ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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前書き
最近時間が過ぎるのが早いんですよね。


第89話~空を自由に飛べたらと、屋上へ行った退職後の夏~

捜索隊その3。 千里と唯子のペア。

 

 

 

「なに? 瀬川からチョコを貰っていたのかだと?」

 

「そうだ。 ちゃんと私に納得のいく理由を説明してもらおうか」

 

搜索活動のその道中。 千里は唯子から一つの質問を受けた。 それはここにはいないテルと泉が口にしていたホワイトデーとバレンタインの話である。

 

「あの瀬川嬢が、お前みたいな出来ていない人間にチョコなんてあげる訳がない! 私の見解ではお前がモテない寂しさに耐え切れず金で瀬川じょうを買収するという蛮逆・・・」

 

「そんな事するわけないだろうが!! 王であるこの身は、決してそのような女々しい事はしない!!」

 

顔を真っ赤にして千里が吠えた。 拳を既に握り締めており、今にも殴りかかってきそうな勢いである。 流石にここで殴り合う気は無いのか、唯子は両手を上げてその意思を示す。

 

「落ち着け。 実際のところはどうなんだ?」

 

唯子が真顔で聞いてきたので千里は一度呼吸を整える。 だがその一方で腕を組んで黙り込んでしまった。

 

「なんだ? よもや、原因が分からないとは言わせないぞ」

 

「そのまさかだ。 原因が分からない」

 

は? と唯子は顔を渋らせた。 この男にチョコを渡すなんてもの好きな女は恐らく世界広しといえど一人の居ないのだと唯子は思う。 だが、現に千里に渡している女子がいる。天然である瀬川が渡してしまうのだ。 

何はともあれ、理由があるはずだ。 あのバカ王子に渡すほどの理由が。

 

「そう言えば」

 

と、千里が一つ思い出したかのように口を開いた。

 

「チョコとかが渡されるようになったのは、たしかあの時からだった気がするぞ」

 

そこで唯子は初めて、泉が入学当初、野犬に襲われていたのだという事を知った。

 

「なるほど。 その襲われていた野犬を退治して瀬川嬢を助けたと」

 

「いや、助けたかどうかは知らん」

 

またしても唯子の眉間がつり上がった。 今度は明確にイライラが募ってきている。そんなことをお構いなしに千里は続けるのだが。

 

「あの時は身に降りかかる火の粉を払っただけだ。 それ以上の解釈はない」

 

ほう。と、唯子は自身の顎に手を付けた。 要するに、千里は自分に襲いかかるであろう野犬を当然のごとく防衛する為に撃退した。 泉はただそこにたまたま居たというだけ。

 

千里は誰かを助けたという認識がどこにもないのだ。

 

「だから何故俺が毎年あいつから菓子を貰っているのか、未だに理解ができん。 瀬川家とは乙葉家も色々と仕事の関係で交渉する間柄だ。 無理に突っ返すこともできん・・・正直、困っている」

 

一連の内容を聞いて唯子は即座に取り出した竹刀で千里の顔面をぶっ叩いた。 竹のしなりと共に甲高い音が林に響く。 どこかで他の捜索隊もこの音を聞いているだろうか。

 

「な、なぜ叩くのだ貴様ァァァ!!」

 

「黙れ木偶。 少しでも貴様の人格を格上げした自分が愚かの極みだった。 これを瀬川嬢が聞いていたら確実に泣くぞ。お前は失脚王から屑王に格上げだ喜べ」

 

「上がってはないだろう。 それは喜べん!!」

 

「貴様がツッコミを行うとは・・・これもまた悲劇の幕開けか」

 

「三千院家にいると、こういった事は日常茶飯事なのでな。 最初は髪の毛が何本か抜けた気がするのだが」

 

思い出される屈辱の日々に千里が怒りを込めた拳を深く握る。 普段の性格と経験した事のない環境での生活は千里が思っていた以上のストレスを受けている。 よく今日までストレスで倒れなかったと自分を褒めてやりたい位だ。

 

「・・・まぁ、住むところがあるだけで良いと思え。 三千院家が衣食住を提供していてくれるおかげでお前は普段と変わらない生活を遅れているのだ。 これ以上求めるのは罰当たりなものだ。 求めようとするといらないものまで手に入るからな」

 

竹刀をどこかに投げ捨てて顔を抑えて悶える千里を置いて歩き出す。 しかし、数歩だけ足を雨後した唯子はいきなり立ち止まった。

 

「なぁ、馬鹿木偶王子。 お前は自分が置かれている状況を、どう考えている」

 

背を向けたまま静かに言う唯子に千里は顔をあげた。

 

「どうもこうも。いきなりの事で今もまだ混乱している状態だ。 父上とも、加賀美とも連絡が取れず、今まで住んでいた家もなくなり、知らない家での生活だ。 世の流れとは時として俺の意を無視して動いているらしい」

 

「そんなことは・・。 どうでもよい、私からの質問はひとつだ。 もし、もしもだぞ。 今までの事を全てなかったことにしてくれる、なんて胡散臭い魔法のような力を手に入れたらお前はそれを使うか?」

 

「は? いきなり何を言い出すかと思えば、貴様もついにそんなカルトじみたことを言うようになったか」

 

と、笑おうとしたが振り返った唯子の目を見てそれは未遂に終わる。 その目はいつになく真剣で無駄な回答を求めずこちらの意思を素直に話せと命じているかのようだったからだ。

 

「・・・どうもこうも、そんな幼稚なことに頼らずとも、俺は必ず父上を探し出し、会社をもう一度再建させてみせる。それがこの俺、乙葉千里に与えられた王としての責務だ」

 

強く言い放ったその一言に、唯子はうすら笑いを浮かべた。 黒い長髪をなびかせた唯子は前へと歩き出す。

 

「たかだか戯言に何を本気の回答をしているのか・・・だが、今はそういうことにしてお前がどうなるか見ておいてやろう」

 

「もの凄い上から目線なのが気に食わんな・・・この俺が上の人間だというのに」

 

これまで以上に苛立ちを覚えた千里だったが、それとは別に一つの違和感が生まれた。 彼女、唯子が一瞬だが見せたあの目は一体何だったのか。 そして持ちかけてきたあの問いかけは何を意味するのか。

 

それは今の段階で理解する必要もないだろう。ただの唯子の妄言だ。 と話に区切りを付けて千里は構わず前を向いて歩き出す。

 

 

 

「おーい瀬川ー。 どこ行ったー?」

 

搜索を始めて大体三十分経ったというところだろうか。 テルは一人で暗い道の林を歩いていた。 

 

「参ったな。 まさか瀬川と迷子になっちまうなんて・・・こんなの死亡フラグがビンビンじゃねーか」

 

咄嗟に頭の後ろを掻いた。 恐らく白皇の敷地内から出ることはないだろうが、この夜中で一体どんな遭遇するか分かったものではない。実際某探偵アニメも、死ぬのは必ず一人になってからである。 

 

「大変だなぁ。 別に探さなくてもこの場合なら朝になって見つかるのがパターンなんだけど。 こりゃ不思議探しの場合じゃねぇーわ。気付けば俺もどこにいるのか分からなくなっちまってるし・・・」

 

 見回しながら状況を分析すると、迷子を探しているうちにいつの間にか自分が迷子になっていたという。どこのポルナレフ状態だろうか。

 

「しかし、結構奥まで進んだと見るぜ。なんか木とかの形もスゲェー変わってきてるし・・・なにこれ? 迷わずの森?」

 

 きっとどこかで野生のデジモンでもいるのではないか。 いつもどおり歩いていたら最初の敵、アグモンとかが出てくるかもしれない。 さっきから肌に感じる寒気のようなものは一体何なのだろうか。

 

「うーん・・・・ってアレ?」

 

とテルが顔をしかめる。 いつのまにか右肩が上がっていた。 正確には何かにもたれかけるようにしている状態だ。コツコツと何か骨のように硬い、その感触が背中に走る悪寒を加速させる。

 

「・・・・・・」

 

横を向き、テルが肩をかけていたその物体は、まさしく骨だった。

 

そう、骸骨の。

 

「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 手を払いのけてエビが危険を察知したように後方へとテルは跳ねた。 ホラーの映画のように現れたそれはは間違いなく骸骨。理科室によく置いてありそうな物だった。 ケラケラケラと、歯を鳴らしてこちらを見る様は気味が悪い。

 

「ヌオオオオオオ!!」

 

しかし、ケラケラと笑っていた骸骨にとってテルの次の行動はまさしく不意打ち以外のなにものでもないだろう。 まるでルパンがベッドにダイブするかのように高々とジャンプすると、テルはそのまま骸骨めがけてバックドロップ。対幽霊用の御札を用いることなく、純粋な肉体技でその骸骨を叩き潰した。

 

「な、なんかのトリックかコレ、べ、べつに俺はビビってないけど!!」

 

バラバラになった骸骨をテルが震えた声を出しながら足蹴にしていた。 絶対にビビっていたのだろう。

ここで何かに気づいていたか、テルがただならぬ雰囲気を放っている骨を拾い上げた。 

 

・・・なんか違うんだよなぁ。

 

と、纏わり付いている雰囲気にかすかな違和感を感じる。 確かにこの骸骨は悪霊とかのその類だろう。 だが、これまでのとは違い上手く説明できないが雰囲気が違っていた。 

 

まるで誰かに作られた、もしくは無理やり連れてこられたかのような。

 

「誰だ。 そこにいる奴」

 

 小さく枝が鳴った音をテルは聞き逃さなかった。 すぐさまその方向に振り返る。 

そこにいたのは一人の少女だった。

 

「・・・今日は変わった人がここに来ているのね」

 

姿を見せた少女は縦ロールの金髪、黒ドレス、片手に黒扇子と見ただけでどこかのお金持ちのお嬢様だということが分かった。

だが、テルが分かったのはそこだけではない。 ナギや、千里などの今までのお金持ちとは全く違った存在。 テルの感覚では貴族、もしくはもっとそれよりも上のような存在に感じた。

 

「ただのお嬢様って・・・訳じゃなさそうな」

 

「あら? 冴えない顔をしている割に勘は良さそうね。 アレを倒すくらいだから当然なのかしら?」

 

常に余裕の笑を浮かべる少女は扇子を開いて自身を扇いだ。 日本生まれの外人なのか、日本語が流暢だ。スタイルもナギに見習わせたいくらいのナイスボディだ。 だが。

 

・・・なんかあの上から目線がむかつく。 非常にだ。

 

まだ出会って数分と立たないうちに目の前の少女に怒りを燃やすテル。 テルの言い分はこうだ。 相手が常にこちらを見下しているというそんな感覚が彼を目を細めさせる。

 

「フフ・・・よく見ればかなり荒削りな鍛え方をしたようね。 その御陰でかなりの域まで達しているけど、未熟で効率の悪い成長の仕方ですわ」

 

「ファーストコンタクトに相応しくないなこの会話。 他人の体の成長具合を把握して楽しいかよ つーか、気持ち悪いフツーに考えて」

 

「別にあなたに興味はありませんわ。 昔、私が鍛えてやったらもっと強くなったでしょうに」

 

少女は軽く笑ってみせた。 さっきからこの少女の言っている事が理解できない。 

 

「もしかして、これが会話のドッヂボールなの?」

 

「一応投げ返してはいるわ。 それよりも、こんな所で何をしているのかしら・・・?」

 

仰いでいた扇子を閉じて、少女は質問する。 漸く会話らしくなってきた。

 

「ここに昔の失踪事件の不思議を今更ながら探しに来ました・・・って言えば分かるか?」

 

「随分と昔の話ですわね。 今更調べて一体どうするのかしら?」

 

 少女の返しにテルは頭を掻いた。 別に大きな目的があった訳ではなく、ただ三人娘の暇つぶしという娯楽に付き合っているだけなのだから。

 

「ただの暇つぶしだっつーの。 それともう一つ・・・一つだけ質問させてもらってもいいか?」

 

テルがそう言うと、少女が首を傾げて見せた。 テルは口元をにやけさせながら続ける。

 

「お前は確か言った・・・『アレを倒すくらいだから当然』と。 つまり、お前は俺と意味不明な骸骨との一部始終をしっかり見ていたわけだ・・・」

 

 

「・・・・」

 

「お前、何か知ってるな?」

 

探りを入れて、テルは少女を問い詰めた。  だが少女はさほど図星のような驚く仕草をひとつも見せず小さく笑った。

 

 

「さぁ? どうなのかしら。 それよりも面白かったわ貴方。 骸骨相手に予想以上にビビりまくってたのだから」

 

そんな馬鹿な。 とテルは腕を組む。 少女は息をつくと、改めてこちらと向き合った。

 

「骸骨の事も勿論、私には関係があるわ。 ただ、今回はちょっとテストしてみただけなの。 あの「石」のレプリカの能力をどれだけ本物に近づけられているか。 結果はまだまだだったわ。 ま、こんなこと話しても貴方にまったく分からないことでしょうけどね」

 

「うん、解らん」

 

首を傾げて答えたテルに少女は整った表情に少しだけ眉間にシワを寄せた。 

 

「こんな人間がハヤテの隣に居るなんて、あの人はどれだけ不幸なのかしら・・・」

 

「うん? お前ハヤテの知り合い?」

 

テルの言葉に少女はうっかりしていたと気づく。 そしてこちらを向くと少しキツめに睨みつけてきた。

 

・・・アレ? なんか地雷だったのか?

 

これには少しだけテルも覚えがある。 うっかりNGワードをしゃべってしまった時の起こった時のマリアのような感覚だ。

 

「えーっと、友達とかだったのなら連れてきてやろうか? 一応今ここらへんにいるだろうから」

 

「今この場所にハヤテがいるの?」

 

「居るけど。 あ、待ってろ、今電話しておいてやる。 ここ電波悪いけどつながるかな」

 

と、テルが携帯電話を取り出した時だ。 

 

「待て」

 

冷酷な声が聞こえた。 その声の出どころは間違いなく目の前の少女。 まるでキャラが変わったかのような暗い声。 その声に打ち出していたボタンをテルは止めた。

 

「ハヤテが・・・いる。 つまり、アレが、近くに・・・!!」

 

「お、おい大丈夫かよ」

 

・・・なんだこの嫌な予感。 新手の中二病かよ。やべぇよ、やべぇよ。

 

テルが少しばかり焦りを感じた。 目の前の少女から感じた別の存在のようなものが今少女の体を乗っ取っているかのような。 そうでもなければこんな殺意丸出し、しかも狂気レベルの類の物を放ちはしないだろう。

 

気付けばテルは目の前の少女に対してか、腰に付けている鉄パイプに手を伸ばしていた。 明らかに自分は何かに感づいている。 得体のしれない何かに。

 

「ぐっ! 石・・・石さえあれば・・・!!」

 

・・・石? なんかそんな風に石に執着するやつ久しぶりに見たな。 そう言えばあの変化大好き石マニアの女はどこかで元気にやっているだろうか。

 

 などと呑気に構えていたとき、目の前の少女の雰囲気が更に変わった。 その瞬間、前方から背中を突き抜けるような衝撃が体を駆け巡る。

 

テルの体は後ろへと吹き飛ばされていた。

 

「・・・ごふッ」

 

激痛と共に地面を転がったテルは身を起こした。 見据える先には膝を付いて頭を抑える少女の姿がある。

それよりもだ。

 

・・・何が起きた。 

 

 頭を振ってテルは身を起こす。 確かに自分は何か物体に殴られたような感覚を味わった。だが、その姿は目で確認することができない。 目の前に迫った風圧を感知してなんとか鉄パイプを盾にして防いだものの、それでも体が激痛に震えている。 鉄パイプがなければ意識を手放していただろう。  

 

「あの石は・・・どこだ?」

 

 目の前の少女はまるで何かに乗り移られたかのような豹変ぶりを見せていた。 余裕のある声とはほど離れた声色。 まるで中に別の人間が入ってしゃべっているようだ。

 

「貴方は少し知りすぎたようね。 ここで退場してもらいましょう・・・」

 

少女は右手を掲げる。 その時、テルは一瞬だがその眼球を見開いてありえない現実を見た。

 

「おいおい・・・なんの冗談だよ」

 

少女の背後から薄い巨大なそれは明らかに腕の形をしていた。 骨の腕。 先程の骸骨の骨とは比べ物にならないほどの大きさ。

 

・・・この吐き気を催すような邪悪さは!!

 

先ほどとは全く違い、全身が氷の中に埋められたかのような物理的寒気と、突然とした吐き気に襲われる。少しでも気を抜いたらとても立ってなんて居られない。

 

「・・・けど、簡単にやられたりしないんだよな、男の意地的な? そもそもやられるつもりもねーし、って撃鉄が折れてるゥ――――――!?」

 

 テルが武器の鉄パイプを構えた時だった。 テルの武器である撃鉄の持っている手から先の身がない。 

先程の一撃で完璧に折られている事にテルは全く気付いていなかったのだ。

 

・・・やべっ。

 

見上げて見れば既に真上には巨大な骨の腕が拳を握り締めて狙いを定めていた。 テルは当然反応することが出来ず。

 

「私の名前をまだ教えていなかったわね。 私の名前は天王洲アテネ、『アテネ』とは、この星でもっとも偉大な女神の名前よ」

 

・・・誰も教えてなんて言ってねーし!!

 

テルがその少女の名前を覚え事も、防御をする間もない次の瞬間、白皇学院の敷地内に巨大な轟音が響き渡った。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

だいぶ落ち着いたのか、大きく肩を落としたアテネという少女。 ついさっきまで出現していた骨の腕は今は消えており、目の前には人一人が埋まるくらいのクレーターが出来ている。

 

そのクレーターにはテルが目を閉じたまま沈んでいた。

 

「・・・・」

 

 まるでサイバイマンに自爆を仕掛けられた後のヤムチャのようなポーズで沈む彼は生きているのか分からない。アテネはテルの側まで近づいて首元に手を当てて見た。

 

「生きてる。 良かった・・・完全に気を失っているようね」

 

と、一命を取り留めていた事にアテネはホッと胸を撫でおろした。だが、一応あれだけの攻撃を受けてしまったのだからダメージは有るはず。 

 

「これくらいはやっておかないと・・・」

 

右手から一つの光が表れ、人差し指をテルの頭につける。 一瞬光が弾けたのを見て、アテネはすっと立ち上がった。

 

「ちょっとだけ貴方の記憶、弄らせて貰ったから。 昔の人のように・・・ね。 といっても、この説明も今の貴方には聞こえていないでしょうけど」

 

軽く笑みを浮かべるとアテネは踵を返してその場を離れていく。 その足取りは少しだけ重い。

 

・・・今年になってからどんどん意識が蝕まれてる。 早く石を見つけ出さないと。

 

「アテネ、ここにいたのか」

 

ふらつくアテネの前に一人の男が現れた。 タキシード姿のその男は色黒の肌に白い髪をした中々のイケメン。

 

「マキナ、遅いわよ。 主人が呼んだのに執事のあなたがこれだけ遅れるとは・・・全くお馬鹿な子ね」

 

「な、なんだとぉ!! 遅れたのはちょっと日本のモスの方に行っててだな!!」

 

マキナと呼ばれるこの少年はどうやらアテネの執事らしい。 どこか子供じみた印象を持つマキナに対してアテネは笑うことなく歩むのを続ける。

 

「今日は少し疲れたわ。 早く戻りましょう」

 

「なぁ、アイツはどうするの?」

 

マキナが指で示す先にはクレーターに沈んだテルがいる。

 

「別に放っておいてもいいんじゃないかしら? 手当はしたし、記憶の方も少しだけ弄ってるから。 それに、その子はある人の友達らしいからやめておきなさい」

 

「はぁ~い」

 

気の抜けるような声にアテネはやれやれといった表情でその場を後にした。

 

・・・もしかしたら、貴方に会う日が近くなっているということなのかしら。 遠目で眺めるのではなく、目の前で会うという日が・・・ハヤテ。

 

アテネの嘆きに近いその心のうちの声は誰にも悟られることは無い。

 

 

 

 

 

 

「おーい!テル夫くん、起きてー!!」

 

「ヤムチャー! 起きろヤムチャー!!」

 

「あん? なんだよ一体・・・」

 

テルが目を覚ましたのは五月蝿い泉と理沙の目覚ましのせいだった。テルはクレーターに埋まっている体を動かして立ち上がる。

 

・・・なんでこんな所で寝てたんだ俺?

 

テルは自分がクレーターに埋まっていた理由が浮かばない。 思い出せないのだ。 

 

「こんな所で何してんだよヤムチャー、もう探索は終わりだぞ。 結局なんも見つかんなかったんだがな」

 

「いや、それはどうでもいいんだけどよ。 ヤムチャっていうのやめてくんない?」

 

「ヤムチャさん、こんなところで寝てないでそろそろ帰りましょうよ。 なんか凄い地響きが起きたんですけど、それでコッチに関係者の人とかが来るみたいなんです」

 

ハヤテが流れに便乗しているのでテルはその腹にボディーを決めた。 少しだけ痛がってハヤテは体制を低くする。

 

「恐らく、宿直の雪路だろう。 皆のもの、今日は撤収であるぞ」

 

「仕切んなバカ王子」

 

唯子がドヤ顔で指示を飛ばす千里の頭を叩いた。 仕方ないといった表情で一同はその場を去っていく。 ただ他の人が去っていく中でテルは頭に手を乗せて考えていた。

 

何かが浮かぶわけでもないのだが、どうしようもない違和感のような、引っ掛かるようなものがあるのだ。

 

・・・なんかガシャドクロの先祖返りを見たような。

 

こうして、多くの謎を残して不思議探索活動は終を告げたのであった。

 

 

 

 







後書き
まさかのアーたん登場回でした。 一応日本でハヤテを見てた描写があるから間違いじゃないよね。
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