六等分の生き方   作:スターフルーツくん

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今年最初の更新です
ごめんなさい!!!
別作品と新作の更新に勤しんでました…
良ければ是非ご覧ください!
ではどうぞ!いつもより疲れてます!


第8話「クビ決定?」

 

 

「中間試験オール百点でした!」

 

 予想だにしていなかった五月の中間試験の点数に風太郎は唖然とする。当初はそこまで点数が芳しくなかった彼女が自分と肩を並べられる程にまでになったその成長ぶりに風太郎は感激の涙を浮かべる。

 

「私達も百点だったよ。」

 

 五月だけでなく中間試験以前に彼に協力的だった一花、三玖、四葉まで百点を取っていた。その事実に風太郎は涙ぐむ。

 

「ふん、認めてあげるわ。あんたは立派な家庭教師よ。」

 

 さらに二乃は全教科で百点を取っただけでなく、今まで邪魔者としか見ていなかった風太郎の実力を認めた。

 

「何じゃこりゃ〜!大成功だ〜!なんかこれ〜…!」

 

 五人は風太郎を胴上げし、笑顔で彼の実力に対して賛辞を送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかしそんな都合の良い話が現実に起こるわけはなかった。風太郎は「夢みたいだ!」と言いながらリビングから勢いよく目覚め、辺りを見渡す。周りには布団を掛け、眠っている五つ子達の姿があった。

 

「うん、百点はないよな。」

 

 風太郎はそう言いながら時計を確認した。その時刻を確認した瞬間、健康的だった彼の顔色は一気に真っ青になった。

 

「ふぁ〜…。早いですね…。」

 

 そんな中、五月が一人重たい瞼を擦りながら覚醒した。五月の声を聞いた風太郎は彼女に声をかけた。

 

「五月…。確認だがうちの学校は八時半登校だったよな?」

「そうですね。それから十五分後に試験開始です。」

「ふむ…。あの時計…壊れてたりしない?」

 

 五月が風太郎と同じ顔色をしてから数分後、風太郎と五月は残りの四人を起こし、猛スピードで学校に行く準備をした。

 

「何で起きれなかったんだろ〜!?六華〜!?」

「あと十五分…。結構ヤバいかも…。」

「六華がまだ起きてませんね…。朝食どうしましょう…。」

「六華、私のメイク道具知らない?」

「あー、眠いよー…。」

「六華、制服持ってきて!」

「朝食どうしましょう…。」

 

 五つ子達は揃って六華を呼び出したが、彼は現在ここにはいなかった。その理由はここにいる六人の中の誰も知らなかった。

 

「お前ら急いでくれ!」

 

 一人登校の準備を済ませた風太郎は五人を待つ。就寝と起床の際にも彼は制服を纏っていたため、他の五人よりもいち早く準備が完了していた。

 

「わ、私は部屋で着替える…。」

「わー、そうだった!」

 

 三玖と四葉のやりとりを聞いていた風太郎は間に合わない可能性を考慮し、仮に遅刻した場合は父親に何を言おうかと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな遅いよー!!上杉さーん、先行っちゃいますよー!」

 

 六人の中で最も足の速い四葉は他の五人の前を走っており、あっという間に五人の視界から消えていた。

 

「はぁ…。お前ら…車で通学してたんじゃなかったのか…?」

「江端さんはお父さんの秘書だから……。」

 

 五人の中でも特に走る事が苦手な風太郎の問いに彼と同じく運動能力が劣っている三玖が答える。四葉の姿を肉眼で捉えるだけでも精一杯な二人は息切れを起こしており、体力も限界にまで達していた。

 

「お父さん達が家にいたら良かったのにね。」

「そ、そうだなー。」

 

 一時は焦ったものの、このままのペースで急げば間に合う事を確信した風太郎だったが事はそう簡単に上手く運ばなかった。

 

「やっぱメイクしたいわ。スッピン見せたくないし。」

「他の四人がバンバン見せてるだろ!」

 

 二乃が立ち止まりいきなりメイクを始めたが、風太郎によって制止された。

 

「うーん偉い!偉いけど今じゃない!」

 

 一方、三玖は横断歩道を渡っている老婆の荷物を持って共に横断歩道を渡っていたが一刻を争う事態である今はそんな事をしている場合ではなかった。

 

「四葉はいねーし!どこまで行ったんだ!」

 

 五人の前を走っていた四葉もいつのまにか消えていた。おそらくは五人が止まっている間にも走って消えたのだろう。

 

「最近、学校の入り口に生徒指導の先生が立ってなかったっけ?怖そうな先生だし遅刻したらテストどころじゃないかも…。」

 

 一花が走りながら語った生徒指導の先生の存在に焦る風太郎の目の前で五月は力尽きてふらつき始めた。

 

「もうダメです…。」

「五月!諦めるな!」

「いいえ…。もう限界です…。お腹空いて力が出ません…。」

 

 時間の無い中、五人はコンビニに寄る事となった。起床してから急いで登校の準備をしていた五人にのんびりしている時間は無かったため、朝食を食べずに走っていたのだった。

 

「どれも美味しそう…。」

「悩んでる余裕なんて無いからな!」

「あなたは何にしますか?」

「!いや…。俺はほら…。」

「これくらい奢りますよ。何とは言いませんがご迷惑おかけしましたので。」

 

 そう言った五月の声色には過去の喧嘩に対する反省が顕著に現れており、それを感じていた風太郎はそれ以上何も言えなかった。

 

「どれにしよう…。」

「あんた達急いでるんじゃなかったの!?」

 

 コンビニで会計を済ませ、風太郎、二乃、五月の三人が外に出ると一花と三玖が泣きじゃくっている少年に寄り添っている光景が視界に映った。

 

「迷子みたい…。」

「ママとはぐれちゃったのかな〜?」

 

 助け舟を出したいところだったが、学校に間に合うか否かの瀬戸際に立たされている一向には少年に構っている余裕など本来は無い。たった一人、その事を風太郎は自覚していた。

 

「急いでるんだ。他の人に任せて行くぞ。」

「自分だっておにぎり買ってるじゃん!」

「道に迷ってる、可哀想…。」

「鬼!」

 

 一花と三玖は風太郎を薄情だと見做したのか、非難し始める。その後、一花は笑顔で少年に話しかけた。

 

「ボク〜?お姉さん達にお話聞かせて?」

「I wanna meet my mommy…」

 

 英語ではあったものの、少年がついに口を開いた。通常ならばこの程度の難易度ならば簡単に理解する事ができる。

 しかし少年の相手をしていたのはよりにもよって英語を苦手とする一花と三玖であり、二人は少年が英語を話し始めた瞬間、唖然とした。

 

「ハ、ハロー…。」

「自分達が路頭に迷うかって時に何やってんだ…。」

 

 追い詰められた一花と三玖を見て風太郎は呆れた表情を浮かべて呟く。そんな彼に二乃が腕を組みながら突然話しかける。

 

「あんたもね。急いでるみたいだけど間に合ったとして赤点回避なんてできると思ってるの?言っとくけど、私はパパに真実をそのまま伝えるから。あの子達も頑張ってるみたいだけど果たしてどれだけできるやら。」

 

 二乃は風太郎に対してそう言い放つ。しかし彼女の言葉を間に受けて挫けるような風太郎ではなかった。

 

「短い期間だったが俺にできる事は全部やったつもりだ。お前も…頼んだぞ。おい、その子は俺が…。」

 

 風太郎が後に続く言葉を言いかけた途端、少年が再び口を開いた。

 

「Where is the hospital?」

「今…ホスピタルって言わなかった?」

 

 三玖が少年の言葉を聞き取り、彼の言わんとしている事柄への理解に一歩近づく。そんな三玖の様子に五月が反応した。

 

「え?」

「いやっ、気のせいかも…。」

「中央病院なら近くにありますけど…。」

 

 三玖の言葉、意思を汲み取った一花は確認のため少年と会話を試み、その前に咳払いをした。

 

「Did…you go to the hospital with your mother?」

 

 一花がそう言うと少年は首を縦に振り、一花は自身の英語が通じた事に喜びを感じた。

 少年を母親のもとに届けた後、風太郎達は再び学校へと足を運ぼうとしていた。

 

「無事お母さんの元に届けられて良かったねー。」

「うんうん、良かったね。ところで君達、何か忘れてない?」

 

 風太郎はそう言い、自身の携帯の画面を見せる。そこには今日の日付と時刻が書かれていた。

 

「タイムオーバーだ。試験もじき始まる。」

 

 現在の時刻は八時三十三分であり、確実に間に合わない状況であった。

 

「ど、どうしましょう…。」

 

 最初に五月が焦る。

 

「でも学校はすぐそこだよ。」

 

 焦る五月とは反対に三玖は平静を保っていた。

 

「生徒指導の先生、許してくれるかなぁ。」

 

 一方の一花は試験に間に合わない事よりも生徒指導の教員の怒りを買う事を心配していた。

 

「どうするつもりなの?」

 

 二乃が風太郎に尋ねる。当の本人は携帯から電話番号を入力し、四葉に電話をかけていた。

 

「もしもし、四葉か?もう学校に着いてるのか?いや、いい。そのまま学校にいてくれ。」

 

 四葉とある程度やりとりをした風太郎は通話を切る。そして四人の方向に向き直った。

 

「大丈夫。俺に案がある。ドッペルゲンガー作戦だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風太郎達の学校の校門の前で生徒指導の教員が鋭い目つきをしながら仁王立ちをしていた。そんな彼の前に一人の女子生徒が現れた。その生徒は首に青いヘッドホンを付け、頭には兎の耳を彷彿とさせるリボンを付けている。

 

「おはようございまーす。」

「お前!遅刻だぞ!」

「おっと!このリボンに見覚えはありませんか?」

「…。その顔、そのリボン…。たしか数分前に見たような…。」

「先生の手伝いでまた外に出たんです。」

「そうか、始業のチャイムはもう鳴ってる。試験までに着席するんだぞ。」

「はーい。」

 

 その生徒は教員としばらくやりとりをして下駄箱へと向かうと、前髪を普段の状態に戻した。その生徒の正体は三玖だった。生徒指導の教員を上手く騙すことに成功した三玖は変装道具をしまう。

 

「ふう…。知りがたきこと陰の如く。」

 

 三玖に続き一花、二乃、五月も試験前までに登校し、後は風太郎を残すのみとなった。そして準備ができた彼も遂に学校に到着した。

 

「おはようございまーす。」

「遅刻した上にふざけてんのか?」

「ですよね。」

「生徒指導室に来い!」

 

 風太郎は教員に襟の後部を掴まれ、引きずられた。そんな風太郎の様を五人はただ見ている事しかできなかった。

 

「フータロー!!」

「早く行け!」

「でも…。」

 

 生徒指導室へと連行される風太郎を心配して中々教室へと向かわない五人を見て彼は自身の心からの言葉を彼女達にぶつけた。その言葉は心の奥底に不安を抱えている五人を突き動かした。

 

「俺がいなくても大丈夫だ。努力した自分を信じろ。」

 

 風太郎は生徒指導の教員に「一人で何言ってんだ」と言われ、そのまま生徒指導室へと連行された。そんな風太郎の思いを無駄にしないために五人は決意を新たにした。

 

「うん!」

 

 三玖が改めて試験を突破しようと奮起する。

 

「いい点とってフータロー君を驚かせちゃお。」

 

 三玖に続いて一花も張り切る。

 

「ほら二乃も。」

 

 四葉が二乃の手を引っ張る。

 

「な、なんで私まで…。」

 

 言葉では嫌がっている二乃だったが、満更でもない様子だった。

 

「死力を尽くしましょう。」

 

 五月の言葉と共に五人は指を結ぶ。そして「おー!」という掛け声と共に中間試験に挑むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間が遡る事一時間前、気絶していた六華が目を覚ました。瞼を開くと、昔ながらの電球の光が瞳に差し込み、六華の眠気を覚ます。そしてゆっくりと上半身を起こすと、一人の男性と目が合った。風太郎の父、勇也だった。

 

「おぉ、六華君!目が覚めたんだな、良かった良かった!!」

「あの…俺は一体……。」

「あぁ、俺は運んだだけだ。礼ならうちの娘に言ってくれ!」

 

 勇也はそう言って台所の方へと目を向ける。台所ではらいはが自身の調理したカレーを既に白米の乗った皿に注いでいた。

 

「あっ、六華さん!おはようございます!」

「お、おはよう…。」

 

 六華に朝の挨拶をしたらいははカレーをテーブルの上に置き、笑顔で彼に差し出した。その後、ゆっくりと六華の目の前に座り、真剣な面持ちで話し始めた。

 

「六華さん、どうしたんですか?昨日公園の噴水の中で気絶してましたよ…?」

「えっと…。あぁ…。それは……。」

 

 刹那、六華は先日の超能力者の気配を察知し、らいはと勇也の家を出ようとするがらいはに引き止められた。六華は自身の腕を掴むらいはを一瞥する。彼女は真剣な眼差しを崩す事なく、六華を座らせた。

 

「何があったのかはわかりませんが、まずは食べること!腹が減っては戦はできぬ、ですよ!」

 

 六華は改めて目の前のカレーに目を向け、「いただきます」と手を合わせて口に入れた。裕福な家ではないので決して手の込んだ隠し味は含まれていない。しかし、不思議と心が安らぐような温もりと家族の幸せを詰め込んだような味は六華の目頭を熱くさせた。

 

「ご馳走様…!」

 

 山ほど注がれてあったカレーを平らげた六華を見てらいはは嬉しそうな表情で彼を見る。そして六華は皿を下げると、立ち上がり、二人に頭を下げた。

 

「ありがとうございました!行ってきます!」

 

 そう言って扉を開ける六華をらいはと勇也は笑顔で見送った。そしてそんな二人の笑顔を見た六華は何があってもこの日常を守ると決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後、六華は再び昨日戦った超能力者の男と対峙した。男は六華の素顔を知らなかったため、彼を見ても脳内にはあの少年は誰なのかという疑問しか浮かばなかった。

 

「誰だ…?」

「今度こそ決着をつける!はっ!」

 

 遂に男と六華の再戦が始まった。先手は六華の正拳突き。男は戦闘が始まると予測していなかったのか、大した防御もせずに喰らったためその場で崩れ落ちる。

 

「ぐうっ…!てめぇ、調子に乗るな…!」

 

 男は再び翼を広げ、六華に攻撃を仕掛ける。しかし昨日の時点で技を見切っていた六華には通用せず、カウンターの飛び蹴りを喰らい、地面に強く着地した。

 

「チッ…!ならこれだ!」

 

 男の次なる攻撃は翼から光線を放つというものだった。数多の光線が六華を襲わんとするが、それに対抗して六華も光線を放ち、男のそれを相殺した。目の前の子供に対して何も通じないと悟った男の顔は絶望によって歪む。

 

「わ、悪かった…!俺の負けだ……。だから…!」

 

 男は六華に勝てない事を悟り、土下座する。しかし、一度騙された六華は男を信用せず、念力で大きな木箱を操る。

 男は逃走を図ったが迫りくる木箱のスピードには敵わず、衝突した。木箱は男とぶつかると粉々に砕け、男と残骸のみがその場に残った。

 

「さてと、帰ろうかな…。うっ……!」

 

 六華が家へと帰ろうとした瞬間、昨日男から受けた攻撃が今になって響き、身体中が悲鳴をあげる。六華の額から汗が流れ落ち、呼吸が荒くなる。

 

「行かないと…!お姉ちゃん達を待ってないと………!」

 

 脳まで届くような痛みが電気の如く六華の全身を駆け巡る。しかし六華は力尽き、その場で倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、先日の中間試験の結果報告をするために図書室に集まっていた。試験の答案用紙を返却された五人の面持ちは暗かったが、それだけではなかった。中間試験の試験日から今日まで六華が家にいなかったのだ。血の繋がりが無いとは言え、弟が失踪したという現実に五人は苦しんでいた。

 そして待ち合わせの図書室で五月が携帯電話を片手に入室した。そんな五月を見てそれまで椅子に座っていた四人は立ち上がる。

 

「五月…!六華は…?」

「心配要りません。お父さんの病院で入院しているそうです。幸い命に別状はありませんし、今日退院するそうです。」

 

 三玖の質問に先程まで父と携帯電話越しに会話をしていた五月が答えた。六華の生存報告に五月以外の四人は安堵のため息をついたり、胸を撫で下ろしたりした。

 それから数分後、遂に風太郎が図書室に入室した。五月は一人彼から露骨に視線を逸らす。五人の成績次第で風太郎は家庭教師を解雇させられる可能性があるからだ。風太郎、二乃、五月はそれを知っており、()()を覚悟していた。

 

「よぉ、集まってもらって悪いな。」

 

 風太郎は五人の前で腕を組んで仁王立ちする。それを不思議に思った一花が最初に口を開いた。

 

「どうしたの?改まっちゃって。」

「水臭いですよ。」

 

 一花に続いて四葉も口を開く。すると、そんな二人に再確認するかの如く三玖が口を開いた。

 

「中間試験の報告。間違ったところ、また教えてね。」

 

 三玖は微笑みを浮かべて風太郎にそう言う。しかし、三玖は中間試験の裏に隠された事情を知らなかった。故にその善意の言葉と笑みが風太郎にとっては心に突き刺さる刃となっていた。

 

「あぁ、ともかくまずは…。答案用紙を見せてくれ。」

 

 風太郎は家庭教師の解雇を覚悟して五人の成績の開示を求めた。そんな中、先に点数を教えようとしたのは一花だった。

 

「はーい、私は…。」

「見せたくありません。テストの点数なんて他人に教えるものではありません。個人情報です。断固拒否します。」

「五月ちゃん…?」

 

 すると五月が急に成績の開示を拒否し出した。突然の出来事に風太郎だけでなく一花、二乃、三玖、四葉も固まり、目を見開く。そしてそれが風太郎を庇うための行為だと知った当の本人はため息をついた。

 

「ありがとな。だが覚悟はしてる。教えてくれ。」

 

 風太郎がそう言うと、五人はようやく答案用紙を彼に見せた。

 四葉の点数は国語が30点、数学が8点、理科が16点、社会は22点、英語が16点であり、総合で106点であった。

 三玖は国語が25点、数学が29点、理科が27点、社会が68点、英語が13点、総合で162点と五人の中では最も高い点数だった。

 一花は国語が19点、数学が39点、理科が26点、社会が15点、英語が28点。総合で127点であった。

 二乃は国語が15点、数学が19点、理科が28点、社会が14点、英語が43点で総合119点という成績となった。

 最後に五月は五月は国語が27点、数学が22点、理科が56点、社会が20点、英語が23点であり、総合148点という結果であった。

 

「そうか…。ったく、短期間とはいえあれだけ勉強したのに30点も取ってくれないとは…。改めてお前らの頭の悪さを実感して落ち込むぞ…。」

「うるさいわね。」

 

 落ち込みながらも毒を吐く風太郎に二乃が反論する。その後、二乃は続けて口を開いた。

 

「まぁ、合格した教科が全員違うなんて私たちらしいけどね。」

「あ、そうかも。」

「それに最初の五人で100点に比べたら…。」

 

 二乃の言葉に四葉が同意する。その後に最初の自分達の成長を実感させるように三玖が以前の自分達の実力を比較の対象としてとりあげる。

 

「あぁ、確実に成長してる。三玖、今回の難易度で68点は大したもんだ。偏りはあるがな。今後は姉妹に教えられる箇所は自信を持って教えてやってくれ。」

「え?」

 

 事情を知らない三玖は風太郎が何故今になってそんな事を言うのか理解できず、素っ頓狂な声を上げる。風太郎自身はそれに構わず話を続ける。

 

「四葉、イージーミスが目立つぞ。勿体ない。焦らず慎重にな。」

「了解です!」

 

 三玖とは対照的に、四葉は風太郎の言葉の裏に隠された事情に気づく事はなかった。しかし、彼のアドバイスを聞いた彼女は元気よく敬礼する姿を見せた。

 

「一花、お前は一つの問題に拘らなさすぎだ。最後まで諦めんなよ。」

「はーい。」

 

 風太郎のアドバイスを聞いた一花は生返事なのか、気の抜けた返事をする。しかし、それが本当に適当に言った返事なのかは彼にもわからなかった。

 

「二乃、結局最後まで言う事を聞かなかったな。きっと俺は他のバイトで今までのように来られなくなる。俺がいなくても油断すんなよ。」

「ふん。」

 

 風太郎の言葉を聞き、二乃は顔を背ける。その仕草から露骨に自分を嫌っているのだろうと風太郎は推測する。

 すると、二乃に対する言葉の中に疑問に思う単語が幾つか出てきた事を三玖が問い詰めた。

 

「フータロー?他のバイトってどういう事?来られないって…。何でそんな事言うの?私…。」

「三玖、今は聞きましょう。」

 

 事情を知らない三玖の言葉を遮ったのは事情を知っていた五月だった。そんな彼女に対しても風太郎は最後の言葉をかけた。

 

「五月。お前は本当にバカ不器用だな!」

「なっ!?」

「一問に時間かけすぎて最後まで解けてねぇじゃねぇか!」

「反省点ではあります…。」

「自分で理解してるならいい。次から気をつけろよ。」

「でもあなたは…。」

 

 五月が次に続く言葉を言おうとした瞬間、彼女の携帯から着信が届いた。携帯の画面にはお父さんの四文字が表示されており、解雇を覚悟の上で風太郎は通話に出た。

 

「上杉です。」

「ああ、五月と一緒にいたのか。個々に聞いていこうと思ったが君の口から結果を聞こうか。嘘はわかるからね。」

「つきませんよ。ただ…。次からコイツらにはもっと良い家庭教師をつけてやってください。」

「ということは?」

 

 風太郎が五人の父、中野の質問に答えようとした次の瞬間、二乃が突然携帯を風太郎の手から強奪し、代わりに通話の相手となった。

 

「パパ?二乃だけど。一つ聞いていい?何でこんな条件出したの?」

「僕にも娘を預ける親としての責任がある。高校生の上杉君がそれに見合うか計らせてもらっただけだよ。」

「私達のためって事ね。ありがとう、パパ…。でも相応しいかなんて数字だけじゃわからないわ。」

「それが一番の判断基準だ。」

「あっそ。じゃあ、教えてあげる。私達五人で五科目全ての赤点を回避したわ。」

 

 思わぬ二乃の言葉に風太郎達は驚愕する。しばらく中野と二乃の両者の間に沈黙が流れ、中野が問いかけた。

 

「…本当かい?」

「嘘じゃないわ。」

「二乃が言うのなら間違いはないんだろうね。これからも上杉君と励むと良い。」

 

 中野がそう言った瞬間、二乃はすぐさま通話を切る。試験の結果が散々だったにも関わらず、中野に対する二乃の対応に風太郎達は動けずにいた。

 

「二乃…。今のは…?」

「私は英語、一花は数学、四葉は国語、三玖は社会、五月は理科。五人で五科目クリア。嘘はついてないわ。」

 

 風太郎の問いに二乃が答えた。各々がそれぞれの得意教科のみの赤点回避に成功した事実を踏まえれば二乃の「五人で五科目全ての赤点を回避した」という言葉には何の矛盾も生じない。しかし、それは嘘ではなかったが、屁理屈でもあった。それを理解していた風太郎は頭を抱える。

 

「そんなのありかよ…。」

「結果的にパパを騙す事になった。多分二度と通用しない。次は実現させなさい。」

「……やってやるよ。」

 

 家庭教師の解雇を免れた風太郎は心の底から笑い、家庭教師の継続を決意した。事の事情をこれっぽっちも知らない一花と四葉は二人の元に近寄り、五月は風太郎に何かあると勘ぐっていた三玖に対して声をかけた。

 

「三玖、安心してください。彼とはもう少し長い付き合いになりそうです。」

 

 家庭教師の継続が決定した事でらいはのために努力していた五月も安堵した。すると四葉が話の流れを変え始めた。

 

「じゃあこのまま復習しちゃいましょー!」

「え?普通に嫌だけど。」

「逃げないの。」

 

 復習を提案する四葉の意見を嫌がる二乃を一花が嗜める。それに感心したのか、風太郎もこの流れに沿って口を開いた。

 

「そうだな。試験が返却された後の勉強が一番大切だ。だが、直後じゃなくてもいいな。ご褒美…だっけ…?…パフェとか言ってたろ。」

 

 あまりにも突然の提案に五人はキョトンとした顔をすると、一斉に笑い出した。一花の言葉から、風太郎の口からパフェという単語が飛び出した事が不相応で可笑しかったようだ。

 先に笑いが収まった五月は子供のようにあどけなく可愛らしい笑みを浮かべ、風太郎に声をかけた。

 

「では私は特盛で。」

「そんなのあるの…?」

 

 単語だけでも相当な価格が予想されるパフェを想像して風太郎は顔が青ざめる。しかし、これを機に次は必ず五人が全ての科目の赤点回避を果たしてみせる事を誓った。

 ちなみに今回の風太郎の成績は全ての科目が100点であり、五人に見られた際はわざとらしく恥ずかしがっていた。




次回は林間学校編となります
場面転換がいつもよりややこしくなりますので何卒ご了承を
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