ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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第54話~叩いて被ってジャンケンポン~

様々なイベントが行われている白皇学院ヒナ祭り祭り。

 

男女が燃え盛るようなテンションで祭りを盛り上げる中、二人の人物がついに対峙した。

 

黒衣の少女と黒羽と三千院家の執事、善立 テル。

 

この二人の再開はこの祭りをどう変えるか。

 

血の舞い散る凶事へと変わってしまうのか・・・

 

 

 

「久しぶりだなオイ・・・こんなところで劇的な再会しちゃうなんて、これって運命なのか・・・?」

 

「・・・・・」

 

ニタァと浮かべた笑いに黒羽は視線をテルから外すことなく対峙を止めない。

 

「なんて言うと思ったかよ」

 

だが、テルはふざけた笑いを止めていつもより少し険しめの表情へと戻る。

 

「お前が居るってことは、当然仲間のアイツもいるんだよな? 」

 

「・・・・」

 

「返答は無し・・・か。 だが大抵の狙いは分かるぜ、どうせまたハヤテだろう」

 

まるで分かっていたかのようにテルは会話を進めた。

 

「もしかてお前もハヤテのコレか?」

 

真剣な顔でテルは自身の小指を立てる。 黒羽は首を傾げながら呟いた。

 

「貴方のその小指は一体何を表しているのかしら」

 

どうやら黒羽にはこの手の話題は通用しないようだ。 テルは少しだけホッとしたようである。もし本当にこいつがハヤテの追いかけならテルはハヤテを締める必要がるのだ。

 

「流石にまだ敵にフラグを立ててはいないか・・・」

 

「私は綾崎 ハヤテを探している。 前回同様、私の邪魔をするというのなら--」

 

黒羽の右腕が妖しく黒く光るとその袖の先から黒い刃が伸びてきた。

 

(オイオイ! こんな場所でおっぱじめようってのかよッッ!!)

 

咄嗟にテルは黒羽の戦闘行為に対して身構える。 まだ人が大勢いる中、こんなところで戦闘なんてあったらこの会場はパニックになるのは目に見えていた。

 

(やむを得ないか・・・)

 

とテルが武器をポケットに手を突っ込もうとしたその瞬間である。

 

「おー! テル、こんなところでなにしてるんや?」

 

突如聞きなれた関西弁が耳に飛び込んできたかと思へば、お面やら金魚やらの祭りグッズを大量に抱えた・・・ワタルと、何も持っていない咲夜だった。

 

「はぁ、はぁ・・咲夜、もう十分楽しんだろ・・俺にばっかり荷物を持たすな!」

 

ヘロヘロになりながらもワタルはその大量の祭りグッズを持ちながら咲夜に不満を言う。 

 

ワタルの顔は全く見えなかった。 その両手にはワタルの顔が隠れるのに余裕なほどの大きな箱があったのである。

 

「ふふ・・・ワタル、夜のお祭りはこれからなんやで? そんなことで息を荒くしているんか? だらしないな~」

 

(あ~、ワタルってばなんて不幸な・・・)

 

ここまで来ると咲夜にこき使われるワタルを見ていると同情をしたくなる場面だ。 

 

「ん・・・? アレ、もしかしてこの人・・・」

 

急に咲夜の表情が変わる。 さっきまでのギャグモードが嘘だったかのように顔を微妙に歪ませた。

 

--その瞬間。

 

「--ッッ!!」

 

咲夜の顔を見るや、黒羽は即座に刃を構えてゆっくりと咲夜へと歩み寄ろうとする。 

 

咲夜も恐怖で顔を変えてすぐさま刃を避けようとするが、その刃は途中で阻まれた。

 

そのテルの左手によって。

 

「オイオイ・・・問答無用だな、前に見た人間は情報を漏らされるのが怖いから口封じか?」

 

ポタ・・・。

 

とテルの素手で押さえられている黒い刃を伝って赤い液体が地面へと零れ落ちる。

 

「テル・・・アンタ」

 

「そこまでだ咲夜・・・これ以上はこの領域に踏み込むには、それ相応の覚悟がいるぜ?」

 

「あ? 咲夜? おいなんで足止めてんだよ。 何か起きてんのかよ?」

 

咲夜のすぐ後ろでは状況を把握できていないワタルがいた。

 

「ここは俺に任せてくれ。 大丈夫だ、私にいい考えがある」

 

「どこのサイバ○ロン戦士の司令官やお前は!」

 

「心配すんなって、別に伊澄も呼ばなくていいからお前らは黙ってこの祭りを楽しんで来いよ。 二人とも意外に似合ってるんだぜ?」

 

「こ、こらぁ!茶化してる場合か!?」

 

状況が状況だけに咲夜はいつもと雰囲気が違う。 だが、テルはその時でもいつもと変わらないその姿は不安を払ってくれていた。。

 

ましてやこの男の事だ。なにかしら策があるのだろう。 どこか抜けていてもしっかり約束を果たすと信じていると咲夜は悟った。

 

「もうウチは知らんで!? 爆発でもなんでもしてまえばええんや!!」

 

「ハッ! その設定忘れてた!! オイコラ!なんで思い出させるんだよ! こっちは漸く忘れかけてたところなのによぉ!」

 

そんなことを叫びながら咲夜に訴えるが咲夜は顔を少しだけ赤くしながらワタルを引き連れてその場を去って行った。

 

二人の姿が見えなくなってから、意外にも黒羽が呟いた。

 

「・・・なぜ」

 

「あん?」

 

「・・・なぜわざわざ二人を逃がすようなことを。 あの少女の力を借りて、私と戦うことも出来る筈」

 

戦術的思考において、彼女黒羽の能力はその手の類のものでなければ対抗するすべはない。 だが、その伊澄とのつながりがある咲夜を逃して、しかも増援を要求しないその行動に、黒羽は理解ができなかった。

 

「・・・老若男女、日ごろの疲れも忘れて楽しんでいる華やかな舞台に刃は・・・無粋っていうんだよ」

 

その台詞と共にテルは黒羽を睨み付ける。 そうすると黒羽は握られたその刃を腕の奥へと仕舞った。

 

「どうせなら誰も居なくなった時間帯にやろうぜ・・・一般人を巻き込むなんて真似は、俺がさせねぇ」

 

--別に無関係な奴を巻き込む必要はないだろ!!

 

「・・・同じこと言う」

 

「あ?」

 

「彼も、あなたと同じことを言った」

 

黒羽が思い出したのは、以前木原に言われた言葉だ。 無関係な人間を巻き込むことを極端に嫌う木原。 木原とテルは似た言葉を発していた。

 

「それは珍しいな。 俺と同意見の奴なんて、同じ匂いがしやがる・・・俺と同じくて、偏差値が低いのかもな」

 

フッと小さく笑うとテルはポケットから1枚のハンカチを取り出し、その傷ついた左手に巻きつけた。

 

ギュッと縛って止血。

 

「だがどうしてもお前が我慢できず勝負がしたいというのなら・・・一つだけ手がある」

 

「・・・何?」

 

「それはだな・・・」

 

 

 

 

一方その頃・・・。

 

「まずったな・・・まさか崖から落ちるなんて・・」

 

頭を摩りながら体を起こすのは、まぎれもなくハヤテだった。

少し前に、彼は虎鉄という変態に追われていた。 しつこく警察に通報してしまいたかったが相手も変態なら現在の自分も変態のように女装をしているため通報返しを食らう場合があったためだ。

 

そして運よく彼を巻くことができたのは、たまたま崖の下に転落したからだろう。 ラッキーだ。

 

「これでどうにかあの人も巻くことができたし良か・・・・うわあああああああああ!!」

 

言葉を言い切り安堵するのもつかの間、彼は自分の姿を見て驚いた。

 

何故だろうか、一体なんの力が働いて彼はこんな姿になってしまったというのか・・・。

 

先ほどのメイド服姿にウサギの耳とふりふりのミニスカートに変わっておりさらに恥ずかしい仕様になっている。

 

(どうしよう・・・・服を隠すマントもなくしちゃったし・・・こんな・・ミニスカなんて・・・)

 

顔を恥ずかしさで赤くするハヤテ。 災難に災難が重なった結果、超ど級の災難がやって来た。

 

「一体どうすれば・・・」

 

「ハァ・・・ハァ・・・」

 

ハヤテが悩んでいた時、近くで荒い息が聞こえてきた。 その聞こえる方に視線を向けると・・・

 

浮いた小さな人形がそこに居た。

 

ドゴッ!

 

「ぐはっ!」

 

と人形の頭部をすかさず殴るハヤテ。 殴られた人形はよろよろと浮かび上がった。

 

「なななななんなんですかあなたは一体!?」

 

「この時代の奴はパンチを食らわしてから人に名前を聞くのか?」

 

「え?」

 

その人形からはオッサンじみた声が感じるのを聞いたハヤテは落ち着いて人形の言葉を聞く。

 

「そう、いかにも! お前に散々女装をさせているヒナ人形の呪い、人形師のぜぺっとじゃ!!」

 

ガシッ! 

 

「むぐっ!?」

 

そう言い切ったのを皮切りにぜぺっとの顔がハヤテの手に掴まれる。 

 

「そうですか・・・あなたを絞め殺せばこのバカな呪いも解けると・・・」

 

ミシミシ・・・と人形に加わる握力が強くなる。 

 

「ぬぉおおおお待て待てーーーーー!!」

 

「誰が待つか! ヒィイイイイイイトォォォ! エーーーーーーーーン・・・」

 

ハヤテが某ガ○ダムの真似でぜぺっとを握りつぶそうとした瞬間であった。

 

ピロロロロロ!! 

 

突如ハヤテの携帯が鳴る。 それを聞いたぜぺっとは慌てた様子でハヤテに尋ねた。

 

「ほれ!! 電話じゃ。 電話が鳴っておるぞ!!」

 

と苦し紛れにぜぺっとは言う。 ハヤテも出ないわけにはいかないのでぜぺっと片手に携帯電話を開いた。

 

(マリアさんからだ・・・)

 

「はいもしもし・・・」

 

この電話でハヤテはナギが誘拐されたことを知る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けんか・・・それは男に限らず、女でも、人外でも行われる争い。

 

ケンカ・・・道中歩く男たちのストリートファイト。

 

喧嘩・・・昔の人はよく言いました。 喧嘩は祭りの華だと。

 

 

「さぁ張った張った!」

 

「今日もこの祭りでスゲェー喧嘩が始まるって!?」

 

「しかも組み合わせはなんと男と女!?」

 

「不公平じゃねェのかい!?」

 

「ところがどっこい! その女がべらんめぇにつぇのよ!!」

 

「なんでも女と対戦した奴が一発でKOにされちまったんだとさ!」

 

「ホントかい!? コイツは祭りらしくなってきたじゃねェか!!」

 

 

白皇学院の敷地内では、一組の男女を囲んで人だかりができていた。 何やら、ワイワイ騒いでいる。

 

「む? 辰也殿、なにやら辺りがざわついているようであるが・・・」

 

「そうだなバルト・・・江戸に喧嘩は祭りの華とはよく言ったもんだ。 見物してこうじゃねェか」

 

もとい、出店を回っていたバルトと辰也。 喧嘩の噂を聞きつけた二人もその人だかりの中に加わっていた。 

 

「どれどれ・・・どこのどいつだ・・」

 

と辰也が身を乗り出してその中心の人物を見て、彼は口をあんぐりと開けた。

何故ならそこにはテルが黒羽と向かい合っていたからである。

 

「さぁてと・・・そろそろ始めようじゃねェか」

 

「・・・・」

 

テルが静かに動かない黒羽にとニヤリと笑いながら言い放った。

 

「俺たちの喧嘩・・・叩いて被ってジャンケンポンを!!」

 

 

 

 

『叩いて被ってジャンケンポン!』とは?

用意するもの・ピコピコハンマー、ヘルメット。

 

 

①ジャンケン

   ↓

勝った方がハンマーを持って殴りかかり→ヘルメットで防がれたらセーフで再びジャンケン

     ↓

ヒットすれば勝ち

 

 

と、祭りには全く持って関係ない遊びである。

 

「喧嘩、関係ねぇーじゃん!!」

 

と遠くで辰也の突っ込みが冴える。

 

「お、なんだジジィ、今回は見物人かよ。 ま、見ててくれよ俺たちの意地と誇りを賭けた闘いをな」

 

「スンゲーキメ顔使ってるとこ悪いけどやってることはただの遊びだからな!?」

 

「むぅ・・・これが日本のKENKAというものか・・・興味深い・・・」

 

 

バルトはバルトでコレが日本文化だと勘違いしていた。

 

この全く持っておふざけとしか言いようがない遊びに、テルは一つの光明を見出していた。

 

(奴は根っからの戦闘好きだ・・・当然、勝利に対する使命も、その覚悟も半端じゃない・・・)

 

普通に戦えば血の流れるのは防げない。 だが、このピコピコハンマーはプラスティックであり血はおろか、殺せても精々ゴキブリ程度だろう。 

 

いや、ゴキブリだって殺せないかもしれない。

 

とにかく、自身の安全も考慮したクリーンな喧嘩をテルは望んでいた。

 

「私がこれをする必要があるの?」

 

黒羽が無表情でテルに聞く。 テルは冷静に返した。

 

「お前が俺とヤリ合うには絶好の場だ。 それにお前は・・・俺が邪魔で仕方ない。 そうだろ?」

 

「・・・・」

 

「来いよバイオレンス女、意地もプライドも捨ててかかって来い」

 

まるでコ○ンドーの某少佐の台詞を吐くテル。 黒羽は用意されたハンマーとヘルメットを見つめ、一言。

 

「わかった」

 

戦闘受諾。 その言葉を聞いた瞬間、周りから歓喜の声が響き渡った。 

 

すると目の前に審判らしき男が現れ、マイクを持ってしゃべりだした。

 

「では、ルールは簡単。 一発勝負ではなく、誰もが楽しめる三本先取です」

 

手際良く説明を終えると審判はマイクを握っている手の小指を絶たせながら高らかに叫んだ。

 

「それでは始めましょう! 叩いてェ! 被ってェ! ジャンケン・・・」

 

テルと黒羽が右手を構えた。 そして・・・

 

「ポン!」

 

出された手はチョキとパーだ。

 

黒羽がチョキでテルがパーである。

 

「おっとセーフ!」

 

とすかさずテルはヘルメットに手を伸ばし、完璧ともいえる速さでヘルメットを被った。 

 

「なんと! テル殿のあの身のこなし、まるで水が流れるごとくッ!」

 

「お前はなにのんきに解説なんてしてんだよ!外人だから日本の文化に疎いはずだろうが!!」

 

意気揚々と解説をするバルトに対して辰也が素早くツッコむ。

 

(さぁこの超絶鉄壁にお前は勝てるかな・・・ってアレ?)

 

ヘルメットの下で笑っていたテルが顔を上げると、そこには信じられない光景があった。

 

 

「・・・・」

 

黒羽がピコピコハンマーを上へと振りかざしていたのだった。

 

 

「オイちょっと待て! よく見ろこれを! セーフだセーフ! 攻撃しても意味ねぇーから!」

 

とテルはヘルメットを指差しながら黒羽に伝えるがその黒羽のピコピコハンマーを握る手がギリッ! と力強く握られるのを見るとどうやら問答無用らしい。

 

 

そいて次の瞬間。

 

ドゴッ!

 

まさかのピコッという弾んだ音ではなく、大衆の耳に聞こえたのは豪快な破砕音。 ピコピコハンマーはへし折れながら、テルのヘルメットを粉々に砕いていた。

 

そして当のテルは見事に首だけ地面に突っ込んでいるという実に奇怪な光景だった。

 

「ウオオオオオオオオオオ!! やりやがった!!」

 

「ま、まさかの相手粉砕!」

 

「アイツ気絶してるぞ!」

 

「こいつはスゲェ! 最高の祭りだぜ! ヒュー!」

 

「FHOOOOOOOOOO!!!」

 

その場で見ていた観客たちも総立ち。 お祭り気分で楽しんでいた彼らは事の重大性を知らないため、この光景を見て驚きを隠せない。

 

 

「オォオイ! こんなのルール全然関係ねぇじゃん! つーかあのお嬢ちゃん何者だよォォォ!!」

 

「むぅ・・・これで祭りの女王が今宵誕生したという訳ですな・・・・くわばらくわばら・・」

 

「お前はさっきからふざけてんじゃねぇぇぇ!!」

 

その場は新しく生まれた伝説を前に驚愕の渦に包まれていた。 辰也とバルトが変な漫才をしながら、テルは一撃で埋まったまま。

 

「・・・・」

 

その輪の中から黒羽はひっそりと抜け出していた。 特に何も変わった様子はないといった涼しい様子で。

 

 

 

 

一方その頃、誘拐されたナギお嬢様はというと・・・

 

「だーかーら・・・何度言わせれば気が済むのだァァァ!」

 

ここ、人気のない物置にナギは居た。 そのナギは何やらふてぶてしい顔でなにやら怒鳴っている。

 

「私がコーヒーと言ったらカフェラテを持ってくるのだ! お前はブラックが飲めない主人に衆目の前でたっぷり砂糖とミルクの入れるという屈辱を主人に与えるのか!!」

 

 

「で、でも・・・!」

 

「でもじゃない! 今までどんな教育を受けてきたのだ!? 貴様それでも執事なのか!?」

 

戸惑いながらも呟いたその言葉でさえ、ナギによってさえぎられる。 変態こと、虎鉄はこの状況にとてもイライラしていた。

 

「いいか!? 主がグミを所望したら何も言わずにまず果○グミグレープ味、そして楽しさいっぱいもぎゅもぎゅフルーツ、お口直しにはシゲ○ックスをポケットに忍ばせておくのが基本だ!」

 

「ば、ばか! そこまで気が回れるかよ! しかもお前、人質という手前、そんなにダメだしされる覚えはない!!」

 

と怒りを爆発させ、ナギに自身の立場を自覚させようとする虎鉄。 しかしナギは腕を組みながら言い放った。

 

「ハヤテなら完璧にできるし、私は自分を誘拐したすべての誘拐犯にダメ出しをしている」

 

(なんて嫌な人質なんだ・・・)

 

 

(アレ・・・? なんかデジャヴを感じる・・・)

 

同時に天井にて張り付いていた木原も前回のナギと自分との扱いに似たのを思い出していた。

 

キリッと言い切るナギに虎鉄は一言も言い返すことができなかった。 それを見てかナギが聞いてくる。

 

「・・・ところでお前、なんでハヤテ呼び出そうと思ったのだ?」

 

「・・・お前に言われても分からんだろうが、持てない私が精一杯の勇気を出してアイツに告白したんだ・・・」

 

と虎鉄は少し声のトーンを落としながら続ける。

 

「一目ぼれだったんだ・・・本当に・・・可愛い女の子だと思って・・・でもアイツは・・・私の気持ちを・・本当の気持ちを裏切ったんだ!!」

 

「ふむ・・・」

 

「だからこそ私はあいつを捕まえてギッタンギタに・・・」

 

「あーもういい、だいたい分かった・・・まったく、随分と薄っぺらい愛だな・・」

 

途中で台詞をさえぎったナギの発言は虎鉄の怒りをさらに上昇させる。

 

「な、なにぃ!?」

 

「だってそうだろ? 所詮それは形だけが好きだ問うことだけ・・・心はどこにもないではないか」

 

ナギは怯まない。 そして決定的なことを虎鉄に言い放つ。

 

「もし今度ハヤテがなんかの原因だ真の女になってみろ! そうなったらお前は掌返してまたハヤテの前で愛をささやくのか!?」

 

(あれ・・・三千院 ナギって年齢いくつだっけ・・・?)

 

天井に張り付いている木原唖然としたままその光景を眺めることしかできない。

 

「いいかよく聞けこの愚か者メガ! だから貴様はモ テ な い の だッッ!!!」

 

 

ズキュウウウウウウゥゥゥウン!!

 

(たしかに・・・そうだッ)

 

虎鉄の中で・・・何かが弾けた。

 

(俺は愛という言葉を・・全く理解していなかった・・・海よりも深く、空よりも広く澄み渡るこの言葉・・・それが愛・・ッッ)

 

 

「ありがとう・・・目が覚めたよ」

 

「へ?」

 

ナギも突然の虎鉄の豹変ぶりに驚く。 先ほどのような荒んだ瞳はどこへやら。 今はまるで星屑をちりばめたような気持ち悪いぐらいの輝きを放っている。

 

バタンッ!

 

「お嬢さま!!」

 

と、扉が開け放たれ、外からハヤテが入ってきた。

 

「ふん、ハヤテ。 来るなと言っても来るとは・・・しょうがない奴め・・」

 

フフ・・・とナギは軽く笑った。 そしてハヤテは虎鉄と向き合う。

 

「虎鉄さん! おじゅ様に何かしたら・・・そのときは絶対に---!!」

 

「待っていたぞ綾崎!!」

 

「へ?」

 

突然の虎鉄の豹変ぶりにはさすがのハヤテも驚いていた。

 

「たしかにその通りだ・・・男と分かった途端逆上して、本当に愚かな男だ・・・だが今分かった! A型の私には、センチメンタリズムを感じられずにはいられない」

 

いきなりバッと両手を広げて、虎鉄はさらに続ける。

 

「初めて見た時から感じていた・・・やはりお前と私は、運命の赤い糸で結ばれていたようだ!」

 

「ちょ、ちょっとどうしたんですかあの人?」

 

「わからん・・・分かっているというのは、アイツがどうしようもなく残念な人間になってしまったということだけだ」

 

「zzzz・・・」

 

困惑しつつあるハヤテに呆れ顔のナギ。 天井はもう眠りたくてしょうがない男、木原が待機していた。 花提灯たれながら・・・

 

「だからこそ言わせてくれ・・・この胸の異常な高鳴り・・・まさしく、『愛』だ!」

 

「あ、愛!?」

 

物凄い台詞を平然と言った虎鉄は一気にハヤテに歩み寄り、手をガシッと握る。

 

「同性婚が認められているオランダに移住して・・・結婚してくれ綾崎ィィィイ!!」

 

ブチンッ!

 

「ばぁかかお前はァァァァァ!!」

 

「ぐはぁぁぁっ!!」

 

ドゴッゥ!

と、キックボクサーも認めざるを得ない見事なミドルキックが虎鉄の腹部に炸裂した。 

 

「ハヤテはなぁ! 身も心も全て私のものなのだ!! お前なんかに髪の毛一本だってやるものかバカたれぇぇぇ!!!」

 

 

(り、理不尽だ・・・私を説得したのって・・・あなたじゃありませんでしたっけ?)

 

薄れゆく意識の中、そんなことを思っていると天井から何か落ちてきた。

 

ドゴッ!

 

「げべらッ!!」

 

「うわ! 天井から人が!」

 

天井から落ちてきた物体は倒れ行く虎鉄の腹部にとどめと言わんばかりに激突した。 

土ぼこりを上がるがそれが晴れていくとそれは木原だった。

 

「む、誰かと思ったらロリコンではないか?」

 

「ん・・・? なんだよ父ちゃん・・まだ5時だぜ、もうク熊肉は飽きたぜよ・・・」

 

「なんで昔の人の言葉が入ってるんでしょうか?」

 

「しかもあの高さから落ちて起きる気が無いとは・・・取り敢えず、コイツは放っておき、帰るぞハヤテ! とても不愉快だからな!」

 

とナギは頭を掻きながら不機嫌そうにその場を後にしようとする。

 

「え? でもお嬢様、僕はまだ・・・・この人形師がかけたヒナ人形の呪いが・・・」

 

そう、ハヤテは昔の人形師のぜぺっとにより女装させられるという呪いを受けている。 その条件もまだ満たしていない中、帰るわけにはいかない。

 

「だったら・・・」

 

がしっ。

 

「へ?」

 

と目を丸くするぜぺっと。 ナギがその手でぜぺっとを鷲掴みしたのだ。

 

「お前もわたしのハヤテになにかちょっかい出す気か・・・・オイ」

 

ギリギリ・・・

 

「あ、ちょ!ヤベ! スイマセン! スイマセン! 特に何もないです! しません! そんなことしません!」

 

「だったらさっさと・・・ここからいなくなれぇーーーー!!」

 

とZガ○ダムのパイロットを沸騰させるように叫ぶナギは握りしめたぜぺっとを遠い空へと投げる。 

 

そうするとぜぺっとは啜り泣きをしながらしゅぽん、と何処かへ消えてそれと同時に

 

ボフン!

 

「うわ!」

 

先ほどまでのウサギヘアーもミニスカのメイド服も消え、いつもの執事服をハヤテは身にまとっていた。

つまり、納得はいかないが呪いは解除されたのだ。

 

「さてハヤテ・・・そろそろ帰るか」

 

「は、はい・・・お嬢さま」

 

と主に促されてハヤテも屋敷へと足を向ける。 呪いもなくなり、これで自由の身だ。 わざわざ時計塔に向かうという条件もなくなった。

 

(これでテルさんも爆発せずにすんだし・・・ま、いっか)

 

と心の中で納得して、彼は主の後を追う。もう祭りも終わりを迎えそうだ。このまま帰っても何ら問題はない。

 

しかし、彼は一つだけ・・・とんでもない事を忘れていた。

 

 

 

 

 

 

そして次回の話は今から数時間前に遡る。

 







後書き
黒羽さんは遊んでも最強でした。
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