TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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とある世界線のお話 チームアスキーアートの復活

 インターネットの電脳空間をイメージしたような空間に、三人の生物(なまもの)の姿が映し出される。

 一人は白い饅頭のような頭をしたキャラクター。

 もう一人は白い饅頭のような頭をした子豚のような鼻を持つキャラクター。

 そして最後の一人は二人目の白い饅頭のような頭部を縦に伸ばしたような長身のキャラクターだった。

 いずれもこの広いネット界隈の何処かで見覚えのありそうなゆるキャラめいた姿をしている彼らは、動画配信サイトで一部の間でのみ流行しているバーチャル配信者のアバターであった。

 

「皆さんお久しぶり! バーチャルデキルオです」

「バーチャルヤルオだお!」

「バーチャルヤラナイオだろ! 俺たちと会えない間、寂しかったかい?」

 

 三人はそれぞれに小気味の良いクロスステップを踏みながら、画面の向こうに向かって爽やかな笑顔でサムズアップをキメる。

 その瞬間、配信開始の時刻に備えて待機していたリスナーたちが手厚いコメントで彼らを出迎えた。

 

【こんでき】【来たか】【こんでき】【こんできー!】【!?】【?】【!?!?】【なんかいるー!?】

 

 ウインドウ画面に流れていく文字列に目を細めながら、三人のバーチャル配信者はうんうんと楽しげに頷く。

 配信枠に刻まれた入場者の人数は、彼らの期待していたそれを大きく上回っていたのだ。代表して、チャンネルの主であるでっきーことバーチャルデキルオが礼を言った。

 

「ありがとうございます。いやあ急な配信ですが皆さんよく集まってくれましたねー! これも地道な活動で積み上げた、僕らの人徳と言ったところでしょうか」

「うむ! もはやFSファン界隈の御意見番と呼んでも過言ではないお!」

「いや過言だろ常識的に考えて」

「もちろん、それだけ映画の出来が素晴らしかったのが大きいのでしょうね! 特に後半部分は色々と情報量が多かったので、皆さんも語りたくて仕方ないのでしょう」

「ヤルオも語りたいお! メアちゃんもアリスちゃんもエイトちゃんも可愛かったお!」

「よーし、それじゃあ早速語っていくだろ! イクゾー!」

「「デッデッデデデデ!」」

 

 三人のクリーチャーたちは画面の中でチューチュートレインが如く無駄にキレの良いダンスを披露すると、彼らは左からデキルオ、ヤルオ、ヤラナイオの順に整列して着席のポーズを取る。

 

 瞬間、彼らの頭上で唐突に出現したくす玉がパカンと割れ、祝事のような演出で「劇場版フェアリーセイバーズ∞ おっさんたちの感想会」と題打った文字がパチンコのように輝きながら浮かび上がった。

 

 そんな彼らの行動に、リスナーたちが一斉にツッコミを入れる。

 

【待て】【待て】【カーンを忘れるな】【シームレスに続けるな】【誰よその男!】【知ってるけど知らない人がいる……】【いつもの三人すぎて何がおかしいのかわからなかった】【(前の配信見逃したのかと思った……)】【視聴者の9割は突然生えてきた二人の存在に夢中で後ろの古臭い演出に気づかない】

 

「? バーチャルヤルオはバーチャルヤルオだお」

「俺はお馴染みバーチャルヤラナイオだろ、常識的に考えて」

「いえ君たちこれがデビューですからね? 僕も馴染みすぎてついいつもの調子で進行してしまいましたが」

 

 約二名、まるでいつもの三人組のように前置きなく加わった者たちがいるが、それは正当な違和感である。

 そんな彼らはバーチャルデキルオ──の中の人の計らいにより今回の配信にバ美?肉して参加した有志であり、それぞれネット界隈伝説の英傑、ヤルオとヤラナイオの名を冠する者たちであった。

 およそ配信デビューとは思えない落ち着いた喋りを披露しながら、彼らは何食わぬ顔で簡潔な自己紹介を終える。

 

【バーチャルやるやら……完成していたのか……】【相変わらず無駄に精巧なモデリングで草】【なんでいかない夫さんじゃないんだよ糞が】【寧ろ今までデッキーだけでやっていたのがおかしかっただろ常識的に考えて】【三人はどういう集まりで?】

 

 日頃からバーチャルデキルオの奇行に訓練されているリスナーたちとは言え、何の告知も無く突如として沸いてきた二人の新メンバーの存在は想定外だったようだ。当然のように訊ねてきたコメントに対して、特に後ろめたい理由も無かった三人は正直に答えた。

 

「僕らは学生時代からの友人ですね」

「まあ、そういう関係だろ。腐れ縁的に考えて」

「三人とも同級生だから、フェアリーセイバーズは直撃世代になるお!」

 

 彼ら皆、元々リアルで交友がある者たちである。長年の友人関係であるが故に三人とも打てば響くと言ったもので、各員の役割分担も把握しているのか手慣れた様子でコメントを捌いていた。

 

【だから、今回は三人集める必要があったんですね!】【三十路のおっさんが三人集まってアニメトークするだけの配信イイゾー】【Vとは思えない華の無さだけどなんだかんだで人集まるのは凄い】

 

「それな! 僕も今回は滑り倒すの覚悟で二人をお招きしました」

「お前から誘っておいて酷いだろ常識的に考えて……」

「ヤルオは嬉しかったお! まさかでっきーの中の人が身内だったとは思わなかったけど」

「中の人などいませんよヤルオさん」

「アッハイ」

 

 尤も、バーチャルデキルオがリアルの友人たちに自分が行っている配信のことを知らせたのはつい最近のことである。もっと言えば件の映画の感想について飲み屋で語り合っていた時、うっかりとデキルオの中の人が漏らしてしまったのがきっかけだった。

 そう言った経緯で身バレしてしまった彼であるが、既にお互いの性癖も熟知している気心知れた関係上、特に身バレして困るようなことも無く、「何なら二人も巻き込んでしまえ」と行ったのが今回の配信であった。

 

「そういうわけで、今回のデッキーチャンネルではゲストの二人と一緒に、大ヒット上映中のアニメ映画「フェアリーセイバーズ∞ Nightmare(ナイトメア) Reincarnation(リィンカーネーション)」について和気藹々と、ぐだぐだと喋り倒すだけの配信でお送りいたします! 念押ししますが今回の配信には映画の多分なネタバレが含まれる為、まだ映画を視ていない視聴者さんたちは回れ右! 急いで映画館に行きましょう!」

「レイトショーならまだ間に合うお!」

「古参ファンの俺たちが成仏した最高の映画だっただろ! アニメシリーズを視てきたファンなら見届けるのは当然だろ常識的に考えて」

「……なんか君たちが肩を組みながら絶賛するとそういう案件みたいに見えますね」

 

【やるやらはジャスティス】【草】【公開初日に見に行っただろ常識的に考えて】【もう三回視た】【アニメシリーズ見たことないけど主人公のポニテの子とナレーションの怪盗の子が気になるから見に行こうか迷ってます。そんな私でも映画を見れますか?】【ハイ、見れますよ!(ニコニコ)】【←ぶっちゃけ本編は見ておかないときついと思う】【続編物だからせめて∞は見ておかないとな】【序盤にサラッと本編の復習してたから話はわかるんじゃないかね】

 

 専ら「フェアリーセイバーズ」関係の配信をすることが多いこのデッキーチャンネルだが、今回の趣旨ももちろんそのアニメについての雑談である。

 先日公開された映画「フェアリーセイバーズ∞ Nightmare(ナイトメア) Reincarnation(リィンカーネーション)」。既にその視聴を終えているバーチャルデキルオたちは、劇場内で感じた迸るパトスをリスナーたちと共有したいが為に、この配信を立ち上げたのだ。

 そして彼の友人であるバーチャルヤルオとバーチャルヤラナイオもまた、家族と共に映画を視たことでかつて青春時代に抱いていたオタク心を思い出し、その勢いのままこれも良い機会だとばかりに意気揚々と彼に協力する運びとなった。

 

 そんな二人の友人を前にした際、デキルオの中の人が「最高だぜ……チームアスキーアートの復活だ!」と感涙し、ハイタッチを交わし合ったという余談がある。

 なお、その光景を見ていた彼らの青春時代を知るヤルオの妻とデキルオの恋人が何とも形容しがたい引きつった顔をしていたものであったが……それはさておき。

 

 「フェアリーセイバーズ」というアニメの存在が、彼らの青春を彩っていたものの一つであることは、紛れもない事実だった。

 そんな彼らが語る、最新作の駄弁りである。

 

 

「ああ、そう言えば今回の映画はキービジュアルや予告編効果で結構新規層も取り込んでいるみたいだろ。うちの職場の後輩も気になってたし」

「今のフェアリーセイバーズは画面が綺麗だからね。やっぱり主人公がメアちゃんになったのが強いのかお? レギュラーメンバーが華やかになって、旧作ファンのヤルオたちからしてみると色々と感慨深いものがあるお」

 

 旧作フェアリーセイバーズと比べて語った場合、最も目に付くのが今回の主人公を始め魅力的なヒロインキャラが多いことだろう。

 二人がメアについての世間の人気を語ると、それを始めから待っていたようにバーチャルデキルオがどこからともなく一枚のプラカードを取り出した。

 「お題:主人公」と書かれたそのプラカードを視聴者たちに向かって掲げながら、トークを進行させていく。

 

「それではまず新主人公のメアちゃんこと、光井メアについて感想を語っていきますか! リスナーの皆さんはいかがでしたか!?」

 

【強くなったねメアちゃん……】【予想以上に主人公してた】【かわいかった】【ヒロイン兼主人公】【劇場映えするいい感じの変身ヒロインだったわ】【炎やエイトが出てきたら食われるのではないかと心配してたけど最初から最後まで主人公してたので200点です】【こう言っちゃなんだけどえっちだった】

 

 えっちだった──身も蓋もないコメントが視界に触れた瞬間、デキルオたち三人は困ったように眉をしかめながら強く首を振って同意を返した。

 

「そうなんですよ……わかります。ほんっとうに! わかりますッッ!」

「あー……うん、そうね……」

「色々な意味でハラハラするシーンが多くて目を奪われたお」

 

 学園の短いスカートで、縦横無尽に空を飛び回りながら格闘戦やピンチを演出する。

 そんな彼女の活躍シーンを見て、健全な三十代たちにも色々と思うところがあったのは正直な話だった。

 そう──確かにえっちだったのだ。高校生になったメアちゃんは。

 

「翼追跡シーンでパンツ見えてたっていう話がありますけど、皆さんわかりました? 僕は既に三回視に行きましたがどうしても見えませんでした」

「……真っ先に聞くのがその感想っていうのはどうなんだよ子供向けアニメ的に考えて」

「私のリスナーなんてみんな不健全なのでセーフです!」

「娘と視に行ったけど、ヤルオも目のやり場に困ったお。エイトちゃんと違ってスカート短いのにビュンビュン飛び回るんだからあの子……いや一人で視に行ってたら食い入るように視てただろうけども」

「ああ、魔王様のインタビューによると映画のメアちゃんはあえて、エイトちゃんの対になるようなデザインをイメージしているそうです。その一環で、ロングスカートのエイトに対してメアはミニなんだとか」

「流石だろ魔王様……」

「漫画は描かなくなったのに、往年のキレは全く衰えてないお……」

 

【ま?】【魔王様エロか】【失望しました……でっきーのファンやめます】【見えんかったわ(板倉並感)】【パンチラとか製作サイドが流した巧妙なデマだろ常識的に考えて】【確認の為に五回視に行ったけど見えなった】【見えるんだけど見えないもの】【エイトちゃんと同じで結構足技使ってたけど鉄壁のガードだからちくしょう!】【動きが速すぎんのや】【パンツは見せないけど太ももは見せまくってて素晴らけしからんかった】【バルオ子持ちかよ】【幼女時代から見守ってきたキャラだからそういう目では見れないと思っていたがそんなことはなかったぜ!】

 

 幼い頃から見守っているキャラである為、年齢のせいもあってかどうしても保護者目線になってしまうというのは以前もバーチャルデキルオが言っていたことであるが、キャラクターデザインを手掛ける「フェアリーセイバーズ」の原作者、通称魔王様はあえてその辺りの視聴者心理をくすぐって背徳感を抱かせてきたように思える。

 

 プロやな──その技巧に、二次創作者でもある彼は戦慄したものだ。

 

「キレと言えば、戦闘シーンの作画は序盤から全編余すことなくキレッキレでしたね! テレビシリーズの時点で高クオリティーだったのが映画バフでさらにエラいことになってましたわ」

「初恋がメアちゃんって男の子も結構いそうだろ。あんなに小さかったメアちゃんが……って、俺も翼と同じ感想になっただろ大人的に考えて」

「カッコ良くて、可愛くて、儚くて……炎とは違うタイプの主人公でなんか新鮮だったお。あと、やっぱりフォームチェンジは続編主人公の王道だお!」

 

【テレビシリーズでは初恋ハンターはエイトちゃんの役目だったが】【ライガーゼロメアちゃん】【平成ライダーかと思ったら平成モスラだった】【三色リボン大活躍だったね】【ドラマCDの情報でホドとケセドから貰った物だって言われてたけど、白いのはケテルだったとは……】【橙がホドで青がケセドってことは白はケテルだろっていうのは順当な予想だけど、思っていた以上にケテルの娘への感情が重かった】

 

「そう、びっくりしたお! ケテルにそんな一面があったとはヤルオも思わなかったお」

「テレビ本編であんな態度してたくせに普通に愛情持ってたとは思わんだろ」

 

 成長し、女性的な印象が強まったことで、映画ではテレビシリーズを経たメアの変化が強調されていた。

 そして彼女と同じように周囲を取り巻く人物の心境も色々と変わっていたことが、彼女の成長を見てきた視聴者たちにとっては印象深いシーンとなっていた。

 特に、本編では「王」であるが故にメアに対しては常に冷酷だったケテルの心情である。

 そんな彼と真っ向から対峙した彼女の表情、言葉が、この映画の一番の肝に思えた。

 

「ケテルもダァトとカロンが帰ってきてくれて余裕が出てきた……ということなのでしょうね。それはそれとして娘にとってはいつも肝心なところで邪魔をしてくるクソ親父なんですが」

「やっと怒ってくれたよな……メアちゃん」

「なんか映画のメアちゃん、土下座して頼み込んだら困った顔しながらパンツ見せてくれそうなぐらいお人好しで心配したけど、言うべき時にはちゃんとキレてくれて安心したお」

「その例えは酷いだろ一児の父的に考えて……」

「でも、ヤラナイオもそう思ったお?」

「おう! だってさぁ……あんたらもそう思うだろ?」

 

【禿同】【わかる】【禿同とか久しぶりに聞いたわ】【ここにいるのは旧時代の災い共だから】【それを言ったらやるやらできも】【やる夫スレはバリバリの現役だろJK】【わかりマスク】【エイトもそう思います】【←エイトちゃんはそんなこと言わない】

 

「……どうやら、メアちゃんのそういうキャラ解釈は僕たちの共通認識だったようですね」

「パンフレットのキャラ紹介ではっきり「押しに弱いのが欠点」と記載されているのがもうアレだお!」

「本が薄くなるだろ常識的に考えて」

「ま、まあメアちゃんの場合は周りの人たちがしっかりガードしてるので今ヤルオさんが言ったような展開にはどうやってもならないでしょうから、そこは安心ですね」

「あの子に変なことしたら人間世界最強の兄と聖獣世界最強の父が真っ先にすっ飛んでくる恐怖」

 

 いい大人たちがしょうもないことを真面目に考えながら、物語の主人公であり、ヒロインでもある光井メアについて口々に、好き勝手に語っていく。

 その話題の流れ自然と浮かび上がってきたのは、今回の映画の重要人物の存在だった。

 

 

「その点で言うと、僕ら邪悪なおっさんたちと比べて今回のキーパーソンであるグレイスフィアの堕天使──リインの、なんて清らかなことでしょう」

 

 

【劇場の予告で流れるいかにも悪そうなリイン君すき】【ただの良い子だったな】【いいおねショタだった】【受け継がれるおねショタの意思……】【やっぱりエイトちゃんはおねショタの伝道師だったんだ!】【リインに俺らのような邪な心が無くて良かったな】【本作一番の予告編詐欺だったな】【ラスボスだと思ったら前座の前座だった子】【まあラスボスよりはケテルやこの子の方が目立ってたからヨシ!】

 

 深淵のクリファアディシェスだった前世を持ち、グレイスフィアによって生まれ変わった灰色の堕天使。

 メアが名付けたその少年の名前はリイン。彼を本当の意味で生まれ変わらせ、祝福するのが今作のテーマだったと彼らは認識していた。

 

「いやあ、流石公式でしたね! 着想は僕が書こうとしていたアビス転生物二次創作小説と似ていましたが、僕が書くのとは段違いの濃厚なおねショタでしたよ! 惜しむらくはエイトちゃんとの絡みが少なかったことですが、メアちゃんの新鮮なおねショタが見れたのでヨシとします! トータルで120点です!」

「お前おねショタの話になると気持ち悪いな」

「いつも気持ち悪いだろ常識的に考えて。……気持ちはまあ、わかるが。やっぱり年上女性がいいよね」

「お前も同類だったわ」

 

 彼とメアの対話は、本編から一貫していた「赦し合い」のテーマとも合致していた集大成だったように思える。

 劇場で目にして打ち震えたその感動をリピートするように、バーチャルデキルオが震えながら拳を振り上げた。

 

「リインとの対話も含めて、メアちゃんは主人公らしく獅子奮迅の活躍でしたね」

「ヤラナイオ、アレを」

「俺を助手扱いするなよ、常識的に考えて……」

 

 バーチャルヤルオに肘で促され、バーチャルヤラナイオはリインとの対話を含め、今作で披露した主人公の活躍を箇条書きしたプラカードを掲げる。

 それに対して、一同がしみじみと感想を溢した。

 

「メアちゃんが今作でやったこと一覧

 

 テロリスト鎮圧 授業に出る なんか悪夢見せられる ストーカー(翼)を蹴り飛ばす 新たな敵グレイスフィアとのファーストコンタクト 住民たちの避難誘導(寧ろ邪魔をしてしまったとしょんぼり) リインとの対話 リインとの決着 ケテルとの決着 ラスボス(シェリダー)へのラストアタック」

 

「流石は主人公、最初から最後までほとんど出突っ張りだお」

「こうしてみると、これにエイトちゃんや炎たちの動きもあってよく映画一本で纏まりましたよね」

「これのエイトバージョンも書いてきたけどそっちはもっと忙しかっただろ……」

「そちらは後で存分に語り合いましょう。エイトちゃん今回も色々とやってくれましたから」

 

【やることが多い……!】【エイトちゃんは裏方でめっちゃ頑張ってたな】【テレポーテーションはやっぱりチートすぎる】【メアちゃんの、自分が有名人すぎて避難誘導の邪魔をしてしまうシーン可哀想だけどかわいかった】【俺だってメアちゃんが飛んでいるのを見かけたら避難どころじゃねぇわ】【あのシーン避難民の何人かスカート覗こうとしてなかった?】【←これマジ?】【失望しました……人間世界滅ぼします】【ケテル乙】

 

「今の親馬鹿気味のケテルだと、割と本気でやりかねないんですよねそれ……」

「いやでもメアちゃんの方も無頓着すぎるのは悪いと思うお……悪意には誰より敏感なのに自分がそういう目で見られてる認識が無いんだもの」

「本人がクソ強いから危ういバランスで成り立っているところはあるだろ。まあ今回のでキレると怖いのが町の人たちにも伝わったかもしれんが」

 

 思えば映画のテーマの一つとして、アニメ本編では力の暴走を招く負の感情として描かれていた「怒り」という感情を、今作では自分の思いをはっきりと相手に伝えるコミュニケーション方法として肯定的に描いていたのも印象的だった。

 光井メアが覚醒に至る最後の一押しとして必要だったのも、持ち前の優しさからずっと表に出すことができなかった父への激しい「怒り」だったのである。

 

【レインボーメアちゃん強かったね】【剣よりも盾殴りとか頭突きとか蹴りとかの方が効いてたのは笑った】【ケテル戦、台詞は怒るのに慣れてない感があって可愛らしかったけど眼力はすごくてすごい怖かった】【覚醒後の戦い方がストロングスタイルで面白かった】【見た目綺麗だけど闇落ちしてないかこれと思ったけどエイトちゃんが喜んでて安心した】【外野で盛り上がるエイトと灯。心配そうな顔でオロオロと持ち場をうろついているカロン様。得意気なカバラちゃん】

 

「それぞれの性格が出ていて私あのシーン好きです」

「ヤルオも」

「ってか、エイトと灯って面識あったんだな」

「ああ、二人の絡みなら公開前に出たドラマCDで描かれていますよ。お互いに相性良くて秒で打ち解けています」

「マジ? この後借りて行っていいか?」

「どうぞどうぞ、息子さんと一緒にお聴きください」

「サンキュ」

 

【悲報:ナイオも子持ち】【独り身はでっきーだけか】【なお金髪美人の彼女がいる模様】【ナイオの嫁とか絶対赤い服着たロリだろ】

 

「いや年上のお姉さん系美人だから常識的に考えて」

「まあリアルのことはいいじゃないですか! そんなことよりメアちゃんの新形態の話しようぜ!」

「レインボーメアちゃん、モスラメア……呟きをチェックしてみると、色んな俗称が既に広まっているみたいだお」

「きっとパンフレットを買えなかった人たちなんでしょうね……可哀想に」

「それは戦争だろ常識的に考えて」

 

【ちっ】【チッ】【ファッキューデッキ】【クソが】【俺の前で売り切れた悲しみ(´・ω・`)】【地元の映画館パンフ置いてないねん】【上映後は夢見心地で駐車場に戻ったから買い忘れちったぜ】【ネタバレ怖いから上映後に買おうとすると頻繁に忘れる俺がいる】【パンフ結構新情報載ってんのよな】【フェアリーバースト・アイン・ソフ・オウルだっけ新形態の名前】【長いから結局レインボーメアちゃんで定着しそうだな】

 

 光井メアの覚醒形態。予告から徹底的に隠されていたその姿は、これまでに登場したフェアリーバーストとも明確に異なる彼女だけの形態として描写されていた。

 映画ではその名称が語られていなかったが、詳細は劇場内で販売されていたパンフレットに記載されている。

 バーチャルデキルオはそのパンフレットを読み上げながら、実にオタク的な満面の笑みで語り出した。

 

「そう! メアちゃんの辿り着いたフェアリーバーストは炎のインフィニティーバーストとはやっぱり違うようです。それも、満を持して……と言ったところでしょうか。無限光アイン・ソフ・オウルから拝借して「フェアリーバースト・アイン・ソフ・オウル」と来ましたよ! シェリダーへのラストアタックになった必殺技が「アイン・ソフ・オウル」だったことからもしやと思いましたが……」

「コイツ神話の話になると早口になるな」

「セフィロトの樹は必修科目だお。ヤルオにも憶えがある……」

「学生時代はお前の方がオタクだったもんな」

「僕はヤルさんを超えてしまったんです……!」

 

【メアが世界樹サフィラ由来の三本のリボンを繋げて一本の大剣に変えるシーン良かった……】【そして放つ、必殺剣アイン・ソフ・オウル! シェリダーは死ぬ】【裏ボスっぽくグレイスフィアの力を吸収して復活したのはいいけど、直後に全戦力が集まってフルボッコにされるシェリダー君かわいそうでざまあないね】【多分メアちゃんとリイン君だけでも倒せたよな……】【いや劇場版の大ボスだけあってグレイシェリダーは強かったよ。ただ相手が悪かった】【メアちゃんのラスボス戦はケテル戦で終わって、後は全員集合の劇場版らしいオールスターだったね】

 

 極彩色の蝶の羽に変わったメアの活躍シーンとしてケテル戦の次に挙がったのは、ケテルとの決着後に繰り広げた爽快なラストバトルである。

 前作で自爆して以来、生死不明となっていた深淵のクリファ「シェリダー」。人間世界で人知れず暗躍していた彼はグレイスフィアの邪悪の樹に目をつけ、その力を吸収することで「グレイシェリダー」として転生復活したのだ。

 そんな彼とメアたち、そして満を持して合流してきた炎たち遠征組が全員集合する形となったのが、劇中最後の戦いだった。

 敵は強大であったが、負ける気はしない。ケテルやエイト、カロンまでも全面協力したことでシェリダーは今度こそ消滅し、物語は大団円となる。

 少年漫画的な顛末は、視聴者たちに原作の話を思い出させるものであった。

 

「みんなも言ってるけど、確かになんか……ラストは昔のアニメ映画を彷彿させる派手な締めだったお」

「メアの物語としては、ケテルとの決着がついた時点で締めても良かったと思います。でも、真の裏ボス登場は私としては嬉しいおかわりでしたね」

「シェリダーが暗躍している伏線は、炎たち出張組の話で出てたから唐突ってわけじゃなかっただろ。それに、最後は全員集合してドッタンバッタン大騒ぎで巨悪を倒してスッキリ! そういうのでいいんだよ。炎たちが駆けつけてくれたシーンで、年甲斐もなくガッツポーズしただろ」

 

【わかる】【突然ゲートが開く→新手か!?→前作主人公登場の流れは健康に良い】【まあ話としてはケテル戦のしんみりした決着の方が好きなのはある】【それはそれとしてIQの下がるド派手なラストバトルは映画に必要】【リインカーネーションしても全然変わっていないシェリダーは良い対比キャラだったわ。特に同情もできず気持ち良く倒されてくれたし】【腐蝕解禁したリイン君強すぎて対話を選んだメアちゃんが正しかったことを証明してくれたのも良かった】

 

 全体的に見て、主人公が変わっても物語の根本は変わっていなかったように感じて彼らは安心したものである。

 同じことを、多くの者たちも感じていたらしい。

 

「主人公のメアちゃんはもちろんですが、しっかり登場人物が全員活躍してくれたのが、長年のファンとしてはポイント高いですよね」

 

 もちろん全ての人類が同じように絶賛するものではないだろうが、長年見続けていたファンに対するご褒美としては掛け値なしに、最高の映画だったとバーチャルデキルオは評価していた。

 故に、語りたい。

 まだ、語り足りない。

 彼はこの気持ちを共有する為、台本の無い司会を気ままに続けた。

 

「では、次は誰の活躍を語りましょうか?」

「人気順にT.P.エイト・オリーシュア──はトリにしておくとして、メアちゃんの次に語るならリインだろ。キーパーソン的に考えて」

「アリスちゃんでもいいお! 旧映画の単発ボスキャラだったあの子が主人公の相棒ポジションになってたのは地味に衝撃だったお……」

「闇雲兄妹も出世しましたよねー。特にカケル君はなんかラノベ主人公みたいな境遇になってますよ」

 

【初恋で憧れのお姉さん:エイト】【天才の妹:アリス】【学内最強のクラスメイト:メア】【性別不詳のサイエンティスト:サイバーコネクトの人】【マジでラノベ主人公みたいで草】【カケルのスーツ造ってた子妙にデザイン凝ってたけど新キャラだったの?】【台詞無かったけどあの子好き】【なおお兄ちゃんの女性観はエイトちゃんにおしまいにされているので恋愛はできん模様】【カケル中心のスピンオフか続編はあると思ってる。魔王様も結構気に入ってるみたいだし】

 

 バーチャルデキルオは、今日もこの何気ないひと時を楽しんでいく。

 その時間はいつまでも続くものではないとわかっているからこそ、彼はただこのふざけ合った時間を踊るように満喫していた。

 

「まったくもって……コンテンツが続くというのは嬉しいことですね!」

 

 ──そんな、とある世界線のお話である。




 シリアスだったのでアホ三人で調整しておきました。
 次回、エピローグで劇場版メア編完結です。
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