ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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前書き
大抵分かってると思いますが、ボムさんはアナゴボイス以外にありえない。


第56話~混迷困窮のふぇすてぃばる~

「うわぁ・・・もう11時半だけどヒナギクさん大丈夫かな?」

 

時計塔の最上階、生徒会室を前にしてハヤテは一抹の不安を感じていた。 完璧主義者のヒナギクのことだ。 呼び出しておいて遅刻という宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の戦いを再現している訳ではないが。

 

取り合えずお怒りと言うレベルを簡単に超えているだろう。

 

(もしかしたら扉を開けて一気に一突き・・・とか)

 

しかし、時間をロスしている暇はない。 意を決してハヤテは扉を開けた。

 

「・・・ヒナギクさん?」

 

樫の扉を開くとハヤテの目に飛び込んできたのはソファに横になって寝ているヒナギクの姿だった。

 

「あ、えっと・・・ヒナギクさん・・?」

 

「ん?」

 

その声に気付いたのか、ヒナギクの瞳が開かれた。 

 

「あ、綾崎くん・・・」

 

 

――賑やかな祭りも終わり。 静まり返った夜・・・

 

――二人っきり?の誕生日会が静かに始まる・・・。

 

ドォォォォオォォォンッッ!

 

「なんか外がうるさいわね・・・」

 

「そうですね・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世界で誰よりも青春している時計塔の二人を余所に、こちらの夜の祭りはさらに過激さを増していく。

 

「ちくしょう、またそれかよ!」

 

舌打ちしながらもテルは足を動かして黒羽の狙いを定めにくくする。 黒羽は動いているテルに対して黒い槍を一斉掃射。

 

『おぅいぃ・・・あのお嬢ちゃん、なかなか別嬪さんじゃねェかぁ?さてはテメェの女かァ?』

 

「この世界のどこに恋人に槍をぶっ放す彼女がいる?」

 

ニヤリと笑っているかのようにボムが尋ねるがテルは冷静に返答。

 

物凄い勢いで襲いかかる槍は勢いよく地面に突き刺さっていく。 以前テルを串刺しにするほどの威力だ。 当たればすなわち一発KOだ。

 

「守りから転じて・・・ッッ」

 

躱しきったのを確認するとテルは即座に黒羽の懐に飛び込んだ。 そして愛刀・撃鉄くんMRK2を振りかざした。

 

「同じパターンはッッ!!」

 

ガキィンッ!

 

と響いたのは金属音。 黒羽に放った一撃は見事に左肩から飛び出た黒い物体に阻まれてしまったのだ。

 

(クソッ・・・またかよ!!)

 

一撃が通らなかったことに苛立ちを募らせるテル。 そしてその直後だった。

 

ドゴッ!

 

「かはっ・・・!!」

 

腹部に強烈な激痛。 見れば足。 黒羽は左手の刃でテルの武器を弾くと、そのまま体を反転させ強烈なミドルキックを炸裂させたのだ。

 

その威力は絶大で男であるテルを4、5メートルは軽く吹っ飛ばす。

 

「げほっげほっ・・・やってくれるじゃないの」

 

猛烈な腹部の痛みにせき込みながらテルは相手を睨み付けた。 あの変幻自在の攻撃と防御。 

 

(相手も間違いなく闘い慣れしてる・・・まる生まれてからその役割であることを命じられたかのように・・・)

 

まるで戦闘マシーン。 それがピッタリかのような力だ。 こちらは前回のような霊刀では無い分、有効打は見つからない。

 

「・・・なぜあなたは彼を守るの?」

 

「あ?」

 

突如として黒羽が口を開いた。 

 

「彼は・・・あなたとは関係はない。 また以前のように邪魔をするなら無駄に傷つくだけ」

 

「決まってんだろうが」

 

黒羽が紡いだその言葉をテルは答える。 

 

「アイツはダチ公だからだ」

 

「ダチ・・・?」

 

「ダチってのはかけがえないもんなんだよ。 くさい台詞かもしれねぇが・・・命の次に大切なものであり、時には命より大切なものだ」

 

「・・・・」

 

『ようはぁコイツがれっきとしたアレよ、ホモなのよ』

 

ブンッと鉄パイプを振るってテルは構えた。それと同時にボムにも危害が及びあらぬ方向へと飛んでいく。 そんなことも気に留めずテルはポケットに手を突っ込んで何かを探り出した。

 

「お前にはあんまゆかりのある言葉じゃないようだな・・・だったら見せてやるよ」

 

そこから取り出したのは1枚の札。  梵語がしっかりと刻まれたそれを鉄パイプに巻きつけていく。

 

「今日は命の次に大切な日だ。 その覚悟、よく見てろや」

 

ニヤリと笑みを浮かべたそれを皮切りにテルは駆け出した。 黒羽は同じくけん制のため、黒い槍を発射する。

それをテルは同じく躱していく。 ここまでは先ほどと同じだ。

 

「オラァッ!」

 

そして遠心力を利用した一撃が放たれる。 縦のけさ切りが迫る中、黒羽は冷静に左手の刃を翳して受け止めようとする・・・だが。

 

ガキッ! 

 

「さっきとは違うぜェ!」

 

鈍い金属音とともに黒羽の刃は弾かれていた。 先ほどは簡単に防ぐことができたテルの攻撃が今度は通っていた。

 

テルが作り出したこの状況、これは先ほどテルが黒羽に作り出された状況だ。

 

武器を弾かれてノーガード状態。 これを見逃すテルではない。

 

「ボディーががら空きだぜェ!」

 

見つけた餌に飛びつくようなハイエナの笑み。 それに同等のものを感じた。

 

脇腹へと放たれる一撃。 重く、確実に当たったとされる鈍い音と共に黒羽は後ろへと吹き飛んだ。

 

「チッ・・・まるで効果なしかよ」

 

舌打ちをし、その状況を見る。 確かに当たった。 だがその感触は明らかにクリティカルにはほど遠かった。

 

「・・・・」

 

黒羽は冷たくテルを見据えたままだ。 先ほど自身の体を護るように展開された黒い盾は確実にテルの一撃を防いでいた。 

 

「さっきよりも効いただろ? コレが俺の秘策よ」

 

スッと見せつけるのは鉄パイプに張り付けた1枚の札。 実はコレ、伊澄がいつも使っている札と同じもの。

テルの鉄パイプに張ることにより一時的だが武器を強化できるのだ。

 

以前使っていた真剣の威力の比ではないが、それなりに霊とかもぶん殴れるようになる。

 

まぁ例えるなら木の棒からキーブレードになってハートレスを倒せるようになったというぐらいか。

 

「へっへっへ・・・もう簡単にやられたりはしないぜぇ、前にも言ったが慰謝料は取ってくれるなよ? 給料が少ねェンだ」

 

すかさずテルは再度攻撃を仕掛ける。 真上から頭に向かってパイプを振り落としにかかると、黒羽は一気に飛び退き距離を取った。

 

だがその行動を読んでいたかのようにテルはさらに踏み込んで黒羽を追撃。 

 

鉄パイプを横に構えてニヤリと笑った後に、強力な一閃が黒羽に迫る。

 

「・・・・・!」

 

右腕と左腕から刃を伸ばした黒羽はその両腕をクロスさせてテルの一撃を防ごうとした。 そして・・・。

 

バキィンッッ!

 

金属の砕ける音が響く。 折れたのはなんと黒羽の刃だった。

 

少しの間宙を舞った後、地面に力なく突き刺さる。 黒羽は防ぐことは叶ったものの勢いを殺しきれずに後ろへと吹き飛んだ。

 

そして翼を広げて空中で受け身を取り、着地する。 両腕からはダメージの為か、機械がショートしたかのような電気がバチバチと走っていた。

 

「ケッ・・・外したか だが次はそうはいかないぜ」

 

「・・・・」

 

悪役顔のテルだ。 見事なまでにその笑みはヒール役だ。 しかし、状況が状況なだけにテルの勢いはまさに破竹の勢いそのものだ。

 

黒羽は両腕を確かめると傷を確認してそれほどの被害が無いことを知ったのか、両手を降ろした。

 

「ん? なんだ? 降伏するなら手をまず上げろって・・・」

 

テルが言葉を切らしたのは目の前の黒羽の体に変化があったからだ。 そして先ほどの笑みが消える。 

 

「戦術を切り替える」

 

そう呟いた黒羽が両腕を前に突き出すとその腕はその変化を遂げた。

 

「な、なななななぁ! お前、銃だとォォォ!?」

 

テルはその形状を見て驚愕する。 黒羽の腕は真っ黒な銃身の長いライフルのような姿へと変化していた。

 

「・・・攻撃開始」

 

「なッッ」

 

向けられたその銃口から火花が飛出し、テルの頬をかすめる。 堪らずテルは標的にされないよう走り出した。

 

「逃がさない」

 

と続けざまに第2、第3と狙いながら放つ。 機械のようなその動きはまるで未来から来た某サイボーグ戦士。

 

「チクショウ! 卑怯だぞ! 飛び道具なんてよ!」

 

反撃したいのは山々だが銃弾が飛び交う中で突っ込みに行くのは流石に自殺行為か。

 

「ん。 そうだ」

 

何か一つ策を思いついたか、テルは近くの木の裏へと隠れた。

 

「・・・・」

 

銃撃を一時停止させ、黒羽は様子を見る。 一向に動く気配はない。 

 

その銃撃が止んだのを図っていたか、空高くへと何かが飛び上がる。 黒羽は即座にその物体に連射。 

 

「かかったな!!」

 

と、黒羽に向かってテルが向かってくる。 ならば上は何かと確認すれば、なんとそれはテルの執事服だった。

 

「・・・・」

 

穴あきにされた執事服が落ちると同時に黒羽は銃を前方へと構える。

しかしテルは止まるどころかその勢いを殺さず突っ込んだ。

 

「うぉぉぉお!! 死なば諸共ォォォォ!」

 

ズダンッ! と放たれた銃弾はテルが間一髪首を動かすだけで躱す。 もうテルは鉄パイプを振り上げていた。

 

続いて第2の銃がテルに向けられる。 この時の二人の距離は5メートルもない。

 

黒羽がトリガーに指を掛けた。

 

「ハァッ!」

 

バキッ!

 

と金属音。 トリガーが引かれる前にテルの鉄パイプが黒羽の銃に当てていたのだ。 銃の位置はズラされ、引いたと同時に飛び出た銃弾はすぐ近くの地面へと当たる。

 

「剣が銃より弱いなんて誰が決めたァ?」

 

絶対的優劣を決めている、どの時代だってそうだった。 

銃>剣の図式。 

これは遠距離の型の攻撃が主体の銃に比べて近距離の剣が圧倒的不利なためだ。

 

しかし、銃はその遠距離の攻撃を可能とする代わりに近距離にめっぽう弱いのだ。

銃が強さを誇るのは相手を近づけさせないという前提がある。

 

余程の柔軟な思考の持ち主でなければこの状況を打破することは難しい。

だが相手はあの黒羽だ。

 

「・・・・」

 

カチャ。

 

と弾かれると同時にその勢いを利用して回転していた黒羽は再び銃を構える。 今度の銃はライフルのような長い銃身ではない。 小さな拳銃だ。

 

ここは勝負の分かれ目、引くか引かずに突き進むか。

 

 

――その賭けに勝ったものがこの闘いを制する・・・ハズ。

 

パァンッ! と拳銃の乾いた音が響く。 

 

「ッッッ!!」

 

その音が響いた瞬間、テルの左肩に衝撃が駆け抜けた。 黒羽の撃った弾は軌道を外れテルの片腕に直撃したのである。

 

だがこんなことで怯んでいるテルではない。

 

「オオオオオオオオオオオ!!」

 

まるで痛みを感じないかのようにその体を更に前へ、前へと進める。

歩みを止めることなく構えたその鉄パイプを深く握りしめながら。

 

バキッ!

 

そして渾身の一撃が・・・決まった。

 

その一撃は見事に黒羽を吹き飛ばし、その体を地面へと叩きつけた。 展開していた片腕の盾も破壊して貫通。

 

「・・・ふぅ、勝負ありだろ」

 

左肩を押さえながらテルはそう呟いた。 

 

『おめぇさん・・・それってある意味フラグだぜぇ』

 

「あ? 何言ってやがる?」

 

突然のボムの忠告に顔をしかめるテル。 だがそれを確証づけるようにボムは向こう側を見た。

 

「なん・・・だと?」

 

「・・・・・」

 

確かなその一撃を与えても黒羽はまだその無表情を貫いて立っていた。 これにはもはやホラーに近いものがある。

 

パシッ、パシッ・・・

 

どうやら前回の武器を破壊した時のように両腕から回路がショートした機械のように火花が走っている。無傷ではない。

 

――叩くなら今。

 

そんな言葉が彼の脳裏をよぎる。 確信はないが相手は顔には出してはいないが弱っている。 無表情では隠しきれないほどのダメージを負いすぎたのだ。

 

その証拠があの傷ついた両腕だ。

 

――相手はハヤテやナギの敵だ。

 

テルを急かすようにその言葉が脳裏をよぎる。 これほどの好機を見逃すわけにはいかない・・・だが。

 

「もう勝負は付いたろう? さっさとここから引け」

 

なんとテルの口から出たのは黒羽を見逃すという言葉だった。

 

「・・・どうして?」

 

これには黒羽も疑問を投げる。 誰がどう見てもこの状況はテルが有利だ。 その状況で黒羽を見逃すことはあり得ない。

 

テルは忌々しげに吐き捨てた。

 

「ンナことはどうでもいいんだよ。 お互いにできるこたぁねぇ・・・引き分けでいいだろ」

 

傷の方もテルも左肩を撃たれている。 やるせなさそうに鉄パイプをしまった。

 

「・・・・」

 

「いいからとっとと帰れ。 早く俺の前から消えてくれ、俺も早く帰りたいん――」

 

ガチャ。

 

「ん?」

 

聞きなれたその音にテルも思わず見直す。 黒羽は性懲りもなく銃をテルに向けて構えていた。

 

『べらんめぇ・・・小僧、オメェさん油断したぜぇ・・・』

 

パァン!

 

ボムのその言葉を皮切りに銃が火花を吹く。 テルも下唇を噛んでその来るべき激痛に備えた。 

だがその激痛はいつまで経ってもやってこない。 

 

目を閉じていたテルが開くとその光景を確認した。

 

「・・・・」

 

「・・・・え?」

 

どうやら黒羽の銃は不具合を起こしていた。 銃声こそなったものの、銃弾は発射されなかったらしい。

 

 

――だが、問題はそこではない。 そこではないのだ。

 

拳銃から何かが飛び出している。 なんか小さなモノ。 

 

ぐったりと飛び出しているのは何やら人形のようなものだ。 

 

「何が飛び出してくると思ったら人形かよ!」

 

『ってかそこは花とか国旗が飛び出てくるのがベターじゃねェかべらんめぇ・・・』 

 

テルとボムがそれぞれ思ったことを呟いていると、その銃口から飛び出ていた人形はポロっと地面へと落ちた。

 

その人形の姿は物凄い黒羽に酷似していた。 いや、もはやねんどロイドくらいの大きさの黒羽と言ったあげた方が分かりやすい。 

あの長い黒髪もその黒衣のローブもすべてソックリだ。

 

「どうするよソレ? ヤフオクにでも売りつけるか?」

 

『そうだなぁ、意外な値段で売れるかもなぁべらんめぇ・・・』

 

などと談義していた時だった。

 

――ピクッ。

 

なんとその人形の指が動いた。 

 

「え?」

 

前のめりに倒れていたその人形は起き上がり、体に付いた土を払うとテルたちの方を向いた。

そして右腕を上げて・・・

 

「やー!」

 

「・・・・・・」

 

『・・・・・・』

 

テルとボムはしばらくその光景を凝視して沈黙したのち。

 

『「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァ!!!」』

 

あり得ないくらいに大声で叫んだ。






後書き
今見てもあのマックのCMは吹っ飛んでると思う。 
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