TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 これにはオリ主もニッコリ。


気にかけていたロリ二人が仲良しになっていた件

 二人の少女の働きによりテロリストの武装兵たちが一斉に倒れ伏したことで、解放された職員たちは他のセイバーズ隊員たちに誘導され安全圏へと退避する。

 そんな彼らは今、固唾を呑んで若き救世主の戦いを見守っていた。

 

 

 テロリストの首魁は、強力な異能使いだった。左目に眼帯を付けた長身の壮年は、度重なる実戦で鍛え抜かれた屈強な肉体を持つ。

 体術は勿論、自らの異能「茨の鎖」の扱いも熟練しており、コロシアムでも上位まで勝ち抜けるであろう確固たる実力があった。

 

 ──そんな彼の正体は、かつてこの国に災いを齎し、五年前の聖獣事件を引き起こした悪名高きPSYエンスの幹部である。

 

 異世界から迷い込んできた聖獣を捕らえ、非人道な手段でその力を研究していたこともある。

 時代が時代なら、今よりもさらに大規模な組織の長として町々を恐怖に陥れていたかもしれない存在だった。

 

 しかし、今の光井メアにとっては特別強敵と言えるほどの相手ではなかった。

 

 彼が繰り出す「茨の鎖」──ひとたび絡め取られればA級闘士だろうと無力化してしまう鎖は、しかし彼女のポニーテールを結ぶ純白のリボンの刃「サフィラテール」によってことごとく迎撃されていく。

 それでも「手数の多さはこちらが上だ!」と、彼は繰り出す鎖を十本以上に増やして踊り掛かっていったが……メアの対応は常に冷静だった。

 

「ホド!」

「なにぃ!?」

 

 鉄壁の騎士の姿ホドフォームに変わったメアは、自らの髪から橙色のリボンを抜き取ると瞬時にそれを聖なる大盾「ホドシールド」に変える。

 前方に構えたシールドから広がっていく灼熱を帯びた光のバリアは、メアの身体を守護しつつ茨の鎖を弾き飛ばし、飲み込むように焼き尽くしていった。

 そして驚愕するテロリストの首魁の隙を、彼女は見逃さなかった。

 すかさず神速の姿ケセドフォームに変身すると、シールドを解除しつつ縮地的に急迫する。

 反応すら許さず詰め寄ったメアが大きく振り上げた右足から繰り出したのは、テロリストの首魁を一撃で後方の壁まで打ち付けていく渾身の蹴りだった。

 

「ば……馬鹿な……っ」

 

 転がるように吹っ飛んでいったテロリストの首魁は、軽い脳震盪を起こした様子でヨロヨロと尻餅をつく。

 威風堂々たる佇まいでそんな彼の前に降り立ったメアは、紺碧の瞳で見下ろしながら青色の細剣「ケセドフェンサー」の切先を彼の目の前に突きつけた。

 

 

「勝負はつきました。降伏してください」

「っ……おのれ……!」

 

 

 決着は、誰の目が見ても明らかだった。

 若き救世主の力は、全てにおいてテロリストの首魁のそれを上回る。

 他のテロリストたちも外で待機していた警察やセイバーズの隊員たちによってこの混乱の裏で無事捕縛に成功し、一連の大使館占拠事件は電撃的な解決へと向かっていった。

 

「凄い……」

「あれが、彩色剣美の妖精姫……」

 

 一部始終を見ていたにも拘らず、何が起こったのかさえほとんど観測することができなかったギャラリーたちは、それでも彼女の実力が桁外れであることだけは認識することができ感嘆の声を漏らす。

 小顔で愛らしい容姿に反して彼女の立ち回りには本人の戦闘センスもさることながら、見る者が見れば彼女自身がこれまでにも数々の修羅場を潜り抜けてきた経験を窺うことができるものだった。そちら側の「わかる」存在である闇雲アリスやコボルド族の親善大使は、口々に呟いた。

 

「うわっ、えっぐ……」

『ふむ……やはりよく似ておる』

「ん?」

 

 この状況ではさしものテロリストたちも抵抗は無意味と理解したのだろう。立ち上がった数人のメンバーは観念して武装解除すると、合流してきた他のセイバーズ隊員や警察に渋々投降していく。

 

 圧倒的な力の差を見せつけられ、それでも戦意を翻さないのはメアに剣を突きつけられた首魁ぐらいなものであった。

 そんな彼が、メアの姿を見て憎々しげに吐き捨てる。

 

 

「人間でも聖獣でもない化け物め……お前のような子供が、この世界を汚すのだ!」

「…………」

 

 

 その言葉を真っ正面から受けたメアの表情は、周囲の者たちの目には見えない。

 しかしそれはテロリストたちが制圧されたことで晴れかかった大使館内の空気を、再び曇らせるには十分な罵声だった。

 

 沈黙が場を支配する。依然細剣を突きつけた姿勢のまま無言で見据えているメアに対して、テロリストの首魁が歪んだ笑みを浮かべたのはその時だった。

 

 

「隙有りッ!」

 

 

 氷河のような沈黙が破られる。

 テロリストの首魁が自らの背に隠れ蓑にしていた左腕から、茨の鎖を振り払ったのだ。

 

「……そう」

 

 しかし、メアの対応は冷静だった。

 呼吸の間を縫うように繰り出された彼の不意打ちに対して、ほんの僅かに眉を動かしたメアがそれよりも速いスピードで剣を振るう──が、その前に彼女の右を横切った闇の弾丸がテロリストの首魁の胸を撃ち抜いた。

 

「いや、全然隙無かったでしょ何見てたのよ貴方」

「アリス」

「余計なことしてごめんなさい。でも、ムカついたんで撃っちゃいました!」

「……今のは良い援護だったよ」

「! えへへ」

 

 いつの間にやらアリスが後方に待機させていた腕利きのスナイパー……の格好をしたネコ型の闇人形の狙撃が、敵の悪あがきを封殺したのである。

 最後の一撃を横取りされる形になったメアは振り向いてジト目を向けた後、ふっと息を吐いて微笑んだ。

 

「ありがと。だけど、あんまり無茶なことしないでね。貴方は強いけど、セイバーズの任務にはまだ慣れてないんだから」

「わかってまーす」

「それと、わかってると思うけどやりすぎないように」

「あっ、それは心配……死んでないですよねその人?」

 

 あくまでもセイバーズは治安維持の任務を受けて行動するのであり、ルール無用の喧嘩をしに来ているのではないのだと。口調こそ柔らかいがそう言ったニュアンスで掛けたメアの言葉に、アリスはたははと苦笑いを浮かべる。

 

「うん、生きてる。お疲れ様」

 

 メアは倒れ伏したテロリストの首魁の元へ用心しながらちょこんとしゃがみ込むと、白目を剥いて気絶している彼の脈を測り、生存の確認を取れたところで手錠を掛けたのだった。

 

 

 

 

 

 ──こうして、フェアリーワールド大使館を狙ったテロリストの反抗は幕を下ろした。

 

 

 占拠が完了してから一時間と経たず事件が終息したのは、何と言っても早々に現場へ駆けつけた二人の救世主のおかげだろう。

 光井メアと闇雲アリスは女神もかくやとばかりに巻き込まれた職員たちから感謝され、警察からも思わず苦笑いしてしまうほど拝み倒されたものだ。

 人から感謝されるのは、何度目になっても気分が良かった。

 

「では、我々はこれで!」

「はい、お勤めお疲れ様です」

 

 捕縛されたテロリストたちを連行するパトカーが複数台並び立つ光景は不謹慎ながら壮観であるが、世界の平和を思えばあまり見たいものではない。しかし、この世界では時折見られる光景だった。

 メアは敬礼しに来た警察官に対して丁寧にお辞儀を返すと、集まってくるマスコミや野次馬たちの視線から逃れるようにその場から踵を返していった。

 アリスはそんな周囲に対して笑顔で手を振るぐらいの手慣れた対応をしていたが、メアは彼女と違って元来そう言ったファンサービスは得意ではない。今から学校にも行かなければならないし、功労者だからとこの場に長居する気は無かった。

 

「ゆっくり行きましょうよー。授業なんて午後から間に合えばいいじゃないですか。ゲーセンとか寄って行きましょうよゲーセン」

「わがまま言わないの。アリスは高一の授業に慣れていないんだから、あんまり抜け出したら駄目だよ」

「むー……真面目だなぁメアちゃんは」

 

 今回は緊急時であった為セイバーズの嘱託隊員として任務に当たった二人だが、本分は学生であり、義父の光井明宏からも学業を優先するように言われている。

 一方でまだまだ精神的にも肉体的にも余裕綽々であろうに、早くも今日一日が終わったような顔をしているアリスをやんわりと諭しながら、メアは明保野異能学園へと進路をとった。

 

 

 ……しかし、アリスは気づいていた。

 

 その時見せた彼女の横顔が、どこか寂しそうにしていたことを。

 親友としていつか、彼女自身の口から聞いたことがあった為、アリスにはその理由に心当たりがあったのだ。

 

 

「アイツに言われたこと、気にしてる?」

 

 

 人間でも聖獣でもない化け物──テロリストの首魁からその罵声を浴びた時から、アリスにはメアの様子がいつもと変わったような気がしていた。

 彼女自身は平静を装い冷静に職務を全うしたが、それでも心のどこかに雲が掛かっているような──そんな気がした。

 

 だから、自分が彼女に代わってとどめを刺したのだ。

 親友が酷いことを言われて黙っていられなかったのもそうだが、アリスは他人の心情に敏感だった。

 

 そんな彼女の内心を知ってか知らずか、メアはアリスの目を見て微笑みを浮かべると、その頭を撫でて言う。

 

 

「大丈夫だよ、アリス。気にしてない」

「メアちゃんさ、嫌なことははっきり言った方が良いよ?」

「えー、言ってるよー」

「それと……もう同級生なんですから、事あるごとに妹扱いして撫でなくていいから」

「アリスは、難しい年頃?」

「思春期だよ! あんたもでしょ!」

「ふふっ……そうだね」

 

 

 闇雲アリスにとって光井メアの存在は憧れであり目標であり、姉のように想っている親友だった。

 

 そんな彼女との付き合いは五年近くになるが……アリスは未だ、彼女の怒った姿を見たことが無かった。

 

 今日のように軽口を窘められたり訓練や任務で危険なことをした際に、この道の先輩として叱られることはある。しかし感情的になって激怒したりだとか、物や人に当たるところも当たりそうになっている姿もアリスは見たことが無い。

 それは光井メアという少女が底抜けに穏やかで心優しい性格だからと言うのもあるのだろうが……アリスとしては何か、彼女自身の心の闇のようなものを感じずにはいられなかった。

 

 過去の経験や生い立ちから必要以上に自分だけで背負い込んだり、自罰的になっているところがある。

 そんな彼女の在り方にはアリスも何か物申したいことはあったが……その性格にシンパシーを感じている部分もある為、どの口が言うかと自嘲し中々踏み込むことができなかった。

 

 

『お二方、お待ちくだされ!』

 

 

 自分の過去の経験を顧みながら(どう言ったらいいのかなぁ……?)とアリスが悩んでいると、唐突にしゃがれた男性の声が響いた。

 聖獣(フェアリー)の扱う万能のコミュニケーション方法、テレパシーである。

 アリスとメアが後ろを振り向くと、そこには厳重な警備と共に大使館から二人を追い掛けてきたコボルド族の老人の姿があった。

 

「大使様?」

 

 今回の事件における一番の被害であり、フェアリーワールドの要人──親善大使その人だった。

 彼は呼び止めた二人に追いつくと、畏まって感謝の言葉を述べた。

 

『本日は我らの為にご足労頂き、誠に感謝します』

 

 わざわざ礼を言いに来た彼ではあるが、既にその言葉は事件終息直後から重ね重ね受け取っていたものだ。

 それでもまだ言い足りない──のも恐縮した様子からありそうだが、それ以外にも何か用件があって呼び止めてきたのだろうとアリスは察した。

 尤もそれはアリスに対してと言うよりも、メアに対するものであったが。

 

 親善大使はメアに対して深々と頭を垂れると、まるで王族に忠誠を誓う騎士のような堂に入った態度で護衛たちと共に片膝を突いたのである。

 

「あ……えあ、あのっ」

「うわっ、凄いキマッてる……結構カッコいいかも」

「か……顔を上げてください、皆さん! お礼は受け取りましたからっ」

「そうそう、この人恥ずかしい二つ名で呼ばれるのとかは平気なんですけど、ドストレートにちやほやされるのに慣れてないんですよ。愛されガールのくせに」

「アリスも、変なこと言わないで……」

 

 町の往来での奇行にあわあわと言葉を詰まらせたのがメアで、ビッシリとキメた彼らの礼儀作法に乙女心をときめかせたのがアリスである。突然迎えることとなった彼らの厳かな態度に対する二人の反応は、絶妙に対照的だった。

 コボルド族の親善大使は一頻り惜しみの無い感謝を伝えると、メアの方へ顔を上げて用件を切り出した。

 

 

『時に……姫にお伺いしたいことがあるのですが』

 

 

 その言葉が誰に対して向けられたものなのか、一瞬判断が遅れた。

 

 

「……ヒメ?」

 

「……うん、あんたは姫ってガラでしょーよ」

 

 

 メアがポカンと呆気に取られた様子で小首を傾げると、そんな彼女の様子を横目に見てアリスが合点のいった態度で手を叩く。

 今回の任務でも大使館の職員の誰かが言っていたが、光井メアの通り名には「妖精姫」というのもある。実際、彼女は周囲の者たちからそう呼ばれるに相応しい容姿を持ち、浮世離れした気品にも溢れていた。

 英雄として有名人になった今では、ネット上などでは誰が言い出したのやら「光井メア亡国のプリンセス説」などという噂も流れていたほどである。無駄に、信憑性が高く感じさせる文章も付け加えて。

 そのような理由もあってか、メアが下僕願望のある人間から面と向かって崇拝されたりすることは、アリスはこれまでに何度か見たことがあった。

 

 だが、数秒間見つめているとアリスは気づいた。

 今目の前で頭を垂れているフェアリーワールドの使者たちは、そう言った人々とは根本的に違う感情で彼女を見ているのだと。

 

 

 

『姫はいつ、我々の世界へお戻りになられるのでしょうか?』

 

 

 

 差し出がましい話を……と前置きした後、親善大使が問い掛けたその言葉に目を見開いたメアの横顔からは──どこか、テロリストの首魁に罵声を浴びせられた時と似た雰囲気を感じた気がした。

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