TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 鬼滅SSはその点オリ主を盛りやすくなっている一因ではないかとワイトは思います。


作中最強キャラが強いから安心して盛れる

 生物全て腐蝕させるとか世界樹メタじゃん、こっわ。

 

 そして美少女キャラメタでもある。これアレでしょ? 近づいたら衣服溶ける奴でしょ僕は詳しいんだ。

 嫌だぁ……近づきたくないでござる! やべー臭いするし最悪やわ。

 

 アディシェスは僕を見て何か言っている様子だが、やかましいし耳障りだし何を言っているのかさっぱりわからなかった。

 と言うことで、僕はエイトちゃんビームを一発喰らわせたら言いたいことを言わせてもらって後は炎たちにお任せすることにした。バリアーがあるので本当は近づいても大丈夫だけどね。本当だよ?

 今回に限っては、オリボスとオリ主がタイマンを張る状況にビビったわけでもない。その辺りは流石に覚悟を決めていた。女神様っぽい人はそういう展開をご所望だとわかった今、必要とあらばこれからは積極的に前に出るつもりだ。

 

 故に、今回後方支援に回った理由は二つ。一つは僕の体調面だ。ただでさえ気分が悪いのに、立ち込める強烈な異臭がせっかく上がった僕のやる気をぐえーっと萎えさせたのである。帰って風呂入って寝たい。火山とかあるし温泉とかないかなこの近くに。

 

 ──で、もう一つは戦術的に考えて、後方支援に回った方がいいと判断したからだ。これだけのタレントが揃っている以上、僕が前に出なくても前衛の火力は問題無い筈だ。

 ここは僕にしかできない役割──猛毒ガスの対処が最優先だと考えたのである。やれやれ、本当は目立ちたいんだけどな。

 そう言えばパーティ追放物ではよく頭の悪い勇者様によって後方支援職が追放被害に遭っているけど、その点炎たちは頭がいいので僕を追放することはないだろう。したら性格改悪型アンチヘイト創作である。それでなくとも炎は幼い頃RPGやっていたみたいだし、後方支援職の重要さをわかっている筈だ。

 

 

 ──そう言うわけでエイトちゃんは、対アディシェス用のデバフ要員として大活躍したのである。ぶい。

 

 

 手始めに異能「浄化」を「どこでもハープ」と調合して得意の毒攻撃を完全に無効化。

 後はこっそり「重力操作」を仕掛けてアディシェスの動きを鈍らせたり、避難民や建物を襲う流れ弾を「稲妻」で処理したりと目立たないところで働いていたのだ。褒めて。

 

 そうしていると、アディシェスがこちらを見てすっごいキレた。

 

 アレぐらいわかりやすいと、流石に何を言っているのかわかるというものだ。あれは僕のことを呼んでおり、「こっち来てワイと戦わんかいゴルァ!」と言っているのだろう。

 行かないからね? 近づきたくないし、こうして後ろで見ていると共闘する炎たちの姿が尊くてどうでも良くなってきた。炎の新必殺技マジパネェ……フェアリーバーストのエネルギーを一点に集中させて放つあの技は、前回の長太の必殺技を参考にしたのだろう。流石は戦いの天才である。

 そんなヒーローたちの姿を見ていると、僕のご機嫌メーターがぐんぐん上昇していった。エイトちゃんは現金なのである。

 

 ケセドパワーを盗んだことで僕の動体視力も上がっており、目に見える新たな発見が新鮮で楽しい。

 異能の出力も桁違いに上がっているし、やはり今の僕はスーパーオリ主だった。

 

 

「ん……?」

 

 異能「サーチ」や「千里眼」による知覚領域も数倍に跳ね上がっており、アディシェスの動きを押さえ込んでいると接近してくる二人の気配に気づくことができた。

 

 二人の女性大天使──ティファレトとマルクトである。

 

 元々は僕たちを追い掛けてきたのだろうが、二人はアディシェスの存在に気づくと即座にターゲットを変更してくれた。大天使の本分を全うする、理性的な判断に天晴れである。善きかな善きかな。

 僕も彼女らが味方してくれるのは嬉しかったので、二人にもバフを掛けて加速させてあげた。彼女たちからしてみれば申し訳程度のスピードアップだが、そのおかげでアディシェスを倒せるギリギリのところで間に合ってくれた。

 

 

 ──その果てに僕、炎、長太、ホド、ティファレト、マルクトが放った六人掛かりの攻撃により、深淵のクリファ「アディシェス」を打ち破ったのだった。

 

 

 ……いや、盛りすぎだろ女神様っぽい人。オリボスが強すぎる件。

 原作ラスボスのケテルだって、ここまで強くは……うん、もっと強かったなアイツ。公式のラスボスが強いと安心してオリキャラの強さを盛れるというのは凄くわかる。なのでそこはツッコまないであげよう。エイトちゃんはSS作者に理解のあるオリ主なのだ。

 

 もちろん、僕の目の前に出てきた以上はオリボスであるアディシェスにも、ほんの少しぐらいの理解は示しているつもりだ。これでもね。

 

 だからこれは、僕なりの慈悲である。

 消えゆく彼の姿を見下ろしながら、僕はテレパシーで呼び掛けてやった。

 

 

『またいつか、どこかで生まれよう。ここではない、遠い世界で……その時はきっと、キミの存在を祝福するから』

……ほんと……? ダァ……ト……

『ごめんね……おやすみ』

 

 

 ここではない遠い世界──要するに、女神様っぽい人がオリジナル作品を書いた時に登場できたらいいねって。その機会があるかは知らないが。

 オリジナルキャラはオリジナルであるが故に、何度でも使い回す(よみがえる)ことができるのが強みである。気に入ったオリキャラでスターシステム的なことをやっているSSだって珍しくはない。

 だからこそ、彼にだってそういう機会が巡ってくる可能性はある。僕みたいに、女神様っぽい人がどこかへ蘇らせてくれるかもしれないのだ。

 その時もこうして僕の前に出てくるのは勘弁だが、他所の世界に登場することについては何も言うまい。

 

 

ああ……よかった……

 

 

 哀れみを込めて冥府へ送ってあげると、アディシェスは寂しそうに何かを言いながら消滅していった。

 何だよそういうの、可哀想になるからやめろよ……僕はスッキリ勝ちたいのにさぁ。

 

 

 

 あっ。

 

 

 

「──ッ」

 

 

 急にガクッと、身体中の力が抜けた。

 その瞬間、僕の背中から十二枚の翼が消失する。

 いかんこれエネルギー切れや。えー……

 

 あー……あれか。もしかして、慣れない力の反動とかそういう……うん。

 

 そういうパワーアップの代償はカッコいいと思うが、今はちょっとお姉さんやめてほしいなぁーって。

 だってさ……今気を失ったら僕落ちるよ? ここ空だよ? 高度3000mぐらいの。

 オリ主の死因が空からの落下死ってそんなことある? 僕は……嫌だね。

 

 

 …………

 

 

 だ、誰か―! 誰でもいいから受け止めてー!

 

 

 ヘルプ! 炎! 長太! ホドさーん!

 

 

 もはや帽子が飛んでいくことも気にならない。

 僕は絶体絶命の危機にあわあわと虚空に手を伸ばしながら落下していく。あばばばば。

 こんな死に方嫌だよカッコ悪い。死ぬのならもうちょっとカッコ良く死にたかった……たとえば推しを守って死ぬとか、そういうのいいよね。

 

 しかし、これがオリ主の分際で女神様っぽい人のSSを否定した罰ならば……僕は甘んじて受け入れるしかないだろう。信心深さがタランカッタ。

 

 

 だけどよ……止ま(エタ)るんじゃねぇぞ……!

 

 

 ここで僕が死すとも女神様っぽい人のSSは死せず!

 僕のオリ主ムーブが女神様っぽい人に新しい着想を与えたと信じて、エイトちゃんの冒険はここで──

 

 

「エイトッ!」

 

 

 ──終わらなかった。

 

 

 よっしゃ、まだやれる!

 サンキューメアちゃん愛してるー!

 

 ふふふ、天は僕を見放さなかったようだ。

 ……いや、そうじゃないな。僕のことを見捨てずに助けてくれた、親切な人がいたということだけだ。

 世の中捨てたものではない。僕は彼女の善意に感謝することにした。

 

 

「……ありがとう、メア。生まれてきてくれて」

「──! エイト……? エイトー!」

 

 

 ……いや、本当ごめん。

 最初会った時、「僕以外のオリ主なんて要らないんだよ!」と頭の中で少しでも思ってしまった僕を許してくれ。

 君もまた本物のオリ主だ。誰が何と言おうとオリ主だ。生まれてきてくれてありがとう。

 

 僕はただ、その存在を祝福しよう。だからどうか生き続けてくれ。この美しい世界で──

 

 

 

 ……あれ、もしかして今の僕、思考がちょっとケセドに寄ってね?

 

 

 やべぇ、さっさと蘇らせてあげないと僕が慈悲深くなってしまう……!

 逆に憑依される系のオリ主はジャンル違いなのである。

 そう焦りながら僕は……しかし全身に襲い掛かる脱力感と睡魔には勝てない。人間だからね。

 故に僕は、僕を人生初のお姫様抱っこで受け止めてくれたメアちゃんの腕の中で寝落ちすることになった。

 

 

 今ならわかる……あの時のカケル君の気持ちが。くっそ恥ずかしいなこれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が落ちて月が昇ったエルの聖都「ゲドゥラー」。

 

 雲海が見渡せるその高台の上で、栄光の大天使ホドは二人の大天使と向かい合っていた。

 元は人間たちを追ってこの島に来たと言う二人、ティファレトとマルクト。二人の女性天使が彼に向ける眼差しは厳しかったが、ホドが今回の一部始終を語り終えると彼女らの顔には戸惑いが浮かんでいた。

 

『……そんなことが……ではケセドの死は、深淵のクリファが原因だったと?』

『信じられません』

 

 慈悲の大天使ケセドが悪しき人間の手に落ちたのは、その直前までアディシェスと交戦していたからなのではないかとホドは考えていた。

 おそらくその傷口から侵食され、寄生のような形で取り込まれていたのではないかと。アディシェスほど強大な存在だ。深淵の世界から抜け出していたのなら即座に察知できた筈であり、その時点ではまだ大した力を持っていなかったのではないかと推測できる。

 

『つまり深淵から出てきたアディシェスは、おに……ケセドを取り込むことで力を取り戻し、彼の中で完全に復活する時を待っていたと……?』

『だが、そこでイレギュラーが発生した。傷ついた身体で人間の世界に逃れたケセドは、PSYエンスという邪悪な組織の手に落ちた。そこで抽出された因子と共に隠れ潜んでいたアディシェスまでも、あの少女「メア」の身体に取り込まれてしまったのだ。推測だがな』

『……確かに、クリファの性質を考えるとあり得ますね。本人に直接、詳しい話を聞く必要があるわね』

『何ですかそれは? 結局悪いのは人間じゃないですか! やはり報復しなければ……っ!』

 

 深淵のクリファは闇そのものであり、本来は実体を持たず自由自在に姿を変えていく。

 アディシェスが巨大な黒鳥の姿として顕現したのも、戦う為の姿としてケセドの姿を不格好に模倣した為であり、以前は聖龍を模倣した龍の姿をしていたという伝承が残っている。

 

 すなわち、ミクロ単位の姿になって天使の体内へと隠れ潜み、そこで力を蓄えていたというのも十分に考えられる事実なのだ。

 

 ……とは言うものの、今は情報不足だ。この仮定には想像による部分が多いのもまた事実だった。

 

『悪しき人間の組織が許されぬことをしたのは事実だが、今は報復よりも先にすべきことがある。あの者、T.P.エイト・オリーシュアのようにな』

『……原初の大天使様ね。間違いないの?』

『本人は隠したがっている様子だがな。ケセドの力を盗ったとは言え、十二枚もの翼を得るのは元から天使であったと考えるのが自然であろう』

『何をデタラメな……私たちの知らない天使など、この天界には存在しません!』

『だが、「深淵の世界」ならばどうだ? あそこは我々さえも踏み入れることができぬ禁忌の地……我らが神の封印が弱まったことで、共に封じ込められていた原初の大天使が抜け出してきたのだとしたら?』

『──ッ!』

 

 大天使たちが息を呑む。

 今現在この世界を管理しているのは聖龍アイン・ソフによって生み出された十柱、サフィラス十大天使である。

 しかし今よりも遙か古──深淵のクリファが初めて姿を現した時代には、彼らよりも前にフェアリーワールドの守護を担っていた存在がいたのだ。

 

 ──それこそが、「原初の大天使」である。

 

 ホドたちは伝承でしかその存在を知らないが、聖龍を除けば彼らの長兄ケテルこそが唯一の生き証人だった。

 そしてケテルの後続として生まれてきたホドたちは、彼の言伝によりかつて深淵の世界へと消え去った大天使の名を聞かされていた。

 

 故に──T.P.エイト・オリーシュアと名乗るあの少女こそが、その大天使なのではないかと……ホドはそう言ったのだ。

 

 あまりにも荒唐無稽で、にわかには信じがたい話に二人の女性天使が訝しんだ。

 

『あり得ないでしょう。だって、あの方はとっくに……!』

『私はこれより我らが君(ケテル)に報告する。杞憂ならそれでいい。しかしこのホドの推測が正しかったとするならば……』

『……そうね……わかったわ。私はここに残って、件の者から情報を聞き出します』

『ちょっとティファ!? 信じるのですかそんな話を!』

 

 確定情報は、本人に聞いてみないことには得られない。

 しかしその彼女は今疲弊しており、救護所で休んでもらっている状態だ。こちらとしても、アディシェス討伐最大の功労者をひっぱたいて起こすような真似はしたくなかった。

 それでなくても高潔な騎士道精神を持つホドという大天使は紳士的な男なのである。

 起きた彼女から話を聞くには、同じ女性天使の方がいいという判断もあった。

 尤も、ティファレトとしては「あの時殺しに掛かった私が一体どの面下げて……」という心情であり、非常に気が進まなかったが……それでも彼女は元来、理を優先できる天使だった。

 

『真実だとしたら、見ないふりはできないわ。そうでしょうマルク?』

『……そう、だけど……!』

 

 人間は嫌いだ。

 たとえケセドを殺した元凶がアディシェスだったとしても、その認識は何も変わらない。

 しかし、深淵のクリファの一体が目覚めた今、アビスによる被害はこれからさらに広がっていくだろう。

 過去に例外なく、深淵のクリファが現れた時にはアビスたちはまるで王の帰還を喜ぶかのように活性化を高めていたのだ。

 もはや世界は人間と聖獣という二色では分けられなくなった事実に、マルクトが納得いかない顔をする。

 彼女の気持ちはわかる……ティファレトとて同じ気持ちだ。

 だが、事が重大すぎるのだ。これに関しては。

 

 

『ああ、言い忘れていたが……』

 

 そんな彼女に向かって、今この場から飛び上がりケテル住む第1の島「エヘイエー」へ向かおうとしたホドが、振り向き様に言い残していった。

 

 

『ケセドは蘇るかもしれぬぞ? あの者たちの手によって』

『──!』

 

 

 ……最後に爆弾を残していったホドは、一体どういう心情だったのだろうか。

 してやったりと思っているのなら、ティファレトは彼のことが嫌いになりそうである。絶対あの仮面引っぺがしてビンタしてやる、そう思った。

 

 

 そして一番心配な末妹はと言うと、小刻みに震えながら俯いていた。

 

 

『原初の大天使、ダァト……私たちのお母さんなら、お兄ちゃんを助けてくれる……?』

 

 

 かつて、古のアビスと共に深淵の世界へと消えた原初の大天使──「ダァト」。

 

 それは第3の島「エロヒム」に残された創世期の記録と、ケテルからの伝聞でしか知られていない神話の中の大天使の名だ。

 王様(ケテル)の言うことに間違いはない。その存在が実在したことは紛れもない事実なのだろう。

 

 しかしあの少女がそのような大天使であれば、それほどの存在が人間の側に立っているということになる。

 

 ……そう考えるとどうしても、マルクトには信じることができなかった。

 






 ……語らねばなるまい。

 本作でエイトが地の文で「ワイトはそう思います」と言っていたことについて「エイトはそう思います」の間違いではないかという誤字報告を何度か受けました。ご指摘ありがとうございます。誤字じゃないけどなんだか私にも誤字のような気がしてきました。紛らわしい名前だったわこいつ……

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