ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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前書き
僕が思うに、壁殴り代行は職業として存在したほうがいいと思うんですよ。


第58話~意外と近くにそれはある~

前回のアナコン!前回のお話で起こった3つの出来事ッ!

 

一つ、黒羽から小さな人形が生まれる!

 

二つ、テルは闘いをそっちのけで人形とカバディを始める!

 

三つ、ハヤテとヒナギクの争いは意外な結果に。 泣き崩れるヒナギクにハヤテは・・・・。

 

 

 

 

 

第58話~意外と近くにそれはある~

 

「はい。紅茶が入りましたよヒナギクさん」

 

静まり返った生徒会室、ソファに座ったヒナギクの前のテーブルに紅茶の入ったティーカップが置かれる。

 

「・・・・・」

 

「あ。 お腹とか空いてます? 材料も軽くあるみたいですし何か作りますよ?」

 

無言のままのヒナギクに対して、ハヤテはにこやかに作業を進めていく。 ヒナギク本人にその言葉に返答する余裕がないとは知らずに。

 

そんなヒナギクはハヤテに見えない所で顔を赤くしていた。

 

(ふ・・・不覚だわ!一生の不覚ッッ)

 

ヒナギクが心の中で思うのはつい先ほどの喧騒の中で、敵のハヤテの目の前で泣き崩れたのだ。 

 

(あんな事、私としたことが・・・・あんなことを――――!!)

 

常に勝ち続けて上に立ってきたヒナギクが戦いの中で泣き崩れて戦意喪失・・・それ相応の屈辱だろう。

 

「いやぁ、怒られておいて言うのも何なんですけど・・・ヒナギクさんにもああいう、乙女チックな一面があったんですね~」

 

(いっそ私を殺して・・・・)

 

テーブルに突っ伏して拳を震わせるヒナギク。 ライフがゼロの状態でさらにダイレクトアタックを食らった気分だ。

 

(だ、ダメよ! このままでは負けっぱなしだわ! 何に負けてしまうのか分からないけど、とにかくこのまま負けてはいけないのよ!)

 

もはやここまで来ると負けず嫌いも通り越してしまっている気がする。

 

 

「で!? プレゼントは!?プレゼント!?素敵なプレゼントとやらをくれるんでしょ!?」

 

と口調を強めながら飛び出た言葉はもはや逆切れ気味だ。 

 

「へ?」

 

ハヤテは質問もそ

うだが、ヒナギクがなぜ切れているのか分からなかった。

 

ヒナギクはさらに勢いをつけてナギから渡されたプレゼントを見せた。

 

「ちなみにあなたのお嬢さまは・・・この・・・!!」

 

「・・・・この?」

 

「・・・・えっと、なんだっけ・・ブ、ブル・・・」

 

と時計の名前を言おうとしたが、それらの知識に疎いことが災いしたかそこで言葉が詰まってしまった。

 

「なんか読めないけど可愛い時計をプレゼントしてくれたわ!! 果たしてこれに勝つことができるのかしら綾崎くん!?」

 

一体何の勝負なのか、その意味が分からないままのハヤテであった。 

 

「まぁどんなルールなのか分かりませんけど・・・」

 

そしてハヤテがポケットを探り出す。

 

「むっ! くる気ね!!」

 

とヒナギクが何故か戦闘体制をとる。 はてはて、一体何が飛び出てくるのか期待しているのか。 きっとナイフ、ワルサー、ロケランとかが飛び出てくると予想しているのか。

 

「はい♪ どうぞ」

 

「え・・?」

 

と差し出されたのは重火器とかでもない、小さなかわいらしい袋だった。

 

「これ・・・は?」

 

「クッキーですよ。 手作りです。 ケーキは他の人がもっと豪華なものを用意すると思ったので。あえて裏を狙った感じで・・・って、あのぅヒナギクさん?」

 

「へ?あ・・・なに?」

 

ハヤテが説明を中断したのはもらった後のヒナギクの反応だった。 クッキーを見て、何故か少しだけさびしそうな雰囲気が見て取れたからだ。

 

頬をかきながらハヤテが聞く。

 

「ルールはよくわかりませんが、これはもしかして負けでしょうか・・・・?」

 

「い・・・いや、そんなことないわありがとう。 ありがとう!!」

 

と慌てて返事するヒナギク。 そしてすぐに視線をクッキーへと戻した。

 

「ただ・・・ちょっと思い出しただけで・・・」

 

その表情からはあまり思い出したくないことを思い出したかのような表情。 ハヤテは気まずくなったか話題を振った。

 

「ちなみに僕の家はバカみたいにビンボーだったから・・・ケーキの代わりにクッキーのひとかけらという絶望感漂う誕生日もありました」

 

ヒナギクの脳内では暗い部屋でろうそく一本の光でクッキーを前にしてしくしく泣いているハヤテの姿が浮かんだ。

 

「これはなかなか悲惨な絵面ね」

 

とヒナギクがそれを聞いて、またしても表情を曇らせた。 視線はやはりあのクッキー。

 

「でも・・・わたしもあったわ」

 

「え?」

 

「ケーキの代わりにクッキーひとかけら。 プレゼントはちっちゃなヘアピン一つなんて誕生日が・・・」

 

その話を聞いて、ハヤテは思ってしまった。 白皇の生徒はみなお金持ちの生徒だ。 ハヤテはいつしかヒナギクの家に行ったときも一般人が住むには立派な家だったのでその部類ではないかと思っていたからだ。

 

「い・・・意外ですね。 あんなお金持ちなのに・・・」

 

「ええ。 だって・・・あの親は」

 

(私・・・どうしてこんな話を・・・)

 

別に今はさっきの喧騒のような感情の高ぶりがあるわけではない。 なのにこの話をしてしまうのは一体なぜだろうか。 その謎をヒナギクは分からなかった。

 

そしてヒナギクから放たれた一言。

 

「私の・・・本当の親ではないから…」

 

「・・・・・・え?」

 

ハヤテはその言葉を聞いた瞬間、何を言っているのか分からなかった。 しかし、やがてその意味を理解する。 それだけにヒナギクが言った言葉がある意味信じられなかった。

 

「私の本当の両親はね、私の六歳の誕生日前に、8千万の借金を子供に押し付けて居なくなってしまったの」

 

またしても、ここで話し出してしまう自分がいる。 どうしてか、思い出したくはない記憶なのに。

 

「まぁお姉ちゃんがあの性格で借金はどうにかしたんだけど。 そのあと引き取ってくれたのが今の桂家の人たち。 私のお義父さんはお姉ちゃんの小学校の先生。 今、先生はやっていないけど・・・ずっとお姉ちゃんの事きにしてくれていてね・・・」

 

―――何か・・・理由が理由があるんじゃないかって思わなかった?

 

(あ・・・それであの時)

 

あの放課後のとき。ハヤテはヒナギクが自身に聞いてきた質問の意味がようやく分かった。

 

「一緒に連れて行ってもらえなかったのは・・・何か仕方ない理由が・・・」

 

その時に幼かったヒナギクを連れて行かなかったのは、もしかしたら巻き込みたくなかったのかもしれない。 ヒナギクは感が続けていた。 数年間、自分の親が置いていったのには理由があったのではないかと。

 

「・・・あの、ヒナギクさんは今のお母さんの事・・・」

 

この意外なヒナギクの真実に、ハヤテは質問を投げかける。 ヒナギクはすぐ反応した。

 

「好きよ!大好き! 大好き・・・だけど・・・」

 

声の力強さからしても、表情から伝わる必死さは本当の思いだ。 しかし、すぐに言葉に詰まってしまう。

 

「・・・本当のお母さんのことも・・・大好きだったから・・・」

 

自分を置いていった親の想い出は忘れがたい。 しかし、今自分を支えてくれている義理の母もまたかけがえのない存在だ。 どっちが好きかと聞かれたとき、選ぶことはヒナギクにはできないだろう。

 

 

(私も・・・一体どうしてこんなに話し出してしまっているんだろう。 どうあがいたって時間が戻る若じゃないのに・・・解決するわけがないのに・・バカだ)

 

一人でヒナギクはここまで秘密を喋った自分を責めていた。 

 

「・・・世の中にはいろんな人がいるんですね、ヒナギクさん」

 

「え?」

 

ヒナギクも突如のヒナギクの言葉に戸惑う。 ハヤテはそのまま続ける。

 

「僕は自分の親がどんな理由があったとしても一生許せないことには変わりません。 でも自分の事も分からず、自分の親が何処に居るのか、その親がどんな人だったのか、分からない人だっています」

 

「・・・それって」

 

「でも・・・」

 

とヒナギクの言葉をハヤテが止めた。

 

「僕もヒナギクさんも、自分の親に対する想いは異なるかもしれませんが、覚えているんですよ。 それは忘れてはいけないと思います。 過ごした時間、そこから生まれた思いは尚更・・・」

 

「・・・・・」

 

 

と、ここでハヤテがゆっくりとカーテンを開き窓を大きく開いた。 同時に夜風が中へと入ってくる。 

 

「あの・・・ちょっとこっちに来てもらえます?」

 

「へ?」

 

そっとその先へと誘うように優しくハヤテはヒナギクの手を取る。

 

「え!? ちょっと!!ダメよ!! テラスは! 私・・・!!」

 

 

この人は自分の高所恐怖症を知らないのか。 当然のようにヒナギクは抵抗した。

 

「はは。 大丈夫ですから」

 

何が。 と言いたくなるがヒナギクは目をつぶりながらも少しづつテラスの方へと歩んでいく。

 

「ダメよ!! 知ってるでしょ!? 私が高いところ苦手なこと!!」

 

「僕がしっかりつかんでいますから。 目を開けてみてください」

 

そんなに怖がる自分の姿が見たいのかと、怒りを抱くヒナギクだったが。 勇気を出して、そのハヤテの言葉を信じてゆっくりと瞳を開いた。

 

「・・・・すごい」

 

そこに広がる景色。 都会を照らす東京のネオン。 それだけでもこれほどもない絶景だというのに、空には宝石をちりばめたような星が輝く。 

 

それは目に映る景色がプラネタリウムのようだった。

 

「この風景は初めて会ったとき、ヒナギクさんが僕に見せてくれたものです」

 

勿論覚えている。 あの時は弁当を巡っていろいろと大変だった。

 

「理由はあったかもしれませんし、無かったのかもしれません」

 

空を見上げるハヤテは少し視線を上へと移した。空には数えきれないほどの星。

 

「人から見ればずいぶん不幸に見えるかもしれませんし、心に深い傷もあるのかもしれません」

 

(どうしてだろう・・・私、高いところに居るのに、全然怖くない・・なんでだろう)

 

彼が支えてくれているからか? 話を聞いてくれたからか?

 

「でも・・・今いる場所は(ここ)は・・・それほど悪くはないでしょう?」

 

「・・・・」

 

(あ・・・今、ようやく分かった・・・)

 

どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのか。

 

(私・・・この人の事がスキなんだ)

 

親の事を話をしたのは単なる気まぐれとかではない。 

 

ただ単に怖いところが克服されたからではない。

 

全ては自分の隣にいるだけで安心する人がいるから。 

 

好きな人がいるから。

 

 

(スキになると・・・居なくなってしまう気がする。 そんな思いが何処か怖くて・・・)

 

その見えもしない恐怖から自分は目をそらしていたことに気付いた。 

 

「私・・・バカだな・・・」

 

「へ?」

 

「この景色と同じ。 側にあったのに・・・怖くて見れなかったなんて・・・」

 

自分が求めていた素晴らしい景色は。 こんなに近くに。その手を伸ばせばすぐにでも手に入る距離にあったのだ。

 

「今も・・・怖いですか?」

 

とハヤテも落ち着いた物腰で、優しい口調で聞く。 ヒナギクは少しだけ下を向いてハヤテを見ると微笑を浮かべながら答えた。

 

「怖いわ。 でも・・・悪くない気分よ」

 

夜の風と共に・・・ヒナ祭り編も終わりを告げ・・・・・・・・・ない。

 

 

 

 

一方、ハヤテ達がテラスへと顔を出したその下ではもう一つの祭りがおこなわれていた。 ごく小規模だが。

 

「よっしゃ勝ったァァーーー!!!」

 

『やーーーーーーー!!』

 

 

とここで主人公、テル、大きく両手を突き上げてジャンプ。 チビハネは頭を抱えながら地面を叫びながら転がっていた。

 

「ついに・・・俺は・・・勝ったんだ」

 

 

荒い息を吐きながら、テルはその熱い戦いを振り返る。 なんでこいつらカバディしてんの? と思った方々は前回を読んでね。

 

『ようやく終わったか・・・』

 

「おうボム。 ああそうだ。俺は勝ったんだ、あの長い戦いから、俺がこの戦いで得たものは大きい。 これから先の人生で大いに役立つことだろう・・・」

 

と小さな棒ファミコンゲームの爆弾の形をした物体、ボムにテルは親指を立てる。 それを見てか、ボムはため息を小さくついた。

 

 

 

 

『おーい小僧、オメェさんがカバディやっている間にタイムリミットはもう迫ってきてるぜぇい』

 

「・・・・え?」

 

『いや、え?じゃねぇよ。 冗談でもないし嘘でもない』

 

「いや、ちょっと待てよ。 え? それって俺の命があと数分くらいの灯ってことか?」

 

『正確にはあと2分だ』

 

「いやああああああああああああああああああ!!」

 

頭を抱えてテルは空へと向けて叫んだ。 いや、明らかに自業自得だろ。

 

「なんてこったッッ 俺はどうしようもない、救いようのない男だッッ! 簡単な・・・簡単なレースだったのにッッ!!」

 

チクショウが!! と思いっきり地面を叩きつける。 しかしその過程はあまりにも馬鹿らしい。

 

 

『悔ぅしいぃだろうぅぅぅ・・・お前は俺の為の花火となるんだよぅ・・』

 

フッフッフ・・・という笑いがテルをイラつかせた。 だがここで熱くなっても仕方ない。 もてる限りの知力を生かしてこの危機を脱することに努めた。

 

「さて、ここで読者に問題だ。 この絶望的な状況でどうやって呪いを解くか?」

 

 

最後のくらい自分でやれと言いたくなるが、ここで皆さんに三つの選択肢。 ぜひこの中から当てていただきたい。

 

答え①ハンサムなテル君は突如解呪の方法を咄嗟に思いつく。

 

答え②伊澄が来てくれて助けてくれる。

 

答え③解呪できない。 現実は非情である。

 

 

「俺がマルをつけたいのは②だが期待はできねェ。 あの伊澄が、俺がこんな状態になっているなんて気づいている訳がないからだ。 まず白皇たどり着けない。」

 

ちなみに②はもはや説明しなくていいのではないか。 上の奴らもいまからこっちに来るのに間に合う訳がない。

 

つまり・・・・

 

 

 

「答え―――③、現実は非情である・・・あばよみんな」

 

『やー』

 

『ん?なんだァまだいたのかこのクソガキィ。 マスコットの座はぜってぇい渡さねぇって・・・ん、あるぅえ?』

 

キィキィ・・・。

 

とボムの背中で何か金属が鳴る音。 一定のリズムで発生するその音はボムの背中のネジだった。

チビハネがまるで珍しいものを見たような笑顔でボムのネジを回していく。

 

「こ、このクソガキィィイィ!! 俺のネジになにしやがる!! ちょ、マジでやめて! それやられたらオイラ・・・・・」

 

『やー!』

 

――――カチッ。

 

ついにネジは回るのを止め、何かの合図のように歯車がかみ合った音がした。

 

「・・・・?」

 

数秒経たつと、ボムの体に変化が起き始めた。 小さな黒い体がプルプルと震え、下の部分からは煙が噴き出してきた。

 

「お、オイ! いったい何が起きてんだ!?」

 

『このクソガキィ! 俺の唯一の解呪方法を何故知ってやがったァァァ!!』

 

テルが声を言う前にボムの体はゆっくりと上昇していく。 まるでロケットがゆっくりと上がっているようだ。

 

『やー!』

 

下を向いたボムは手を振りながら笑顔ではしゃいでいるチビハネを見ていた。

 

『やー! じゃねぇんだよ! テメェ末代ま呪ってや―――うおおおおおおおおおお!』

 

ボムが怒鳴る前に吹き出ていた煙の量がさらに多くなり、物凄い勢いでボムは上昇していった。 

 

 

テルが下からボムを眺めていくとだいたい時計塔の上を越えたあたりで。

 

 

『ぶるあああああああああああああああああ!!!』

 

 

ボムの叫び声が響きわたる。 そして次の瞬間。

 

どっぱーん。

 

夜空に満点の光の花が咲いた。

 

しかも一度ではなく、数十回ほど弾けて多種多様な広がり方と美しい色合いだ。 

 

「そういえばアイツ花火師だったんだっけ・・・・無茶しやがって」

 

美しく咲き誇る花火を見ながらフッと小さくテルは笑った。 彼はこれで成仏されたらしい。

 

そして時計塔の上を見ると光に照らされてハヤテとヒナギクの姿が見えた。 二人とも突然の花火をみて楽しそうに見入っているようだ。

 

「あー、そういえばアイツのプレゼント買ってなかったわ。 ま、これでいいだろ」

 

「・・・・・」

 

と皆さんここで思い出していただきたい。

背後霊とも呼ぶべき存在がいるということを。テルとチビハネがカバディを始めてからずっと無口を貫き通してきた黒羽だ。

 

「んだよ。 またやろうってのか」

 

とテルがやるせなさそうに言うと、黒羽は花火を見ながらワイワイと騒いでいるチビハネを両手ですくい上げた。

 

「今日はここまで」

 

『やー!』

 

とチビハネがテルに向けて指をさす。 黒羽はゆっくりと踵を返すとそのまま姿を消していった。

取り敢えず今日は帰ってくれたということなのだろうか。

 

「ん~。 全然ワケわかんねぇんだがいいのか?・・・っと」

 

とテルの足がふらつく。 そのまま地面へと座り込んでしまった。

 

「はぁ~疲れた。 尋常じゃねェなこの札」

 

テルはため息をつきながら鉄パイプに張られていた札を一枚はがしていく。 実はこの札、都合よく貼った物体を強力な武器に変えるだけではない。 

 

当然その武器を扱う人もものすごい霊圧にあてられるのだ。しかしその反動はすさまじく、テルでもこれだけ疲弊してしまう。 霊感もなく、特に特別な力もないテルが黒羽に対抗するにはもはやこれしかなかったらしい。

 

 

簡単に言えばドーピングを使っていると言うことだ。 副作用は体にかかる負担。

 

 

ちなみに一枚にかかる負担はだいたい一般人がフルマラソンをしたくらいの疲れ位で済むと伊澄は言っている。

 

「ま、なんとかなるって・・・さて帰りますか」

 

と少しばかり重い足取りながらもテルは帰路についたのだった。

 

 

 

――――翌日。

 

「で? 結局ヒナギクにプレゼントは渡したのか?」

 

「はは、でもクッキーですよ?」

 

ナギと昨日の話をしながらハヤテ達は登校していた。 そのハヤテの隣には寝ぼけ顔のテルがいる。

 

「はぁ~こっちはまだ昨日の疲れが残ってるっていうのによぉ、翌日授業ってもう死ねって言ってるもんじゃねェか」

 

大きく欠伸をするテルは夜中に帰ったのはいいが体の傷や改造鉄パイプの疲労がまだ残っているようだ。

 

「いやぁでも何事もなくて良かったですよ。 それにしても昨日凄い花火があがったんですよ、物凄い綺麗で・・・一体誰がやったんでしょうね?」

 

 

「さぁな」

 

 

空を見上げて散っていったボムの姿を浮かべる。 よく雲を見ると、その雲は偶然ボムの形をしていた。

 

「アイツ・・・無茶しやがって」

 

「え?」

 

「いや、なんでもない」

 

「おっはよっ!!」

 

と感慨にふけっているテルをよそにハヤテは後ろの女子に背中を叩かれていた。 笑顔のヒナギクであった。

 

「ヒ、ヒナギクさん・・・」

 

「相変わらず朝からさえない顔しているわね~」

 

「ほっとけ」

 

とテルがダルそうに返した。

 

「朝からそんな景気のない顔していたら、いいことないわよハヤテくん・・・じゃ、またね!」

 

「アイツ俺は無視かよ」

 

「ああそう言えば・・・」

 

と一応不幸枠のテルが少しだけ表情を曇らせていた時ピタリとヒナギクが止まった。

 

「テル君・・・あの手紙の事なんだけど・・・」

 

「手紙・・・?」

 

ハッ! テルは思い出す。 ヒナギクに送ってしまったあの恐ろしい内容の手紙を。

 

思い出した瞬間、テルの体からは尋常じゃないほどの汗が流れてきた。

 

「いやぁもうほんと大変だったんですよ。 ちょっと乱闘沙汰になってその誤解を解くのにビックリしました」

 

ハヤテがあははと笑いながら言うが、対してテルはとんでもない状況に陥っていた。

 

「お前・・・まさか全部・・・」

 

「はい、喋ったらスッキリしたように機嫌がよくなりました」

 

こ、コイツ・・・やりやがった。

 

「手紙の事を思い出したらなんかすごいイラついてしてきちゃったダメだな私」

 

「いや、イラついてるとかの次元じゃねェよそれ! なんで笑顔なんだよ! その笑顔逆にコエ―よ! それになんでいつの間に正宗だしてるの? 何に使うのソレ? 芝刈りにでも使うんだろ?なぁ会長!!」

 

「だからここで・・・その場に直れェェェェッッ!!!!」 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「大丈夫! 命なんて取らないから!」

 

襲いかかるヒナギクは血走った・・・いや、もはや悪魔に目覚めたかのような低い笑い声をだしながら正宗を振るう。

 

「お前忘れてると思うけどそれ真剣並みの切れ味だから!」

 

「峰打ちで済ませるから止まって!」

 

「止まれるかァァァ!!突きばっかしてきてるのに峰打ちとか関係あるのかよォォ!!」

 

 

そんな死にもの狂いの逃走劇をナギとハヤテは何も見なかったというようにその場をそそくさに去っていく。 

 

 

今日も白皇学院は平和です。

 

 

 

――――後日。

 

 

「何してるのヒナ。 テラス付近で体を震わせて・・・・」

 

「美希・・・いや、治ったんじゃないのかと思って・・・」

 

結局、いまだに高いところは苦手である。

 

 

 

 

 

ヒナ祭り編・・・・・完ッ!!!

 

 






後書き
ねじ込んだ感がした気でなりませんな。 取り敢えずヒナマツリ編、終わりですね。
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