TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 登場人物が初見さんの為に3分とか3行ぐらいでざっくり説明してくれる奴です。グリッドマンユニバースでもあって満足。


劇場版特有の本編のおさらいパート

 結局、メアとアリスがその日の授業に出席することができたのは昼休みを終えた午後からのことだった。

 

「今日はテキスト30ページからだったな。闇雲……の兄貴、読んでみろ」

「うっす」

 

 歴史の授業では「異世界史」の授業が行われた。

 新世代から導入されたその教科は、学園の生徒はもちろん教師陣も勉強中の点が多く、この明保野異能学園でもフェアリーワールドから特別講師を招いたりと定着を目指し、国ぐるみで推進されていた。

 実際にフェアリーワールドに行ったことがありケセドやホドから色々と話を聞いているメアとしては、自分だけ知識を先取りしていることに気まずい感情もあったが、この授業では新世代の社会情勢について学びながら、今朝の出来事から色々と思うところがあった彼女自身もまた、当事者としてかつての事件をおさらいすることとなった。

 

 

 ──世界を破滅に導く脅威として古くから活動を続けていた存在、アビス。

 

 その脅威から両世界を守る為、異世界フェアリーワールドから舞い降りた原初の大天使ダァト──T.P.エイト・オリーシュア。

 自身の失われた力を取り戻す為、はじめはこの国で異能怪盗として活動していた彼女はある時は人々に試練を与え、フェアリーワールドでは王ケテルと人間たちとの橋渡し役を担い、両世界を和平へと導いてくれた。

 

 彼女を抜きにして、新世代の来訪を語ることはできないだろう。

 

 彼女とセイバーズの活躍で両世界はアビスの脅威を打ち払い、それまで険悪だった聖獣たちとの関係が大幅に前進したのである。

 しかし微力ながら貢献した光井メアの名前も英雄の一人として教科書に記載されている為、この授業を行う時にはいつも周りから突き刺さるクラスメイトたちの視線がこそばゆいのがちょっとした悩みだった。

 

「──と、なっている」

「ご苦労。……ダァト様のところ読む時だけ、妙に感情篭った読み方してんなお前」

「はは、そんなことありますよ」

「当然だよねー」

「……ったく、この兄妹は」

 

 T.P.エイト・オリーシュアの素性は、両世界の間で行われた高度な政治的配慮によってある程度の情報が開示されている。

 その為彼女の存在は指名手配犯どころか今では英雄たちと同等以上の功労者として知られ、闇雲兄妹をはじめ彼女に強い影響を受けた者たちからも神聖視されていた。

 

 ……しかし、彼女がこの世界にとって本当に善の存在であるのか……果たして現状の扱いのままで良いのかと政府が判断しかねているという実情は、こちらも高度な政治的配慮によって厳正な緘口令が敷かれていた。

 

 メアを含む、セイバーズの一部隊員のみに知らされている情報である。闇雲アリスにはまだ知らされていないが……

 

 

 ──T.P.エイト・オリーシュアは数日前から異能怪盗として再び暗躍を始め、世界中の子供たちから異能を盗んでいる。

 

 

 原初の大天使ダァトとしての力を取り戻している彼女は、既に五年前とは比べ物にならない人数に被害を出していた。

 しかも五年前とは違い、彼女が盗んだ異能は誰一人戻ってきていないのだと言う。

 

 現在は情報を知らされた一部のメンバーが彼女の捜索に当たっているが、彼女の所在は数日前に明保野市で見つかって以来全く掴めていないとのことだ。

 

(エイトさん……貴方は一体、何を……?)

 

 メアは彼女のことを善の存在であることを、欠片も疑っていない。

 彼女は誰よりも優しく、誰よりも強い高潔な大天使だった。五年前……いや、それよりもずっと前から二つの世界を守る為に尽力し、多くの人々を救ってきた。

 メア自身も彼女がいなければ、今こうして人並みの幸福を享受することはあり得なかっただろう。彼女には生涯返しきれないほどの恩があり、憧れを抱いているメアにはその真意を図りかねていた。

 

 彼女が理由もなく子供たちを苦しめるようなことをする筈は無い。

 今この世界で暗躍を始めたのには必ず、何か大きな理由がある筈だ。

 

 

 ……心からそう考えるメアは、その事情が今世界を騒がせている「邪悪の樹」にあると見ていた。

 

 

 「邪悪の樹」とはほんの数日前──エイトが明保野市で暁月炎と会遇した夜から時を間も無くして世界各国に出現した、全高1000mに及ぶ超弩級の大樹である。

 

 フェアリーワールドの生命の源である世界樹サフィラを彷彿させる巨大な大樹であるが、かの神木と違ってその外見は寒気を催すほど禍々しく、葉っぱ一つさえ無い暗黒の木だ。

 「邪悪の樹」と言う名称も周辺の大地から根こそぎ栄養を奪っていくことから、木が出現した町の現地住民から名づけられたものである。

 

 あまりにも唐突に、複数箇所に渡って同時に出現したその大樹は、何か不吉なことが起こる前兆なのではないかと世間を動揺させていた。

 その大きさと頑丈さから、通常兵器や名立たる異能使いの力を以てしても焼却することができない為、日本では現代最強の異能使いと目される暁月炎と力動長太が救援要請を受け、フェアリーワールドの識者と共に現地へと出張していた。

 今朝のテロリスト鎮圧任務も、二人が不在だったのはその為である。

 

 

 

 

 

 

 

 ──時は少し進み、学園の放課後。

 

 今朝から慌ただしい騒動に見舞われたメアとアリスだが、この日の授業は学友と共にいつも通りの時間を過ごすことができた。

 一日の学業をこなした後は各々が所属する部活動に精を出すのが高校生の青春であるが、二人ともこの後は今朝の出動について報告書をまとめたりと、一旦セイバーズの本部に赴く予定があった。

 本来ならその類の書類提出は任務の直後に行うものなのだが、二人ともまだ学生の身分ということで本部側が融通を効かせてくれていたのだ。

 

 そういうわけで、今日の二人が歩く道は帰りも同じである。

 一足先に帰り支度を終わらせていたメアはアリスが鞄にテキストを積めている待ち時間の間、可愛らしいカーバンクルのストラップが付いたスマホからネットニュースを閲覧していた。

 

 ページを開いてすぐの見出しに出てきたのは今世界を騒がせている「邪悪の樹」についての話題であり、エゴサーチをしたいわけではないがテロリストを鎮圧した今朝のメアたちの活躍はその下の欄だった。

 

 

「あちゃー……私らの記事は下か。やっぱりみんな気になってますね、例の「邪悪の樹」。明らかに今これから何か起こりますよって感じだもん」

 

 

 メアがその記事をタップすると、遅れて帰り支度を済ませたアリスが横合いからにゅっと覗き込みながら言った。彼女のツインテールが頬に当たり、少しチクッとする。

 

「四か所とも、同時に出てきたんですよね?」

「うん。カナダ、オーストラリア、エジプト、イギリスに突然出てきたんだって。木は今のところその四カ国に一本ずつあって……カナダにはお兄ちゃんが、エジプトには長太さんが行ってる」

「そんな時だからって調子に乗らないでほしいですよねー、日本のテロリストさんたちは……」

 

 心底うんざりした様子で吐き出されたアリスの溜め息が手に当たり、メアが苦笑する。

 セイバーズ最強のエース二人が自国から離れた途端に小悪党が暴れ出すと言うのも、この国にはまだ本当の平和が訪れていないという厳しい現実である。

 ただメアとしては、暴走に至った彼らの心情自体には一定の理解があった。

 

「あの人たちも、不安だったんだと思うよ? フェアリーワールドとの交流が始まって、色々と変わろうとしてる世の中が」

 

 横並びで歩きながら校舎を出た二人は、グラウンドで部活動を行っている生徒たちの声をBGMに学園の敷地から離れていく。

 上の世代の人間や他校の生徒たちからは「フィクションから飛び出してきたみたい」と評される彼女らの明保野異能学園であるが、一歩敷地から出てみればそこはどこにでもあるような通学路だった。

 

 しかしフェアリーワールドとの交流が深まりつつある新世代の異能社会では、それまでの常識では到底考えられなかったことが起こるようになっている。

 

 突然姿を現した「邪悪の樹」の存在は海外の話ということもあってかこの国では身近な騒ぎではないものの、そう言った不可解な現象を全て聖獣(フェアリー)たちのせいだと思い込んで暴動を起こす人間はこれまでにもいたし、今朝のテロリストたちもその類いだとメアは思っていた。

 

 だからこそ、哀れみこそあれどメアは捕縛した彼らのことを憎む気にはなれない。

 未来への不安に押し潰され、冷静になれなくなるのは誰にだって起こり得ることなのだから、と。

 

「だから私たちが頑張って、そういう人たちを安心させてあげないとね」

 

 世の中に対する不安が爆発したことで、今ここにある世界を信じることができず暴力に訴えるしかなくなってしまう。それはとても悲しいことであり、メアはそう言った人々を救うこともまた、自分たちセイバーズの役目なのだと考えていた。

 そんな彼女の志を聞いたアリスが、コボルド族の親善大使たちと行った今朝のやりとりを振り返るように訊ねた。

 

「……メアちゃんって、やっぱり天使なんじゃないの?」

「? なぁにアリスまで……私はそんなに立派な人じゃないって」

 

 困ったように笑いながら、メアは本心から謙遜して言い返す。

 自分に優しくしてくれた人たちのように、自分も優しい人になりたいとは五年前から思っていた。だが、その結果自分が天使と持ち上げられるのは違う気がした。

 

 彼女にとって天使とは、そういうものではないのだ。

 

「でもお姫様なのは否定しなかったですよね? 大使様たちも、フェアリーワールドの王様の娘だって言ってた」

「……一応ね。私を娘だと、(ケテル)が言ってたのは本当だよ」

「認知してるんじゃん王様! すごっ、本当にお姫様なんだー!」

 

 『姫はいつ、我々の世界へお戻りになられるのでしょうか?』──そう訊ねられた言葉に、メアはまさに虚を突かれた気分だった。

 言葉通りの意味が籠もった「姫」という呼び名は、こちらの複雑な事情を知っている周りの者たちからも言われたことがなかった為、メアには最初、その言葉が自分に掛けられたものだとは思わなかったものだ。

 

「私としては姫って言われたの、アリスのことかと思った」

「何でよ!? 私庶民の子よ」

「ほら、フェアリーバースト使うと城作るじゃんアリス。お姫様が住んでそうな城。フェアリーランドに建ってるようなの」

「あ、ああ、うん……確かに私のフェアリーバーストはそう言うイメージでやってるけど……あっでも私が姫ならお兄ちゃん王子様か! ハッ……ガラじゃねーな」

「えー、カケル君カッコいい人だと思うけど」

 

 何よりメアは王の力の一部を持って生み出されたからと言って、本家本元の天使であるサフィラス十大天使の面々からも姫君として扱われたことはなかった。

 

 故にコボルド族の親善大使たちがこちらに向けてきた期待と崇拝の眼差しも、彼女にとっては分不相応なものとしか思えなかったのだ。

 それでも彼らの純粋な目を裏切るのが後ろめたかったのもあり、誤魔化すような言い回しをしながら逃げるようにその場を立ち去ってしまったのは、今日一番の後悔だった。

 

「あの時は「今は二つの世界を守る為に、この町を守ります」とか上手いこと言ってはぐらかしてましたけど……実際どうなんですか? 将来はフェアリーワールドに住むとか。ほら、向こうには仲の良い男の人もいるみたいですしウフフフ」

「……何その笑い方。言っておくけど、ケセドやホドとはそういう関係じゃないからね?」

「えー、そうかなー? 結構アプローチかけてきてると思ったんだけどなー。そのリボンだって、二人から貰ったんでしょ? 脈あるって」

「無い無い。このリボンは小学校の卒業祝いで貰ったものだから、そういうのじゃないよ」

「ふーん……ふーん」

 

 色々と楽しそうなことを考えている親友に対して、メアは苦笑を浮かべながらやんわりと否定する。

 彼女のポニーテールを結んでいる三色のリボン──それぞれのフォームに最適化された武器にもなるそれは、今から四年ほど前に二人の大天使からプレゼントされたものだった。

 彼らはかつて共に戦ったことのある、メアにとって掛け替えのない友人である。メアが天使の力を使えるようになってからも、二人はこの力の扱い方を忙しい時間の合間を縫って指導しに来てくれた師匠のような存在だった。

 二人とも美形──片方は滅多に兜を外さないし、もう片方も人型よりも鳥の姿でいることの方が多いが──だからか、アリスのような周りの女子からは二人との関係を面白おかしそうに勘繰られているが、実際のところそれは全てあり得ない妄想だった。

 少なくとも、メアはそう思っている。

 

「あのね、アリス……本物の天使って言うのはね、そういうのじゃないんだ」

「どういうのよ?」

 

 セイバーズ本部への帰り道を歩きながら、メアは真顔で自分が思う「天使」の在り方を語った。

 

 

「あの人たちの愛はとても大きい。だからあの人たちの愛は、いつだって世界全体に向いているんだよ」

 

 

 脳裏に浮かぶのはケセドやホドたちサフィラス十大天使の姿と、自身の惜しみない愛情を二つの世界に注いでいた原初の大天使姉妹の姿だ。

 

 彼女らは決して人間のような恋愛はしない。

 天使の愛は常に広く大きく世界全体を包み込んでいる為、個人単位を相手に向けられるものではないからだ。

 

「そうかな……? 灯さんの結婚式に来てたマルクト様と力動さんとか、結構いい感じだと思うけど」

「えっ」

「えっ?」

「……と、とにかく! 天使って言う存在は、私みたいな人がなれるものじゃないってこと!」

「うーん……」

 

 懇切丁寧に説明したつもりだが、アリスは今ひとつピンと来ていない様子である。

 何やら不思議なことを口走っていたが、そちらについてはメアの方がピンと来なかったのでお互い様というところか。マルクトと力動長太に関しては、メアが見ているところではいつも口喧嘩したり斬り合ったりしている為、彼女が勘繰るような関係には寧ろ誰よりも遠いのではないかと思っていた。

 アリスって時々よくわからないこと言うなぁ……と首を傾げながら、メアは自分が思う天使の中で最も天使らしい存在の姿を脳裏に浮かべて思った。

 

 

(……私は天使じゃないけど、少しでも貴方に近づきたいな……エイトさん……)

 

 

 再び異能怪盗に戻った彼女は今この世界で、何を思い何を為そうとしているのだろうか? 

 海外に現れた四本の「邪悪の樹」と言い、メアには今またこの世界で重大な何かが起ころうとしているように思えてならなかった。

 

 ……本当なら今すぐ自分も飛び回って、彼女の捜索なり邪悪の樹の調査なり手伝いたいところである。

 

 しかしメアは遠征に出掛ける前、義兄暁月炎から頼み事をされたばかりの身だった。

 

 

 ──俺たちがいない間、町の平和は任せたぞ、と。

 

 

 それは彼がこの町の象徴明保野タワーにて、T.P.エイト・オリーシュアとの会遇を果たした翌朝のことだった。

 その夜から間もなくして海外四カ国に出現した「邪悪の樹」の調査任務を受けた彼は、メアに対してその言葉と共に留守を託したのである。

 ……久しぶりに、彼に頭を撫でられた。不器用ながらも優しいその感触に懐かしさと喜びの気持ちが湧き上がった一方で、メアはその言葉を掛けた彼の瞳に何か、強い決意と覚悟を見たものだ。

 

「守らなくちゃ……私が」

「ん?」

「ううん、何でもない」

 

 そう言った事情もあり、今のメアには元よりフェアリーワールドへ「戻る」という選択肢は無かった。

 話が脱線してしまったが、メアは改めてアリスの質問に答えた。

 

 

「……やっぱりフェアリーワールドに「戻る」って言うのは、違うかな。いつかあっちの世界にもまた行きたいけど、私の故郷はこの町のつもりだから」

 

 

 出生のことを言えば、事実的には確かにメアの生まれ故郷はフェアリーワールドであり、天使同様世界樹サフィラということになる。

 しかし生まれた頃のメアには記憶どころか感情すら無かった為、今の「光井メア」を形成する原点はやはりこの町の光井家にあった。故に、彼女自身の認識はこの世界の住人のつもりだった。

 そう思えるようになったのは間違いなく、周りの者たちが育ててくれた確かな成長なのだろう。

 

 

 しかし……それでも今のメアの心にはまだ、自分でも上手く言語化できない感情が燻っていた。

 

 

 自分自身さえも自覚していない気持ちが、時々悪夢として夢に見ることがある。最後まで見なければ目を覚ますこともできない、深く暗い悪夢だ。

 

 それを見た日には決まって現実でも何かが起こるものであり……T.P.エイト・オリーシュアと暁月炎が戦っていたあの夜、彼女が現場に駆けつけることができなかったのも同時刻、悪夢にうなされていたからであった。

 

 

 

 

 ──そしてその悪夢を、彼女はこの日の夜も見ることとなる。

 

 

 

 

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