TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 TSオリ主ならば良し!(錯乱)


カップリングの間に挟まるオリ主

 ──僕、頑張った。

 

 超頑張りましたよ僕。

 エイトちゃん式異能クッキングにより、僕の中にいるケセドと意思疎通を行うことができる自立行動可能な器を作ったのだ。我ながらクリエイティブなオリ主である。

 使用した材料はこれ。肉体を構成する「闇の呪縛」に、彼の思考を飛ばす「念動力」、そこへ五感として応用する「千里眼」や「サーチ」を筆頭に、今まで僕が盗んできた異能の数々を詰め込んで「調合」し、奇跡的なバランスで完成させたものだ。

 「闇の不死鳥(ダーク・フェニックス)」のハイエンドモデルと言ってもいいそれは、もはや僕の子供と言っても過言ではない!

 

 ……自分より数千歳年上の子供とかヤバいな。やっぱ今の無し! 認知はしません。

 

 そうして誕生したNEWケセド君であるが、製造工程ではもちろん不安があった。

 本来光属性である彼を、「闇の不死鳥」という闇属性の器に入れてしまったことだ。

 相反する属性の相性は悪く、彼が闇を嫌う性格だったらえげつない尊厳破壊になっていたところである。

 できればもう少し色々と検証してからやりたかったのだが……お兄ちゃんが傍にいるのに会えないマルクトがあまりにも可哀想だったので、急ピッチで仕上げることにしたわけだ。

 何はともあれ、無事に終わって良かった。

 復活したケセド君は僕の知っている通りの性格であり、闇の器に入れたことでバグっている様子も無い。こういうことなら、ティファレトがどこかへ行く前にやっておけば良かったな。つくづく丸一日気絶していたのが悔やまれる。

 

 しかしこれで、晴れて「ケセド不在」のタグは消滅したわけだ。ハハハ、僕の勝ちだな女神様っぽい人! マルクトの心はケセドの重力に引かれて落ちる! 君の頑張りすぎだ!

 

 

「グスン……良がっだぁ……」

「ああ、良かったな……!」

 

 復活したケセドはマルクトと何か二人きりで話したいことがあるようなので、クールなエイトちゃんは気を利かせて遠目から兄妹の再会を喜ぶことにした。

 

 そこでは感受性の高いメアちゃんが貰い泣きしており、長太がそんな彼女の肩をポンポンと叩きながら目を擦っていた。お人好しな連中である。そんな彼らの反応を見ると、僕もやってみせた甲斐があったというものだ。

 

 ただ、流石の僕も疲れたのでこういうのは今後勘弁願いたい。

 

 

「……また、あんたに助けられたな。ありがとう」

 

 そんな僕のことを労いながら話しかけてきたのは、心優しき主人公である暁月炎だった。

 口数は少ないが、やはり紳士である。そりゃあ年上女性からもモテますわ。

 

「なに、当然のことをしたまでさ。ボクには彼を助けられる力があった……それだけだよ。流石に今回は疲れたけどね」

「できるからやる、か……だが、何でもかんでも抱え込む必要は無いだろう」

「ん?」

 

 お礼と共に掛けてきた彼の発言に、僕は首を傾げる。

 言うほど、何でもかんでも抱え込んでいるかな僕? 自分で言うのも何だけど、この世界に来てからやりたい放題自由にやってきたつもりだ。そんな、誰かの重荷を背負っているなどとんでもない。僕はライトなオリ主なのである。

 

 ……ああ、もしかして炎は、僕がケセド復活チャレンジを内密に進めたことを言っているのだろうか?

 

 それは確かに悪かったとは思っている。責任感が特に強い性格である彼は僕に気苦労を掛けたと思い込み、申し訳なく感じているようだ。

 アニメでも知っていたが、難儀な性格である。まあ、そういうところが好きなんだけどね。ファンとして。

 

「勘違いしているようだけど……」

 

 そんな彼をフォローする為に、僕の方こそ同じ言葉を返そう。

 

「ボクは、仲良し兄妹に悲しいすれ違いが起きてほしくなかっただけさ。だからこれは、ボクの自己満足……キミの方こそ、何でもかんでも背負おうとするんじゃないよ。てい」

「っ、むう……」

 

 人のフリ見て我がフリ直せってね。

 責任感が強すぎるのは彼の方だと思っていた僕は、その額に軽くデコピンをお見舞いしてやり、灯ちゃんの気苦労をわからせてやった。

 そんな彼の耳元で、囁くように言い放つ。

 

 

「ボクはボクの使命を果たすだけさ。キミたちはキミたちの使命を果たすことを考えればいい」

「……そうか」

 

 

 女神様っぽい人の為に完璧なチートオリ主を目指している僕だが、前提として僕自身が楽しいからというのが先に来る。

 無償の善意とか、そんな高尚な気はさらさら無いのだ僕は。エイトちゃんは理想を追い求めるロマンチストだけど、現実的な判断も理解できるリアリストでもあるのだ。渋いぜ僕。

 その辺りのスタンスをはっきり明言しておかないと、ちょっと変な行動をしただけで「コイツぶれすぎじゃね?」と辛辣なツッコミを受けてしまうからオリ主は大変である。

 

「言ったろう? ボクはそんなに都合の良い女じゃないって」

 

 そう、T.P.エイト・オリーシュアは過剰な馴れ合いを好まないクールなオリ主なのである。

 だからこそ、メインキャラたちには間違っても僕のことを聖人君子か何かだと勘違いされないようにしていきたい。

 悲しげな何かを背負っている大物ムーブはクール系オリ主としてカッコいい描写だが、周りから無償で助けてくれる都合の良い聖人だと思われるのは、後々苦労することになるのが目に見えているのだ。だからこそ僕は彼らの行く末を特等席で眺めつつも、一定の距離は保っておきたかった。いや、近づくのは嬉しいんだけどね? 彼らのこと好きだから。

 

 

「悪ぶっているだけの、かわいい姉ちゃんか……アイツが正しかったのかもな……」

 

 ん? 何か言ったかねキミ。

 僕は難聴系オリ主ではない。その時は単純に彼の呟いた声が誰にも聞かせる気の無い大きさだったので、上手く聴き取れなかったのである。

 とりあえず「かわいい」という言葉までは聴き取れたので、メアちゃんか何かのことを呟いたのだろう。彼の視線はやはり、長太に宥められているメアの方へと向いていた。

 僕はかわいいではなくカッコいい美少女なので、kawaiiの対象にはなり得ないのだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『皆さんすみません……僕の為に、お騒がせしました。僕がサフィラス十大天使4の天使、「慈悲」のケセドです』

「ああ、よろしく頼む」

 

 マルクトとの会話が落ち着いたのか、文字通り「闇の不死鳥(ダーク・フェニックス)」と化したケセド君が改めて僕たちの前に舞い戻ってきた。

 今の彼の身体は全身が漆黒の闇でできているが、特別仕様でデフォルメしておいたので目とくちばしもあり、両翼も本物の鳥のように折り畳むことができた。

 その姿は全長約4mぐらいある巨大なカラスのようだ。僕が力を注ぎ込めば今の姿よりも大きくすることも、小さくすることもできる。いやあ、我ながら傑作である。フィギュア作りが趣味だった前世のノウハウがこんなところで生かされるとはね。

 

 そうだな、せっかくだし彼の器に名前を付けてあげよう。丁度、良いのを考えてきたのだ。

 

 

「その器──慈悲の不死鳥(マーシフル・フェニックス)の調子はどうかな?」

『はい! 素晴らしいですね、この器。何と言うか、エイト様と繋がっているみたいでとても温かいです!』

「そっか。試験運用も不十分だったから心配していたけど、それは良かった」

 

 マーシフル──英語で「慈悲深い」という意味である。

 ふふん、僕にもカッコいい名前を考えられるセンスはあるのだよ。だけど、英語よりもドイツ語の方が何となく仰々しい響きで厨二心を刺激するよね。アインだとかツヴァイとか、ただの数字が超カッコいいのはずるいと思うよ僕は。

 そんなことを思いながら、僕は闇の不死鳥(ダーク・フェニックス)のハイエンドモデル改め「慈悲の不死鳥(マーシフル・フェニックス)」の感触を確かめるように、こちらの意図を察して頭を下ろしてくれたケセド君の頬に右手を伸ばすとポフポフと撫でてやった。

 

 ……うむ。身体の質感はカバラちゃんの毛並みを参考にしたので、闇でできているとは思えないモフモフ感である。

 

 今もマルクトが彼の身体に抱きついて離れないように、何かこう、カバラちゃんとはまた違う癖になる感触がNEWケセド君にあった。

 そんな彼に対抗意識を抱いたのか、カバラちゃんが僕の脛にスリスリして甘えてきた。卑しい奴よ。僕は最近甘えん坊になってきた気がする小動物を左腕に抱き抱えると、その頭に頬ずりしながら二つのモフモフを堪能することにした。

 

 いやあ、頑張った自分へのご褒美である。理想のモフモフパラダイスがここにあった。

 

 そんなケセドは僕とマルクトにされるがままの状態でありながらも、大きな翼でマルクトの頭を慎重そうに撫でながら感謝を告げてきた。

 

『ありがとうございます、エイト様。僕のわがままを聞いていただいて……』

「大切な妹と話したいと願うことが、わがままなものかな。キミの選択は正しいよ、ケセド」

『……そう言っていただいて、救われる思いです』

 

 随分とかしこまった態度である。ショタボイスの癖に。

 いや、実際彼の意思をこうして表に出すことができたのは僕のおかげであり、彼から感謝される謂れは物凄くあった。それはそれで素直に嬉しかったので、僕は内心鼻高々だった。やっぱ褒められるのは気持ちいいぜ。

 

「今はまだその時ではないなんて言い出した時、どうしようかと思ったよ」

『……それは、すみません。このような方法で再びマルクトと話せるなんて、思いも寄らなかったので』

 

 そもそもケセドが復活したがらなかったのは、僕の中から大天使の力が無くなることを良しとしなかったからである。

 その点、この「慈悲の不死鳥(マーシフル・フェニックス)」であればそんな彼の要求をも満たしている。最初に気づいたのは、やはりメアだった。

 

「エイトの中から……ケセドの力を感じる? ケセドはまだ、エイトの中?」

「そう言うことになるね、メア」

 

 ホドとの鍛錬で天使の気配がわかるようになってきたというメアは、目の前にケセドがいるのに今も彼の力が僕に宿っていることを不思議がっていた。

 もちろん、これには理由がある。

 

『そう、この身体は器に過ぎないんだ。こうして話すのは初めてだね、メア』

「……っ、──!」

 

 

 言ってみれば今のケセドは通信デバイスのようなものであり、彼の本体はあくまでも僕の中にあった。

 

 それ故に、たとえあの時マルクトが勢い余って彼をブッ刺したとしても、僕の中にいるケセドがどうこうなるわけではなかった。

 もちろん、闇の不死鳥にケセド君を突っ込む工程自体がくっそ疲れるので何度もやりたくはない。

 体力は疲弊しており、この島を出発するのはもう一時間以上待ってもらいたい心情だった。

 尤も、休憩は短い時間では済まなそうだ。何せ島の主である大天使様が擬似的とは言え蘇ったのである。

 マルクトとセイバーズの決闘を眺めていた島民たちは彼の存在に気づき、あちこちからケセド様を呼ぶ声が上がっている。あっ、筆頭天使の人が今にも駆け出しそうだけど、マルクト様に気を遣って自制したね。できた天使さんである。地味だけどいい人だね彼。

 

 

「ケセド……ケセド……!」

『おふっ……!? ちょっ、ちょっと皆さん離れてもらっていいですか……? 五感もきっちり再現していただいているので、とても苦しいと言いますか……いえ、迷惑というわけではないのですがっ』

『うるさい馬鹿っ! もっと困れ馬鹿ケセド! 唐変木! 負け犬! お風呂覗き魔っ!』

『いや、あの時は眠っていたから外の様子は聞こえていないし見ていないよ? 痛い痛いそんなに絞めないでマルクト!? メアも一旦離れよ? ね?』

「……やだ」

 

 

 ……ふむ。

 

 

 ずっと会いたかった、話したかった聖獣との再会に喜び、遠慮無く抱きついてスキンシップを取る美少女が二人──来るぞ。キテるわ。

 

 事実を陳列すると「もう散体しろ」と嫉妬したくなるような光景だが、僕からしてみれば彼に対するヘイト感情は無かった。

 

 ──そう、(もふもふ)ならね。

 

 両手に花を携えた優男という、見る者が見ればきつい光景であろう。

 しかし、それが思考性から人間と異なる人外ならば許されるのだ。人化しなければね。

 ケセド君だってもう天使形態にはなれないし、これぐらい寛大な心で許してあげようじゃないか。彼だって、肉体を失って辛かったのである。僕だったら絶望だ。

 

 そう言うわけで僕は、俗に言う踏み台転生者的な嫉妬をケセド君相手に抱くことは無かった。

 

 

 寧ろ、僕はその逆で──

 

 

「わっ」

『きゃっ』

『!?』

 

 

 左手にメアちゃん、右手にマルクト様ちゃん、頭の上にカバラちゃん、そして正面にマーシフルケセド君。

 この完璧なフォーメーションに対して僕は内なるパトスを抑えることができず、まるごとみんなを抱きしめるように密着していった。

 

 これぞ完成されたTSオリ主にしか許されない禁忌の奥義──「間に挟まりてぇ」である。

 

 ……いや、カップリングの間に挟まるのはTSオリ主であろうと本来許されざる暴挙なのだが、仕方ないじゃないか!

 

 僕はこの尊い光景の為に頑張ったのである。

 

 もはや包み隠さなくなったマルクトの「お兄ちゃん大好きオーラ」に当てられて、僕自身涙腺に来るものがあったのも事実だ。

 こんなん泣くわ……フェアリーセイバーズファンとして!

 

「エイト……」

「姉ちゃん……」

 

 そんな今の僕の姿を見て、男二人がハッと息を呑む様子が後ろから伝わってくる。

 くっ……マズい。このままでは僕のキャラクターが……! クールでミステリアスなエイトちゃんのキャラクターが崩れてしまう!

 ええい、涙よ鎮まれっ! いつものように余裕を見せつけ、ニヒルに微笑まなければ! やるんだよ僕っ! 完璧なチートオリ主とは、いつ如何なる時も原作キャラの前では涙を流さないというのにっ!

 

 

 ……あっ、でも悲しそうな儚い眼差しをするのはアリかも。

 

 

 その場合はオリ主の目を見たヒロインが「なんて悲しそうな目なの……」とオリ主のことを気に掛け、恋愛フラグが立つからだ。

 しかしやり過ぎると男版アテクシ系みたいにしつこく思われるから気をつけろ、女神様っぽい人!

 

 

 

 うーん……ああ、駄目だ。やはりいつものSS高説で気を紛らわせようとしても、こればかりは抑えきれない……!

 

 やれやれ、僕は涙した。

 

 

「ごめん……ごめんね……っ、ケセド、マルクト、メア……!」

 

 

 すまぬ……すまぬ、女神様っぽい人!

 多分貴方の推しカプはケセド×マルクトだったろうに、オリ主が間に挟まってごめんなさい!

 メアちゃんと一緒に混ざってごめんなさい! 何ならメアちゃんも巻き込んでごめんなさい!

 ケセドとマルクトも、邪魔してマジでごめん。

 

 ああ、尊いよぉ……

 

 

『……ダァト様……』

『お母さん……なの……?』

 

 

 自らのオリ主ムーブの不完全さと、フェアリーセイバーズファンとして最高に尊いものを見ることができたこの熱情──まさしく「愛」だ。

 

 女神様っぽい人よ……これが愛だ。手に入れたことの喜びだ……失うことへの恐怖だ!

 原作キャラを救済したことを、感謝したいか……? それが尊さを求める者の祝福だ……女神様っぽい人……!

 

 その他諸々、様々な感情が綯い交ぜになった僕は、情緒不安定な感情から溢れ出る涙を抑えられなかった。

 空想に塗れ自由を求めすぎた今の僕の脳内は、ケセドやマルクトから発せられるテレパシーの内容すら何を言っているのかわからないほどまでに、ぐちゃぐちゃだった。

 

 

 

 ──そうだ、僕は……この為に生まれてきたのだ──。

 

 

 

 頭の中のちびキャラエイトちゃんが真っ白い背景に一人佇みながら、僕は静かに真理を悟った。

 あらゆる理不尽を乗り越えた果てに尊い光景を生み出し、自らもその中へと入り込む──それもまた、僕が求めていた「完璧なチートオリ主」の在るべき姿なのだと。

 

 

 

 

 TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです──完。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──嘘です。

 

 ちょっと達成感があったので、言ってみたかっただけだ。炎たちの物語は何一つ終わっていない以上、僕がやるべきことはもちろんたくさんある。

 

 寧ろ、ここからが地獄だぞ! ……いや、天国か。フェアリーセイバーズファン的に考えて。

 自分の性癖をまた一つ知ったことで、僕は再びプランの修正を行うことにした。

 

 

 そうだな……どうせなら目指してみるか──ラスボス(ケテル)救済!

 

 

 そもそも「完璧なチートオリ主」という大目標自体、アドリブが利くようにフワッと定めたものだったので、物語的に折り返しを過ぎた今、ここらで具体的な方針が一つ欲しいと思っていた。

 今は目下の問題である風岡翼との合流が最優先だが、最終的には原作通りラスボスをやっつけて終わりというのは、僕の流儀に反するのではないかと思ったのである。

 

 ──人生とは、自分自身の物語である。誰かに迷惑を掛けない限り、僕たちは自由な発想でオリ主していいのだ。

 

 もちろん、ライブ感を重視してキャラが勝手に動き回る物語だっていい。それもまたSSの面白さだ。

 ただし、終着点ぐらいはちゃんと決めよう。エイトお姉さんとの約束だぞ!

 

 




 次回でこの島のお話はおしまいです
 最近イケるんじゃね……?と気にしながらひっそりと目指していた目標の総合ポイント20,000ptが見えてきたのでガンバリマス。これも皆さんのおかげでございます
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