TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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“ダークエイト” 新しい時代の象徴さ

 一つ問おう! 楽しい二次創作SSの執筆には、何が必要だと思うかね? そう、「オリ主」だ。

 

 

 どうも、皆さんこんにちエイト! この度フェアリーセイバーズ原作者様と奇跡の対面を果たした上に、劇場版SEED公開の事実を知ったT.P.エイト・オリーシュアです。

 

 ……ん? なんだその挨拶は舐めとんのかって? いや、この前アリスちゃんの配信を見てたら、あの子が視聴者の皆さんに元気良く「こんにちアリスー!」って挨拶していたのが印象的だったからつい頂戴してしまったのだ。挨拶怪盗ですまない。

 しかしあの子、動画配信者の才能もあったんだね。彼女のチャンネルで配信されていた切り抜き動画を色々視てみたけど、「カーバンクル懐柔チャレンジ!」だとか「闇雲アリスが現役闘士を斬る!」だとか、色々と楽しい企画をやっていてどれも面白かった。

 

 特に親友のよしみでメアちゃんがゲスト出演した時なんかは、おそるおそるカメラを覗き込んだメアちゃんがアリスちゃんの定型挨拶に続いて「こ、こんにちメア~……」って恥じらいながら挨拶している姿がとても可愛らしかったでござる。その際はリスナーさんたちもアリスちゃんと一緒になってからかっていたものだがいいぞもっとやれ、お姉ちゃんたる僕が許す! 

 

『おねえちゃん……? メアにとって、エイトは叔母ではないのか?』

 

 うん。そうだけど、だからって「エイトおばさん」と言われるのは嫌なTS美少女心なのだ。それはまだ早いッ!

 もちろん僕はあの子のことを、もう一人の姪として大切に想っているけどね。

 

『そうか……』

 

 そう、早死にしてしまった前世では、姉夫婦の子を甘やかすことができなかったことが数少ない心残りである。

 だから今生ではその分も合わせてデロッデロに姪を甘やかしまくりたいという欲望が今の僕にはあった。まあ姪じゃなかったとしても甘やかすけどね。メアちゃんはかわいいからな……

 

『当然だ』

 

 うむ。

 

 

 

 ──さて、あれからのことである。

 

 

 僕が魔王様のところから帰ってもまだお見合いしているように見えたケテルとカロン姉さんだが、二人は今後のことについてちゃんと話し合っていたらしい。

 新たなる脅威グレイスフィア──その存在が近づきつつある現状とケテルに協力してほしい旨を伝えると、彼は快く引き受けてくれた。

 いわく、『グレイスフィアは旧時代の災い……私が対処するのは当然のことだ』だと。僕が見込んだ通り、頼もしい王様である。

 本編を通して和解したことで、続編では最初から最後まで味方してくれるラスボスっていいよね。私にもコードネームを頂きたいのです。

 ……で、ケテルはグレイスフィアの性質についてその豊富な知識から色々と僕にご教授してくれたわけである。大元はアビス・ゼロと同質の存在であることから闇の力とすこぶる相性が良く、この先堕天使君のような端末を送り込んでくるとしたら闇属性の異能を持つ者が真っ先に狙われるだろうということも、その時に知ったわけだ。

 

 

 ──そうして、異能怪盗T.P.エイト・オリーシュアは五年ぶりに復活を果たした。

 

 

 闇属性でも今のアリスちゃんみたいに自衛できる異能使いならともかく、戦う力の無い子供たちなんかは絶好のカモにされてしまうからね。そんな彼らの力を僕が先んじて押さえておくことで、一般市民への被害を最小限に食い止めようと思ったのだ。

 炎たちに報告しなかったのは……うん、正直すまなかったと反省している。あの夜、明保野タワーで彼と再会するまで中々タイミングが合わなかったというのは言い訳になるが、ここだけの話丁度良い機会だと思っていた気持ちも確かにあったのだ。

 

 僕は彼らのような人類の救世主でもなければ、ケテルたちのような世界を導く天使でもない。原初の大天使ダァトの生まれ変わりだとしても、僕は何者にも縛られないのである。

 

 五年の間に随分と変わった人間世界を見て回ったことで、僕自身、客観的な評価を振り返る機会を得た。そうしていると、ちょっと善行ポイント貯めすぎたかなー……と、僕なりに思うことがあったのだ。

 そりゃあアリスちゃんやメアちゃんたちのような子供たちに好かれるのは良い気分だが、僕というオリ主が全世界にとって都合の良すぎる存在として扱われるのはなんか違う。違うのだ。

 

 だからこそ良い機会だと僕は原点回帰し、ミステリアスなクール系美少女怪盗ムーブに立ち返ったのである。

 

 初志貫徹って良い言葉だよね。セイバーズや警察の皆さんには大変申し訳ないことをしたが、五年前よりパワーアップした今の自分が人間世界を相手にどのぐらい立ち回れるのか、今一度試してみたいチャレンジ精神もあったりした。フフフ……能天気なみんなは忘れているかもしれないが、エイトちゃんは悪いお姉さんだから周りを振り回すのが大好きなのだよ。

 眩しい太陽よりも淡い月の光の方が似合う孤高のチートオリ主としては、周りから「今度のエイトは、敵かもしれない……!」と警戒されるぐらいの距離感が心地良いのである。

 

『……そうなのか……?』

 

 そうなのだ。

 

 ……とまあ、そんな感じで僕はケテルと何言か話し合った後、とんぼ返りで人間世界に帰還することになった。

 しかし別れの際にはこれからのオリ主ムーブについてウキウキと考えていた僕を見て何をトチ狂ったのやら、ケテルがこんなことを問い掛けてきた。

 

 

『T.P.エイト・オリーシュア……お前は……この世界の「神」になる気はないか?』

 

 

 あろうことか彼は、この完璧なチートオリ主たる僕に聖龍アイン・ソフの後釜に収まる気はないかと訊ねてきたのである。王様の予想外すぎる問い掛けに、僕はひたすら困惑したものだが……彼が心底本気で言っているのはわかっていた為、僕もその真っ直ぐな眼差しを真摯に受け止めつつ、正直な気持ちを返してやった。

 

 

「ボクはそんな器じゃないよ、ケテル。それに……これまで誰よりも上手くこの世界を守ってきたのは、アイン・ソフでもダァトでもなくキミだ。だから今はまだ、神の存在に無理に拘る必要は無いんじゃないかな」

『…………』

 

 

 本来の神様である聖龍アイン・ソフが崩御した今、フェアリーワールドは神様不在な状態である。その事実に対する不安は、誰よりも神の偉大さを知っているが故に大きかったのだろう。

 

 だけど、僕は……僕たち(・・)は思うのだ。今ならアビス・ゼロが天界で暴れ回っていた頃とは違った形で、神がいなくても一人一人の力でこの世界を支えていくことができるのではないかと。

 

 僕の知っている「フェアリーセイバーズ」では、そう言った光井明宏が激昂したケテルに殺されてしまった。それはきっと、聖龍やダァト、カロン姉さんという偉大なる者たちの犠牲によって救われたこの世界の過去を否定されているように聞こえたから、許せなかったのだろう。

 

 

 ……本当に、不器用な子だ。

 

 

 そう考えるのはちょっとダァトに寄り過ぎるか。だけど実際のところ僕は、聖龍が寝ている間もフェアリーワールドの秩序を保ち続けてくれた彼らサフィラス十大天使に対して、特にケテルに対しては本来の神様よりもよほど尊い存在だと思っていた。

 

 しかしそう伝えてもケテルは納得した様子ではなく……どこか縋るような目で僕を見つめていたものだ。

 

『貴方が神の座に君臨してくれさえすれば、民の心は安心する筈だ。何もしなくて良い。ただそこにいてくれれば……それだけで良いのだ』

『ケテル、それは……!』

 

 その言葉が「自分が養うからどこにもいかないでくれ」と言っているように聞こえたのは、多分僕だけだろう。

 

 しかし彼の言っていることは至って真面目な話だ。要するに、フェアリーワールドにおける新しい時代の象徴になってくれってことだよね?

 

 だけど何もしない奴が王様差し置いて神様になってしまうのはこう……よくわからないけどなんか違う気がする。

 姉さんもその提案については思うことがあったのか、珍しく責め立てるような目でケテルを睨んでいた。珍しくってか初めて見た。姉さん、そんな顔できたんだ。らしくないけど僕の為を思っての態度なら嬉しい。

 

 しかし、らしくないと言えばそれはケテルもである。

 僕は二人の姿に苦笑しながら向き合うと、今の彼が抱えている不安定な心情を察した。

 

 

「大丈夫だよ、ケテル」

 

 

 察した上で、僕なりの言葉で励ましてやったのだ。

 本人に言ったら渋い顔をするだろうけど、この王様は姉さんとそっくりだ。一人で何もかも背負いすぎているし、そうするのが当たり前だと思っている。……そうでなければ、自分の存在に価値が無いと。

 だけどそれは献身的すぎるが故の傲慢と言うか……なまじ背負い込んでも何とかできる力があるからこそ、時々暴走してしまうのが彼の欠点である。

 その欠点を、彼は重々承知している。……ああ、だからか。

 

 

 ──この子は、また自分が道を間違えるのが怖いんだ。

 

 

 その真意をオリ主的なサムシングで察すると、僕は不敬ながら弟を見るような眼差しで見つめ、その胸板にコツンと拳を当てて言った。

 

 

「キミがまた道を間違えそうになった時、他の誰かに止めてもらおうとするのはいいことだ。だけど、それは神様に任せることじゃないと思う。もちろんボクも手伝うけど、キミの助けになりたいと思っている人たちは、キミが思っているよりもたくさんいるのだから」

『……僕にまだ、頂点たる資格があると?』

「キミに無かったら誰にも無いよ。もちろん、ダァトにもね」

 

 

 それはマルクトほかサフィラス十大天使の皆さんだったり、メタトロンさんのように彼を慕う部下であったり。セイバーズだってそうである。ともかく「ダァト」だけではなく、この世界には頼れる仲間が大勢いるのだと、僕は言い張った。

 

 だから無理に自分より上のポストを作って、自分を抑え込む必要は無いのだと。

 

 ……と、偉そうに語ってみたが、僕はカウンセラーではないのでこの時のケテルにはどんな言葉を掛けてあげるのが正解だったのかわからない。

 だけどそう言うと彼にも色々と思うことがあったのだろうか、しばらく沈黙を置いた後『そうか……』と納得したのかしていないのかわからない返答を返すと、それ以降この件を口に出すことはしなかった。

 

 

 ──だけど、よもや王様の座をメアちゃんに譲り渡そうとするぐらい思い詰めていたとは、この時の僕も流石に思っていなかったものである。

 

 

 後になってから気づいたことだが、もしかして彼に一番必要だったのは共に戦ってくれる味方よりも、炎君にとっての灯ちゃんみたいな、大樹のように安心して寄り掛かることができる存在だったのかもしれない。そう言う意味ではほとんど眠っていた生前の聖龍様も救いになっていたのだろう。

 

 

 今度からは、もう少し優しくしてあげよう──グレイスフィアの一件が終わった後、僕はこの不器用な王様に対してそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フェアリーワールドでの用事を済ませた。それからのこと。

 人間世界にハイパーテレポーテーションでとんぼ返りした僕は、姉さんとカバラちゃんと共に本格的なグレイスフィア対策に乗り出すこととなった。

 

 ……なったのだが、帰って早々に気づいたことがある。いや最初から気づいてはいたんだけど、僕はクールで動じないキャラだから気にしないことにしていたのだ。

 だがそれも、流石に我慢の限界だ。あえて言わせてもらおう。

 

 

 ──日本の夏、暑すぎない? と。

 

 

 世界樹サフィラが涼しくて穏やかな気候だったから、帰還後にはより強く感じるようになった。改めて思うと湿度と気温が両立してしまっているこの暑さは上着とマントを脱いだちょっとオシャレな女子大生風な格好になってもなお厳しいものがあった。

 五年間アビス・ゼロの近くにいても問題無いぐらいにはこの身体の適応力は高いのだが、蒸し暑いものは蒸し暑いのである! その気候には、姉さんさえもちゃっかり霊体化してやり過ごしているほどだ。カバラちゃん? カバラちゃんなら僕の帽子の裏に隠れているよ。その温もりで僕の身体はさらに温まってしまっているが、かわいいから許す。

 

 ううむ……夏のピークは過ぎているのに、日中の太陽はあまりにも眩しい。その熱加減には思わず「ボクにはこの世界は眩しすぎる……」と空を見上げて呟いてしまうほどだった。そんな僕のクールさで少しは涼しくならないかなと、ケテルと真面目な会話をした反動かつい馬鹿なことを考えてしまう。ん、いつも通りだろって? 僕は馬鹿じゃないし。

 

 しかし前に異能怪盗として暗躍していた時は時季的にまだここまで暑くはなかったが、この暑さがもうしばらく続くとなると真面目に対策を考えなければならない。

 そう言えば異能怪盗を始めた頃、普段着用に買ったけどあまり着ていないミニスカートがあったな……あれを少し改造して、新しい怪盗衣装として組み込んでみようか?

 

 と言うのも実はこの前メアちゃんのところの制服を着て学園に潜入した時、スカートを短くすることが予想以上に大きな利点があったことを思い知ったのである。……いや、単純に短い方が涼しくて夏場は気持ちいいなぁって。

 

 ……ただ、彼女のように戦闘中も着こなすのは訓練が必要そうだ。戦闘中にチラチラ見えたらカッコ悪いから、オリ主としても死活問題である。

 マルクト様ちゃんが戦っている時は時々見せパンが見えていたけど、メアちゃんの方はあんなに飛んだり跳ねたりしてるのに見えそうで見えないラインをずっと走り続けていてエラいと思いました。何だろう、ニチアサバリア的なものでも張っているのだろうか?

 コツがあるのなら是非ともご教授願いたいところだが、そんなことを僕が訊くのはセクハラみたいでキャラじゃないので、いつかアリスちゃんの配信でツッコんでくれないかなーと期待していたりした。

 

『エイトは、今の衣装を変えるのか?』

 

 そうだね……もちろん僕は今の怪盗衣装には強い愛着を持っているが、デビューから五年経った今マイナーチェンジには丁度良い頃合いだと思っている。本格的に変えるかは要検討だが、今の内に普段とは違う衣装を色々と試してみるのはアリだと考えていた。

 特に暑いのは如何ともしがたい。夜は大丈夫だとしても、日中もあの黒い格好で派手に立ち回るのは正直気が滅入りそうだった。

 

 ……いかんね。僕としたことが、ブランクのせいかやはり弱気になっている。

 しっかりしろミステリアスチートTS転生美少女怪盗! 転生したばかりの頃のお前は、もっと輝いていたぞ! 

 

『? エイトはいつも輝いているが……』

 

 ありがとう! だけど僕自身がまだ満足できる状態にはまだ仕上がっていないのだ。大丈夫、グレイスフィアの来訪には間に合わせるさ。

 

 だけど今はもうちょっと甘えさせてほしい! もう辛抱ならん! 僕はこれからアイスを買いに行く! 

 丁度いいところにソフトクリームを売っているキッチンカーがあったので、僕は小走りで向かっていった。

 

 お金は大丈夫だ。実は僕、例のスカートを買った行きつけの服屋さんで日雇いのバイトをしたりしていて、真っ当なお金をそれなりに持っているのだ。懐にはこの間の遊園地の分で消費してもまだ、幾分かの余裕があった。

 

 ──そんな時である。日本の夏特有の暑さに思考が散漫になっていた僕は、同じタイミングでキッチンカーに向かっていく一人の女性の存在にその時まで気づかなかった。

 

 

「……っ、あなたは……!」

「!? キミは……!」

 

 

 常に計算高い僕らしからぬ失態である。全くもって、想定外な事態に出会すことになった。

 

 それはこの僕T.P.エイト・オリーシュアがオリ主ムーブをしていた中で、最も割りを食わせてしまったかもしれない──大好きなアニメ「フェアリーセイバーズ」のメインヒロインとの遭遇だった。

 

 

 前に見た時よりもずっと美人に成長した──灯ちゃんが、そこにいたのだ。

 

 

「もしかして……本物のエイトさま……?」

「キミはアカツキ・エンのお嫁さん……アカリさんだね」

「本物……? また偽物じゃないよね……?」

「ふふっ、なんだいそれは。まるで前に偽物のボクと会ったことがあるような反応だね?」

「あっ、それはその……はい」

「えっ、本当に偽者いたの」

 

 

 暁月灯──旧姓光井灯。

 

 メアちゃんの姉であり、丁度僕が帰ってきたあたりの時期にめでたく暁月炎の嫁になった、「原作」の最重要人物の一人である。

 そんな彼女とバッタリ出会した偶然に、僕は自分の運命力を少しだけ怖いと思った。





 ヒロアカ映画のダイマ(ダークマイトマーケティング)にやられてしまいました。
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