TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 味を占めたので


とある世界線のお話 最近のフェアリーセイバーズ∞を視たオタクの反応

 フェアリーセイバーズが20周年記念にリブートされると聞いた時、オタク野郎は「マジかよ」と呟いた。

 

 アニメ「フェアリーセイバーズ」とは彼の少年時代の青春の1ページである。

 当時の彼が厨二病に目覚めたきっかけと言ってもいいかもしれない。脂が乗ったセル画が魅せるスタイリッシュな戦闘シーンに心を鷲掴みにする印象的な音楽、中の人たちの演技。それらは彼がオタク人生を歩むことになるきっかけの一つでもあった。

 原作の漫画やアニメの円盤も全巻完備しており、ドラマCDまで把握しているほど思い入れの強い作品である。

 

 しかし、それ故に彼の心には「思い出は思い出のままにしてほしいなー」と感じるネガティブな気持ちもあった。

 

 それは最近頻発している、一昔前の作品のリブート自体への不安である。

 もちろん評判の良いリブートアニメもあるのだが、「フェアリーセイバーズ」に関しては特にセル画のクオリティーが評価されていた作品であり、現代のデジタル作画やCG技術を使って焼き直すことに抵抗感があったのだ。

 これは他のアニメのことだが、放送当時はリアリティーのある過激な描写がウリだった作品が、当時と比べて規制やしがらみの多い現代に蘇ったことでマイルドな内容に変更され、当時の視聴者としては何か物足りない──箸にも棒にも掛からない薄めたカルピスのような作品にされてしまったと憤ることがあった。

 

 オタクは面倒臭いタイプのオタクだった。いわゆる懐古厨という奴である。

 

 そんな彼は、フェアリーセイバーズのリブート版として発表された「フェアリーセイバーズ(インフィニティ)」も、そのような面白みのない作品にされてしまうのではないかと不安視していたのだ。

 

 

 ──だがいざ放送が開始されると、彼はスタッフ陣の本気に度肝を抜かれた。

 

 

 シナリオ構成には原作者が直々に関わっており、キャラクターの中の人や演出担当は当時のまま変わらない。

 その上放送期間も一年ほどあり、尺の関係から前作では端折らざるを得なかった原作のエピソードもみっちり丁寧に描写してくれたほどだ。

 

 しかも、この時代に当時と同じ日曜朝の枠を確保するのは並大抵なことではない。

 その時間はどうせ暇である独身の彼は、おかげで旧作当時と同じ習慣で視聴を続けることができた。

 

 そこでようやく彼は、「ああ、これ俺の知っているフェアリーセイバーズだわ……」と──やっぱりプロは違うなぁと喜び、安心感を抱いたのである。

 フェアリーセイバーズ∞は思い出を汚すなど、とんでもない。

 

 これは良リブートである。

 

 自他共に面倒臭いオタクだと認める彼だが、自分でも意外なほど新作を受け入れることができた。

 ネット上の評価を見てみると「賛寄りの賛否両論」と言った感じであり、批判意見は本作に追加された新要素を受け入れられなかった者たちに多いようだ。

 

 そう、その新要素である。

 

 旧作フェアリーセイバーズ長年のファンである彼は、それについては概ね快く受け入れていた。

 

 元々彼は旧作の内容そのままの焼き直しには反対していた口であり、原作者が監修してくれているのならドンドン新しい要素を出してくれた方が視ていて楽しかったのだ。

 

 それと、彼はロリコンなので新キャラの「メア」がツボに入ったのも大きい。そんな彼の旧作での推しはマルクトである。

 

 「アニオリで追加される知らない新キャラ」というものは、古来から続く不安要素である。

 しかし、彼女の場合はアニメスタッフやスポンサー側が強引にねじ込んだキャラではなく、原作者が直々に考案したキャラであることが大きいのだろう。

 何よりデザインと声が素晴らしい。

 彼は拗らせたオタクだが、己の性癖にはいつだって正直だ。故に、かわいい新キャラは常にウェルカムだった。

 新要素以外にも「フェアリーセイバーズ∞」では旧作と違って尺に余裕がある為、力動長太や光井親子など当時割を食っていたキャラの活躍が多くなっていたことも彼には嬉しかった。

 もちろん「メア」に関係する新規エピソードもまた出来が良く、不器用ながらも兄貴している主人公やお姉ちゃんしているヒロインの姿も新鮮で面白かった。

 同じく子供の頃フェアリーセイバーズを視ていた同世代の友人もそう言っている。親子で仲良く一緒に視ていると聞いて、既婚者である彼のことを羨ましく思ったものだ。

 

 旧作の主要メンバーに「メア」を加えた悪の科学組織PSYエンス編のリブートは、薄めたカルピスどころか濃厚な仕上がりでシナリオを盛り上げ、無事好評に終わった。

 グッズ展開も早く、オタクは新しく出たプレミア版メアフィギュア(ランドセルver)をパソコンの前に飾り愛でていた。

 

 しかし、空気が変わったのはその後の展開である。

 物語が二期へ移行し原作以上にケセドが可哀想な目に遭っていたり、メインヒロインである光井灯が追加戦士入りしないという思いがけないサプライズがあった。

 この時アンチスレは伸びていたものだが……その時点から既に、察しの良いフェアリーセイバーズガチ勢の頭にはある疑念が浮かんでいた。

 

 

 ──もしかしてこのアニメ、リブートではなく完全版なのでは? と。

 

 

 そう思ったきっかけは、二期から登場したメアに次ぐ新ヒロイン「T.P.エイト・オリーシュア」の存在である。

 

 こちらも原作者直々に考案した新キャラクターであり、例によって素晴らしいデザインである。

 キービジュアルの時点から注目されていたが、動く姿はそれ以上に美しく、「戦うヒロインを描きたい病を患っている」と揶揄されるスタッフの皆さんのおかげで登場の度に男の子の性癖を掻き乱す獅子奮迅の活躍をしていたものだ。

 

 しかし、聖獣ケセドの因子を持つメアとの関係性を匂わせ、自らが聖獣であることを意味深な台詞で仄めかす彼女の存在は、漫画、旧アニメと視てきたフェアリーセイバーズガチ勢であるオタクの頭をより困惑させた。

 

 

 あー、コイツ天使かな? 天使だわ……と、考察の果てに彼が導き出した結論はそれだった。

 

 彼の言う天使とはもちろん、フェアリーセイバーズの二期、「異世界フェアリーワールド編」に登場するボスキャラ集団サフィラス十大天使のことだ。

 彼らは全員で10人もいる為、旧作では尺の関係上で個別のエピソードをごっそり削られたり、そもそも未登場のまま終わったキャラもいた。

 その辺りの掘り下げが少なかったのが、旧作における数少ない不満点であり、特に彼の推しであるマルクトはその筆頭だった。

 原作の漫画では彼女の健気さ、ツンデレな描写が少年時代の彼の性癖を目覚めさせたものだが、主人公には絡まないのでアニメではその辺り削られ、「ただかわいいだけの敵A」みたいな扱いに終わっていた。

 その不満は∞にて解消されるかもしれないが……それはともかく。

 

 

 「T.P.エイト・オリーシュア」という新キャラには、旧作ファンの間で様々な憶測が囁かれている。

 

 

 作中の人物を含め、もはや誰も彼女のことを人間と思っていないエイト聖獣説。

 旧作に未登場の大天使ビナー説。

 大天使のモチーフからのメタ読みで11番目のサフィラスではないかという説。

 黒い翼を出し、闇を受け入れることを諭していたことから推測した堕天使説。

 堕天使説から派生したルシファー、或いはサタン説。

 異能を盗む彼女の能力と、能力を模倣するアビスの特性の共通点から見出したアビス説。

 未来ある子供たちに優しく、人々を導こうとする姿勢から人間を高次へと進化させる無限光なのではないかと言うタイトル回収の意味も含めたアイン・ソフ・オウル説。

 同じ理由からフェアリーワールドの神アイン・ソフか、アイン・ソフの嫁、或いは端末ではないかという説。

 エイト=8というこじ付けから天使ホドの関係者ではないかという説。

 かわいい説。かわいい。

 おねショタの伝道師説──おねショタに脳を溶かされた人間が辿り着いた説であり、現在これが最有力説だ。

 そしてこれまでのフェアリーセイバーズを知るオタクが最も混乱した考察──ケセドへの追悼曲に彼のキャラソンを歌うなど、ファンサービスの類いとは思えない「前作」を想起する発言を残していたことから未来の天使、或いはパラレルワールドからの来訪者ではないかという説もある。

 

 因みに、アニオタ必修科目である「セフィロトの樹」について履修していた彼には、彼女が天使らしい一面を見せたその時から彼女の正体には大凡察しがついていた。

 

 そんな彼は自身のチャンネルで【T.P.エイト・オリーシュアの正体、ダァトなの バ レ バ レ】【ケセドは2人いる!? とんでもない新事実が発覚!】という二本立ての考察動画を上げてみたり、オタク目線から新アニメ「フェアリーセイバーズ∞」をエンジョイしていた。

 新しいものをその都度拒んでいては人生損するだけだと、三十路近くになってようやく気がついたのである。

 

 

 ──いずれにせよ、彼女の存在は旧作ファンにとっては未知の領域となる、今後の物語の根幹を為すキーパーソンになるだろう。

 

 

 故に、「∞」の物語は旧作をなぞるだけには留まらない筈だ。

 

 実の話、原作漫画フェアリーセイバーズは作者いわく、本来構想していたものではなかったらしい。

 

 それは連載当時、原作ではいよいよ最終章が始まるというところで作者が病気を患ってしまい、文字通り血反吐を吐きながら死に物狂いで強引に完結させた作品だったからだ。

 故に本当に描きたかったものが描けなかったのが心残りであると、病気が完治した後のインタビューで彼は語っていた。

 アニメの終盤が駆け足だったのは確かに尺の都合も大きいが、連載当時の状況も無関係ではなかったのだと思える。

 

 尤も、作者がそう語った割にはアンケートも落ちることなく綺麗に完結させてくれたので、読者としては不満はなかったが。

 

 そんな原作者が直々に舵を取った「フェアリーセイバーズ∞」は、彼が当時描きたかったもののリベンジ作でもあるのだろう。

 もしかしたら本作の新キャラであるメア&エイトもまた、本当は原作の連載時点から主要キャラとして出したかったのかもしれない。

 

 それらを考察してオタクは、「T.P.エイト・オリーシュア」という天使らしき少女は、原作漫画や旧作アニメに不足していた天使サイドの掘り下げを行う為のキャラなのではないかと推測していた。

 そう言う意味では彼女もまたケセドである。やはりケセドは二人いる!

 

 

 

 ……しかし、考察は所詮考察だ。

 

 フェアリーセイバーズの原作者は画力とコマ割り能力に特化したタイプの漫画家なので、実はそこまで考えていなくて、ただ単にかわいい女の子を出したかっただけだったとしても驚かない。20年来の付き合いである為、その辺り彼は理解のあるオタクだった。

 

 そんな彼でさえ問題のTVスペシャルを視た時は「原作者が当時描きたかったものって、濃厚なおねショタだったのでは……?」と思い始めたものだが、主人公たちが異世界に突入する際──旧作で死亡した明宏の死亡フラグをへし折るように割り込んできたエイトを見て、オタクは自身の考察に確信を得た。

 

 このアニメはリブートであってもリメイクではなく、寧ろ続編や完結編に近い立ち位置の作品であると。

 

 

 そしてその推測通り、放送が始まった「フェアリーセイバーズ∞」の異世界編はまるで別物となった。

 

 まずケセドが人に裏切られたことで、旧作では味方だったティファレトが殺意MAXの状態で敵に回ったのは衝撃的な展開だった。

 ケセドの扱いと同じく大胆な改変に掲示板は荒れたが、その次の回で明かされた彼女の回想シーンを視てオタクたちは納得した。

 

 旧作では女神のように優しかった彼女が心を鬼にする最後の決め手になったのは、ケセドの死に生まれて初めて涙を流すマルクトの姿を見たからだったのだ。

 

 20年来のマルクト推しであるオタクは公式との見解の一致に歓喜した。いや本人は滅茶苦茶曇らされているのだが、旧作アニメ以上に彼女の性格がしっかりと描写されていたのである。

 声を上げて泣いたマルクトに対して、泣くことができない自分に悔しがりながら抱きしめるティファレトのシーンは、旧作ファンとしては納得するしかないエモさだった。

 

 他には旧アニメでは省略されたネツァクの筆頭天使「ハニエル」の存在や、オムニバス形式で並行して展開していくメアサイドの物語で姿を現した8の大天使「ホド」の存在。

 

 そして、原作では舞台装置としての働きが多かった「アビス」が既に人間世界にも発生し始め、その対処に残された明宏や灯が奔走したりと明らかに前作より描写が盛られていた。

 

 中でも個人的な推しであるマルクト様ちゃんが早期に登場してくれたのは嬉しかった。

 自主規制過剰な現代でも怯えることなく短いスカートを穿いており、最新の作画で彩られたオリーブ色の髪もとても美しい。中の人の演技も20年で成長したことで当時とは比べ物にならないほど上手くなっている。思えばそういう部分もリブートアニメの醍醐味なのだと気づいた。これを機に、食わず嫌いをしていた他のリブート作も視ようかなと思ったほどである。

 20年前、少年だった頃の彼を「小柄少女の絶対領域フェチ」という性癖に目覚めさせてくれたそのキャラは、現代に蘇ってより一層眩しくなっていた。

 

 メアパートではお兄ちゃんたちとはぐれたメアが自立して一人で頑張る姿にほっこりしながら、炎パートでは熱き漢たちの戦いに燃えて、推しの降臨に萌える。

 

 そういうわけでオタクは、最近アニメが面白かった。

 

 

 しかし性癖と言えば、今の子供たちにとってその担当は件の怪盗オリーシュア様になるのだろうか。

 そんなことを思いながら、オタクは日本の未来を儚んだ。

 だが、致し方なし。

 

 いかに賛否両論あろうと、人は己の性癖(エッチなもの)には勝てないのである。

 

 

 そしてオタクは思う。

 包み隠さぬ性癖こそが、己の創作意欲を掻き立てる人類の叡智なのだと。

 

「よし、書くか」

 

 オタクの趣味は絵描きと二次創作小説──すなわちSS書きである。

 彼はクリエイティブなオタクだったのだ。

 得意ジャンルは性癖を前面に押し出したラブコメとハードなR-18。

 己が書いた叡智な絵を挿絵にすることで、自給自足を行うことができる稀有な才能の持ち主である。

 彼の書く主人公は自己投影したものぐさなオリ主であり、寄り添うヒロインは大体マルクト。「∞」の放送が始まる前──個人サイトで自作SSを書いていたほどの古参だった。

 R-18作品では高潔で生意気な大天使の少女が見下しきった薄汚い人間共に屈服させられる話とかが好きだった。推しを己の文で汚すことも厭わぬ畜生である。

 

 そんな彼は現在放送中の「フェアリーセイバーズ∞」の展開を着想にすることで、この日、新たなSSの執筆とセルフ挿絵の同時進行を行うことにした。

 

 その着想を得たのはしかし、マルクトが20年ぶりにアニメに登場する一つ前の回のこと──男臭い力動長太の覚醒回の放送時である。

 視聴後の彼を掻き立てたのは、性癖を狂わされた苛立ちを己の創作にぶつけるという、クリエイティブなオタク精神だった。

 

 

【R-18 びしょぬれエイトちゃんがバースト長太にバーストされる話】

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 

 全20000文字の短編小説である。最後に自作の挿絵も載せて、投稿ボタンをクリック。

 ひと心地ついた彼は、賢者のように小さく息を漏らした。まったく、やれやれだぜ。

 

 ──かの美少女怪盗は、幾度となく少年たちの性癖を壊してきた。

 

 今やその被害は画面の中だけに留まらず、友人の話によるとテレビの前のよい子の皆さんにも広がっているらしい。

 スマホから聞こえる彼の言葉は何とも言いがたい悲壮感に溢れていたものだが……オタクは寧ろ、それを進化の過程と歓迎していた。

 

 ハッピーバースデー、男の子。それは新たなる君の誕生だ。

 

 そして新しい性癖の目覚めとは、いつどんな時だって起こり得る。

 故に、大人だって新しく目覚めるものなのだ。

 クールなお姉さんのびしょ濡れ姿って、いいよね……という性癖が。

 

 ロングヘアーのロリとか好きだった彼は、その日、ショートカットのお姉さんでもイケるように進化した。

 

 世界に満ちる果てしない性癖──その全てに、還る場所があるのだろうか。

 今は信じたい……たどり着いた場所にある、最善の悦びを。

 その為に、僕らは創作を続けるのだと──。

 

 

 

 

 

 

 なお、小説は「長太はこんなことしない」、「エイトおねえちゃんをいじめるな」という感想を貰い、0評価を10個以上連続で受け無事凍結。絵だけ描いてろと言われ彼は崩れ落ちた。

 

 一方で考察動画の方は100万再生を突破し、それ以降彼はしばらく動画投稿に専念することになったという。

 

 

 ──そして友人からは程なくして「マモレナカッタ……」という電話を受け、オタクはニヒルに笑うのだった。




【こそこそオリ主話】

 オタク君のR-18小説は10と0しか評価がない模様。
 仮にエイト本人に見せたら真っ赤な顔で逃げ出すぐらい危険物らしい。
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