TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】 作:GT(EW版)
神 様 転 生 !
神 様 転 生 !
皆さんこんばんは。テンプレの歴史を変える最強のオリ主、T.P.エイト・オリーシュアです。
只今世界樹サフィラからカロン姉さんの存在を盗み取り、神々も驚く復活のフュージョンを成し遂げました。聖龍様もおったまげである。
しかし、こうなると名前はどうしようかね? エイトとカロンが合体して、「エロン」というのは……なんか嫌だな。
うーん……「カイト」や「カロト」じゃ男の子っぽくてカロン姉さんに悪いし、だからと言ってエインと呼ぶのも今一つイメージに合わない。
ダァトも混ぜてダインとか? それなら割とカッコいい気がするけど、それはそれでクロコダインみたいでこれもちょっと違うなぁ……カロン姉さんはどう思う?
『汝は、汝だ。その内に何を収めようと……汝が愛しき妹であることに変わりはない』
心の中で問い掛けてみると、僕の隣にスッと霊体みたいに現れ出たカロン姉さんが、いい感じに力が抜けた穏やかな表情を浮かべながらそう応えてくれる。おうおう、嬉しいこと言ってくれるじゃないの。
そうだね……それならここは、「
通称は変わらずT.P.エイト・オリーシュアのままだけど、頭文字に込めた意味だけ変える感じでどうか。
Tripleは三つの心。僕とカロン姉さん、そしてダァトを意味する。
Prominenceは目立つこと。今までずっと日陰で世界を支えてくれた二人のことを報いたい僕の気持ちと、僕自身がオリ主として存在感を申し上げ続けたいという思いを意味する。
それと、この言葉には「太陽の紅炎」とかそういう意味も含まれているからね。主人公とメインヒロインがそれぞれ太陽っぽい名前をしているフェアリーセイバーズのネーミングセンス的にもマッチした、粋なダブルミーニングではないかと思う。
例によって雑な語呂合わせだけど、案外ナイスアイデアなのではないか? 寧ろ元々の由来である「テンプレートオリ主A」よりもエモい気がした。
『……わからない。だが、汝が気に入ったのなら、私も快く受け入れる』
そんな……彼氏のオタク趣味に合わせてくれる聖人な彼女かよ!
一緒になってもなお僕の意見を尊重してくれる優しいカロン姉さんに、僕は感謝の言葉を掛けて褒めちぎる。
はい。
カロン姉さんの存在を盗んだ結果、今の僕の中には彼女の心が共存しているのである。
まさしくそれは狙い通りの展開だったが、改めて思うと僕の中もカオスになったものである。メアちゃんのことは言えなくなったが、今の僕にはそれも褒め言葉だった。
僕は自分自身に新たな名前を刻むと、新生T.P.エイト・オリーシュアとして生まれ変わった。
カロン姉さんに対して異能を盗む能力を最大パワーで行使してみたのはノリと勢いもあったけど、僕が考えた最高の妙案でもあった。
まあ……最後の戦いがオリ主VSオリボスになるのはどうかという気持ちもあったしね。そういう意味でも僕も、あれ以上彼女と喧嘩したくなかった。
彼女は「未来視」という自分自身の能力に苦しんでいた。僕一人の行動の一つで変わってしまうような不安定な未来をその目で視て苦しみ、常に最善の未来を模索する為に世界樹という不自由な場所で、一人で頑張り続けていたのだ。
そんな彼女を救う一手として、僕は彼女自身を盗み、一つになることを考えたわけである。
そうすれば未来視の力も僕の物になるので彼女が破滅の未来を視て悲しむことはなくなるし、必然的に僕とずっと一緒にいることになるから寂しくもならない。
唯一心残りというか罪悪感が湧いているのは、彼女の存在を僕の中に取り込んでしまったことで、彼女自身は肉体を得られなかった……というところか。
それでもこのように、精神体としてある程度なら自由に自律行動できる分には、世界樹サフィラの意思だった頃よりは大分マシだと思いたいが……カロン姉さんが言った。
『私は既に救われた。汝と共に在れる喜びは、とても……心地が良いものだ』
……そっか。
ありがとう。僕を受け入れてくれて。
『汝の心は温かくて、安心を感じる。礼を言うべきは、私の方だ。
ありがとう、エイト。汝こそ、「かんぺきなちぃとおりしゅ」だ』
…………
…………?
…………!
!!?!??!!!!?!!?!!
やったぜ! 遂に転生神様からもお墨付きを貰ったぜ!
……やっべ、超嬉しいんですけどコレ。
何より「調律者」というこれまでの呼び方じゃなくて、カロン姉さんが僕の趣味愛好に合わせて「チートオリ主」と称えてくれたのが嬉しいよね。あと、ちょっと気の抜けた感じの呼び方がかわいくてもう好き。
しかも、それに加えて満面の笑みを頂きましたよ奥さん! カロン姉さんから! 満面の笑みを!
無表情キャラが満を辞して見せる満面の笑みとかそれはもう最強の必殺技なんですよ。相手は死ぬ。僕も死んだ。いやあまた僕何かやっちゃいました? やっちゃったぜイエーイ!
ふふふ、やはり僕のメインヒロインは彼女だったようだ。思わず気持ち悪い限界オタクみたいな叫びを上げたくなるほどに、彼女がくれた惜しみない感謝と眩しい笑顔に僕のテンションは振り切れていった。
あっ、もちろん恋愛的な感情とかそういうのはお互い無いからね? 姉妹なんだからそれはもう当然。
僕の方はダァトじゃなかったら間違いなくキュンときてたと思うけど、今の僕はダァトでもあるのでそう言う対象にはなり得ないのである。
そしてこの感情は、崇拝とも違うと思う。
今ここで一つに溶け合ったことで僕の心を彼女が感じてくれているように、僕の方も彼女の心を感じている。わかり合う為の手順を色々とすっ飛ばしてしまった感はあるが、彼女の存在を常に感じられるようになったことで、今までよりもカロンという女性を等身大に受け止められるようになった気がするのだ。
まあ、何が言いたいかと言うとだ……
「これからはずっと一緒だよ、姉さん。だから、必ず生きて帰ろう。犠牲を出すのはナシだ」
こうなった以上、僕たちは一蓮托生だ。カロン姉さんには否が応でも最後まで、僕に付き合ってもらうからね。強制連行である。
我ながら不敬な仕打ちだと思うが、エイトちゃんは悪いお姉さんなのでそもそも善人ではないのだよ。そこは聖人天使だったダァトとは明確に違う点である。
欲しいものは手に入れる。たとえそれが、女神様っぽい人だろうとね!
『無論だ。もはや私の死は汝の死を意味する。……共に行こう、闇の果てまでも』
言わば僕自身を人質にするという方法で優しさに付け込んだ自己犠牲対策は、流石のカロン姉さんにもよく効いたようだ。
もちろん死ねないのは僕も同じだ。僕とカロン姉さんが文字通り一心同体になった今、僕も迂闊に死ぬことは許されない。その気はないけどね。
因みに世界樹サフィラからサフィラの意思であるカロン姉さんがいなくなるという問題になるが、こちらは聖龍アイン・ソフが姉さんの代わりに世界樹と同化することで何とかしてくれるらしい。
聖龍様もおそらく、姉さんを自由にする為に死ぬ間際に世界樹と同化することを決断したのだと思われる。それに世界樹自身も死に体だった昔と違って、育ちきった今は元気すぎるほど元気だからね。今なら姉さんがいなくても大丈夫の筈だ。
つまりそれは、今の僕たちを止める足枷は何も無いということで。
──僕たちは晴れて、サフィラの領域から解き放たれたわけである。
目が覚めるとそこは、豪華な寝室のベッドの上だった。
「あっ、ここアニメで見たところだ!」と進研ゼミのように思い出しながら、僕はケテルの気遣いが隠しきれない柔らかなシーツをポンポンと叩く。そうしているとその腕に寄り添うように額を擦り付けてくるモフモフの存在に気づいた。
ウサギのような長い耳にリスのような尻尾を持つ小動物の額には、赤いルビーのような宝石がキラリと煌めいている。それは地球でも伝説上の生き物として知られる幻獣、カーバンクルの姿だった。
「チチッ」
って、君はカバラちゃん! カバラちゃんじゃないか!? どうしてここに……僕を捜しに来てくれたのか? 自力で!
「キュー!」
ぐえっ……う、うむ、良いダイブだ。声を漏らさなかった自分を褒めてやりたいぐらいに。
『……ぐえー』
キミが言うのか……空気が読めるカロン姉さんである。
しかしこの殺人毛玉アタックが僕たちを癒す。再会早々僕の胸に飛び込んでくるとはあざとい奴め。ほーれほれ! お礼にその頭、撫でくり回してやろう。
『これが、カバラちゃんの感触……良いものだ』
そうだろうそうだろう! 出会ってからずっと、僕が丁寧にブラッシングしてきた自慢の毛並みだからね。
そんな可愛らしい小動物にオリ主特有の撫でポスキルが合わさればこの通り、カバラちゃんも気持ち良さそうに目を細め、それを見たカロン姉さんも一緒になって微笑みを浮かべる一石二鳥の収穫だった。
僕自身も体感的には随分と久しぶりにカバラちゃんのモフモフを堪能できた気がするので、この再会には自然と笑みが溢れた。
しかしそうしていると僕は、鏡のように輝くカバラちゃんの宝石に映る自分の顔を見て気づいた。
今の僕、左眼だけめっちゃ光っとるやん……と。
虹彩が黄金色の光を放っており、その眩しさはカバラちゃんの宝石にも劣っていない。
ふむ、この眼には見覚えがある──って言うか、カロン姉さんの眼だねこの神秘的な色は。どうやら彼女をこの身に取り込んだ影響は、僕の左眼が黄金色に光るという形で外見にも表れていたらしい。
それを知って、僕のテンションがさらに上がったのは言うまでもないだろう。
オッドアイはロマンだからね。新しい僕かっけーです。
僕のは邪気眼とは違って聖なる力だけど、オリ主が究極進化して新生したチートオリ主が満を辞してオッドアイの姿になるのは、まさしくチートオリ主の面目躍如と言えた。
これで髪の色も銀髪ならロイヤルストレートフラッシュと言ったところだが、どうやら見た目の変化は左眼だけらしい。髪の毛は黒いままだった。
まあ、銀髪オッドアイだとケセドが入っていた頃のメアちゃんと被ってしまうので寧ろ安心したところである。キャラクターの外見的特徴は基本的に早い者勝ちなので、二番煎じではどうやっても印象が薄れるのだ。
それに……服装もそうだけど、僕的にはやっぱり元の姿が一番しっくりくるからね。外見の変化は最小限で丁度良いのである。
そう思いながらふかふかのベッドを降りた僕は、身に纏う怪盗衣装のロングスカートを軽くはたいてしわを伸ばすと、アイテムボックスから取り出した予備のシルクハットを被り直し、身嗜みを整えた。
うむ、ダァトには悪いけど、やっぱり僕には彼女の衣装よりこっちの方が落ち着く。主に、スカートの長さとか。短いのは涼しいけど動き回る時とか困るのである。マルクト様ちゃんとかいくら見せパンでも凄いと思うよ。ありがたやありがたや。
マントは……羽を出すから着けなくていいか。ともかくこれでT.P.エイト・オリーシュア改めT(riple).P(rominence).エイト・オリーシュアの復活である。皆の者、伏して拝むがいい!
心の中で叫びながら、僕はマントの代わりにバサリと十枚の羽を広げながら威張るようなドヤ顔を浮かべて胸を張る。おっ、今のポーズカッコいい。
そうしているといつの間にいたのやら、僕の目の前には唖然とした様子でその場に佇んでいる黒い鳥──ケセド君の姿があった。
そんな彼は黒と白、光と闇を併せ持つオッドアイズ・パーフェクト・エイトちゃんの姿を見て呟く。誰や略してオッパイとか考えたの。ごめん僕も自分で言ってそう思った。
『ダァト様と……カロン様……?』
おっ、流石サフィラス十大天使。ケテルの教育が行き届いている彼はすぐに気づいたのだろう。今の僕の状態が。
しかし、緊張しなくていい。確かに彼にとってダァトとカロン姉さんは畏れ敬うべき大先輩かもしれないが、僕自身は前世含めても二十年ちょっとしか生きていない若輩なのだからね。
彼の緊張を解すべく、僕は柔和な笑みを浮かべながら、カバラちゃんを撫でたのと同じ手でケセド君の頭を撫でてやった。ほーれほれ。
「カバラちゃんも、キミも……ボクを捜しに来てくれたんだね。ありがとう、二人とも。もう大丈夫だよ」
『……っ、あ……ありがとうございます……?』
なんやその反応。何故に疑問系。
実際、感謝しているのは僕の方である。目が覚めた時に周りに誰もいないのは寂しいし……実を言うと僕が事故ることなくカロン姉さんと一つになれたのは、ここにいるケセドのおかげでもあったからだ。
『慈悲の大天使、ケセド……エイトが宿していた汝の力が触媒となり、相反する性質を持つ我々を結びつけた……礼を言う』
『?』
うん。ありがとうケセド、マイフレンド。
成功した今だからこそ気楽に言えるが、僕がカロン姉さんを取り込むのは非常に危うい行動だったのだ。
ダァトは闇。カロン姉さんは光。共に世界樹から生み落とされた二人は、しかしそれぞれが相反する属性を持っている対極の存在だった。
そんな二人が強引に、一つに合わさろうとすればどうなるか?
詰まるところお互いにお互いの力が反発し合った僕たちは、最悪の場合対消滅を起こしかねない危険な状態だったのである。いわゆる属性反発作用という奴だ。マンモスの墓場を融合するぜ。
しかし、結果はご覧の通り。僕たちのフュージョンは奇跡の大成功である。
今の僕たちは基本ベースはエイトちゃんだけど、ダァトの闇もカロン姉さんの光も完璧に溶け合った状態である。寧ろ僕たちの力はツインドライヴ的な関係で絶妙な同調を果たしており、何ならフェアリーバースト並の力を常時発揮できるぐらいには絶好調だった。
その奇跡を起こすことができたのは、何を隠そう僕が以前メアちゃんから盗み取ったケセドの存在のおかげである。
予め彼の光の力を取り込み僕の身体に馴染ませていたおかげで、僕の身体はカロン姉さんの力に対して強烈な拒否反応を起こすことなく受け止めることができた──と言うのが、カロン姉さんの見解だった。
わかりやすく言えば、ケセド君の存在がカロン姉さんを受け止めるクッションになってくれたというわけである。
百合の間に野郎が挟まるのは言わずと知れた炎上案件だが、僕たちの場合は彼が間に挟まってくれたおかげで成立した関係と言える。尤も、当のケセドは僕の身に起こったことなど預かり知らない為、僕たちが贈った感謝の言葉に困惑の反応を返すことになったのはやむを得ない話である。
それでも僕の無茶な行動を奇跡に変えてくれた彼には、相応の報酬を渡さねばなるまい。
「だから、ご褒美をあげるよ」
『あ──』
瞬間、僕がこの手で撫でた部位からまばゆい光がじわりと広がっていき、不死鳥の黒い姿を眩く包み込んでいった。
ダァトとカロンは今ここに蘇った。今度はキミの番だ。今の僕にはそれができる力が備わっている以上、もはや惜しむ理由は無い。
──光が収まった時、闇の力で作られた漆黒の不死鳥の姿は消え去った。
しかしその場には、入れ替わるように一人の少年が姿を現した。
背中に生えた八枚の羽は、彼が最上級天使であるサフィラス十大天使の一人であることを意味している。
肩まで下りた青い髪は艶やかで、均整の取れた細身な肉体は儚げな印象を受ける。一見すると少女にも見える中性的な容貌をした美少年は、驚愕に震えた目でそんな自分の手足を見つめていた。
『も……戻った……? こんな……こんなことが……っ』
身長は僕より少し低く、マルクトより大きい150センチ台後半と言ったところか。僕が知っているアニメ「フェアリーセイバーズ」の彼と比べるとなんだか少し縮んでいる気がするが、内包する力は彼が本来持つ大天使そのままだった。
そう──彼は、今度こそ完全に蘇ったのである。
僕が作った擬似的な器である「
思い通りの成功に、僕は思わずグッとガッツポーズをとった。
「よし、できたね」
『一度取り込んだ力を、再び分け与える……今の汝なら造作もない』
僕がやったことは極めて単純だ。
メアちゃんから盗み取った力を全解放した上で、完全な大天使ケセドの肉体を再構築したのである。やっぱつええぜ、カロンパワー!
『それほどでもない』
と言いながら、復活したパーフェクトケセド君の姿を見て得意げなカロン姉さんカワイイ。
しかしアニメでも鳥の姿ばかりしていたから印象が薄れていたが、ケセド君の天使形態もドエライ美少年ですな。なんか記憶より男の娘っぽい容姿になってしまった気がするが、とても可愛らしいのでヨシとしよう。
当然だが肉体を再構成した関係上、今の彼は文字通り生まれたままの姿である。局部は羽に隠されて見えないので確認したわけではないが、彼までTS転生したわけではない……と思いたい。まあこの際「性別・ケセド」で良くね?と思うぐらい、彼の容姿はとても綺麗だった。
『……あの、流石にそこまで見つめられるのは……』
「ああ、ごめんごめん。後ろを向くね」
失礼。思わず見惚れてしまったが、もちろん僕にはそちらの趣味はない。しかしこうやって顔を赤らめるとコレは、世の思春期男子たちの性癖が乱れそうである。実にけしからん。
そう思いながら彼の姿を微笑ましく見つめていると、冷静さを取り戻したケセドがすぐに自分の聖術で生成した服を纏った。自分で服を作れるとは便利だねそれ。
僕たちに続いてケセドも完全復活だ。そう思うと僕の胸の奥から、熱く込み上がってくるものがあった。
メアちゃんの存在もそうだけど、オリ主としてこの世界に参上した僕の予定を狂わせた最大の事件が彼の不在だったからね。もちろん彼自身は何も悪くない被害者なんだけど、こうして元気な姿を見せてくれると肩の荷が下りたような……そんな気持ちになる。
でも、それだって醍醐味なんだ。この世界で生きるということは。
RTA風ゲーム実況だって、走者がガバる時こそ盛り上がるものだ。それと同じように、人生は予定外な出来事ばかり起こるから楽しいのだし、生きていて張りがあるのだと僕は思う。
『……最善が決まった未来を選ぶことは……間違っていたのか……』
いや、そんなことはないさ。寧ろそっちの方がずっと難しいし大変なことだから、何億年もそれを続けてきたカロン姉さんは本当に凄いし尊敬している。
だけど、僕には真似できないかな。だから僕は、未来を視ない。あえてね。
物語はネタバレをされずに体験した方が、何倍も楽しめるものなのだから。そうだろう? ダァト。
──……そうだね、エイト。
と、言うわけである。
僕はカロン姉さんを取り込んだことで手に入れた未来視の能力を、これから先一切使わないことにした。コレに頼ると最善の未来が視えるまでああでもないこうでもないといつまで経っても決断できず、前に進めそうにないからだ。
まあ、最悪の未来はもう完全に脱したからね。これ以上はライブ感で動いた方が良い結果を得られる気がした。
『おりしゅ、だからか』
うむ。オリ主だからだ!
──というわけで、僕は飛翔した。
カバラちゃんと復活したケセド君を伴いながら、僕を大切に寝かせていた無駄に豪華な造りの神殿みたいな屋敷を後にして、フェアリーセイバーズのラストバトルを見届けたわけである。このオッドアイの眼で。オッドアイの眼で!(重要)
そして思ったんだけど、良いバトルだったわみんな。
インフィニティーバーストの力をフルに発揮した炎も、なんか僕みたいな知らない変身を披露して対抗したケテルも。
力では二人に遠く及ばないながらも、自分にできる的確なアシストで炎を救った翼やメアちゃん、ビナー様、長太の活躍も見事だった。オリ主である僕が手を出すのを躊躇い、固唾を呑んで結末を見届けてしまうほどに、熱い戦いだった。
……ホント、みんなよくやったよ。
『……カロン……ダァト……僕は……』
先ほどまで彼らが繰り広げていた激闘を思いながら、しんみりとした心で僕は彼らのもとへ合流した。
おかしいな……本当はもっと大々的に「今、数億年の時を越えて……T.P.エイト・オリーシュアの手によって、ダァトとカロンは蘇った!」と煽りながらド派手に帰還する予定だったのだが、何だかそんなことが言える空気ではなさそうだ。
後方には僕の復活に喜びと困惑を浮かべるセイバーズの皆さんの姿が。前方には死刑執行を待つ罪人のように力無く鎮座するケテルと、彼を庇うように支えているビナー様と、イェソドとティファレト以外全員集合したサフィラス十大天使御一行の姿がある。ビナー様ってケテルのこと本当に好きだったんだね……何だかこの構図だと、まるでいじめる僕を彼女が止めようとしているみたいである。
『……ケテル……私は……』
ダァトの裁きをクソ真面目に受けようとしているケテルを前に、僕の中から精神体として現れ出たカロン姉さんは何と声をかけてあげれば良いのかわからない様子だった。
そんな一同が見つめる中で、僕は──とてもじれったいと思った。
『あ……』
『っ』
『──』
あまりにもじれったかったので、何も言わずにハグしてやったぜ!
隣のカロン様も、ケテルを支えていたビナー様も、立派な王様のくせに疲れ切った罪人みたいな顔をしているケテルも……両手で背中を押し出しながら、全員纏めて抱き締めるように包み込んでやったのである。さながらそれは、後輩にウザ絡みする酔っ払いの先輩のようなオリ主ホールドだった。
思い返してみるとここはスタイリッシュな説教をした方が絵面的にはカッコ良かった気もするが……この行動は僕と、ダァトの意思だった。
そんな僕らが言う。僕たちの帰る場所を守ってくれて、ありがとうと──一片の偽りも無い想いを伝えると、ケテルから発せられていた雰囲気が、急激に和らいでいくのを感じた。よしよし。
『……今度は……守れたのだな……』
虚無的な眼差しに、光が宿る。
その色がダァトの好きだった優しいケテルの目であることに気づき、僕は微笑んだ。
そして良い機会なので、僕はここで、ダァトが彼に対して抱えていた感情を伝えてあげることにした。
メッセンジャーエイトちゃんである。
「ばーか。キミはとっくに、
──そうしてラスボスとの決戦は、今度こそ終結した。それが僕の目指した「救済」という形で達することができたのかはまあ……本人の認識によるけどね。僕としては満足である。
後は最後の仕上げ……すなわち、裏ボスとの戦いに赴くだけだ。
しかしそれは、メアリー・スーのように一人だけで向かうのではない。
そうとも、ここにいるみんなと一緒である。
それが、アニメでも二次創作でもない。僕たち自身が描く「フェアリーセイバーズ」の物語だった。
アホでカッコつけで……(妙なところで)優しくて……
そんなオリ主が、みんな大好きだったから
次回、最終話【さらばオリ主……また逢う日まで】
……本編が終わってもオリ主以外の視点のお話とかが続くかもしれませんが、本作のお話は次回で完結する予定です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。もう少しだけお付き合いください<(_ _)>