TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 実際便利


第三勢力はお手軽な和解フラグ

 フェアリーバーストとは、身も蓋もない言い方をすると異能使いにおけるハイパーモード的なアレである。

 一定のレベルまで力を育てあげた異能使いが、純粋な意識の爆発により異能の力を完全解放した形態だ。原理的には異能の暴走モードであるバースト状態と同じだが、決定的なのはその力を使い手側が完全に制御下に置いているという点だった。

 一歩間違えれば自分たちを破滅に導きかねない力を、高潔な理性でコントロールした姿とも言える。アニメ「フェアリーセイバーズ」では第一クールのボス戦で炎がその力に目覚めた時、僕は幼いながらに厨二心を刺激され興奮したものだ。

 って言うか、今でも興奮している。いけー炎、そんなよくわからん天使なんてやっちゃいなよー!

 

『ぬぅ……その力、まるで大天使様のようだ……! ば、馬鹿な……人間が何故、これほどまでに!』

 

 いいぞハニエルさん! いい感じのかませ犬ムーブだ!

 そうそう、これだよコレ。主人公が本来の力を発揮し、こちらを見下していた敵をパワーアップした力で叩きのめす。こういうのでいいんだよこういうので。最近鬱展開の兆しがチラホラ見え始めていたので、僕は爽快な気分で炎の超パワーを見つめていた。

 

「力は見せつけた。これでも俺は、協力相手には不足か?」

『……貴様、正気で言っているのか?』

「俺たちに敵対の意思は無い。あんたたちの上司に伝えてほしい……俺たちにできることは協力するから、人間世界には手を出さないでくれと」

『……確かに、それほどの力があれば、奴らアビスとも戦えるだろう。だが、人間世界への攻撃は決定事項だ』

 

 交渉の席に持ち込む為には、自分たちが対等な存在であることを示さなければならない。自分は戦うことしかできないと考えている節のある炎は相変わらず不器用な物言いだが、その在り方は十大天使きっての武闘派であるネツァク傘下の天使に通じるものがあるかもしれない。

 フェアリーバーストを発動し今しがた圧倒的な力を見せつけたことで、ハニエルの雰囲気が明らかに変わっている。

 しかし、彼は聖獣たちにとっては中間管理職の身分に過ぎない。そのロッドの矛先は、一切揺らぐことはなかった。

 

『力こそを至上とするネツァク様ならば、お前の言葉に耳を傾ける可能性もあるかもしれん。しかし仮にあの方を説得したところで、ケテル様の決定は絶対だ!』

「そうか……なら!」

 

 うん、確かにあの脳筋天使ならパワーさえ見せつければ話を聞いてくれそうだ。しかし彼が脳筋な上司を補佐するタイプの中間管理職ならば、この場はやはり駄目そうである。いや、炎の提案を受けてもらうのは、それはそれで困るんだけどね。彼の戦奴隷コースなんて嫌だよ僕は。

 四枚の翼で飛び上がったハニエルは、空中で勢いをつけると一気に降下してきた。

 

『いくぞ! 人間ッ!!』

「……来い!」

 

 蒼炎を纏う炎は冷静に、カウンターを決める体勢でそれを迎え打つ。

 そうとも、それこそが男と男の対話である。わかりやすい感じで、僕はそういうの大好きだ。

 

 しかし、その決着は水を差される。

 

 突如として彼方から、つんざくような轟音が響いたのである。大地が揺れ、雲海が割れ、それを見たハニエルが動きを止めた。

 

 あっやべ、アビスが出てくるの今だったわ!

 

『こんな時に……チィッ! 人間、貴様との決着は後だ!』

「なに?」

 

 上空から視線の先に何かを映した瞬間、ハニエルは炎に対する矛先をあっさりと収め、慌てた様子で何処かへと飛び去っていった。

 彼の変化を見た炎が怪訝な表情で見送ったが、原作知識を持つ僕には離脱の理由がわかっていた。

 

「なんだ……?」

「アビスが現れた。彼が飛び去っていった方向から判断すると……占い通り、コボルド族の村が襲われているようだね」

「! ……例の、魔獣か」

 

 第三勢力という存在は、いつの世も物語を動かしてくれる。いや、語っている場合じゃないなこれは。

 こんな原作介入ポイント、見逃してはオリ主の名が廃るというもの!

 闇の呪縛と念動力を調合。僕の思念で忠実に動く「闇の不死鳥」を召喚すると、僕はスカートを押さえながらその背中に飛び乗った。

 

「ボクは彼を追い掛けるつもりだけど、キミは?」

「行くさ。アビスとやらがあんたの占い通りに動いているなら、そのコボルド族たちを見殺しにはできない」

「わかった。なら、早く乗りなよ。飛ばすよ」

「……助かる」

「カバラちゃんもしっかり掴まってて」

「キュッ!」

 

 お利口なカバラちゃんが僕の肩にしがみつき、フェアリーバーストの状態を解除した炎が僕の後ろへ乗り込んだのを確認すると、僕は闇の不死鳥を一気に上昇させていく。

 そして千里眼でハニエルの向かった先を確認し、そこで繰り広げられている混乱を見て、急いで発進させた。

 誰かのピンチには必ず間に合う。それができてこそ、完璧なオリ主なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 第7の島アドナイ、幻獣の森付近に居を構えるコボルド族の村は襲撃を受けていた。

 

 彼ら聖獣にとって不倶戴天の敵、アビス。

 それは雲海の遥か下、聖獣たちが寄り付けない深淵の世界に生まれた存在だった。

 彼らは100年以上前から活性化を始めており、一時は全てのアビスが深淵から出て天界の世界に溢れ出そうとしていたが、聖龍アイン・ソフの力により今日まで封印されていた。

 しかしここ数年、彼らを抑え込んでいたアイン・ソフの力が弱まったことで再び封印が解けようとしていたのだ。

 その影響により封印から漏れ始めたアビスが、雲海から顔を出すようになって数年。フェアリーワールドは来たる未曾有の危機に備えていた。

 

 アビスは根本的に生物の本質から外れた存在である。ただ本能のままに周囲の者を喰らい尽くす文字通りの怪物だった。

 その液状型のスライムのような身体は目的によって自在に姿形を変え、聖獣たちさえも喰らい尽くそうとする生態は天使を含む全ての聖獣にとっての天敵であり、聖獣たちは異なる種族同士力を合わせてコレを撃退して過ごしていた。

 

 そして雲海が近くにあるこの村では、近頃アビスの発生が特に激しくなっていた。

 

 そんな日にアドナイ内を巡回していたハニエルが、地球からの侵入者を見つけてしまったのはおそらく不運だったのだろう。

 想像を超える人間の強さに手こずってしまい、肝心なアビスの発生を危うく見逃すところだったのだから。

 

『そらぁ!』

 

 急いでコボルド族の村に舞い降りたハニエルが、住民たちを襲っていたアビスをロッドの一撃ですり潰す。

 アビスは液体状の怪物であるが、不死身ではない。切断や爆砕により一定以下の体積になった場合、アビスはその行動を停止し塵になって消滅する。

 逆に言えばそこまでしなければ死なないという存在であり、真っ二つにした筈が他のアビスとひっついて再生したり、逆に切り離して分裂したりとその厄介さには際限が無かった。

 

『ハニエル様っ!』

『早く逃げろ! ここは私が引き受けるっ!』

『はい……! で、ですが、あっちにもアビスの群れが……』

『なんだと!? ええい!』

 

 アビスは個体にして群体である。

 基本的に一体だけがその場に出現することはなく、雲海の下から噴水のように現れては分裂して島へと拡散し、波のように広がって聖獣たちの生活圏へと襲い掛かってくるのだ。武力で排除しようにも個人の力では限界があり、その扱いは人間などよりもよほど質の悪い害虫だった。

 本音を言えば、今の聖獣たちに人間の相手をしている余裕は無いのだ。

 

『あの人間……我らに協力できると言っていたが……』

 

 もしそれが嘘では無いのだとすれば、アビスの発生が多発しているアドナイの現状、ありがたい話ではあるのだ。戦力は幾らあっても足りるものではなく、かの聖龍とてかつては人間世界と協力してアビスを根絶することを期待していた。

 しかし。

 

『信用に足らぬ!』

 

 不可侵だった筈のゲートの研究に、聖獣たちの拉致、非人道的な実験、そして大天使ケセドの慈悲を踏みにじったPSYエンスなる組織の存在。それらの過去、現在が聖獣たちの心に不信感を募らせていた。

 こちらの手が回らないことをいいことに調子に乗った人間たちが同胞にしてきたことを、ハニエルたちは激しく嫌悪している。

 先ほどの人間との戦いも不完全燃焼に終わり、その怒りをぶつけるようにハニエルは一騎当千の活躍でアビスの軍勢を薙ぎ払っていった。

 だが、数が多すぎる。

 アビスは戦い方を知らない。その液体状の身体で進行し、相手に取り付き、飲み込んで捕食するだけだ。故にハニエルのような達人からしてみれば恐るるに足らないが、それが物量に任せて際限無く襲い掛かってくるのだから彼一人ではどうあっても人手が足らなかった。

 コボルド族の若者たちも村を守る為にその爪や「聖術」で応戦しているようだが、進行を僅かに抑えるのが精一杯で町の被害は広がる一方だった。

 

 このままでは……!

 

 生者に群がる亡者の群れのように、全長三メートルを越す液体状の怪物がハニエルの姿を取り囲んで食らおうとしている。

 しかもその内の数体がスライム状の姿から形を変えて、羽を生やした人型──天使の姿へと変貌していった。

 

『得意の猿真似か……!』

 

 これこそアビスの特性の一つ、「模倣」である。

 アビスは戦闘の中で自らの身に危険が迫っていることを理解した時、その液体状の身体で敵の姿を模倣することで対抗してくる。それが彼らの戦闘形態だった。

 姿は所詮模倣であり、こちらの能力を完全に再現したものではない。しかしその立ち回り、攻撃方法の洗練具合は通常形態の比ではなかった。

 

『そんなものでッ!』

 

 咆哮を上げたハニエルがロッドを振り回し、自身の姿を模倣した怪物の顔面を叩き潰しては「聖術」ライトニング・ナックルで心臓部を打ち抜いていく。天使が持つ光の力を集束させた鉄拳は、アビスに対する致命的な有効打となった。

 

『ぐはっ!?』

 

 しかし、その直後、ハニエルは自身が放ったものと同じ技を背中から受ける。

 そこには彼の姿を模倣した数体ものアビスが居り、ハニエルは地を転げながら怒りに震える目を敵らに向けた。

 

『邪悪な存在が、私の技を……!』

 

 これもまた、アビスの特性の一つである。

 彼らの模倣はオリジナルの力を完全に再現したものではないが、劣化コピー程度には再現することができる。彼らは今、ハニエルが放った聖術ライトニング・ナックルを自らの技として再現したのだ。

 劣化コピーとは言え、圧倒的な物量を持つアビスがそれを行えば悪夢となる。ハニエルは吐き気を催すほどの憎悪を抱きながら立ち上がり、自らを十数体以上の数で囲む天使型アビスの集団を相手に身構える。

 

 一人で先行しすぎたのは、やはり拙かったか……この窮地に、ハニエルは思考の隅でそう反省する。

 

 しかし、彼は天使だ。それも天使たちの最高位であるサフィラス十大天使ネツァクに仕える筆頭天使。「勝利」の名を冠するかの大天使に最も近しいものとして、敵に背を向けることはできない。

 

『来い……アビス! 私は誇り高きネツァクの筆頭天使、ハニエルだ!』

 

 天使にして戦士。その誇りを胸に、ハニエルがロッドを握る手を強める。

 

 

 ──空から降り注いだ蒼炎が目の前の怪物を焼き滅ぼしたのは、その時だった。

 

 

「バニシング・セーバー!」

 

 一閃、突如として飛来してきた男が振り下ろした蒼炎の剣が、天使型アビスを三体纏めて切り裂く。

 その光景にハニエルは驚愕し、目を見開いた。

 

 何故、この男が……この人間が、ここに現れたのだと。

 

 

「コイツらがオリーシュアの言っていた魔獣……アビスか。確かにこれは、想像していたより遙かに恐ろしいな」

『人間……何しに現れた? 今は貴様に構っている隙は無いのだぞ』

 

 つい先ほどまでハニエルと剣を交えていた筈の人間である。

 大天使ティファレトからの報告に上がっていた、あちらの世界からの侵入者だ。

 そんな人間がこちらの事情に介入し、あまつさえ敵である自分を助けに来た。その事実に怪訝な表情を浮かべながら──ハニエルはロッドを突き出し、背後から彼を狙っていた天使型アビスの顔面を打ち砕いた。

 蒼炎を纏った人間は振り向き様に焔の剣を横薙ぎに払い、頭を失ったアビスにとどめを刺す。示し合わせたかのような、滑らかな連携だった。

 

「わかっている。だから俺たちは、この世界に来た。お互い、戦争をして得るものは無い筈だ」

『何を、今更……』

「こんな奴らがウロウロしている限り、俺たちの世界に構っている余裕も無いだろう。さっき言ったが人間世界から手を引けば、俺たちだって化け物退治に協力できる」

『ふん……同胞の罪滅ぼしのつもりか』

「それもある」

 

 背中合わせになりながら、それぞれがロッドと炎の剣を振るい、周囲を取り囲むアビスの群れを薙ぎ払う。

 ハニエルは彼の真意を測りかねていた。この男は状況を理解していないのか、それとも状況を理解しているからこそ対話を求めやって来たのかと。

 後者だとしたらそれは、ハニエルの人間観を揺らがせるものだった。

 

「同じ人間がやらかしたツケは俺が払う。だからあんたたちも、関係のない人間を襲うのだけはやめてくれ」

『……人間、貴様の名は?』

「暁月炎」

『……アカツキ、まずはコイツらを倒す。力を貸せ』

「言われるまでもない」

『ふん……』

 

 この人間は、自分が知っている人間たちとは……少し、違うのかもしれないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 む? あの様子は……アイツ、また何かカッコいいこと言っているな!

 

 闇の不死鳥(ダーク・フェニックス)から降りてコボルド村。

 予想以上に激しい規模で湧いていた聖獣の天敵ことアビスの大群をエイトちゃんサンダーで焼き払いながら、僕は千里眼で炎たちの様子を見て苦笑する。

 村の上まで到着した時、「俺はハニエルを助ける」と言うなり一人で飛び出していった彼には参るね……まったく。

 何というか、完璧なチートオリ主になりたい人間と、既に主人公である男の差をまじまじと見せつけられた感じである。いやね、そういう姿に嫉妬したりだとか、そういうのではないのよ全然? 流石プロだ、違うなぁと、自然な彼の在り方に純粋に尊敬しているだけだ。何ならサインをねだりに行きたいぐらいである。

 

 しかしそういう差を理解してもなお、自分の存在を示していくのが完璧なチートオリ主というものだ。

 

 と言うわけで僕は、ハニエルの周りにいたアビスを彼に任せてコボルド族の若者たちが苦戦している方のアビスの迎撃に向かうことにしたのだった。

 

 

「深淵に帰るんだ……ここは、キミたちの居場所ではない」

 

 

 数体召喚した闇の不死鳥に、爆燃属性をエンチャント。文字通り火の鳥と化した闇を次々と撃ち出し、劣勢に陥っていたコボルドたちに熱い援護射撃を送っていく。カイザーフェニックスは男のロマンである。僕はTS美少女だけどね。

 

『なに!?』

『なんだ……!?』

 

 避難場所を襲うアビスの軍勢と交戦していたコボルドの若者たちが、突如として横切ってきたつよつよな攻撃に驚いて振り向く。むふふふ、そうそう、そういう反応を求めていたのだ。突然出てきてフリーダムに大暴れし、敵味方の視線を釘付けにする。まさにオリ主無双! 気持ちいいいいっ!

 僕は空気を読めるミステリアスなお姉さんなので、この興奮を露わに絶頂したりだとかそういう下品な顔はしない。すまし顔で、慈悲深く、ただひたすらにクールでカッコいいオリ主をイメージしながら全力で能力を発揮していた。

 

『これは、ケセド様……?』

『違う……あの方とは違う力だ。しかし、これは……』

 

 コボルド族の皆さんも誰あの素敵な美少女は!?と混乱している様子だ。

 僕はそんな彼らに外面上は目を向けることなく徹底的にアビスだけを攻撃し、貴方がたと敵対する気はございませんとアピールしておく。

 いや、にしてもアニメで見た時以上にモフモフだね皆さん。助けてあげたお礼に触らせてもらえないかな? あの胸のモフモフなところとか、犬みたいな鼻先とか。僕はケモナーではないが、彼らを見ているとこう、犬を飼いたかった前世の幼少期を思い出すのだ。近所の犬に噛まれてからは猫派に転身したが、今でも犬は好きなのである。……む、犬耳エイトちゃん? 潜入捜査で聖獣の町に入る時とか、いけんじゃねコレ。

 そんなことを考えながら目についたアビスを手当たり次第消し去っていくと、残る数は少なくなっていた。あっ、やべ、空にもう一匹いるわ。しかも避難所狙ってる!? 誰も気づいてないし!

 

「……!」

 

 調子に乗っていたら一匹見逃しました。その一匹が避難所の村人全滅させました──そんな鬱展開許しませんよ!

 原作知識によって危険なことが起こるとわかっていながら、みすみす犠牲者を出すような奴は完璧なチートオリ主ではない。それはシリアス物SSのオリ主である。そういうSSも確かに重厚で面白いが、僕が目指すオリ主は違うのだ。

 僕にとって完璧なチートオリ主とは、ご都合主義の権化なのである。楽しく読んでいたSSがバッドエンドに終わった時は、一週間寝込んだものだ。

 故に僕は、ハッピーエンドの為ならば予定に無い行動も躊躇わなかった。

 

 「闇の呪縛」に「加速」の異能を調合。

 背中に闇で形成した黒い翼を生やした僕は、直接その場から飛翔すると、空から避難所を狙っていた天使型のアビスへ接近しボコスカと殴り倒した。ハープで。……いや、咄嗟に使える武器これしかなかったんだもん。

 絵面的にシュールなので急いでハープをしまった僕は、空を浮遊しながら避難所の無事を確認するべくその様子を見下ろした。あっ、この角度だとスカートの中見えるな……闇で隠さないと。

 しれっとした顔の裏でそんなことを考えていると、やはりそこにいたコボルドたちは僕の姿に注目しているのが見えた。ふはは、余は救世主であるぞ、ひれ伏せい!

 

 ……いや、ひれ伏さないでください。なんでみんなそんな恐れ多そうな顔してるのやめて恥ずかしい。僕が浴びたいのはキャーエイトサンステキー的な賞賛であって、崇拝ではないんだよやめて!

 

 

『大天使さま……?』

 

 

 避難所の中にいたコボルド族の子供の一人が、テレパシーでそんな言葉を僕に呼び掛けてきた。

 ああ、今の僕、空を飛ぶ為に闇の翼を生やしているからね……それも咄嗟だったので気合いを入れすぎてしまい、十枚ぐらいこう、バサバサと。

 

 因みに、「フェアリーセイバーズ」にはこういう設定がある。

 フェアリーワールドにおける天使の階級は、翼の枚数によって決まっている。

 そして天使の最高位であるサフィラス十大天使の翼の枚数は、王のケテルが最高の十枚で、他の皆さんは八枚である。

 

 

 

 ふっ……また一つ、勘違い要素を作ってしまった。やれやれだぜ。

 

 

 

 ……どうしよ流石にマズいかもコレ。今の僕最高天使じゃねぇか黒いけど。十大天使を騙るなんて、せっかく炎君がいけそうだった天使との対話が台無しだよどうしよう!

 とりあえず十枚はマズいので、降下しながらこっそり四枚減らして六枚にしておいた。デキるオリ主は謙虚なのだ。だからさっき十枚に見えたのは見間違いですよ皆さん!

 

「キュー」

「……大丈夫。ありがと、カバラちゃん」

 

 黄昏れながら降りた僕の頬を、肩に乗っていたカバラちゃんが慰めるように舐めてくれた。

 ありがとう、君に出会えて良かったよ。

 




 朝霧細雨殿からエイトの3Dファンアートをいただいたので貼らせていただきます。とてもとてもテンション上がります。ありがとうございます!


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 大体こんなイメージですね。うむ、わからせたい。

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