ハヤテのごとく!~another combat butler~ 作:バロックス(駄犬
サキさんはもっといいところに就職するべきだと思う。
お見合い。 それは紳士と淑女が出会いを求める行事。
お互いの合意のものとで場所を指定して親族と共にお食事に行ったりして親交を深めて、もしお互いが気にいるような場合だった時に、二人はゴールインすることもある。
そんな出会いの行事だ。
時々、お見合いなんていったい誰が考えついたんだろうかと思うようになる。 そんな作者の戯言。
彼の名前はバルト。 ロシアの優秀(もといバカ)なスパイである。 もともとシスターソニアの部下であったが、(クルーザー事件を参照)その一件からソニアの部下を辞めて自分の道を歩んでいくようになる。
現在、テルが最初にお世話になっていたラーメン辰屋にアルバイト中。
「すいませんね。今日はこんなところに来てもらって」
「い、いえ・・・こちらこそ・・・」
まるで素人が初めて試合をするかのように緊張していることを隠すことを知らないバルトとサキ。
(どうしよう・・・勢いでお見合いとかしちゃってるけど・・・結婚する気なんてないのに、相手になんて悪いことを・・・)
もともとワタルにまったく相手にされてなかったサキが起こしたお見合いだ。 当然そこには自分の主観混じりのものしかなく、つい物の弾みで、キャッチボールをしていたら窓が割れたみたいな感じの勢いなのだ。
そこにサキは少なからず公開していた。
(そうだ・・・バルトさんって何してんだろう。 せっかくだしいろいろ聞いてみよう)
「あのぅ・・・バルトさん」
「なんです?」
「バルトさんの趣味ってなんですか?」
「し、趣味ですか?」
とサキの質問にバルトは少しばかり緊張していたようで聞き返す。
「はい。 せっかくのお見合いなんですしお互いのことを知らなくちゃいけなじゃないですか」
「ああ、そうですね」
いつになくして丁寧口調のバルトにサキはしたたかに質問した。
(バルトさんの趣味って一体何なんだろう・・・なかなか見た目も爽やかだし、家庭菜園とかかな?)
と心の中で暑日差しの中、ガーデニングやら自分で植えた野菜の手入れをしているバルトの姿を思い浮かべたサキ。 だがその返しには反した答えが返ってくるのは当たり前のことである。
「趣味はスパイです」
「へ?」
「得意なのは情報収集とスニーキングです。 あ、スニーキングっていうのは相手にバレないで行動を監視して追跡するのがスニーキングです」
「は、はぁ・・・」
至極、淡々とバルトによるスパイの話が続けられる。 基本的な用語やスニーキングの動作など。 格闘戦になったときのその対処法など。
「まぁ私の場合、あくまで情報収集が主ですので格闘はあまりやったとこはないんですがね・・・あ」
と、突然しまったといったような声を出すバルト。 それがあまりしゃべってはいけないことだというのを忘れていたみたいだ。 そしてひたすら聞いていたサキに対して一言。
「そういえばメ○ルギアソリッド4まだクリアしてないんだった。 あのスパイの醍醐味ともいわれるゲームをクリアしてないのにスパイを語るとは・・・不覚」
「そのゲームをクリアすればスパイをクリアする資格が手に入るんですか?」
「そうですとも。 何を隠そう、私はスパイ検定は2級まで持っている。ちなみに、メ○ルギアソリッド1をクリアすることで4級、メ○ルギア2で3級、メ○ルギア3で2級を取得できます」
(スパイ検定ってなんですか! メタルギアクリアするだけで資格取れるんですか!? どんだけこの人スパイに趣味持ってんですか!? ス○ークもドン引きですよ!!)
「そんな自分の夢は最高のラーメン屋になることなんです!」
「スパイとは全く関係ないですね!」
○
「スゲーなオイ。 あいつは最初っからクライマックスだな」
「ホントですね。 口調がいつもとちがうけど、いつものバルトさんですね」
「く、くそ・・・サキのやつ、まさか本気で・・・」
ちょうど二人が笑っているところを見た一同。 ワタルの焦りはさらに高まっていた。
「ていうか、バルトの奴なんで口調が優等生みたいに改まっちゃって・・・」
「テルさん。 さすがにあの喋り方じゃあダメなんじゃないですか?」
これには一同が疑問を抱いているのではないか。 バルトの口調は本来は昔の武士のように堅物のような喋り方だ。 そのはずなのにあの丁寧すぎるのはなぜか気味が悪い。
「ところでワタル、ものすごい質問するけど・・・お前、伊澄のことはいいのか?」
「ああ!? なんでここで伊澄が出てくるんだよ! 関係ないだろ!!」
ここまでサキのことに対して夢中になっているワタルへと質問。 だがその返事はワタルにとって意味がなかった。 怒鳴りながら返される。
「お前、ほんとどっちなんだよ」
ナギがこう言うのは当然である。 伊澄に対して好意寄せているワタルがサキに対する感情は何か違うのである。 明らかに使用人としての目ではないのだ。
「黙ってようぜナギ。 この選択が後に後悔すんのかしないのかはコイツ次第だから」
「ふむ」
テルの言葉に黙って頷くナギ。 そして話を戻し、再びバルトとサキの方へと視線を移した。
「う~む・・・なんと言ってるのかわからんぞ。 どうにかしてくれハヤテ」
「確かに、ここからでは距離が離れすぎています。 ご安心くださいお嬢様。 こんなこともあろうかと、S○kで読心術を学んでましたから!」
「もう君のスペックには突っ込まないことにしたよハヤテくん」
一流の執事はどうやら読心術も出来るとかなんとか。
そんなことを考えていたテルであった。
○
「詰まるところ、私は今年で26になるんです」
「はぁ・・・」
歩いていた中、バルトの言葉にサキが頷く。
「母国の母が五月蝿くて、バイト先の人も結婚しろ結婚しろって五月蝿くてですね・・・」
あれ? とここでサキが感じたのは共鳴・・・とも呼ぶべき感覚。 相手が考えていることが同じなような感じがしたのだ。
(も、もしかして・・・この人!)
「本当のことを言うと、仕方なくお見合いに来てしまったというか・・・」
「あ、あの! 実は私も!!」
「え?」
「無理やりというか勢いというか・・・スイマセン」
「いや、いいんです。 お互い大変ですな」
「ですな?」
「あ、失敬」
(いかん。 素が出てしまうところだった・・・)
慌てて口調を元に戻すバルト。 実は日本のお見合いに合わせるために、自分の口調を少し変えるという努力をしている。
「それじゃあ今は好きな人っていないんですか?」
「好きな人ですか?」
サキの言葉に少しばかり考えるバルト。 うーんと唸るように考えていたが
「居ませんね。 仕事のときは私情を挟まないようにしているので」
「その仕事ってスパイですか? ラーメン屋ですか?」
「もちろんどっちもですね」
きっぱりとバルトはそう言い切った。
「というのもスパイの仕事のときはとんでもない上司の元で働いていたもので・・・」
「上司?」
「はい、素手で電話機を握りつぶし、トンファーを振り回して銃弾をよけ、挙句の果てには爆弾を設置させてその工作兵ごと爆破する滅茶苦茶な上司です」
「ものすごいヴァイオレンス! えーっとということは本国の方ですか?」
「いいえ。 実は同じ生まれでもなければ幼馴染であるというフラグ要素もないわけで・・・しかも日本にいるという」
「は、はぁ・・・」
(フラグ・・・?)
と専門用語を出し始めたバルトに対してサキは唖然とした。 構わずバルトは続ける。
「でも滅茶苦茶な性格だからもの凄い無茶するんですよ。 自分がしっかりしないとどっかで怪我するんですよ」
「・・・・」
「まぁその人の元でコキ使われながらもその人の理念とか、目的とかそれにかける理由とか聞いてたらなんか放っておけなくなったというか、その野心あふれる姿がカッコ良かったっていうか・・・スイマセン、年甲斐もなく」
「そんな事ありませんよ・・・それは好きっていう感情とかではないんですか?」
「いや、それはない絶対・・・」
とすぐさま即答。 そんな上司ににこき使われた日々を思い出した。・・・わずか三秒で思い出すのも嫌になってきた。
「でも、放っておけないという気持ちがあるということは・・・「守りたい」とかそういう気持ちがあるからじゃないんですか?」
「守るですか。 もしかしたらそうなのか・・・も」
サキの言葉に考えさせられるバルト。 その人の前で別に誓ったという訳でもなければ、自分で決めたものではない。 心のどこかでそう思っていたことだったのだろうか。
「サキ殿もお若いのにやりますね。 どっちが歳上なのか分かりませんな」
そう言いながら笑うバルトにサキもつられて笑うのだった。
「あ、もう口調無理して丁寧にしなくてもいいですよ?」
「あ、バレてましたか?」
「そりゃもう、バレバレですよ。 バルトさんところどころで素が出てましたから」
「そうだな。 これが一番しっくりくるな」
その一方で・・・。
○
その光景を見ていたワタルはものすごい形相で二人を見ていた。 当の本人からしてみれば特に変な感じではない。 だがそう捉えさせる要因が隣にいたのである。
「ハヤテ、嘘じゃねぇだろうな。 バルトがサキさんに「実は一目見た時から気になってました・・・サキあなたです」って言ったの」
「ええテルさん、バッチリですよ。しかもサキさんもどうやら同じようで「実は私も気になってました」って行ってましたし・・・」
「しかもそのあとは『実は私、その手の店で働いてたんですけど、どうです? できれば今夜・・・』だしな」
「でもサキさんも凄いですよ『それは良いことです。 人知れず私を好きにry・・・・」
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」
怒号と共にワタルのどっから持ってきたのかわからないハンマーがテルとハヤテに炸裂。 そのまま二人は撃沈してしまう。
「も、もう我慢できるか・・・さ、サキィィィ!!」
「はい? なんですか?」
と、ワタルが叫びながらその場へといざゆかんとした瞬間、ワタルの目の前にはサキが居た。
これにはワタルは急ストップ。 慌てて尻餅を付いてしまう。
「お、お前どうして・・・」
「いや、それを言うなら若だってどうしてこんな所にいるんですか?」
それを聞かれてギクッとなってしまうワタル。 だが逆にワタルは聞き返した。
「そ、そんなことはどうでもいいんだよ! お見合い相手は?」
「ああ。 バルトさんはもう帰りましたよ、お見合いはもう終わりです」
「そ、そうなのか・・・」
と、その言葉を聞いて心の中でホッとしている自分がいた。 その様子をどう思ったか、サキがじーっとこちらの方を見つめている。
「な、なんだよ」
「い、いえ・・・・」
二人ともなぜか言葉が詰まってしまう。 昨日のこともありなかなか気まずい雰囲気だがワタルは男だ。 ワタルはサキの手をつかんで歩きだした。 強行突破にでる。
「み、店が忙しいんだ! さっさと帰るぞサキ!」
「え・・・あ、ハイ!」
その手を引かれて嬉しそうにしながらサキは元気よく返した。 どうやら仲直りは出来たようである。
○
「ふぅ~疲れた・・・」
(お見合いも終わったし、早く店に戻って仕事に戻らねば・・・)
大きく疲労の色を強めた息を吐きながらバルトは歩く。 もう言葉を取り繕う必要はないため、普段の口調に戻した。
そして特に時間も取ることもなく店へと戻ったバルトはそのままバイトを開始。
「え? 結局お前見合いでなんもなかったの?」
「うむ。 辰也殿や母上殿には申し訳ないが・・・」
「もったいねぇの。 これを機に身を固めちまえば良かったのによ」
と笑いながら冗談をかますその場へ・・・。
ガラッ。
「いらっしゃーい」
景気良くこの店へと入る客がいた。 今はだいたい夜の客がくるのには少し早いか。 珍しいと考えていたバルトであったが。
「ああ。 こんなところにラーメン屋が、これも神のお導き・・・」
「・・・何やってるのですか?」
「あら? バルトさんじゃないですか」
そのラーメン屋へ入ってきた客。 それはシスターこと、ソフィア・シャフルナーズであった。
「お元気そうでなによりで・・・」
バルトがいるということを認識するや否や、ソニアはスッと席へと座る。
「さ、何を食べましょうか・・・取り敢えずこれとこれで大盛りで・・・」
とメニューを開いてろくに見ないでとにかく選ぶ。 それを見たバルトは慌てて声をかけた。
「ソニア殿、払う宛は・・・?」
疑問に思ったバルトに対してソニアは笑顔で人差し指をバルトへと指した。
「お、俺ですか!?」
「私はあなたの上司、あなたは部下、上司に払うのは当然では?」
「いや、そんなこと言われてもそれは逆の発想でソニア殿が俺に払うという場合もあるという」
「どうして私があなたに奢らなければならないのですか?」
「それは先輩が後輩のお代を持つのは当たり前で・・・」
「しょうがないですね。 この店少しだけ全壊させちゃいますよ?」
「少しだけの意味が分からんぞ!結局全部壊すのでは!?」
ニッコリとしながら懐から取り出したトンファーを見せるソニアにバルトが猛然とツッコム。
「それに私のことは隊長と呼びなさい。 契約は切れてもあなたにはあれこれと働いてもらわなければなりませんから」
まだこき使うつもりでいるのかとジト目でソニアを見るバルト。 店が壊されるのも良くない。 これ以上長話される前に仕方なくバルトは折れることにした。
「分かりましたよ。 来月は絶対に払いに来てください」
「あら? 今回は随分と早く折れましたね」
あっさりとバルトが折れたことに対して違和感を覚えたソニアだが、テーブルの下ではがっちりと拳を握っていた。
「まぁなんというか、気分が良いという話なだけなので」
(今日ぐらいは別にいいだろう。 また無理されて倒れられたら大変だからな)
「バルト、それお前の今月の給料から引いとくからな」
(しかしこの人の胃袋はなんだ、まるで昔のフードファイターを思い出させる食べっぷりだ)
「♫~♫」
ズルズルと麺を口へと運ぶソニア。 その表情は喜喜としている。
「はぁ・・・」
(母上殿、こんな元上司にこき使われながらも俺は元気でよくやっている。 今不安があるとしたらそれは俺の今月の給料だけだ)
脱力を表した溜息と同時に、ソニアはまた注文を重ねた。 今月いくらの給料が自分の手元に残るだろうか。
そんなことを考えていたバルトだった。
後書き
バルトさんがソニアに対する思いは恋愛的なものではなく、なんでも暴力的に片付けようとするからストップかけれるように監視⇒クルージング編以降、ついに止める人間が一人もいなくなったから誰かに危害が及ぶ前にこちらで面倒を見る。 といった感じです。 バルト本人はそれに気づいていないという。