TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 蛇足な補足です。


チートオリ主裏方編
ナマズはウロコが無い(迫真)


 YUME日和、いいよね……

 

『いい……』

 

 はい。

 どこぞの山の頂上からおはようさん、T.P.エイト・オリーシュアです。眩しい朝日が視界一面に広がっている、綺麗な眺めだぁ……

 

 ケテルの意外な一面に驚かされた後、事の顛末を見届けた僕たちは、セイバーズの皆さんからの追及から逃げるようにテレポーテーションでその場を立ち去っていった。

 

 そんな僕は今まさに、今回の件で昂った内なるパトスを解放する為、僕たち以外誰もいない山の上でハープを弾きながら熱唱していたのである。

 

 うむ、改めて聴いても良い歌だよねYUME日和。のぶドラの末期が有終の美を飾った印象があるのは、大体この曲と当時の映画の出来が素晴らしかったからまである。色褪せない名曲と名作だよねー。

 のぶドラ末期と言えば他にも「またあえる日まで」や「タンポポの詩」等、記憶に焼きついた名曲は数多い。それらの曲は一つの時代の区切りとして、国民的ネコ型ロボットアニメの転換期を感動的に彩ってくれたものだ。ナマズから逃げるな? ……ごめん……

 

 

 そうだなー、里帰りしたらついでにカラオケにでも行ってこようかな? 前世では肺活量や音域的に歌えなかった曲も、今なら色々イケるし。TS美少女の特権である。いえい。

 

 しかしなんでYUME日和なの!? なんでYUME日和なの!? と、そう思った者もいるだろう。理由はズバリ、何となくだ。

 

 何となくではあるのだが、メアちゃんのテーマソングとしてこれ以上無いほどにマッチしていると思ったのである。

 

 いやね、前々から似合うと思ってたんだよ。まず夢日和と言うのが良いよね。夢=メアとも取れる。

 サビの「虹を結んで空のリボン」なんかド直球だし、こじ付けてみれば「お日様=灯ちゃん」「木々の宴=サフィラの祝福」「夕日のレース=炎」「鳥=ケセド」「光る宵月=カロン姉さん」とそれぞれ関わりの深い人物を暗喩しているように聴こえた。

 

『伸びていく影……はエイトか』

 

 おっ、それもいいなぁ! でも言うほどメアちゃんって僕とかけっこしているかな? 

 

『あの子は目標とする「なりたい自分」として、汝のことを追いかけていた……ように見えた』

 

 ……それはまた、光栄なことで。

 でも今はもう違うよね。あの子はもう、地に足ついた確固たる自分を持っている。飛べるけど。

 

『……そうだな。あの子は殻を破った。これからは汝ともケテルとも、違った未来を歩むだろう』

 

 いつの間にかこんなにも強くなっていた、姪の成長が嬉しいエイトちゃんである。

 そこに注視してみると「大丈夫きっと……」からの歌詞もメアちゃんから堕天使くん改めリイン君へのエールみたいに聴こえて実にエモいよね。僕が思っていた当初よりもさらにマッチしてしまい、これはもう歌うしかねぇと思ったわけである! 

 

 以上、エンディングテーマ担当のエイトちゃんでした──ってね。

 

 

 

 

 

 

 

 ……さて、それでは回想を始めようか。

 

 全部終わった今になって語るのも今更感があって何だが、今回の一件の裏で暗躍していた僕たちのことを語らねばなるまい。

 時系列から順を追って説明しようと思うのだが、あんまり長過ぎると「浸りすぎー!」と痛烈なツッコミを受けかねないから要点だけを掻い摘んで行くぜ。

 

 ……あれはそう、今から数ヶ月前のことだ。

 

 メアちゃんの通う学校にお忍びで侵入し、彼女らの授業風景を遠目に観察したり、音楽室でハープの練習をしたりと気ままな時を過ごした日の夜が、事の始まりだった。

 カバラちゃんを抱き抱えたカロン姉さんと横並びに歩きながら、明日は何をしようかと語り合って穏やかな夜道を歩いていると、堕天使くん──後にメアちゃんが「リイン」と名付けることとなる灰色の少年と出会ったのである。

 

 

「僕はグレイスフィアの堕天使……二つの世界は、狙われている」

 

 

 倒した筈の深淵のクリファアディシェスの魂を持つ少年は、僕と対面するなり開口一番に自らの目的を告げた。

 

 かつてアビス・ゼロから切り離された古の存在にして新たな敵、グレイスフィア。呼び方的には「Gray sphere(グレイ・スフィア)(灰色の球体)」が正しいのか「Grace fear(グレイス・フィア)(高貴なる恐れ)」が正しいのかややこしかったが、彼の話を聞くには両方の意味を含んだいい感じのダブルミーニングであることがわかった。

 

 生命と言うよりこの世の摂理とか戒律とかそういう類いの存在だったアビス・ゼロが、「心」を持つことを恐れた結果生まれた哀しき灰色の球体、それが彼なのだ。

 

 そのグレイスフィアが、人間世界を足掛かりにしてフェアリーワールドへと帰還しようとしている。

 それだけならまあお好きにどうぞという話ではあったのだが、人間世界の子供たちを始め関係の無い者も巻き込もうと言うのだから僕には当然看過できなかった。

 

 そんな僕の眼差しを受けて、堕天使くんは悲しそうな顔で告げた。

 

 

「君たちは勝てない……僕のところに来て。グレイスフィアを助けて、ダァト」

 

 

 そうして僕は、後にメアちゃんが聞かされることになるのと大体同じ情報を、一足早く堕天使くんから受け取ったわけである。

 同時に僕は状況を正しく認識し、この頭を駆け巡るオリ主色の脳細胞により全てを理解した。

 

 

 劇場版展開キタ━━ヽ(≧∀≦) | テ|ン|プ|レ |オ|リ|主|毎|度|あ|り|っ|!|(≧∀≦)ノ━━!!!!!

 

 

 と、ただならぬ予感に対して不謹慎ながら大いに湧き立ったのが、再び異能怪盗として暗躍することを決めたその時の僕の心境だった。

 

 

 ……だってよ、突然生えてきたいかにもヤバそうな新勢力だぜ? どう見ても続編のメインイベントじゃん。

 

 

 あのアディシェスが可愛らしい美少年に生まれ変わっていたのも凄く驚いたし感動もしたが、その彼を転生させた──言わば僕にとってのカロン姉さんのような存在が「グレイスフィア」という知らない神様であったという話に、僕は「フェアリーセイバーズ∞」の続編ストーリーとして何か、深い納得のもとにスケールの壮大さを感じた。

 

 存在の格としてはアビス・ゼロには劣るかもしれないが聖龍と同じ「神」であり、それが「古の因縁」を以て人間世界を巻き込みながらフェアリーワールドに押し寄せてくる。

 いかにもそれは、平和になった本編後のアフターエピソードを描く劇場版アニメでありそうな展開だった。

 

 だったらどうするよ? 決まっている。

 

 

「……ボクはキミたちとは行けない。ごめんね、堕天使くん」

「……っ」

 

 

 五年ぶりに湧き上がってきた強い感情をニヒルな微笑みで誤魔化すと、僕は重大な最新情報を外面上「戦線布告」という形で届けてくれた堕天使くんに向かってポンと肩を叩きながら言った。

 

 

「大丈夫だよ。おねーさんに任せなさい」

「……ダァト……」

 

 

 グレイスフィアも不安よな、エイト動きます。

 堕天使くんサイドも人間世界を巻き込むことには思うところがある──ぶっちゃけ戦いたくないと思っていることは、僕もカロン姉さんも一目で見抜くことができた。流石にメアちゃんのように彼が前世の罪に苦しんでいたことまでは見抜けなかったが、彼が迷っていることは雰囲気でわかったのだ。

 

 グレイスフィアにとっては一番厄介な敵になるであろう僕のところへ真っ先に事情を明かしてきた時点で、堕天使くんのそれが戦線布告のフリをした「警告」であることは明白である。

 

 本気で侵略するつもりなら、何も伝えずに奇襲した方が間違いなく効果的だからね。そうしないのは彼に迷いがあるからか、僕に何かしてほしいことがあるからなのだろうと思った。

 ふふん、エイトちゃんは察しの良いオリ主なのだよ。

 

『凄いな……エイトは』

 

 だろだろ?

 強さだけではない。僕のようなハードボイルドを売りにしたアウトロー気質なオリ主にだって、なんだかんだでそれなりの良心や優しさが求められるものなのである。

 

『ハード……ボイルド……?』

「きゅ……?」

 

 そこは疑いを挟むところじゃないよ姉さん。ハートフルの間違いではないかって? そのようなことがあろう筈がございません。

 カバラちゃんも宇宙猫みたいな顔してどうした。姉さんの豊満なお胸に抱き抱えられた姿がかわいいから許すが。

 

「……グレイスフィアには勝てないよ」

「ボクだけならね。だけどこの世界には頼れる救世主と天使たちがいるんだ」

 

 まあ、アビス・ゼロを乗り越えてから五年も経っているのだ。成長著しい新主人公(と僕がそう判断した)メアちゃんを筆頭に、この世界には頼れる救世主たちがたくさんいる。

 今なら聖獣さんたちとも万全な協力態勢を敷けるだろうし、戦力が充実している以上は僕も五年前より楽に構えることができた。

 もちろん、緊張感や危機感が無いわけではないが……それでも僕はその後発生する事件に対して、これからどうオリ主してやろうかと久しぶりに燃え上がる想いがあったのだ。

 

 そうとも……ワクワクを思い出すんだ。

 

 思えば最近、僕は自分の中で心境の変化を感じていた。

 カロン姉さんと一緒に町を歩いたり遊んだり、メアちゃんたちの成長を見守ったりカバラちゃんをモフったりしている時間があまりにも楽しすぎて、そこで満足している自分がいたのだ。

 もうオリ主しなくても、こういう生活を送っているだけで心が満たされているんじゃないかってね。まあ実際楽しいし、これまでの生活に不満なんて何一つ無いのだが……平和だからこそ以前のようにやりたい放題するのが難しくなっている現実に直面していた。

 

 だからと言って自分から平和を乱すのは何か違うし、ゆくゆくは僕もバトル物から離れたきらら的な日常系オリ主にシフトしていくのかなぁ……と、自分自身の未来について漠然と考えていたのだ。しかし前世では寿命が短かったのもあって、先のことを考えるのはどうにも苦手なんだよね……

 

 そこで、新たなる遭遇である。

 

 平坦になりつつあった穏やかなオリ主ライフに、グレイスフィアによるアクセントをひとつまみというわけだ。

 

 その結果──僕は弾けた。

 

 

 昂ぶる……昂ぶるぞカロン姉さん! 僕たちのテンプレはいつだってそうだった! 知略と精神を張り巡らせた、ギリギリの戦い! それが常にこの僕の限界を引き出してきた……!

 新たなる混乱が僕の全身からアドレナリンを掻き出し、この身体の中の血液を沸騰させるぅ!

 

 だがこの世界の未来にバッドエンドは要らぬ。結末だけは……オリ主が! この手で! 導く!!! 俺のDAー!

 

 今度こそ正真正銘、フェアリーセイバーズ∞の最後だぁ!

 行くぞ、姉さん! カバラちゃん! オリ主の頂点に君臨するのは、僕たちだあーっ!!

 

 

 

『?』

「?」

 

 

 二人揃って小首を傾げる仕草がシンクロする姉さんとカバラちゃんはかわいいなぁ。

 そういうわけで五年ぶりにワクワクを思い出した僕は、グレイスフィアの堕天使くんがもたらしてくれた重大情報を基に、オリ主による全世界への原作介入を開始したわけである。

 いや本当にあちらの世界で劇場版続編アニメが作られているのかは知らんけど、この機会は今の僕にとって渡りに船だったのだ。

 ほら、なんだか今の世界ではみんな僕のこと、良くない目って言うか良すぎる目で見てる気がするし……ここらで再び初心に帰って、人々にとって敵か味方かわからないミステリアスな第三勢力ポジに戻ろうと思うのだ。

 

『………………そうか』

 

 溜めたねカロン姉さん。

 何? 何か言いたげな顔してどうしたの。

 

『何でもない。私は汝の意向に従おう』

 

 サンクス。

 そうそう、今回の件では世間に対してエイトちゃんの神秘性を高めていくのはもちろんとして、それと並行してカロン姉さんの存在をもっとアピールしていく所存だった。

 

 その心はと言うと、僕がオリ主なら彼女はメインヒロインに当たる存在だからだ。

 

 ラブコメ小説でも主人公とヒロインの関係が第三者に知れ渡る展開は、最高に気持ちがいいシーンだからね!

 使い古された手法ではあるが、学園で一番の美少女が冴えない主人公とイイ仲なことを知ったモブキャラたちが羨望や嫉妬の眼差しを向けてきたりするのとか、主人公に自己投影する読者としては何かこういい感じに自己肯定感を満たしてくれるのである。

 僕は冴えてるオリ主だけど、これはそう言った感覚と似たようなものだ。今のオリ主の傍にはカロン姉さんという最高のヒロインがいることを、僕は世間に対して思い切り知らしめてやりたいと思っていた。

 

 ヒロインをトロフィー扱いするのはアレだが、僕としてはもっと彼女のことを推していきたいのである。それは僕自身の自己満足でもあったが、何より姉さんが二つの世界で生きやすくする為でもあった。

 

『私の、為?』

 

 オフコース!

 ……いや、だって姉さんったら全然存在感アピールしないんだもん。

 ケテルとか大天使の皆さんとかセイバーズとかメアちゃんとか、せっかく世界樹から離れたのだから一対一で話したいこととか色々あるだろうに……その辺りのことを全く自己主張しようとしないキミのことを、僕はこれでも気にしていたのだ。

 

『……皆には、今更私と話すことは無いだろう』

 

 そういうところだぞ。

 ミステリアスなポジションを守る為に皆と顔を合わせに行かない僕も僕だけど、姉さんは気を遣わなくていいのよマジで。

 やろうと思えば長時間実体化させて別行動することだってできるし、常に僕と一緒にいなくてもいいのだ。自由の身になった今だからこそ、姉さんにだって一人でやりたいこととか、話したい相手とかいるだろうし。

 

 

『私は大丈夫だ。……エイトは、私が共に在り続けることは……迷惑か?』

 

 

 そういうところだぞ。

 

 ……そういうところだよね。ふふっ。

 

『む……何故笑う』

 

 すまんて。

 いやちょっと、うちの姉が無垢すぎて思わず微笑ましくなってしまったのだ。

 

 あと、なんか嬉しい。この五年を経て彼女の中では僕といることが当たり前になっていて、僕自身もそれを当たり前に思っている事実がね。

 

『そうか』

 

 そうだよ。

 もちろん、カロン姉さんと一つになってから僕はキミのことを迷惑だと思ったことは一度もない。

 

 ただ少し、あの堕天使くんから「グレイスフィア」のことを聞いてから思い詰めたような顔をしているカロン姉さんのことが、心配だったのだ。

 

 

『……気遣いは無用だ。グレイスフィアのことは、私が……』

「ボクたちが解決すべき問題──だろ?」

『……そうだ。そうだな……ありがとう、エイト』

 

 

 ──つまりは、そういうことだ。

 

 そういうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけでケテル、キミも手伝って!」

『……どういう、ことだ……?』

 

 

 思い立ったが吉日。

 新たな脅威の存在を知った僕たちはその対策を打つ為、真っ先にフェアリーワールドの王様のもとへ訪問したのだった。突然の訪問に驚く彼の姿が新鮮で少し面白かったのが、ここだけの話である。




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