ハヤテのごとく!~another combat butler~   作:バロックス(駄犬

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前書き
黒羽さんが来てから数日後の設定。


第93話~21世紀、彼のストレスは増え続ける~

世の中は時として、予想もしない異常な流れを作り出している。

 

「知っているかハヤテくん。 敵になったキャラが仲間になるとそのキャラが死ぬ確率がかなり高いということを」

 

あからかに機嫌が悪そうにキャンディを口に含ませているテルがキャンディに付いている棒を上下に動かしていた。

 

「なんで今そんな話を・・・? 仕事中ですしまたマリアさんに見つかるとまた怒られますよ?」

 

勤務中に悪態、愚痴、おフザケをするテルの光景はもう慣れきったものであったハヤテがため息を着いた。テルはそれに対して指を横へと振る。

 

「ここは俺とハヤテがまかされた仕事場。 マリアさんは例によって買い物に出かけてんだよ。 よって、ここにマリアさんがくることはないし、怒られる可能性はない」

 

 

・・・うわぁ、この人最低だよ。

 

と、心の中でテルを批難の声をつぶやくと扉を開けてナギが後ろから竹刀をテルの頭に叩きつけた。

 

「マリアがいないからって、主である私はここにいるのだ。 おいテル、さっさと私に麦茶買ってこいよ、五秒な」

 

「このチビィ・・・最近調子乗ってんじゃね? なぁハヤテくんよぉ。 ここは少しだけ使用人からお嬢様に対するオシオキを施したほうがいいんじゃないか?」

 

彼の言い回しがとても犯罪の方向へと向かっているのは気のせいだろうか。 いや気のせいではないだろう。 そのうち、年下の人間に手を出してしまうのかもしれない。 

 

「お嬢様。 離れましょう、最近のテルさんは少しだけ危ない臭いがしてるので。 気付かないうちに変な子とされないように今日は自分のお部屋に篭っていてください。 ええ、多少の籠城は大丈夫です。 昼と夜を食べに来てくれたら・・・」

 

「お前ら、どこまで俺を危険分子扱いしてんだよ」

 

箒を激しく振り回しながらテルは荒々しく掃除を再開した。 これで少しは収まったと安堵するハヤテの耳にナギが耳打ちする。

 

「なぁ、本当最近のアイツは荒れてないか?」

 

「でも何故か仕事で失敗する確率が少なくなってきてるんですよ・・・不思議なことに」

 

ナギが言った通りに最近のテルはどこか気が立っていた。 寝不足もあるのだろうか、目にクマができたり寝癖で髪が全然決まっていない。 だが不思議なことに、今まで失敗していた執事の仕事であまりミスをしないようになっていた。 

 

「うーん。 アイツにしか見えない世界とかあるんじゃないか? 加速世界とか」

 

「いや、意外に猿に投与するアルツハイマーの薬を摂取したのかもしれませんよ? なんか凄い集中できていますし・・・」

 

「アイツもストレスを感じることあるんだな。 てっきりそういうのには無縁かと・・・まぁそのままハゲてくれた方が私としては面白いしこのまま放置でいいかもな。 太陽拳ッ! とかネタでやってくれればなー・・・つまんねーけど」

 

と、二人はあれこれ考察するわけだが、実際のところハヤテにはテルのストレスの原因が分かっていた。 あのテルがストレスを感じる原因それは。

 

「ただいま帰りました~」

 

玄関の扉が開き、マリアの声が聞こえてきた。 その瞬間、テルの体が一瞬だけ固まる。

 

「いやぁ、今日は色々と安い食材を揃えることができましたわ」

 

マリアの両の手に食材の入った大きなビニール袋。 スーパーのセールにでも勝ってきたのだろうか。 なかには安い野菜やら肉が多く中にあった。 

 

「マリアさん今日はタイムセールスとかやる日でしたね。 いつもの店でやってたんですか?」

 

「ええ、いつもなら凄い混むんですけど今回は不思議と二人で行ってきたら凄い簡単に食材GETできましたよ」

 

至福の笑みを浮かべるマリアの後ろの扉が少しだけ動くと同時にもう一人のメイド服を着た少女が入ってきた。 黒髪で小さなビニール袋をもった少女は中に入ると小さな声で言った。

 

「ただいま戻りました」

 

それを見た瞬間のテルの反応というと、何故か箒を剣のように構えていた。明らかに警戒している。

 

「あ、お帰りなさい黒羽さん」

 

黒羽のビニール袋をハヤテが受け取ると黒羽は小さく頷いた。 無表情で常に変化することない瞳の彼女はすたすたとマリアの後ろに下がった。

 

「・・・テル君、そろそろその箒を下ろしたほうがいいかと・・・」

 

マリアが後ろで固まりながら箒を構えているテルを見るに耐えないと思ったのか、ため息混じりに言うとテルはぎこちない動作で箒を下ろした。

 

「しっかりしてくださいよー。 これじゃあいつまでたっても黒羽さんに物事教えられないじゃないですか。 この子の世話係はテル君なんですから」

 

「ま、マリアさん頼みます・・これ以上は俺の胃がマッハの速度で縮んでいく・・・」

 

そう、何を隠そう。 最近テルを蝕んでいる原因は全てこの新人のメイドさん黒羽 舞夜によるものだった。 テルによって拾われてきた彼女は三千院家に住む人間となり、同時にマリアの提案でメイドになることが決まってしまったのだ。

 

 実際これがテルのストレスに直結してると言ったら全くそうではない。 全てはテルの過剰反応によるもので後ろを取られていると黒羽が敵であった時の感覚を思い出してしまい串刺しにされてしまうのではないかという危機察知してるためだ。 結局のところ、黒羽は全くもって無害である。 テルのストレスの出どころは自分であり、自分の首を自分で締めているという言葉がまったくもってお似合いな状況であった。

 

『刺されないように腹部に雑誌でも詰め込んでやるぜ(キリッ)』

 

と前回は世話役を自信満々にヤル気を出していたのに、この様はなんだろうか。

 

・・・本当、情けないったらありゃあしない。

 

テルのことだろうからこれくらいのトラウマは克服できているはずだと思っていたハヤテだがこれでは世話役を任せた意味がない。 しかし、結果的にはテルにとっては集中力を高めさせているプラスの要因になっているので面白いと感じていた。

 

「なぁ、ハヤテよぉ お前今この状況を少なからずとも楽しんでやがるだろ」

 

「いいえー?」

 

間延びするような返事にテルが眉間にシワを寄せた。 ここで悟られてはいけない。 耐えろ耐えるんだ。

 

「あの・・・マリアさん。 私はこのあとどうすれば」

 

「あ、そうですね。 じゃあ今日は夕食まで上がっていていいですよ」

 

マリアがそう言うと黒羽はぺこりとおじぎをして階段をゆっくりと登っていった。

 

「もの凄くいい子じゃないですか。 いつまで怖がってるんですかテルくんは」

 

「ホントですよ。 仕事の飲み込みもはっきり言わせてもらいますけどテルさんより遥かに良いですよ。 これじゃあ先輩ポジションが乗っ取られるのも時間の問題ですね」

 

マリアやハヤテの言うとおりで、黒羽の仕事の吸収力はまるでスポンジが水を吸い上げる如き様だった。 一度習ったことは何でも記憶して決して間違えることはない。今では何も言わなくても最低限の以上の仕事をやってくれている。

 

「だ、だってよぅ。 アイツが真後ろに立った時の事を想像してみろよ。 俺はまた後ろからグサッなんてことにならないか、そんな事も考えると俺は夜も午前中の授業も寝れなくなっちまうんだから!! この前なんて調理場で包丁持って後ろ立たれた時は慌てて俺、構えちまったよ」

 

「授業中は起きていてくださいよせめて。 後、黒羽さんはただ単にテルさんが落とした包丁を拾ってあげただけです。 落とした人間に問題があると思います」

 

とテルに冷静にこれまで自身の失態を説明する。しかし、ここまでテルが追い込まれているのは初めてではないだろうか。 単に強い敵以外でテルを追い込んだのは数えると言っても学校の授業とテスト位じゃないだろうか。

 

「そう言えばお前最近、焼き鳥とか食べてないんだってな」

 

「ああそうだよ。 なんでか知らんけど刺さってる気持ちがなんか分かっちまったら食えなくなっちまったんだよ」

 

ちなみにテルが焼き鳥や何かが串に刺さっている系の食べ物が食べれなくなった原因は最初の黒羽との立会の時に串刺しにされてしまったからだ。

 

「なんなんだよ。串刺しとか、私たちにはまったくもって理解不能だ。 そんなに串ものが嫌いなら今日から砂肝とか鳥肉を用意してやろうか。 勿論串付きで」

 

「なんだそりゃあ、嫌がらせか!」

 

「あー楽しい。 なんかこうやってテルいじってると凄い気が晴れる。 わっはっはっは!!」

 

ナギが嬢王のような高笑いを上げているのを見てハヤテは三千院家でのテルの位置が更に低くなったと確信したのだった。

 

「でも黒羽さん、物覚えがイイのはとてもいいことなんですけど」

 

マリアが頬に手を当てて次の台詞を言おうとしたときだった。 階段から大急ぎで一人の大男が現れる。 黒羽と同じ同居人である千里だ。

 

「おーい。 またしても小娘が倒れておるぞー」

 

「またか・・・」

 

と一同が千里に導かれて行くと黒羽の部屋の数歩前で前のめりで倒れている黒羽を発見した。 

 

「物覚えがいいんですけど体力に問題がアリとは・・・」

 

苦笑いで言うハヤテ。 そう、何を隠そう黒羽はとても体力がない。 仕事始めも十分に一度は貧血で倒れる事があった。 突然とぶっ倒れるので何事か何度みんなは慌てただろうか。

 

この体力のなさは意外な事にナギよりない。 この事実にナギは少なからずとも歓喜していたそうな。

 

「まぁ、これでもマシになった方だよな。 十分が一時間になっただけでもかなりの進歩だ」

 

とテルが黒羽の近くまで歩み寄り、膝を落として黒羽の肩を揺らす。 一瞬だけ唸った黒羽はゆっくりと目を開けた。

 

「申し訳ありません・・・また」

 

ふらつきながらも体を起こしたがやがて体制を崩したのでマリアが慌てて支えた。

 

「いいんですよ。 体力がないのにここまで頑張ってる点は明らかにナギより素晴らしいですから」

 

「ま、マリア! それはどういう意味だ!」

 

「そのままの意味ですよ」

 

とナギが顔を赤くして喚いている。 テルが支えながら部屋のベッドまで連れていくと黒羽はあまりなれないのか戸惑いながらもベッドの中に入った。

 

「取り敢えず飯まで寝てなよ。 今日は終わりなんだからよ」

 

「はい・・・」

 

「いや、お前年齢一緒なんだから別に敬語なんか使わなくても・・・」

 

とテルが言葉を続けようとしたときには既に黒羽は目を閉じて眠りについていた。 恐ろしい速度だ。 これではまるでのび太のようである。

 

「不思議な事に寝てる時は何故かお嬢様みたいな品格があるんだよな」

 

寝息を最小限にして静かに眠るその姿はまるで眠れる姫のようである。

 

体を武器にすることもなく手に包丁を持って調理する。 

 

素早く地をかけていた足はこんなにも細い。

 

いつしか剣戟を交わしたその力負けしかけた腕は小さな袋の重さしか持つことができない。

 

改めて考えるとこんな少女が自分と血みどろの戦いを繰り広げていたかと思うとテルは信じられなかった。 

 

 

 

 

 

「・・・ったく」

 

ため息ついて部屋を出ると何やら不快な視線がテルに突き刺さった。 

 

「え、何?」

 

頭にハテナマークを浮かべるテルに対してマリアが手を上げて聞いた。

 

 

「時にテル君。 どうしてああいう時だけ普通に黒羽さんと会話できるか教えてくれませんか?」

 

「そうですよ。 なんで普段でアレが出来ないんですか」

 

「あー分かったぞ。 お前、弱ってる女の子には凄い強気で出れる奴なんだろ。 うわ、卑怯くさいな。 相手が倒れるのをわかってるからここぞとばかりに手助けしていい先輩アピールしてるよ」

 

三人はじっと目を細めてテルに向けて一言。

 

「鬼畜だナ」

 

「鬼畜です」

 

「鬼畜ですわ」

 

・・・なんて誤解を受けてしまったのだろうか。 

 

とテルとしては自身では歴代一位になるくらいの衝撃だった。 なぜ自身がここまで追い込まれなければならないのだろうか。 取り敢えず少しでも誤解を解くことからやっていこう。

 

「落ち着け。 お前らそんなゴミを見るような目で俺を見るな。 お前らまで俺のストレスの種を増やしたいのか」

 

「じゃあ弁解の余地があるなら言ってみろよ」

 

とナギが挑発じみたように言うので腰に手を当ててテルは言った。

 

「あの状態の時だけ、何故か俺をストレスを感じさせるようなオーラが無くなるんだよ。 なんか殺気とかじっと見られている感覚とか全部なくなるんだよ。 だから俺はあんなにフレンドリーに近づけるわけだ」

 

「異議あり!! それは被告人が仕方ないという事で自己納得させてるだけである!! ホントは女のか、か、体が目当てなんだ!!」

 

・・・もしそうだとしたら俺はとんでもない屑野郎だなおい!! っていうかなんで逆転裁判!?

 

めまいを起こしそうなくらいにテルの頭はパンク寸前だった。 何を言っても自分が不利になるような状態にしかならない気がしたからだ。 思わず体を壁にあずけて頭を抱えながらズルズルと床へと崩れ落ちる。 もちろん意識はある。

 

しかし、次の瞬間にはマリアの口からテルの意識をブラックアウトさせるほどの衝撃発言が飛び出していた。

 

「ちゃんとしてくださいよ。 これから黒羽さんには学校とかにも行かなくちゃならないんですし、その時お世話するのはテルくんの役目なんですから」

 

「・・・・へ? ど、どういうことですかマリアさん」

 

マリアの発した一言にテルは目を丸くした。 聞捨てならない。 崩れていた体を一気に立ち上がらせて改めて聞く。それに対してマリアは笑顔で言った。

 

「そりゃあ、同じ年齢なんですし彼女も教育を受ける権利があります。 まだ青春を謳歌できる年齢なんですから学校いかなきゃ損ですよ」

 

「いやいやいや! そういうことじゃなくて!! なんでアイツのお世話係が俺なんですか!! 俺以外にも優秀なたらし・・・もとい、執事がいるじゃないですか!!」

 

テルの言葉にハヤテがピクッと眉を動かしたが感情を表さないようにハヤテは頬を掻きながら苦笑いで答える。

 

「そりゃあ僕はナギお嬢様の執事ですからねぇ」

 

「この卑怯者ォ!!」

 

「という訳で後少しして私がOKだと判断したら彼女は学校に行ってもらいます。 本人も承諾してくれてますし・・・全部計算された結果ですよ」

 

・・・マリアさん。 俺のストレスのことなんて計算外なんじゃないですか。

 

テルの悲痛な叫びはどうやら届かない。 彼のストレスはこれからも増え続けていく一方なのだろう。

 

 

 

 

 







後書き
なんか色々端折ってる感がありますけどだらだらとやるよりはこっちのほうが話が進むと思ったんで必要なところだけ書いてきたつもりです。
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