ハヤテのごとく!~another combat butler~ 作:バロックス(駄犬
缶けりとはまた懐かしい遊びですね。
それは白皇学院、昼休みの出来事。
「あ~あ、最近暇だなぁ……」
太陽も真上に登り、弁当も食べ陽気な眠気がやって来る昼休み。
教室にてナギが指でペンを回していた。
「どうしたんですか?」
ハヤテも少しばかり気になったかナギに訪ねる。
「ん~、学校の昼休みってさぁ、こんなつまんないとは思わなかったんだよ」
「そうですか? 僕は楽しかったですよ? 色んな事をやらなきゃならなかったんで大変でしたけど……でもその中で楽しさを見つけてたというか……」
「な、なにをやってたんだ昼休みに……」
「別に大した事じゃありませんが、昼休みには暇があれば街の飲食店のアルバイトやってました」
「お前昼ぐらいちゃんと食べろよ!!」
ナギが突っ込むがハヤテはケロッとして、苦にも思わなかったような表情だ。
「あとはですね……」
「いやもういい」
まだ話の続きをしようとするハヤテをナギが手を翳して止める。
「昼休み……か。 青春時代はそこで決まるという」
「いや、そういうのなら運動とか部活動にも青春を駆け抜けれる要素はありますって」
「え~、運動はいやだな……」
体を動かす事はナギにとって嫌いな部分に入る。
この前のマラソン大会だって練習しても300メートルしか走れなかったのだ。
ちなみにマラソンは白皇の敷地内一周である。
「マラソンして少しは体力はつきましたよ?」
「だろうな。 そうだと思ってこの前のダンジョンは走りまくったさ。 でも体力が上がった所か、以前より落ちた気がする」
「簡単な話だ」
ナギの後方で声がした。
「なんだテル。 一時間目から寝てるから、昼も寝てると思ったのに……」
「なんか平和な学生談義してるから俺も乗っかろうと思ってな……ていうかいつの間にか昼なんだな」
涎を拭き、体を捻って関節からポキッと音が鳴る。
「それでテルさん、分かるんですか?その体力低下の理由」
「おう」
ハヤテが話を戻し、それにテルが頭を掻きながら答える。
「そういう持久系はな、少し間を開けるとすぐ元の体力に戻っちまうんだよ。 つーかお前、アレからまったく走ってないだろ?」
「う、うるさい!」
ナギは事実を突かれ、声を荒らげる。
陸上競技において一流の長距離選手達は常に走り続ける練習を行う事で長期的負荷に体が耐えれるようになる。
しかし例え1ヶ月走る練習をしてその時体力が上がっても、1ヶ月まったく練習をしなければ体力は必然的に落ちる。
プラスマイナスゼロだ。
「まったく、マラソン大会を機会に脱ニートすれば良かったんだよ」
「私は運動できてなくても、家に居ることが多くても、最終的に人を助ける事ができればいいと思っている」
「なんだその、平成ライダーの主人公にありがちなニートを人助けでごまかすやり方」
「バカ者!ライダーは世界を守ってるんだぞ!!偉いではないか!!」
「あいつ等たしかに人助けしてるよ? 偉いよ? 平和守ってるよ? でもさぁ、あいつ等さぁ、怪人くる以外の午前中とかホントなにやってんだよ? 五代 〇介もなにしてんの?100個以上必殺技考える以外に就職さきに考えろよ」
「いや、確かに平成ライダーはフリーターとか、修行とかやってる人多くて仕事してる描写あまりないですけど……」
ハヤテが冷静に突っ込むがテルは続ける。
「キャラ付けだかなんだか知らないけどさぁ、子供が仕事なんかにしないで『俺ライダーだから関係ねぇし』みたいな事になっちゃ困るんだよ。少しは探偵とか新聞記者とか万事屋を見習え!!」
「Wと龍騎ですか?でも万事屋はライダーじゃありませんよ?」
「たくよォ……イケメン揃えればなんとかなると思ってやが――」
「って一体なんの話だァ――――ッ!!?」
グサッ!!
「ア――――――ッッ!!!」
ナギはテルの額に思いっ切りペンを突き刺した。
「何してくれてんのお前! ちょっとハヤテェ! 血出てないコレ!? 脳みそ的なものとか中から出てないコレ!?」
「あわわ……」
額を両手で抑えながら床を転がるテルにハヤテが慌てる。 幸いにケガはなかった。
「それぐらい動ければ大丈夫だろ」
「なんかこのやり取りも久し振りに感じますね」
腕を組んでフンッと鼻息を鳴らす……そして
「話を戻さないとな」
―閑話休題。
「昼休みかぁ……」
額に絆創膏を貼ったテルが腕を組んでうーんと唸る。
「なんでしょうね……」
「ふむ……テルよ、何か楽しい事を提案してくれないか?」
「そうだな……」
ナギとハヤテも唸る。テルは少し考えていたが、教室を見回し、何かを見つけた。
それを拾い上げる。
「なら」
テルはその拾い上げた物体をナギの机に静かに置いた。
カタッ。
置かれたのはアルミ製の缶。
「缶蹴りをしよう」
「「…………」」
「昼休みは缶蹴りだな。 コレ決定」
「「はい?」」
しばらく沈黙していたハヤテとナギが同時に聞いた。
「昼休みいっぱい使って缶蹴りだ。 いいじゃねーか。 小さい頃はよくやったもんだろ」
「テルさん。 三人でやるんですか?」
ハヤテが恐る恐る聞く。 テルはまさかと首を振った。
「いや、知ってる奴ら全員だ」
「また大規模な缶蹴りですね。 まぁ人数は多いほうがいいですこど……」
「エエエッッ!? お前らマジでやる気してんのかよ!?あとさりげなく私も入ってるし!!」
なにかとやる気なハヤテにナギが猛然と突っ込む。
「いや…お前以外に誰がいるんだ?」
「テルよ。 私もやらなければならないのか?」
「昼休みがつまらないと言ったのはどこのどいつだ」
「いや、私はあんまやったことないし」
「僕が教えます。 楽しいと思いますよ」
「むぅ……」
ハヤテに言われてナギは眉を寄せながらも了解した。
「よし、じゃあメンバー集めねぇとな。昼休みは有限だし」
「でもどうしますか? 僕らの知り合いって……」
「あのやかましトリオとかワタルとかいるだろ」
テルは缶を片手にダルそうに言った。
まぁそれぐらいしかいないのもまた事実。
「じゃあ僕が言ってきますけど、どこに集合するんですか?」
「いや、外しかないだろ……」
ナギが当然のように言うが、テルは口元をひきつらせてニヤリと笑って床を指差した。
「ここ」
「え……」
ハヤテが目を丸くするなか、テルは薄気味悪い笑みを浮かべて高らかに叫んだ。
「第1回缶蹴り大会は……白皇学院の校舎にて開催だァァァ!!!」
〇
「缶蹴り大会をするそうだなテル夫くん」
数分後、暇人たちが見事集まってくれた。
「やはは、缶蹴りなんて久し振りだよ~♪」
「うむ。 久し振りに血湧き肉踊りそうだ」
泉と理沙が腕をブンブン回す。 お前ら生徒会はどうした。
「つーか、なんで学校の中で缶蹴り?」
ワタルがしかめっ面で床にある缶を眺めている。
「その方が楽しいからだ。 よし、ルールを説明する」
テルは楽しそうに説明を始めた。
ルールその1、範囲は校舎内。
ルール2、鬼は三人。
ルール3、鬼以外は逃げるもよし、集団でかかるのもよし、隠れるもよし。
ルールその4、缶を置く場所は鬼が決める権利がある。
ルール5、鬼に捕まったら誰かが缶を蹴るまで捕獲状態となる。
「ルール2は鬼が一人だとあからさまに不利と見てだ。 ルール4に関しては、あらかじめ缶がある場所が分かってしまうと、鬼側が対策を立てにくいためだ」
突然缶を見つけたらどうするか?判断力を試される場面だ。
その場で蹴りに行くか、仲間に連絡して作戦を考えるかだ。
「案外頭を使うな……でも鬼が結構不利だろ」
ワタルの言う事も一理あり、あらかじめ隠れていれば、鬼が居なくなったのを確認して蹴りに行けばいい。
「ふっ、甘いぜ。それを無くすためにこの鬼の接近を伝えるセンサーがある」
だがテルはこれについて既に解決していたようだ。
テルがポケットからセンサーらしき物を取り出した。
「委員長、これを持って離れてみろ」
「ふぇ?了解だよ」
離れるごとに電子音の間隔が緩くなる。
「有効範囲は3から4メートルってとこだ。 隠れてるだけじゃ面白くないしな。 じっとしてると速攻見つかるようにしておいた」
「また凝ったのを用意してきましたね……」
ハヤテは苦笑いしているがテルはふっと笑う。
「ちなみに提供は牧村先生だ」
よく見るとセンサーには小さくby牧村の文字が。
「これは燃えてきたな……」
とナギ。
「………」
ハヤテもなぜか屈伸運動。
「へっ、こういうのも悪くねぇな」
とワタル。
みんなやる気満々だった。
「あら、面白そうなことやってんじゃない。 私も混ぜてよ」
廊下の集まりに加わってきたのは雪路だ。
「雪路……たしか昼はテスト前の講習があるんじゃ」
美希が言うが雪路はフンッと鼻を鳴らす。
「んなの他の奴にやらせればいいのよ。 しかし懐かしいわね缶蹴りなんて」
「ほんとにアンタ教師か?」
すでに呆れ顔のテル。
「ふむ。 それなら私は追いかける側に回るとしよう」
いつの間にかハヤテの後ろにいた唯子がテルからセンサーを受け取っていた。
「好んでハズレくじを引きたがるな、アンタは……」
突然現れた事を意にも介さず、テルは言うが唯子はクスリと笑う。
「ハズレとは思わんよ。ただ、このほうが面白そうだ」
その言葉を聞くや、テルも少しばかり考える。
「なる程……それもそうだな。俺もやろう」
「なんという組み合わせッッ!!」
ナギが異質を見るような目を向ける。
ちなみに残りの鬼は泉という事に。
「テル夫くん、質問があります!」
元気良く泉が手を上げる。
「なんだ委員長隊員」
「アレ? 私委員長なの?隊員なの?」
戸惑いながらも泉は続ける事にした。
「こういうのはやはりヒナちゃんが許さないと思いま―す」
((((たしかにそうだ――!!!)))))
一同が気付いたかのように心の中で突っ込む。
「そういえばヒナギクがいねーな、仕事か?」
「そうであります隊長! 仕事は昼休みいっぱい使うという話をしてましたがヒナちゃんなのでそれまでに終わらせる可能性がありますです!」
「なんかなりきってるよ泉さん!!」
軍隊口調の泉に対してハヤテが突っ込む。
「なら、それもアリだ」
テルの言葉に一同(唯子以外)が驚きの声を上げる。
「見つからないか、見つかるか、まさにスリリングの連続だ。 まさにバイオハザードの追跡者、まさに大人の階段のぼるだよ」
「階段は関係ないだろ」
ワタルも突っ込みに入る。どうやら止める気は一切ないらしい。
ちなみにヒナギクが昼いっぱいに仕事をしなければならなかった原因は明らかに別にある。
「それじゃあ缶を置いたら随時メールを入れよう。 その次のメールが開始の合図だ」
そしてみんなが散っていく。
「でも見つかったらどうなるんだろう?」
廊下を歩くハヤテはそんな疑問を考えていた。
そしてメールが届き、缶が置かれたという情報がくる。
次のメールが開始の合図だ。
『♪~♪』
ほどなくして二回目のメールが届いた。
こうしてハラハラドキドキの血みどろ缶蹴り大会が今……始まる。