ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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ルイーダの酒で仲間集めたりするけど無償で魔王討伐に参加するってなんか裏がありそうですね


第30話~都合良く強いキャラが集まる訳がない~

「準備は整いましたか?」

 

ここは教会、もとい執事とらのあな。

 

巨大な門を前に立つのは一人のシスターだ。

 

 

「まぁ集まりましたけど……」

 

苦笑いを浮かべながらそう言うのはハヤテだ。 現在、執事復帰を目指すために執事とらのあなにて実習中。

 

「おーい、こんな地下にデカい門があるって所はスルーか?」

 

そう不機嫌そうに割って入って来たのはナギである。

 

「え? なに? 何が始まるのコレ?」

 

辺りをキョロキョロさせているのはワタル。 何故か知らないうちにこんな所へ……という感じだ。

 

「お宝はどこにあるのかしら……」

 

ワタル以上に目を輝かせて辺りを見回しているのは雪路。

 

すでにお宝散策モードになっている。

 

 

そう彼らは今回、執事クエストの為に集められた最強の戦士たちなのだ。

 

「ではこの執事クエストの説明をしましょう」

 

シスターがメンバーが集まったのを確認すると説明を始めた。

 

「この執事クエストではあなたがこのダンジョンのなかに入って執事のメダルを持ち帰ってくれば試験は合格です」

 

「え? それだけなんですか?」

 

「てっきり魔王とか出るのかと思ったよ……」

 

ハヤテとナギがお互いの目を見合わせる。 ただ一枚のメダルを持ってくればいいという難易度の低さに意外といった表情だ。

 

 

(ククク……掛かったな!!)

 

そんな2人を見て、シスターは裏で不気味な笑みを浮かべていたのは誰も気付いていない。

 

 

「この向こうが地下迷宮なんですね? シスター・フォルテシア」

 

「はい、その通りです」

 

シスターはそう答えると近くにあったレバーをガクンと下に下げる。

 

 

「では皆様、ご健闘を祈ります……」

 

レバーを下げた瞬間、門が低い音を立てながら開いていく。

 

 

ハヤテ達は中に入っていくのを見て、シスターはまた一人呟いた。

 

「さぁ、死のゲームの始まりですよ……」

 

シスターの笑顔はア〇デルセンも顔負けする狂気の笑みを浮かべた。

 

 

 

「………」

 

そしてそのシスターの背後の暗闇の中で、まるで人間のような目がこれから起きる何かを予知するようにギラリと動いた。

 

 

 

 

「結局、連れてこられてしまったけど……」

 

ハヤテ達が入って数十分。 こんどは教会の前にヒナギク達がやってきていた。

 

「そんな言い方するなよ会長。 乗りかかった船だ。 楽しく行こうぜ?」

 

テルが先頭を切りながら歩く。

 

「そうだな。 我々もこれらの祭り事には積極的に参加したいものだな……」

 

「唯子さん、祭り事って……」

 

楽しそうな笑みを浮かべる唯子に、ヒナギクは溜め息一つ。

 

マイペースが主体のこのメンバーに頭を悩ませていた。

 

 

「だがまだ足りないのがある……」「そうだな。冷静に考えれば、RPGにおいて必要な役職……」

 

テルと唯子が呟いた。

 

「えーっと、何なのか分からないんだけど……」

 

「なんだ分からないのかヒナギクくんは……」

 

ヒナギクだけが困惑している中で唯子が説明する。

 

「こういった類のゲームはどんな時でも回復役が必要なのだよ。 薬草で地道に回復していては埒があかないからな」

 

事実上、シミュレーション系のゲームではお決まりと言ってもいいほど回復役がいる。

ゲームにおいて、戦う側も体力が回復できることは戦力的には優位に立てるのだ。

 

「でもそんな魔法使いみたいな人いるかしら?」

 

ヒナギクが至極当然なことをいう。 しかしテルにはいささか心当たりがあった。

 

(伊澄が一番適任なんだろうけど、他言無用って言われてるからな……)

 

 

そう思いながら教会の前に行くと一人の少女がいた。

 

 

無論、伊澄であった。

 

「ってオイッ!!」

 

「あら、テルさま……」

 

 

突然のツッコミに伊澄はゆっくりと振り返りテルたちを見て言う。

 

「知り合いか、テルくん?」

 

唯子が不思議そうに尋ねてくる。

 

「まぁな……」

 

「そうか……」

 

テルが頷くと唯子はそのまま黙り込んだ。

 

「また迷子なのか?」

 

その問いに伊澄は首を振って見せた。

 

 

(えーっとだな、こういった場合は……)

 

テルは考える。 伊澄が迷子以外の事で、このような場所に来るという事はだ。

 

一つの案が浮かんだ。

 

 

「あまり近づかない方がいいですよ、皆さん……」

 

言う前に伊澄が袖で口元を隠す。

 

「あらどうして?」

 

「それはここが危険だからです……」

 

伊澄があからさまに危険だと、目を細めてヒナギクに言う。

 

(またか、またお前は悪いクセを……)

 

ちょっと勘弁してくれといった感じのテル。 伊澄の一人でなんでも抱え込む、頑固はなかなか治りそうにない。

 

 

「だったら尚更引けんな……」

 

「そうですね。 危ないんなら尚更助けに行かないと行けないし……」

 

「………」

 

ヒナギクと唯子の言葉に伊澄は面くらったようだ。

 

「危険なので近づかないで下さい」

 

「「「いやだ」」」

 

三人が同時に即答。

 

 

「実は危険じゃないよ~って……」

 

 

「「「なら問題ない」」」

 

またしても即答。 伊澄も流石に言葉詰まる。

 

「皆さんはナギと同じあまのじゃくです……」

 

「オイオイ、あいつと一緒にするなよ」

 

伊澄もテルも同時に溜め息をついた。

 

「今回はそういう仕事なんだろ?」

 

 

伊澄は何も答えない。 だがしかし、一瞬だけ首を上下に動かしたように見えた。

 

 

「俺達にも引けない理由があるからな……前回同様、巻き込まさせてもらうぜ」

 

「はぁ……分かりました」

 

今回も伊澄が折れるしかないようだ。

 

 

 

「ゲームだったらここで『賢者伊澄が仲間になった!』みたいなのがでてきそうだな」

 

伊澄が仲間になったのを見てか、唯子が呟く。

 

「まぁ、この戦力なら大丈夫だろ。 バーサーカーが二体いれば……」

 

 

ゴキン!

 

即座にヒナギクの鉄拳がテルの後頭部に炸裂する。

 

 

「不愉快な事を言ったかしら?」

 

「会長。 なんでもかんでも暴力で解決するのは良くないかと」

 

頭をさすりながらテルが言うがヒナギクは無視だ。

 

 

「ふむ。 私が狂戦士だというのは頂けないな、こんなにも可愛らしいというのに……」

 

「唯子さん、自分で言いますか……」

 

「しかし実際見ろヒナギクくん。 この集団はどう見ても女の割合が高いぞ? 両手に華じゃないか?」

 

 

「トリカブトとハエトリ草がいるパーティーじゃねぇか」

 

バキッ!

 

「不快極まりない言葉よ……」

 

「私もその言葉に気が障った。 殴ろうヒナギクくん」

 

2人はテルに対し、怒涛のラッシュをかける。 跳び蹴りから関節技、更にはテルを天高く放り投げ、空中ツープラトン。

 

ドゴッ!という轟音とともにテルは地面に頭から突き刺さった。

 

 

「息がピッタリですね……」

 

「息がピッタリですね……」

感嘆の言葉を贈る伊澄。テルはもはやライフが1という瀕死に限りなく近い状態になっていた。

 

 

「さて、そろそろ中に入ろうではないか」

 

唯子が髪を片手でバッと靡かせる。

 

一同もやる気のある表情を見せる。

 

 

今まさに彼らの冒険が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

とその時。

 

「貴様ら、こんな所で何をしている?」

 

 

不意に後ろから聞こえたのは聞き覚えのある声。

 

 

乙葉 千里である。

 

「まぁ千里さま……」

 

「む、女はあの時の奴か……」

 

千里は伊澄の存在に気付いたのか、視線を伊澄に向ける。

 

 

が、やがて興味を失ったかのようにフンッと鼻を鳴らすと視線を背けた。

 

 

「むっ、貴様は!!」

次に視線をテルに向け、怒りの表情を表した。

 

「俺の邪魔をした奴か!」

 

テルはいきなり指を指されて頭にクエスチョンマーク。

 

 

「え? 誰? あ、斎藤くん? なに、まだあの金魚デカくなってるの?」

 

「ええい! しらを切るか!忘れたとは言わせんぞ!」

 

事実、テルは千里の事をあまり覚えていなかった。

 

理由、あの時は無我夢中だったためだ。

 

 

「今ここで貴様を殴らなければ、俺の気が収まらん!」

 

千里がくわっと目を見開いてテルに殴りこもうとする。

「下がれこの下衆が……」

 

その毒づきに反応したか、千里が拳を緩めた、いや、止めた。

 

「貴様、何故此処にいる……」

 

千里は先ほどより不機嫌な表情になり、その声の主を睨みつける。

 

視線の先、それは唯子だった。

 

「私が言った事が分からんか、下等生物」

 

普段、凛とした態度をとっているだけにそのセリフは今までの唯子とはかけ離れていた。

 

「貴様が呼吸するだけで世界中酸素の無駄だ……温暖化の原因になっていることが分からないのか木偶の坊」

 

「貴様こそなんだ、俺の視界に入らないようにするべきだ。今すぐ消えてくれ」

 

 

二人が火花を散らす。 まさに一触即発状態。 バルカン半島みたいだ。

 

 

「会長」

 

「なにかしら……」

 

テルの一言に黙って反応することしか見せないヒナギク。

 

「奴らの関係はなんだ?」

 

「白皇であの二人を知らない人は居ないわよ……悪い意味で」

 

若干、呆れたようにヒナギクが続ける。

 

 

「千里さんと唯子さん、何かとケンカが起きるのよ。 日常茶飯事なくらい。 唯子さんの常識論が通じないのよ、千里さん、基本アレだから……」

 

 

アレとは恐らくバカ、若しくは自己中な所だろうか。

 

「簡単に言い表せば『犬猿の仲』ね」

 

「なるほど、分かりやすいな」

 

テルも頷く。

 

 

視線の先では、未だに二人が睨みを利かしていた。

 

 

「ふん、まぁいい……ヒナギクくん。 さっさとこの中の用事を済ませてしまおう」

 

「むっ……」

 

くるっと翻した唯子に千里は眉をひそめた。

 

「貴様らはこの教会に入るというのか……」

 

 

「ああそうだとも。 その方が憎いあんちくちょうの顔を見ずに済むからな……」

 

 

「それは俺の事か、ならいいだろう……俺も貴様らについて行ってやる」

 

「は?」

 

一瞬の静寂の後、唯子が目を細めながら首を傾げた。

 

「貴様の邪魔なら俺は大歓迎だ。 それに俺はキングだからな」

 

「最後が意味わからん。 私は貴様のその意味不明な所が気に入らないのだ………」

 

「俺もだ。 貴様のその無駄に上から見下ろしているような態度、このキングを差し置いている……気に入らん」

 

 

この二人は何かと相容れぬ物なのだろう。

 

「流石に唯子さん、もうこの際勝手にしましょうよ。時間もないんですから……」

 

埒が明かないと思ったか、ヒナギクが唯子に声をかける。

唯子も少しばかり考えて頷いた。

 

「……分かった」

 

「ふん……」

 

千里も鼻を鳴らして収めた。

 

相変わらず二人は顔を見合わせない。

 

「会長」

 

「どうしたの?」

 

「なんか……大変そうだな」

 

「大変なのよ……」

 

 

深い溜め息一つ。 唯子はいつもの表情に戻り、一同も教会へと踏み出す。

 

 

 

今まさに、勇者達の冒険が始まる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

過去数千年前、古の大地より生れし王国の秘宝を手にしたその悪意は欲望のままに生きた。 そして、その欲望は肥大化し、世界のバランスを大きく崩し、世を混沌へと導きだした。

 

これはそんな欲望を阻止しようとする果敢な勇者達の物語――――。

 

 

「って、そんな設定のある内容でしたっけこれ?」

 

闇深いその迷宮ともいえる廊下を歩くのは勇者達一行。

 

彼はその一人。

 

 

まぁ変に肩っ苦しいのも何なんでスマートに進んでいきますと・・・・

 

このダンジョンを乗り越え、その奥にある執事のメダルを手にして綾崎 ハヤテは三千院家に復帰できるのだ。

 

―――これは彼にとって負けてはいけない、勝たなくてはいけない戦いなのだ。

 

 

―――心をつないだ仲間とともに必ず勝利を手にしなければならない戦いッッ

 

では紹介しようッ! 彼ら三人こそ!! 志を共にする彼の心強い勇者たちだッッ!!

 

「あーーーー! お宝はっけーんっ!」

 

勇者その1 雪路 

職業:世界史教師

特性:ダメ人間

必殺技:常時バーサク状態

 

「ダリーなぁ早く帰ろうぜーーー」

 

勇者その2 ワタル

職業:ビデオ屋店主

特性:へそ曲がり

必殺技:全52話のアニメ一気鑑賞!!

 

「なんか・・・ダンジョンってすごい暗いんだけど・・・」

 

勇者その3 ナギ

職業:ひきこもり

特性:不登校

必殺技:働いたら負けかなと思ってるッッ!

 

 

 

・・・・・あれ?人選ミスった?

 

押し寄せるのはもうビッグウェーブ並みの不安。

 

・・・・でも大丈夫、多少の欠点は補えているハズだ。 

 

「ギャーーー! トラップ!! うわーー!!落とし穴だーーー!」

 

「先生がまた崖に落ちていったぞ? ま、平気だろうけど・・・」

 

だって勇者だし。 

 

「な・・・暗いけどお化けとか出ないよな?な?」

 

余りある人選のはず!!

 

最終的には僕がカヴァーすれば万事・・・・

 

勇者その4 ハヤテ

職業:借金野郎

特性:不幸

必殺技:超不幸

 

 

「ダメぁーーーーーーーー!!」

 

ダンジョン内部にハヤテの絶望に近い叫びが木霊した。

 

 

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

場所は変わりまだ教会に入りたてのヒナギクたち。 先頭は伊澄、その後ろにはヒナギク、隣にはテルが、後ろには唯子と千里が付いてきている。

 

なにかと重苦しい雰囲気だ。

 

「会長。 いや、もといリーダー、もう冒険は始めながらにして終わっている気が・・・・」

 

「それは言わないで」

 

続けるな、と言わんばかりにヒナギクが肩を落とす。

原因となっているのは唯子と千里。 この二人は戦時のバルカン半島、ちょっとしたいざこざがあったら即戦争、のようなぐらいの仲の悪さであった。

 

「くそ、なぜキングであるこの俺がリーダーになれんのだ・・・」

 

「適任者はヒナギクくんに決まっているだろうが・・・クズ」

 

千里の呟きに唯子が最後にぼそりと毒突く。

 

もちろんこれを千里が聞き零す筈なく・・・

 

「貴様・・・小さくそのように俺を侮辱するとは・・・・」

 

「はっ、事実を述べたまでだ。 いやいや失敬、君は木偶の坊だから私の言葉は片方の耳から入って片方の耳から流されているのかと思ったよ」

 

お互いが不敵に笑いながら睨みを利かせる。 このような状態が先ほどから続いているのだ。パワーバランスもとい、パーティの機能は果てしなく機能しない。

 

「だいたい、四人パーティなのにすでに五人いることになっているのがまずアレだろ? 即効あの王様野郎を馬車に突っ込ませるべきじゃねぇか」

 

「馬車なんてないわよ・・・」

 

ヒナギクがテルに対して的確な突っ込みをいれる。

そんな険悪なムードのなか、一同は長い階段を下り、広い場所に出た。 

どことなく、寒気がする。 窓なんてないのに、冷えた風が周りを駆け抜けた。

 

「寒・・・」

 

「フン・・・」

 

テルが自身の服をさすり、千里は鼻を鳴らして耐える。

 

「・・・・生徒会長様」

 

「はい?」

 

なにか感じ取ったのか、伊澄がヒナギクに声をかけた。

 

「生徒会長様に渡さなければならないものがありました・・・」

 

「?」

 

一同が注目する中、伊澄がヒナギクに手渡したのは一本の木の棒。

 

「木・・・刀?」

 

手触りといい、独特のにおい、色を見て剣道をやっていたヒナギクは一目で分かった。

 

「ここから先は危険な予感がします・・・それをしばらくお貸しします・・・」

 

「ふーん」

 

軽く木刀を泳がせてヒナギクが呟く。

 

「これはかの天才刀鍛冶・・・名匠・正宗の作った最強の一本・・・」

 

伊澄は続けて言い放った。

 

「木刀・正宗です」

 

「……名匠も随分悩んだなオイ」

 

テルが木刀を見て呟いた。

 

「会長。 ちょいとその木刀、貸してくんね?」

 

テルがヒョイとヒナギクの正宗を掴み取る。

 

「あ、テルさま……止めておいたほうが……」

 

伊澄が言うのを聞かず、テルは正宗を手に取った。 その瞬間……

 

 

バチッ

 

「ん?」

 

体に走る謎の光。

 

バチバチバチッ!!

 

「え?」

 

先ほどよりも光の量が増していく……そして、

 

 

 

バリバリバリバリバリバリバリバリ!!!

 

「バリバリダーーーーーーーーッ!!」

 

弾けたようにテルが紫の電激に包まれた。

 

「正宗は適性のある人物を選びます。 今は生徒会長さまが主としているようです」

 

「ダメだったら電撃拒絶反応かよォォォォ!!!」

 

ゴトッと電撃が止んだ瞬間、テルは地面に倒れ込んだ。

 

「フンッ、面白いな」

 

テルの手から零れた正宗を広いあげた。

 

 

「さぁ正宗よ! キングであるこの俺を選ぶがいいッ!!」

 

 

高々と正宗を突き上げ、叫ぶ。 だが当然……

 

 

バリバリバリバリバリバリッッ!!

 

 

「ウオオオオオッッッ!!」

 

千里もまた紫の電撃に包まれ、轟沈。

 

 

「ふ…馬鹿だな……」

 

「私も思いますね……」

 

丸焦げ状態になった二人を見て、剣士二人は呟いた。

 

「まぁテル様用にちゃんと用意してますが・・・・」

 

「マジで?」

 

ごそりと何かを取り出した伊澄を見て、テルが仮死状態から跳ね上がる。

 

「はいどうぞ」

 

「おお!!」

 

と感嘆するテルが手に持つの布に包まれた棒。 テルが持っただけでもずっしりとくる質量。

 

テルは布を外し始めた。

 

「これは、伊澄家伝統のオリジナル霊媒刀・・・撃鉄(げきてつ)くんです」

 

「・・・・」

 

きりっとした目つきで伊澄は言うが当のテルはその物体を見て目を点にしていた。

 

布から解き放たれたのは一本の黒い棒。 それは伊澄は撃鉄といった。

 

「伊澄・・・・」

 

「はい・・・」

 

テルの言葉に伊澄が応える。

 

「これどう見ても鉄パイプじゃねぇーか?」

 

「撃鉄です。 霊剣です」

 

「いやでもなんか先っぽ明らかになんかの一部だったみたいにボルトの穴あるし・・・」

 

と棒の先っぽはいい感じにくの字に曲がっており、あからさまにそこらから拾ってきた感がある。

 

「あと錆びくせーぞこれ? 大丈夫か?」

 

「霊剣なのでご心配なく・・・」

 

「どう見ても紛いもんだろォォォォォォ!!」

 

テルは鉄パイプもとい撃鉄を地面に叩きつけた。

 

「一応主人公だぞ俺!? なんで会長にはとっておきのジェノサイドキャノンで俺はそこらへんの鉄パイプなんだよ! 」

 

「ふひ・・ひ、ひたいれふ・・・」

 

額に青筋を浮かべてテルは伊澄のほっぺをつねった。

伊澄は涙目を浮かべる。

 

「君は何をやっている・・・」

 

即座に唯子がテルの頭を殴りつける。 テルはごろんと地面を転がった。

 

「あれ、唯子さん・・・」

 

ヒナギクは唯子の手に握られている正宗を見て唖然としていた。

 

「ほう・・・なかなかの名刀だなこれは・・・・」

 

「唯子さまもまた正宗に認められる素質を備えていたということでしょうか・・・」

 

正宗を眺める唯子を見て、伊澄も少し考えたような表情だ。

 

「だったらこれは唯子さんが持った方がいいですよ。 私はそれが一番唯子さんに相応しいんじゃないかって思いますよ」

 

ヒナギクが笑顔で唯子に言う。 別に悪いことではない。 こうすることで、唯子も持ち前の剣術を活かせるし、パワーバランスを図ることができる。

 

「・・・・・」

 

しかし、唯子はすこし考えるとその手に持っている正宗をヒナギクに手渡した。

 

「これは・・・一番キミの手にあるのが似合っているよ・・・」

 

「え・・・・」

 

呆気手に取られるヒナギクをよそに、唯子は軽く笑うと身を翻した。

 

「うむ。それがいい・・・そうすれば鬼に金棒というものだ・・・・」

 

「ちょ、それどういう意味ですか!?」

 

はっは、と高らかに笑う唯子。 一瞬だけ和んだかのような雰囲気だ。

 

「オイオイ・・・主人公の武器が錆びた鉄パイプって・・・」

 

「ふむ。 時にテル君よ、そんな装備で大丈夫か?」

 

「大丈夫だ。 問題ない・・・ってんな訳あるかァァァァ!!」

 

と唯子に見事な突っ込みを見せるテル。 

 

「こりゃあれだな。 『そんな装備で大丈夫か?』と聞かれたイ―○ックが『一番いいのを頼む』と言ったことに対して武器がうなぎパイだったみたいな・・・・」

 

「・・・・!!」

 

テルが一人ぼやいているさなか伊澄だけがその場の異変に気付き、目を細めた。

 

「む・・・」

 

やや遅れてなぜか千里が辺りを見渡す。

 

「皆様・・・来ます」

 

「そのようだな・・・」

 

「オイオイ、伊澄はともかくなんで馬鹿王子まで異変に気付くんだよ」

 

「キングの感だ」

 

テルの言葉に対して、千里が当然のように返す。

 

「一体、なにが来るっていうの?」

 

ヒナギクも思わず正宗を構えた。

 

・・・・・・・・・ボゴ。

 

「ん?」

 

そんな奇怪な音がした。 地面から。

 

地面から突き出たもの、それは腕。 

 

「うげ・・・」

 

テルは思わずその光景に顔色を悪くする。 地面から出てきた腕はさらに伸び、やがて頭、胴体、足とそれぞれ部位があった。 肉はなかったが。

 

「・・・ゾンビか?」

 

「見てるこっちは勿論のこと読んでいる読者たちも気味悪だと思ってますよ」

 

唯子とヒナギクはしかめた顔でなお冷静だ。

 

「伊澄、これが仕事の内容か?」

 

「はい。 どうやらこの教会には昔から悪霊の類が住み着いているらしくて・・・」

 

テルの質問に伊澄は頷いて答える。 

 

「悪霊っつっても前みたいな幽霊の類じゃねぇよ。 つーか生きる死者の代名詞のゾンビじゃねぇか」

 

「さぁ、そこら辺は分かりませんね・・・」

 

「オイオイ・・・・」

 

なんともアバウトな伊澄に対してテルは深くため息をついた。

 

「・・・・・」

 

(確かに悪霊と死者は関係がない訳ではない・・・でも依頼内容と異なる。 なら、この教会にそれ以外の脅威がこの異常を引き起こしている可能性がある)

 

伊澄はただ冷静にこの異常な状況の分析をしていた。 

しかし、目の前にいるのは異なる依頼内容だとしても人々に迷惑をかける恐れのある脅威。

 

「・・・・」

 

冷静な顔つきで懐から札を取り出し構える。 戦闘モード体制だ。

 

しかしその伊澄の前を遮るかのように一本の刀が前に現れる。

 

「ふむ。 流石に驚いたがなんとか理解したぞ伊澄くん」

 

そう言って竹刀を構えるのは唯子。

 

「唯子さん一体何を・・・」

 

ヒナギクが驚いた顔で肩を鳴らしている唯子を見る。

 

「無論、時間稼ぎのつもりだが? ここは我々が食い止める」

 

「そんな! 唯子さんでもこの数は!!」

 

ヒナギクは目の前のゾンビを見る。 地面から出てくるゾンビは数を増し、すでに数は百を超えたようなものだ。

 

「なに、強い戦力がここで足を止めるわけにはいかないだろう。 それに、この状況はここだけではな・・・」

 

「・・・ッッッ!!」

 

ヒナギクも伊澄も、この言葉にはっとなる。 この現象が起きているのはこの場所だけではない。 自然とナギやハヤテたちの方でも同じ現象が起きてる可能性がある。

 

「そうだな」

 

今度はテルが前に出る。

 

「幸い、先に進む道はあのゾンビどもの後ろとかにはねぇ、あのすぐ横だ」

 

「しかしテル様・・・!!」

 

伊澄が小さな声を上げる。 伊澄も流石に心配だと思っているのだろう。

 

「誰も死にに行くわけじゃねぇんだ。 生きてりゃまた会える・・・俺の実力は知ってんだろ?」

 

決めるかのようにテルは親指を突き立ててみせた。 伊澄はそれを見て

 

「ええっと・・・分かりません・・・」

 

「ああ、そうだよね・・・」

 

オロオロしながら応える伊澄にテルはまた肩を落とした。

 

「まぁいいや、取り敢えず行け、ついでに会長、お前は伊澄の護衛だ」

 

「なんで私?」

 

「こいつはなにかと無茶するんだよ。 とくにこう言ったことに対してはな・・・後、ハヤテたちは狙われている。 

 

だったら目的の奴等はこれ以上の危険に巻き込まれてる可能性がある」

ヒナギクもそのことには納得して頷く。

 

「その勢力を蹴散らすためにその刀はお前にあるんだ」

 

「・・・わかった」

 

ヒナギクは再度頷き、伊澄とともに先を行く。 伊澄も渋々納得したようだ。

 

「・・・君もなかなか頭が冴える様だな。 今の状況の予知は、私が言う予定だったのに」

 

腕を組んだ唯子はそう呟いた。

 

「別に・・・ぼやけた記憶なんだが、その経験が生きてるだけだ」

 

「・・・・?」

 

一瞬だけ見えたテルのその横顔を見て疑問を浮かべる唯子だった。

 

「んで? どうするよこの数?」

 

テルは目の前のゾンビの大群に指をさす。 もう数は増えてはいないようだ。

 

「ふむ。 一人約50といったところか・・・」

 

「なら二人でだいたいやれるな」

 

「いや! 俺が100だッッ!!」

 

「アレ? バカ王子?」

 

「ふん、貴様らだけに死にに行かせるわけにはいかんのでな!」

 

腕をぐるんぐるんと回して気合いを入れる千里。 前をいく千里に対し、唯子が呟いた。

 

「別に死ぬつもりはないのだが・・・・できれば貴様だけこの場で消えてくれ」

 

「なにィ!?」

 

またしても睨みあう。そんな事をしている場合ではないというのに。

 

「まぁそろそろあいつ等の相手してやんねぇとな。 待ちぼうけてるぜ?」

 

目の前ではゾンビたちがうめきながらこちらを見つめている。 非常に気味が悪い。

 

「そうだな。 そろそろ行くか・・・と、言いたい所だが」

 

「あん?」

 

「もう既にバカが突っ込んで行ってるぞ」

 

「ウォォォォォォオッッ!!」

 

視線を戻すと、千里が雄たけびを上げながらゾンビの集団に突っ込んで行くのが見えた。

 

「・・・・」

 

テルは頭をぼりぼりと掻きながら一つため息をついた。

 

「見なかったことにしよう・・・」

 

そう言い、彼は構えるのだ。 自分のこれからの相棒を。

 

「ふむ」

 

唯子もまた竹刀を構える。

 

「さぁて、楽しい楽しいド○クエもびっくりの戦闘の始まりだ」

 

3人の戦士たちは一つの戦いの中へ・・・・

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