ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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第86話~レッツゴー鷺ノ宮、出張編~

 この世には未練というものがある。  

生前でやり遂げれなかったこと、思い残しなどのことだ。 そういった未練があるからこそ、この世にただならない形で残り、人様に迷惑をかけている幽霊がこの世にはいるのだ。

 

たかだか未練、されど未練。 未練で人を殺したりもできる。 まぁ今回はそんな殺伐とした話じゃなくて勿論ギャグパートなんですけど。

 

 

 

「成仏しようと思うんだ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 二人の執事は、前回にも引き続き困惑中。 最近は突然全く知らいない人物が話しかけてくることが多いようだ。 目の前にいる神父、リィン・レジオスターは生きている人間ではない。 もともと、執事とらのあなの執事クエストのダンジョン内に巣食っていた幽霊なのだ。

 

そんな男が今更何を言うかと言えば、成仏がしたい。 と言ってきた。

 

「なぁ、いきなり登場するのってやめてくんない?」

 

「ふん。 何も私だけではないだろう。 こんな突拍子もない登場の仕方をしたのは。 私が一人だけ批難にさらすのはやめてくれないか?」

 

テルが目を細めてリィンの頭部を鷲掴みする。 この霊体は何故かテルとハヤテ、そして霊感のある伊澄などにしか見えなくなってしまっている。 最初はナギやワタルたちにも見えていたのだがリィン曰く、だんだんと見えなくなる仕様らしい。

 

「それで、いきなり成仏したいというのはどういうことなんですか?」

 

「そりゃあなぁ。 そろそろ天国ってところに、私も行きたくなってしまってだな・・・いつまでもここに居てプラモとかを作っている訳にもいかないと、急に真面目になりたくなったのだよ」

 

・・・なんかニートの奴が急に働こうと思った流れを見ている気がする。 

 

「じゃああのプラモ、全部売っ払ってもいいのか? あれ結構邪魔でさぁ」

 

「ふ、ふざけるな! あれは貴重にして重要な宝! 私がこの世に居たという証明だ! 間違っても売っ払ってもらっては困る!!」

 

 テルの言葉にリィンは慌てた。 テルが言っているプラモというのは、このリィンがこちらに来てから勝手に買って作っているプラモデルの数々である。 その数はもはや机の上に収まらず、テルやハヤテの押入れの中を隙間なく侵食する程である。

 

「あれ誰の金使ってるの? かなりの数だよな。 どこから使ってんだ?」

 

「・・・・」

 

テルが笑いながら行った一言にリィンが黙り込む。 不審に思ったテルは自身の財布を確認した。 この場に持ち合わせているのは何故だ。

 

「アレ!? 昨日入ってた俺の五千円が二千円になってるぞ!? え!? どういうこと!?」

 

これを見てハヤテも慌てて自身の財布を確認。 青ざめた表情で

 

「ぼ、僕の二千円が・・・ない」

 

こちらに関してはゼロになっていた位だった。 その光景を見てか、そろりと忍び足でその場を去ろうとしているリィンに対してテルは勿論黙っているはずがなく。

 

「なぁ? 確か成仏したんだっけ?」

 

「い、いやぁ、もう少し後にしようかと・・・・」

 

テルに続いて、ハヤテがリィンの肩をつかむ。

 

「遠慮しなくていいですよ? 丁度ここには幽霊さんに触れる霊媒師さんが二人もいますから」

 

笑顔で迫る二人にリィンは素早く土下座した。 この二人に金の事でやらかすと後々が辛いとリィンは初めて知ったのだ。

 

 

 

「そうだ。 最初の目的を思い出そう」

 

リィンの震える声に当初の目的を思い出したか、テルがボロボロになったリィンをその場に座らせる。 このリィンが言い出したこと、それはこの世から成仏したいということだ。

 

「いや、だからこのまま送ってやるから」

 

と、テルは鷺ノ宮家の悪霊退治用の札を鉄パイプに巻きつける。 唯一悪霊などの類に直接殴る事ができる武器であり、これで冥土に送ってやろうというのがテルの考えだ。

 

このままでは消されるかと思ったかリィンが手を両手に振った。 今の二人なら確実にやりかねないからだ。

 

「そんな物理的な成仏を望んではいない!! 貴様ら人の話を聞かないと神に呪われるぞ!!」

 

まずそんな迷信地味たこと、どっから出たのかと思った二人だが内一人の執事、ハヤテはいくらか冷静だったようで。

 

「テルさん、ちゃんと話を聞いてみましょう。 何も考えないで行動したら呪いでしっぺ返し食らうのは経験したことがありますよね?」

 

「む・・・それもそうだな」

 

と、テルは持っていた鉄パイプをしまう。 そのヒナ祭り編の人間爆弾の件に関してはあまり思い出したくないのだが。

 

リィンがこほんと咳を挟んで話し始めた。

 

「私って、見える相手にしか触れられないじゃん? キミ達とか鷺ノ宮の人とか」

 

「そうだな。 だから?」

 

冷ややかに返したテルにリィンは動じず。

 

「つまりは私は君たち以外の人間には見えないというわけで、これを活かせばメイドさんとイチャイチャが――――」

 

金属音。

 

「さて、辞世の句は用意できたかベイベ?」

 

「鉄パイプで殴ってから言うことじゃないんじゃないかな?」

 

頭に出来たたんこぶを見て、テルが殴るのに使用した鉄パイプを再びしまう。

 

「ようはコイツ、ただメイドとイチャイチャして欲求満たしたいだけだ」

 

「でも見えないからそのイチャイチャとかしようがありませんよね。 まずそれだけで条件が・・・」

 

姿が見えない。 という言葉に反応したリィンが閃いたかのように手を叩いた。 それをテルがバックドロップで地面へと叩きつけてホールドする。

 

「お前、マリアさんのところ行くつもりだったな?」

 

「な、なぜそれを・・・!!」

 

「分かるんだよ。 俺がお前だったら絶対そうするからな」

 

「コイツの方が結構問題なんじゃないのか執事君!!」

 

「しかし参りましたね。 いったいどうやってメイドを用意すれば・・・」

 

「お前がなればいいじゃん。 結構好評だったらしいからな。 なんだかんだ人気投票で票稼ぎに貢献してたわけだしな」

 

「い、嫌ですよ! アレすっごい恥ずかしいんですから!!」

 

いや、そんな乙女モード全開で反論されても。テルは冗談で言ったのだが、ハヤテにとってもはや女装などはトラウマになっていた。

 

「他人にやらせる・・・そうか!!」

 

リィンがまたしても何か閃いたようだ。 

 

「君たちがダメだというなら別の人間にやらせればいい! しかもあまり被害がない人にだ! 私が見えるて触れられる人にメイド服を着せればそれでいいじゃないか!!」

 

歓喜にも似た声でリィンが言うと、テルも少し考えてか納得したように腕を組んだ。 二人としてもこの案には納得がいったようだがハヤテがまだ不安要素を指摘する。 

 

「なるほど。 ですけどそう簡単にいるんですか? そんな安請け合いをしてくるような人材が・・・しかもどうやって用意するんです?」

 

「呼ぶ」

 

ポケットから取り出した携帯の短縮から「ゴーストバスター1号」登録した番号を選択して発信した。

 

 

 

 

数十分して。

 

 

 

「て、テル様・・・おおかた事情は理解しました。 この世に迷える魂を正しき道にお送りするのも鷺ノ宮の役目、ですが、ど、どうして・・・この姿と、いうのは・・・」

 

鷺ノ宮邸からわざわざ足を運んでくれた伊澄に申し訳ない気持ちでいっぱいだが、とテルは両手を合せる。

 

「ああ、まぁこうしないと受け入れてくれないんだよこの神父」

 

テルは別の意味でも両手をしっかりと合わせた。 この通り頼むと懇願する。 メイド服の伊澄に。

 

もう一度言う、メイド服を着た伊澄だ。

 

 

「いやぁしかし、結構似合ってますよ伊澄さん。このままメイドに転職してもいいんじゃないですか?」

 

「ほら、ハヤテもこう言ってんだし・・・という訳で一枚」

 

と本人の了解なくテルは携帯のカメラ機能を発動させてメイド伊澄を激写する。 

 

「な、なんで撮るんですか――――!! 撮ったのはどうするつもりなんですか―――!!」

 

「いんやー。 なにもしねぇよ」

 

テルはこういっているが実際は違う。 このイイネタを理由にワタルを釣る最高の餌が出来たなんてテルは微塵も思ったりはしていない。 

 

ロングスカートタイプのメイド服を着た伊澄には和服以外でも似合っていると思った。 これなら私服の方もなかなか期待してもいいのだはないかテルはまたしてもワタルの餌が増えるとニヤリ。

 

「まぁ、伊澄さんはそんなに頑張らなくても良いですよ。 適当に『おかえりなさいませご主人様』って言ってあげればこの神父も納得しますって」

 

「さぁ、お前のその欲望、開放しろ!!」

 

どこのウヴァだと思いながらも、一同は神父の方を見る。 手が震えている。 想像のあまり興奮しているのだろう。 これで潔く成仏――――。

 

「ちっがーーーーーーーーう!!」

 

「ええーーーーーー!?」

 

しなかった。 予想とは違う反応に一同が戸惑う。 

 

「違うんだよ!何か違うんだよ!彼女は単にメイドの服を着させているだけで・・・・メイド魂が篭っていなーい!!」

 

なんだソレハ。 と理解不能な理由を並べられてはこちらも困る。

 

「だとしてもなぁ、これ以上は伊澄の負担になるだろうしな。 見た感じ嫌そうだし・・・お手上げじゃないか?」

 

とテルが手を上に上げて降参ポーズをしようとした時だった。

 

「いいえ、やります」

 

伊澄が言った。 キリッとした目付きで神父を見据える。

 

「鷺ノ宮の名にかけて、そのメイド魂とやらを身に付けて・・・必ず貴方を成仏させてあげましょう」

 

(何か別のスイッチが入った!) 

 

とテルは頭に手をやる。 伊澄の頑固さがまたしてもこの場面でも出てきた。 どうやらこの頑固性はなかなか治らないらしい。 これ以上面倒事に追われたくないのだが、伊澄がとてもやる気なのでテルは仕方ないといった表情で。

 

 

「しゃーなしだな」

 

 

と、深く頷くがその右手には出どころ不明のカメラが握られていた。 

 

 

こうして、伊澄のメイド魂会得の長い道のりが始まったのである。

 






後書き
ちなみにテルの携帯に登録されている名前。

ゴーストバスター一号 ⇒ 伊澄

ゴーストバスター二号 ⇒ 咲夜

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