伊澄はお互いに漫才の練習。
―何故か男はつれない態度に心ときめくという……
「ヌアアアアアッッッ!!!」
ナギは雄叫びをあげながら救助船の外に出た。
主の心配ごとがまた増えたのであった。
―え? バルトは一体どうしたかって?
―数日後。
ここは東京どこかにあるラーメン屋、ラーメン辰也。
今日も店主、辰也の歳を感じさせない活きのいい声が聞こえる。
「辰也さん、なんだいバイト雇ったのかい?」
「あ? あのクソガキが押し付けて来やがったんだよ……おい新人! 早くとんこつラーメン持って来い!!」
辰也は奥の厨房にいる人物に怒鳴り声で呼びつけた。
「新人じゃない……」
ラーメン屋の服を着た男はお盆片手に現れて言うのだ。
「バルトだ。 後、好きなのはダークモカペプラチーノな」
「お前ここ辞めてスターバックス行けェェェェ!!!」
ラーメン辰也には一人、ラーメンをつくる外国人が現れて、更に賑やかになったとさ。
今回の話を簡単にまとめると。
テルが記憶を一部だけ取り戻した。
バルトが仲間になった。
っていうところですね。 これにて第一部が終了です。次回からマラソン大会の話になります