TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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嘘吐きは勘違い物の流儀

 異能が日常化した現代社会であるが、それは元々この世界に備わっていた力ではない。

 多くの人間が異能を得ることになったきっかけは世紀末のある日、突如として異世界とのゲートが開かれ、その向こうから一体の龍が現れた時のことだった。

 現代では「聖龍」と呼ばれているその龍は来訪から僅か数日で異世界へと帰ったものの、その時を境に地球の人々は続々と異能に目覚め、100年以上経った今では世界規模で異能使いの存在が一般化していた。

 人々は新たに会得したこの力を、自身と社会の発展の為に行使してきた。

 

 しかし、全ての人間が異能を正しく使いこなしているわけではない。

 

 力を制御しきれず暴走させてしまう不慮の事故であったり、己が利益の為だけに犯罪に利用する者たちであったりと、過ぎた力は人の心を思わぬ方向へと捻じ曲げ、世の中に痛ましい事件を引き起こした。

 

 そして、そんな者たちに楔を打ち込む者たちがいた。

 

 異能対策特殊部隊「セイバーズ」。

 

 彼らは数々の異能犯罪に立ち向かい、創設以後絶え間なく戦い続けていた。

 直近では異能研究の為に非人道的な人体実験を繰り返していた犯罪組織「PSYエンス」との戦いが有名で、激闘の末これを壊滅させたのが人々の記憶に新しい。

 正義の味方として悪と戦う姿は世界を守る平和の象徴とも言え、子供たちの間では将来なりたい職業のベスト3に名を連ねていた。

 そんなセイバーズの機動部隊隊長である暁月炎は、PSYエンス以来となる強敵との一戦を終えると、戦いの跡地に佇み先ほど撃退した相手のことを振り返る。

 

 エレメント・ワイバーン、異世界の聖獣。

 

 聖獣とは、この地球に蔓延った異能の起源である。かつて地球へ来訪した聖龍もまた、異世界に住む聖獣の一種だと推測されている。

 彼が異能という力を人類にもたらしてから始まったこの世界。聖獣たちが住む異世界と人間が住むこの世界は本来交わる筈がないのだが、聖龍が来訪した世紀末以来、二つの世界を隔てるゲートは度々開かれていた。

 それが最近になって各地で頻発しているのが、目下セイバーズを悩ませている問題だった。

 これまでは一年に二回程度の頻度だったのが、近頃では一週間に数回の頻度で開門し、異世界から聖獣たちが来訪してくるのだ。それは、明らかに異常な事態だった。

 

 しかも、問題はそれだけではない。

 

 これまで地球に迷い込んできた聖獣の多くは、あちらも意図してゲートを通ったわけではなく、意思疎通さえとれれば穏便に送り返すことができた。

 しかしこの頃来訪してくる聖獣たちは、人間たちに対して明確な敵意を抱いていたのだ。

 先程炎たちが撃退したエレメント・ワイバーンもまた、その内の一体である。突如として開かれた異界のゲートから出現した彼は、迷いなく町々に襲い掛かってきた。どうにか最小限の被害で食い止められたが、炎の出動が遅れていたら大惨事になっていた事件である。

 

「ワイバーン……アイツは、俺たちに何か怒っている様子だったな……」

 

 地球の人間が何か、向こうの聖獣たちに恨まれるようなことをしてきた覚えは……ある。

 代表的な一例は悪の組織「PSYエンス」──彼らが行なっていた非合法の実験だ。

 異世界から無理矢理連れてきた聖獣たちを捕獲し、道具として扱う為に生きたまま改造や解剖を繰り返していた。

 この世界だけでは飽き足らず、向こうの世界にも迷惑をかけ続けていたのが悪の組織と呼ばれる所以である。聖獣たちも全ての人間がそんな者たちばかりだとは思っていないだろうが、被害を受けた聖獣たちからしてみれば怒りの矛を収めるのは難しいだろう。

 

 異世界と地球をつなぐゲート……科学の進歩によってその研究が進んでしまったのは、禁忌に触れるようで恐ろしくもある。

 行き着く先を想像すると良くないものを感じ、思わず表情が強張る。過去のトラウマは克服したが、炎は基本的に繊細な性格だった。

 そんな炎だったが、ふと上着の裾を掴んできた小さな手によって、意識を引き戻された。

 

「エン、怖い顔してる……」

 

 下に目を向ければ、不安そうな顔でこちらを見上げている銀髪の少女の姿があった。

 怖がらせてしまったかと、炎は苦笑を浮かべながらも不器用に彼女の肩に手を置いた。

 

「大丈夫だよ、メア……ちょっと疲れただけだ」

「本当?」

 

 無垢な目でこちらを見上げる少女の名はメア。

 年齢は不明だが、外見から判断して大体十歳ぐらいだろう。あどけない容貌ながら浮世離れした雰囲気は、同年代の子供たちにはない奇妙な存在感があった。

 

 彼女と出会ったのは丁度一年前のことだった。

 

 セイバーズの任務により違法組織「PSYエンス」の研究所へ突入を仕掛けたあの日、人体実験が行われた形跡のある薄暗い地下室の中で、試験管に眠る彼女と炎は出会った。

 捕らえた聖獣の因子を人間に定着させることで、人を超えた異能の力を身に付けさせる「PSYエンス」悪魔の実験……彼女はその被験者「フェアリーチャイルド」の一人だったのだ。

 今でも胸糞悪い話だが、研究員たちは全員捕らえ、ボスもこの手で叩きのめした。

 それからのこと、組織の被害者である彼女は身元が不明なこともあり、今はセイバーズが保護している身分である。

 彼女には実験以外の過去の記憶が無かった。知っているのは自分の名前と敵との戦い方だけだと言っていたその言葉が、炎には痛ましく聞こえた。

 記憶はいつ取り戻せるかわからない。それでも彼女には、これからの人生を普通の少女として生きてほしかったのだが……その平穏は、今日この日に破られてしまった。

 

 ゲートから現れ町を襲ったエレメント・ワイバーンは、メアの存在に気づくと執拗に彼女を狙ってきたのである。

 

 おそらくは、彼女の身体に埋め込まれた聖獣の因子が影響しているのかもしれない。

 また事件に巻き込んでしまった上に、肉体的にも精神的にも幼いメアを戦わせてしまったことを炎は悔やんでいる。彼女のことを妹のように思っているからこそ、その心には罪悪感が広がっていた。

 

「駆けつけるのが遅れてすまなかった。怖い思いをさせたな……」

「メアは、大丈夫。エンの方がつらそう……」

「俺は平気さ。なんたって俺は、平和を守る剣だからな」

「ありがとう、エン」

 

 出会った時は人形のように表情の変化が乏しかったメアだが、そんな彼女が今では微笑んで感謝の言葉を伝えてくれる。

 炎は元々、父親の復讐の為に戦う道を選んだ男だが……今では彼女のような存在こそが、セイバーズとして戦う一番の理由であった。

 町の人々の笑顔を守りたい。その一心だったのだ。

 

 

 

「そうか……キミの焔は立ちはだかる者を焼き払う為ではなく、寒さに震える子供たちを温める為にあったんだね」

 

 

 事後報告の為、彼女と共に本部へ帰還しようとしたその時だった。

 

「っ、誰だ!?」

「!」

 

 即座にメアの身を背中で隠しながら、炎が声のした方向へと振り向く。声は二人のいる東側、倒壊した建物の陰から聞こえた。

 戦闘の直後で高まっていた筈の感度が、その瞬間まで気配に気づけなかったのだ。それ故に炎の警戒心は高く、睨むような視線をそこに向けていた。

 

「綺麗な目をしているね。一度は悲しみに打ちのめされたその瞳も、乗り越えた今では誰よりも強く輝いている……とても真っ直ぐで、宝石のような美しさだ」

 

 炎の警戒もどこ吹く風で、そこにいた人影は悠然と壁に寄りかかっている。その手には吟遊詩人の如き銀色のハープが携えられており、言葉の後にポロロンとさざ波のような音を鳴らしていた。

 紳士的な燕尾服の上にロイヤルブルーのマントを羽織っており、小顔の頭には白いリボンが巻かれた黒いシルクハットを目深に被っている。一見すると体つきは起伏が少なく声質も中性的であったが、ロングスカートを穿いていることから炎は即座に女性であることを認識した。

 直前まで全く気配を感じ取れなかったことと、メアとは別の意味で浮世離れしたその雰囲気。明らかに、偶然通りがかった一般人のそれではない。

 それに……言い回しが妙に回りくどいが、先ほどの言葉は明らかに炎の素性を知っている様子だった。

 少女は睨み付けるような炎の眼差しにクスリと微笑み、背中に庇うメアの顔をほんの少しだけ一瞥した後、楽しげな口調で答えた。

 

「ボクが誰かって? ボクは……その子だよ」

「何?」

「そう、ボクはその子で、その子はボク。キミの描くキャンバスに紛れ込んだ、二人で一つの色……本来ならきっと、この世界には存在し得なかった異色」

「何を……言っている?」

 

 要領を得ない言葉だった。問い詰める炎の言葉に彼女が返したのは、曖昧な笑みと申し訳程度のハープの音色だけだ。

 そんな少女の翠色の瞳を、炎の背中からひょっこりと顔を出しながらメアが覗き込んだ。

 

「それは……メアのこと……?」

「……メア?」

 

 メアが問い掛けると、少女はハープを鳴らす指を止め、その目をシルクハットの下から見つめ返す。

 少女の唇が小さく動く。

 

「そうか、メア……メアか……キミは、メアと名付けたのか。ふふ……これはまた、因果なものだね」

 

 彼女の名前を聞いた瞬間、一瞬少女は驚いた素振りを見せた。しかしすぐに楽しげに唇を弓形につり上げると、上品に微笑んだ。

 それはまるで彼女には本当の名前が別にあり、それを知っているかのような口ぶりだった。

 

「メアのこと、知っているの?」

「キミのことかい?」

「メアには、昔の記憶が無い……貴方は……メアのこと、知っているの?」

「……記憶……そう、キミは記憶を失ってしまったんだね……」

 

 メアには研究所にいた以前の記憶が無い。自分が何者かわからず、そのことに苦しんでいたことを炎は知っている。

 この少女はもしや、何か知っているのだろうか……? ただの不審者とは思えなかった炎は、メアの問い掛けに追従するように少女の返答を待った。

 少女はメアから記憶喪失であることを聞くと、悲しそうに目を伏せ、数拍の間を置いて口を開いた。

 

「キミの記憶、キミの正体……その真実はきっと、彼らの中にある筈だよ」

「エンたちの?」

「? 俺たちの中に、だと?」

 

 意味深なその台詞が、言い残していった言葉だった。

 少女が自らのマントを翻した次の瞬間、その姿が幻影のように消え去っていったのだ。

 

 一瞬にしてその場から移動する、転移系の異能だろうか……記憶を失う前のメアと何らかの関係があるようだが、幾ら怪しかろうと犯罪者でもない者を執拗に追い掛けるわけにはいかない。

 

「何だったんだ……アイツは」

 

 立ち去った少女に対して、炎が率直な感想を呟く。

 強敵だった筈のエレメント・ワイバーンとの戦いの記憶が霞むほど、謎の少女への印象は彼の頭を困惑させてくれた。

 ふとその時、何かに気づいたメアが指差して言った。

 

「あっ……エン、あそこ、何か落ちてる」

「ん? あれは……カード?」

 

 謎の少女が先ほどまでいたその場所──亀裂の入った建物の壁に、一枚のカードが突き刺さっていたのだ。

 抜き取って確認してみると、それが少女の書き綴った置き手紙であることがわかった。

 

 

《また会おう、焔の救世主と名も無き姫君よ ~T.P.エイト・オリーシュアより祈りを込めて~》

 

 

 それはおそらく、あの少女の名前だろう。

 上司に報告すべきか否か、本部に帰還した後のことを考えて溜め息を吐く。

 

 頻発する幻獣たちの襲来に、メアの記憶。

 そしてT.P.エイト・オリーシュア。

 

 ようやくPSYエンスとの戦いが終わったばかりだというのに……新たなる動乱の予感が、エンには拭えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんにちは、T.P.エイト・オリーシュアです。

 オリ主が上手くなるには、活動内容が大切です。今日は私がおすすめするオリ主ムーブを紹介します。

 やり方は簡単、カッコいい活躍で原作主人公またはヒロインを引っかけ好感度を調節。後は原作沿いで無双するだけ!(ZIP HIT!) この前初めてランキングに載ったの!(虚勢) これでもうエタったり、感想欄で叩かれたりしません!(大嘘)

 

 

 ……はい、一仕事終えて変なテンションになっている僕です。

 原作主人公である炎君とのファーストコンタクトが、まさかあんな形になるとはね。全く複数転生者物のオリ主は気を使うぜ。好きだけど。

 今回は準備期間も無くほとんど即興で実行したオリ主ムーブだったが、自己採点で90点と言ったところかな。10点の減点は、あちらのオリ主のバックボーンが想定外だったからだ。思わずびっくりして、予定よりハープを鳴らす回数が増えてしまったものだ。

 ん? あのハープ何だよって? ああ、あれは誤魔化し用の小道具だよ。ほら、困った時は楽器でも鳴らしておけば間が持つじゃない。楽器はテンパった心を鎮めてくれるし一石二鳥だ。演奏の心得は無いが、意味深な雰囲気作りにはこれからも重宝すると思う。

 

 ……で、どうしてあのような回りくどい意味深なムーブをかましたのかと言うと、それはもちろんあのオリ主のことを探る為だ。

 

 直接的に前に出て「お前誰だよ!? お前も転生者か!?」なんて訊いてみなよ。彼女がどう答えるにせよ、原作の雰囲気は台無しになるだろう。それはアニメキャラに興奮している人の横で「絵じゃん」って突っ込むのと同じレベルの冒涜である。

 フェアリーセイバーズというアニメは、もっとこう「スタイリッシュ」な作品なのだ。他の誰かの前でメタなことは言いたくない。

 

 だからこそ僕は、原作の雰囲気を壊さないようにこんな衣装も用意して、スタイリッシュに登場してみせたのだ。我ながらこの格好をした僕の姿はナイスデザインだと思う。相手の異能を盗むというチート能力から連想し、怪盗的なイメージでコーディネートした次第だ。TS美少女の初めてのスカートだぜ? 嬉しいだろ。ごめんなさい調子扱きました。

 ロールプレイではあるが素の自分ともさほど乖離していないので、これからもエイトちゃんはこんな感じのミステリアスキャラで行こうと思う。

 元々チート能力の内容を理解してからはミステリアスムーブでお助けキャラをこなし、物語の要所で炎たちのもとに駆けつけることを考えていた。

 

 ……が、その場合にも最大の懸念はあのオリ主である。

 

 先ほどの接触で大まかに探ることができたが、あの子はおそらく原作知識の無い転生者か、元々この世界に住んでいる現地人のオリ主だろう。

 ここに来る前に予めマフィアの幹部っぽい人から「嘘を見破る異能」を盗んでおいたのが幸いした。少なくとも彼女、メアが言った記憶喪失という話が真実であることは保証できる。

 記憶喪失のヒロインと言えば、古くから伝わる王道中の王道である。丁度フェアリーセイバーズが放送していた頃は他のアニメで流行っていた要素であり、それ故に彼女の存在はオリ主として「浮いている」ことはまあないんじゃないかなと思う。実際便利な設定であり、僕自身もあの子と会うまでは記憶喪失設定で炎に接触するプランもあったほどだ。

 

 複数転生者物の問題点の一つとして、作者が投入するオリキャラの造形を原作の世界観に適合させるのが難しくなることが挙げられる。

 そもそも原作者が考えた世界観なのだから別人が考えたオリキャラを適合しにくいのは当然である。それが一人分ならまだしも複数人ともなればなおのこと難易度が跳ね上がり、収拾がつかなくなるケースが目立つ。

 

 ともあれあのオリ主が原作知識を持っていないのは喜ばしいことだった。

 その上、記憶喪失ヒロインなど物語の終盤で重要な役目を担うことになるのがほぼ約束された王道ポジションである。

 そんな彼女がオリ主であるならば……僕も用意していたこのプランを実行できるというもの。

 

 それは、複数のオリ主をコンパクトにまとめてスマートに活躍するプラン……名付けて「二人で一人のオリ主大作戦」だ。

 

 

 三人目が生えてこない限り、これで勝てる。明るいオリ主生活の将来設計図に僕は恍惚とした。

 

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