TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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最強の敵、キャラ被り

 丸一日掛けた飛行で、遂にやって来ましたよエロヒム。

 いやあ、流石に島の近くまで来るとコクマーの部下っぽい聖獣たちの妨害とか色々あったけど、みんなもこの世界に来て随分と強くなった。

 何せ全員単独で飛べるのがいいよね。僕はサポートに徹するだけで十分だったし、炎と長太が待ち構えていた聖獣たちを全て返り討ちにしてくれた。

 もはやエレメント・ワイバーン程度では相手にならないという感じだ。物語も後半になって、天使以外なら楽勝と言った感じである。

 

 ──そして空を進み、エロヒムの陸地が見えてきたところで、僕たちの前に一人の天使が現れた。

 

 

『セイバーズの皆さんですね? お待ちしていました』

 

 

 何も無い上空に、一瞬にして姿を現したのである。

 これは……テレポーテーションだな。聖術でもできるのか……やっぱ本家本元はすげえや。

 しかし、何の前置きも無く唐突に現れるのは些か心臓に悪いよね。もう少しさりげなく登場してほしいものである。

 えっ、お前が言うなって? 僕はいいのだ。オリ主だから。

 

 

『私の名はザフキエル。ビナー様にお仕えする、この島の筆頭天使です』

「暁月炎だ。それと、力動長太、メア、T.P.エイト・オリーシュア」

「よろしくね」

 

 テレポーテーションで僕たちの前に現れた天使の青年はご丁寧に自らの名を名乗ると、炎が僕たちを代表して挨拶を返す。

 それにしても、筆頭天使か。

 羽の枚数は四枚。ネツァクさんのところのハニエルさんと、ケセド君のところの筆頭天使さんと同じ枚数である。

 いきなり島のナンバーツーがお出迎えしてくれるとは、ビナーという大天使はそれほど僕たちのことを買っているのだろうか。これは期待できそうである。

 

「強ぇな、アイツ……」

『ザフキエルはよくビナーの代わりに十大天使の会議に出席してくれたり、この島の政務を執り仕切ったりしている筆頭天使なんだ。戦闘能力もかなりのものだよ』

「ほー……」

 

 ……なんか、今のを聞いて、ビナー様への不安がちょっと高まったのだが大丈夫だろうか。

 まあ、一番偉い人が必ずしも島の全部を管理しているわけじゃないのは当たり前の話か。マルクト様ちゃんが政治している姿とか、想像つかないもんね。いや実際どうかはわからないが。

 天皇陛下と総理大臣が別々に存在しているように、ビナー様は適材適所の人事配置を是とする合理性の高い性格なのだろう。

 

 うん……ザフキエルというこの天使さん、目の下にすっごいクマができているけど大丈夫かなこの人。他の天使の例に漏れず彼も人間基準ではエラい美形さんだが、その顔色からは疲労の色が隠しきれていなかった。

 

 彼を見ているだけで、ビナー様の知的美人な想像図が一瞬にして中間管理職の扱いが悪いブラック社長みたいな印象になったんだけど。

 これは注意しておいた方がいいかもしれない。

 

『慈悲の大天使様にお褒めに預かり光栄です。ビナー様からお聞きした通り、再誕されたのですね。ケセド様』

『この方たちのおかげでね。彼らと一緒に入島したいのだけれど、ビナーのところまで案内してもらえるかな?』

『もちろんです。私はその為にお迎えに上がったのですから。ビナー様は聖都「ベート」でお待ちしております』

「おお、助かるぜ!」

 

 ほうほう、話が早くて助かるね。ケセド君の自動運転と言い、今回は随分楽をさせてもらったエイトちゃんである。

 しかし筆頭天使さんにももうケセドの復活が伝わっていたとは、ビナー様は随分と情報が早い……流石は「理解」の天使である。

 一体、どんな情報網を持っているのだろうか……それとも、僕みたいに千里眼的な能力でエルの情報を遠くから監視していたとか? もしそうだとしたら油断ならない大天使様である。この世界に来てから僕はずっと気を付けていたけど、誰も見ていない時だろうとキャラを崩壊させるわけにはいかないねやはり。

 サフィラス十大天使トップクラスの実力者なのだから、心を読むぐらいのこともしてくるかもしれない。今のうちに「念動力」と「バリアー」その他色々な異能を合わせてマインドシールド的な物を作っておこう。完璧なオリ主ムーブにおいて、読心対策は基本中の基本なのである。

 

 ともあれ最高権力者が僕たちのことを把握済みなのは有り難い。

 いや、この場合はケセドが味方についているのも大きいのだろう。それだけで聖獣目線で見る僕たちの信頼度は段違いな筈である。

 現地住民と無益な衝突を避けられるのは、僕たち人間にとって都合のいい展開であった。

 

 トントン拍子に話を進めると、ビナー様の筆頭天使ザフキエルさんの先導により「慈悲の不死鳥(マーシフル・フェニックス)」に乗った僕たちはエロヒムの聖都「ベート」へと案内された。

 

 さて、どんな島だろうね?

 ビナーが未登場だったように、彼女の島であるエロヒムももちろん原作未登場である。

 基本的にフェアリーワールドの景観はファンタジー世界でお馴染みのイメージである中世ヨーロッパ風な感じだけど、ケセドの島エルの標高が高かったように、各島ごとにそれぞれ特徴が異なるのは地球と同じである。

 メタ的にも、全部似たような島だと冒険感が薄くなるしね。背景にもある程度変化が必要なのである。

 

 しかし空からゆっくりと降下し、地上に向かって近づいていくこの感覚は何度体験しても心が躍る。

 離陸と着陸、僕は両方とも好きなのである。うむ、空を飛ぶのはいいもんだ。あの夜、ロス少年とはそんな会話で盛り上がったものだ。

 

 新しい島の風景に興味があった僕は、カバラちゃんを両手に抱きかかえながらケセドの背中から下の景色を見下ろした。

 そして地上の町に建つ特徴的な建造物が目に入った瞬間、一同は目を丸くした。

 

「なあ、炎」

「ああ」

「……?」

 

 三人の顔には一様に困惑の色が浮かんでいる。

 かく言う僕も驚いている。彼らのように困惑はしなかったが、「そうきたか!」と感心したのである。

 僕は目に映った町の景色から、この島の管理者であるビナー様の趣味趣向を把握した。同時に、彼女が他の大天使たちから嫌われている理由も察する。

 これは、人間嫌いな彼らが気に入らないわけである。

 

 

「あれって、東京タワーだよな?」

 

 

 エロヒムの聖都「ベート」。

 そこには、僕たち地球人にとって見覚えのある観光名所があちこちに建ち並んでいたのだ。

 もちろん、どれも偽物(パチモン)である。

 

「東京タワーだけじゃない。エッフェル塔に自由の女神像、五重の塔やスフィンクス像もあるね。あっ、視線の先にはちゃんとKFCがある」

「なんだ……? この手当たり次第感は……」

「でも、すごくよくできてる」

「ああ、よくできたパチモンだな」

「見た目だけじゃないよ。中身もよく作られている」

 

 「サーチ」で分析したところ、外見以外のクオリティーも非常に高い。

 盗作でなければエロヒムの模倣技術を手放しで褒め称えていたところである。

 しかし一つ一つは見覚えのある建造物が一つの都市の中にごった煮になっている光景は、何と言うか子供のおもちゃ箱をひっくり返したみたいなカオスな街並みだった。

 いや、精巧なことは精巧なのだが……模倣元の国々の文化をよく理解していない者が、上辺だけ理解したつもりになって一カ所に集めてしまった残念感である。

 

 SSで例えるならそれは、にわかレベルの原作知識しか持っていない作者が多重クロス物の執筆に挑戦してしまったような、そんな状態である。

 

 

 このカオスな町づくりを推し進めたのが島の管理者だとするならば、そこから推察できる彼女の人物像は一つ──第3のサフィラス十大天使ビナーは、グローバルな地球マニアのようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聖都「ベート」の町の造りは、地球の先進国を参考にしているのが見て取れる近代的なものだった。

 

 和洋中様々な様式の住居が入り乱れている姿は、日本のそれに近い町並みである。

 驚くほど精巧なパチモン建築物には強烈な印象を受けたものだが、それらの数自体はそこまで多くはなく、アドナイやエルで見たようなフェアリーワールドらしい様式の建物も同じぐらい多かった。

 割合的には半々ぐらいか。地球の雰囲気と融合しているのがわかる街並みである。

 

「まるで日本だな」

「ああ、地方にはあるよなああいうの。チャチなパチモンが建ってる町」

 

 雰囲気は現代日本の地方のようだが、ところどころに聳え立つ大樹や街を行き交う聖獣たちの姿が、ここが日本ではないことを知らしめてくれる。

 そんな町の皆さんから見上げられる視線はザフキエルさんに連れられる僕たちに向かって物珍しそうに注がれていたが、いずれも敵意は感じない。友好的かどうかまではわからないが、ツァバオトの民ほど敵対的ではなさそうである。

 

 

『あちらがビナー様の宮殿です』

 

 

 そして門番たちからザフキエルさんの顔パスにより通された場所には、この島の管理者様の拠点が広がっていた。

 エジプトの宮殿を彷彿させる宮殿である。

 ネツァクの城と比べればやや小さいが、日本人からしてみると異世界感を感じる造形で何よりだ。ビナー様の拠点と紹介されたものがホワイトハウスや江戸城的な建物だったらどうしようかと思っていたところだ。

 

『ありますよ』

 

 あるの!? マジかよビナー様……異国の文化を盗作しなくては権力を示せない、情け無い奴なのだな!

 

 ……あっ、他人の異能盗みまくっている僕が言うのはブーメランだったね。

 しかし、アレだな。こうも地球の文化に精通していると、ビナー様には人間世界を観察する方法、もしくは次元のゲートを開く手段を持っているのかもしれない。是非とも確かめておきたいところだ。

 

「後者なら、帰りの便は確保できるかもしれないね」

「俺たちに協力してくれるなら、な……」

 

 僕が今後の展望を楽天的に呟くと、炎が含みのある言い方で返す。

 まあ、問題はそこである。僕たちの出迎えにわざわざお疲れ中の筆頭天使さんを遣わしたことと、地球の文化をリスペクトしているこの街並みを見ればある程度期待できるとは思うが、完全に警戒を解くのは迂闊だろう。正直これまでの道中で胡散臭さが上がったし。

 

 ほら、カバラちゃんも立派な建物に萎縮しているのか僕の肩でソワソワと尻尾を揺らめかしている。大丈夫だよー僕がついてるからねー。

 

「キュー!」

 

 よろしい、後でチュールあげるから今は辛抱だよ。何なら前みたいにシルクハットの中に入ってもいいからね。

 

 低空飛行から着陸した僕たちは宮殿の門を潜ると、広々とした屋内に広がるレッドカーペットの上を真っ直ぐに通っていく。因みにケセド君には小鳥ぐらいのサイズまで縮んでもらっている。身体は闇でできているので、僕のさじ加減次第で縮小も自由自在なのである。

 屋内で整列していた騎士さんがたの姿はオーガ族が主力のネツァクのところとは違い、見目麗しいエルフ族の聖獣が多かった。

 ふむ、ビナー様は面食いか……ますます残念な感じがしてきたわ。翼を匿ってくれたのって、もしかしてそういう……残念な眼鏡美人も、僕はアリだと思いますがね。

 

 

『緊張なさらずとも大丈夫ですよ、メア様。ビナー様は気さくなお方です。いつも通り楽にしていただければ』

「う、うん……」

 

 玉座の間が近づいてきたところで、メアちゃんの緊張を察したザフキエルさんが歩きながら呼びかける。

 一度も彼女の方を見ていないのに、大した洞察力である。

 そもそもメアちゃんは表情の変化が乏しいと言うのに、初対面でよく気づいたものだ。

 流石はブラック上司に鍛えられた中間管理職か。酷使枠のブラック労働者と覚醒したいじめられっ子がチート級に強いのはSS界隈では常識である。

 

 

『こちらです』

 

 ザフキエルさんに連れられた先で行き着いたのは、小さくなった名探偵のアイキャッチみたいな大きな扉だった。

 彼がその前に立つと扉は自動的に開き、僕たちの前に広々とした玉座の間が広がった。

 

 しかしその場所に待機していた聖獣さんは、一人しかいなかった。

 

 それはレッドカーペットの先にある玉座の傍らで佇むくたびれた青年──ザフキエルさんの姿だった。

 

 

「えっ……?」

 

 まず最初に、メアが困惑の声を漏らした。

 

 前を見る。ザフキエルさんがいる。

 

 向こうを見る。ザフキエルさんがいる。

 

 ──ザフキエルさんが二人……来るぞエイトちゃん!

 

 僕がそんな電波を受信していると、長太が僕たちを案内してくれた方のザフキエルさんに向かって問い掛けた。

 

「あそこにいるの、あんたの双子か?」

 

 双子の天使とか、普通にありそうだよね。アニメの話だけど、ハルートとマルートとか聞いたことあるし。

 ザフキエルさんにもそういう感じの兄弟がいたのかと思ったが……長太の質問に目の前の彼はふっと意味深な笑みを浮かべると、向こうのザフキエルさんは露骨に嫌そうな顔をしていた。

 

 おや? これは……

 

 

『姿を借りただけさ。私はシャイなのだよ』

「!?」

 

 

 ふと脳内に、囁くような女性の声が聴こえた。

 

 発せられたのは目の前のザフキエルからだ。彼はそう言うと、堅物そうな表情とは似つかないイタズラっぽい笑みを浮かべてレッドカーペットを歩き進み──我が物顔で玉座へと腰を下ろした。

 

 そして右手でパチンッと指を鳴らした瞬間、彼の姿がくたびれた青年のそれから華々しくも凛々しい漆黒のドレスを纏った女性の姿へと変化していく。

 

 そうして姿を変えた黒髪の女性は、玉座の上で脚を組みながら言った。

 

 

『本当の姿で会うのは初めてだね。私がビナー、「理解」の名を冠する3番目のサフィラスだ』

 

 

 頭のティアラから下ろされた漆黒のベールに覆い隠された顔を向けながら、彼女は「ビナー」と名乗った。

 お隣のザフキエルさん(真)はそんな彼女に対して何か言いたげなジト目を向けているが、彼女は素知らぬ顔で肩を竦めている。

 

 これまで案内してくれた青年が彼女の擬態だったことに気づき、息を呑む一同の様子が伝わってきた。

 同じように僕も内心では驚いていたのだが、マウントを取られたくなかったので訳知り顔に苦笑を浮かべておく。

 そうしていると僕とベールの中の彼女の視線が、一瞬だけ交錯した気がした。

 

 ……なるほど、そういうキャラで来たか。

 

 僕は彼女の姿を油断無く見据えながら、原作未登場の準オリキャラ「ビナー」の姿をねっとりと観察した。

 

 漆黒のウエディングドレスのような衣装──ゴスロリ風な衣装を身に纏い、スカートから覗くストッキングの脚線美は中々に艶めかしい。

 お胸の方は──マルクト様以上灯ちゃん未満ってところかな。いやこの範囲だと広すぎるけど、とりあえず貧の者でないことだけは間違いない。

 背丈は大体160cm後半。天使の中では小柄だが、日本人女性を基準にすれば長身の部類である。目元はベールに隠されているが、セミロングヘアーの髪は黒髪で、肌は色白だった。

 大人のお姉さんというには少し若そうだけど、人間で言えば大体20歳ぐらいの外見かな。素顔は見えないが、そんな気がした。因みに今こうして発動している僕の「サーチ」は彼女の不思議な力に打ち消されている。やりおる……彼女も僕と同じで警戒心が強いようだ。

 そして彼女にはもう一つ、他のサフィラス十大天使とは決定的に違う特徴があった。

 

「羽が……」

 

 メアちゃんがハッと気づき、思わず口漏らす。

 そう、彼女の羽である。

 その背中には彼女が大天使であることを示す八枚の羽が広がっていたが、左側の四枚だけは先端から半分までの部位がごっそり欠けていた。

 まさしく片翼の天使と言ったところか。羽の色は白いけど、黒いゴスロリ風衣装と相まってその姿はダークな堕天使感に溢れていた。

 

 正直くっそカッコいい。何アレすげえ!

 

 僕の好みにどストライクである。厨二感あるお姉さんとか最強かよ!

 いいなー、僕の羽もあんな感じにすれば良かったかも。まあ、僕の場合はそこまで思い通りに羽の形を変えられるわけではないので難しいか。厨二度なら左右で色が分かれている今の僕も負けてないぜ。

 しかし、片翼の大天使様とは女神様っぽい人の理解度には参るね。うん、フェアリーセイバーズはこういうキャラ出すわ。何なら「これが公式のビナーです」と言われてもすんなり納得できる。つくづく原作に出てこなかったのが惜しいと思った。

 

「キュッ!」

「あっ」

 

 お、どうしたカバラちゃん? 急に駆け出して。

 僕の肩から飛び出したカバラちゃんが、一直線に玉座へと向かっていく。僕以外には警戒心が高く、お利口な彼女にしては珍しい粗相である。驚きのあまり、反応できなかったぐらいだ。

 しかしビナー様はそんな小動物を微笑みながら見つめており、側近であるザフキエルさんも制止することはしなかった。何だい君ら寛大だね。カバラちゃんの可愛らしさに二人してほっこりしたのだろうか?

 

 そんなことを考えながら状況を見つめていると、カバラちゃんはビナー様の前に鎮座し、何かを待ち構えるように首を垂れた。

 すると、ビナー様はその右手を彼女に差し向け──

 

「……?」

 

 ぽわーっと、カバラちゃんの額の宝石から光の玉が放たれると、ふわふわと宙を漂っていく。

 そしてその光の玉は、ひとりでに動きながらビナー様の手のひらに吸い込まれていった。

 

 僕たち一同は何のこっちゃと唖然とする。

 するとビナー様はふむふむと一人頷いた後、ハッと驚いたように息を呑んで僕の顔を見つめてきた。

 な、何だよ?

 

 

『なるほど……やはり私が最初に感じた通り、貴方の正体は……』

 

 

 僕の正体? T.P.エイト・オリーシュア──オリ主さ。いや、そう答えるわけにはいかないけどね? 原作の雰囲気壊すから。

 ビナー様はどうにも僕に興味津々なようで、意味深な感じに呟いていた。

 

 

『……いや、まだ理解には至らないか』

 

 

 何だよお前、やめろよそういうの……僕とキャラ被ってるじゃないか!

 

 ビナー様、噂に違わぬ強敵だ。

 容赦無くオリ主とキャラを被せていくスタイルに、僕は慄く。これであのベールの下が僕とそっくりな顔だったらいよいよ危険である。

 ……いや、それはそれで案外美味しいかもしれない。SS界隈では、とある原作キャラと容姿が似ていることから物語を発展させていくオリ主もいるのだ。逆に……逆に考えてみると、キャラ被りというのは使い方次第でいい感じの絡みができる個性でもあるのである。

 僕的にそういうのは、最後の手段として考えたいところだが。

 

 

『情報ありがとうね、観測者──いや、今はカバラちゃんだったね』

「キュー」

 

 ビナー様はふふっと微笑を溢しながら玉座から立ち上がると、カバラちゃんを両手に抱きかかえながら語り出した。

 それは今までカバラちゃんのことを賢くて可愛らしい小動物だと認識していた僕たちに対して、衝撃を与える発言だった。

 

 

『驚かせてしまったかな? 実はこの子、アイン・ソフから重大な使命を受けた特殊な存在なんだ』

「!?」

「え……」

 

 

 何ですと……?

 嫌な、予感がする。もしかして正体は人化できる聖獣とかじゃないよね? ひっそりと警戒していたんだけど、もしそうだったら僕は丸一日寝込む自信がある。

 

 ……ま、いっか可愛いし。

 

 僕はビナー様の胸で心なしか得意げな顔をしているカバラちゃんに向かって、肩の力を抜きながら微笑む。

 性別がメスであることがわかっている以上、正体が小汚いおっさんでないことは明らかなのでエイトちゃん的にはそれで十分だった。

 

 そんな僕たちに向かって、ビナー様はカバラちゃんの正体を──そして、自分自身の目的について語ったのであった。




 言ったと思いますがカバラちゃんは人化しません(言ってない)
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