TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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キリト 俺 似ている

 カバラちゃん──幻獣カーバンクルはフェアリーワールド各地に生息しており、この世界の守護者に対して各地の情報をお届けする「観測者」の役目を担い、古より聖龍に生み出された特別な聖獣である。

 

 無機質的な言い方になるが、大天使たちにとっては端末的な存在と言えるかもしれない。

 戦闘能力は皆無だが、カーバンクル種は自身が目視した情報を頭の宝石の中に鮮明な記録として蓄積し、それを天使に譲り渡すことで円滑に情報交換を行うことができるのだと言う。

 

 頭のそれ、USB的な物だったんだね……衝撃の新事実である。

 

 尤もそれは今よりウン万年前に誕生した原初のカーバンクルが備えていた能力であり、現代を生きるカーバンクル種は長い年月の間にアイン・ソフの手を離れて野生化していった者たちの末裔であり、ほとんどの者が使命を忘れ、「観測者」としての能力も退化しているとのことだ。まあ、それだけ年数が経てば当然の話である。寧ろ種として残っているのが凄いよね。

 

『そういうわけで、今ではカーバンクルと言えばとても珍しくて警戒心の強い、か弱くて可愛らしい聖獣という認識が一般的だね。しかし一般市民ならまだしも、大天使たちもそう思っているぐらいで……嘆かわしいよね。ねぇケセド?』

「キュー」

『……そう言われると面目ない。僕も知りませんでした』

 

 因みに、アイン・ソフは自身が与えた崇高な使命をすっかり忘却の彼方に置いている現代のカーバンクル種に対して、「寧ろそれも進化の過程」と歓迎しているらしい。やはり神様は寛大だった。

 彼としては天使の為に情報を集める端末として生み出した筈の存在が、この世界に生きる立派な生命として活動するようになったのが嬉しかったのかもしれない。あの神様はそういう性格である。

 

『この子はそんなカーバンクルたちの中でも、原種への先祖返りを果たした数少ない個体なんだ。そして、天使にも負けないぐらい使命感に燃えていた。だから私はこの子に加護を与えながら、二人で協力して世界中の情報を集めていたんだよ。たとえば、この世界に初めてやって来た「人間」の監視とかしたりしてね』

「監視……? カバラちゃんは、俺たちのことを見張っていたのか?」

「キュッ」

 

 炎の問い掛けに、カバラちゃんが肯定するように鳴き声を返す。

 あれま、カバラちゃんったら可愛い顔してやるじゃない。そんなことを思いながら、僕は内心冷や汗を垂らしていた。

 

『時々、私が直接指示を出して動いてもらったこともあるね。本当にいい子だよ、カバラちゃんは』

 

 良かったー、カバラちゃんの前でもオリ主ムーブを徹底していて!

 誰もいないところでも気を抜かなくて良かったよ。おかげでボロを出すことなく、世界の観測者とビナー様の監視を乗り切ることができたというわけだ。

 勘違い物SSでもそうだが、こんなことでオリ主の内面を見抜かれるようでは駄目である。しかしカバラちゃんと会うのが転生して間もない頃の、時々緩んでいた僕だったら危なかったかもしれない。

 

 

「それで……あんたのお眼鏡に、俺たちはかなったのか?」

 

 セイバーズの皆さんは自分たちが一方的に監視されていた事実に思うところがあるのではないかと、僕的には一番抗議しそうだと思っていた長太が、意外にも冷静にそう問い質した。

 最近の長太、なんだか少し大人っぽくなったよね。これがアニメなら、女性ファン諸君は昔とのギャップでドキリとしていたかもしれない。僕はしないが。

 エイトちゃんの性別はTSオリ主であって、それ以上でも以下でもないのだよ。

 

『試すようなことをして悪かったね。カバラちゃんの目を通して、私も君たちのことを見ていた。危険な時は、後ろから援護したり助けてあげたりしていたんだよ?』

「……マルクトたちから逃げる時と、アディシェスと戦っていた時のことか。あの光の矢は、あんただったんだな」

『うん、そうそう。なんだ、気づいていたんだ』

 

 あれ? そんなことあったっけ? ……あー、言われてみればあの時遠くから援護射撃が来たような気も……あの時はあまりのさりげなさに見逃してしまったものだが、ビナーの技だったのかアレ。

 と言うことは、彼女は陰ながら今まで炎たちの危機を幾度となく救ってくれたわけだ。

 渋く、さりげなく、ミステリアスな感じに。

 

 

 …………

 

 

 やっぱ僕とキャラ被ってるじゃないですか! やだもー!

 

 やめてよそういうの! そういういい感じのポジションは、僕が狙っていたんだからさぁ!

 それは僕のポジションなの! ボークーのっ!

 

 ……いかん、あまりのオリ主的ピンチに頭の中が幼児退行してしまった。

 不安な気持ちを抑えきれず、目がちょっと潤んでしまったじゃないか。あっ、ビナー様にめっちゃ怪訝そうに見られている。見るなよーそんな目で僕を見るな。

 駄目だ……こんなことではいけない。

 ワクワクを思い出すんだ僕。

 ピンチの時ほど余裕を見せつける。そうだろう? T.P.エイト・オリーシュア!

 

 

 ──よし、落ち着いた。この間大体10秒。僕は切り替えのできるオリ主なのだ。

 

 

 

「大したものだろう? 人間というのも」

『……ふふっ』

 

 

 心の動揺に打ち勝った僕は、あえて余裕を見せつける為に微笑みを浮かべながら言った。チートオリ主の奥義、ナチュラルな上から目線である。震え声じゃないからな!

 「炎たちを得意げに見守るのはボクなんだからね!」と──彼女にここらでキャラ被りはいい加減にしろと釘を刺してやったのである。要するにマウントの取り合いだ。

 

 残念ながら、ミステリアスなお姉さんポジは間に合っているのだよ。君の出る幕はないな!

 

『……そうだね。君たちやツバサのことを見ていると、人間も言うほど捨てたものではないと思ったよ』

「寧ろ、キミは元々人間のことが好きだったのだろう? この町の造りも、人間世界によく似せていたね」

『悪くないだろう? 合理的な上に独創性の高い人間の文化を、私はリスペクトしているのだよ。本当はもっとああいうものを建てたかったのだけど、部下に止められたよ』

『当然です』

 

 苦笑を浮かべながらそう語るビナー様の姿には、そこはかとなく大物感が漂っている。

 

『人間は時に恐ろしく、時に残酷だ。しかし人間は、ともすれば聖獣以上のスピードで発展を続けており、これまでも幾度となくユニークな変化を見せてくれた』

「その変化こそが人間の素晴らしさなんだよ、ビナー。だからどうか、これからも長い目で見守ってあげてほしいな」

『元々、私はそのつもりだったよ? ただ、残念ながら人類全体が成熟するまで待っていられない聖獣たちが多数派だ。何せ王様がその筆頭だからね。アビスの活性化も後押ししているし、今この世界は非常に不安定だ』

 

 ええい、何なんだコイツの口調は……! 僕と似すぎだろいくらなんでも!

 ぐぬぬ……まるで鏡と話している気分である。

 負けじと大物感を出して人間トークを行ってみたが、これはマウントを取るのが至難である。

 すると、そんな僕たちの横で長太とメアがヒソヒソ内緒話をしているのが聴こえた。

 

「なんか、あの二人似てね……?」

「メアもそう思う」

 

 お黙り!

 オリ主は唯一無二でなければならない。他人と似るなどもってのほか。

 それでもキャラ被りを避けられないのなら、マウントを取るしかない。オリ主たるもの、戦わなければ生き残れないのだ。存在感的に考えて。

 しかし、だからと言ってビナー様に敵意を剥き出しにしてはいけない。

 そんな理不尽なことをしては今まで僕が貯めてきたオリ主ポイントは激減し、踏み台オリ主になってしまうからだ。

 キャラ被りは嫌だが、寧ろ僕は初対面だがビナー様のことが結構好きだ。僕に似ているのだから当然だが、カッコいいし、ナイスデザインだし、脚綺麗だし、絶対美人だしこの人。何せ、声がいい(重要)。

 

 あれ? ビナー様に対する賞賛がそのまま僕にも返ってくるこの感じ……案外気持ちいいかも。

 

 

 

『このビナーは、君たちに協力したいと考えている。ケセドが居る以上、間に合っているかもしれないけど……世界樹の祠で眠っているアイン・ソフの元へ赴く時は、私が他のサフィラスから君たちを守ってあげるよ』

『君が味方をしてくれるのは助かるよ。今の僕は抜け殻のようなものだし、君がついてくれるなら祠の認証(・・)も突破できるしね』

「いいのか? 俺たちもそのつもりで頼みに来たが……そんなにあっさりと決めて。他の大天使と敵対することになるんだぞ?」

『今さらだよ。私は嫌われ者のお姉さんだからね。それに……君たちの人となりは、カバラちゃんに与えた加護を通して既に把握している。戦争を止める為にたった五人でこの世界に乗り込んできた勇敢さも、個人的に好ましいと思っているよ。そうでなければ、自分からこの島に招き入れたりはしないさ』

「サンキュー! 何だよ、ビナー様って話がわかるいい大天使じゃん!」

『ふふん、それほどでもあるよ』

 

 

 ──僕が一人オリ主としてのアイデンティティに苦悩していた間、話は順調に纏まったようだ。

 

 その手際の良さはまるでRTAである。

 そういう聖術の類いなのだろうが、カバラちゃんというフィルターを通して炎たちのことを見ていたというビナー様は、初対面から一定の信用を彼らに置いてくれたらしい。

 炎たちに対する態度は都合が良すぎるほどに友好的なもので、ベールの下に薄らと見える口元はリラックスしている様子だった。

 

 むむむ……やはり僕と似ているなちくしょう。

 

 もしも彼女が公式のキャラとしてバリバリアニメに出演していたのなら、前世の僕は「ビナー 俺 似ている」というワードでネットの海を検索していたかもしれない。

 それほどまでに、僕と似た個性を持つ彼女は親しみやすかったのだ。僕より大きいくせにずるいぞ。

 

 そんな彼女がこの先メインキャラに昇格してしまったら、それはもう大変である。

 

 まず間違いなく、彼女とキャラ被りをしている僕が肩身の狭い思いをすることになるだろう。

 そうなった場合どうするべきか、真面目に悩んで脳内シミュレーションを行っていると、そんな僕の内面が表に出ていたのかメアちゃんが心配そうな目で覗き込んできた。

 

「エイト?」

「……何でもないよ。彼女がついてきてくれるのなら、そろそろこの旅路も終着かなって」

「ああ、元々アイン・ソフに間を取り持ってもらうように頼みに来たんだもんな俺ら」

 

 今後の展開次第ではあるだろうが、キャラ被りに対する有効な策としては……あえて僕がパーティから抜けて単独行動に移るのも一つの手である。同行さえしなければ、キャラ被りも何も無いということだ。

 

 それでなくてもケセド君復活でパーティメンバーが増えてきたからね。

 メインキャラが増えた際、新キャラと属性が被っている古い者から出番が無くなっていくのは必然である。そういった世知辛い事情もまた、僕がキャラ被りを恐れている理由の一つだった。

 

 ……だって寂しいじゃん、そういうの。

 

『アイン・ソフに仲介を頼むのは有効だと思うよ。特にケテルとコクマーの心は、アイン・ソフの言葉でもなければ動かないだろうからね』

「やはり、聖龍か……」

「聖龍って、どんな神様なんだ?」

『お優しい方だよ。優しくて、不器用で、偉大な神様だった……疲れ果てた王の心を蝕むほどにね』

 

 そうだ聖龍……聖龍アイン・ソフである。アニメ「フェアリーセイバーズ」では仲間が揃い戦力が集まり次第、かの神が眠る世界樹「サフィラ」へと突入していった。

 サフィラス十大天使のティファレトは仲間入りしなかったが、その代わりとしてビナー様が加わってくれるのなら現在の戦力は原作の突入メンバーを遙かに超えている。

 ちゃちゃっと翼と合流して聖龍様のところへ乗り込めば、長いようで短かったこの「フェアリーセイバーズwithエイトちゃん」の物語も完結まで一直線だった。

 

 ……まあ、原作エピソードを消化したところでまだ「深淵のクリファ」という不穏なフラグが残っているのは気掛かりではある。ケテルを何とかして終わりにはならないだろうなぁって。

 尤も今の僕は、原作通り彼を倒しておしまいにする気は毛頭無いけどね。マルクト様ちゃんとケセド君の和解に味を占めたエイトちゃんである。完璧なチートオリ主を目指すのなら、意識を高く持って原作以上の大団円を迎えたい。その為の具体的なプランは未定であるが。

 

 

『私は王様のこと好きなんだ。彼にはこれ以上変なことをしてほしくないし、その為なら是非とも君たちに協力したい。ただし』

 

 

 ──うん?

 

 

『一つだけ、条件を提示させてほしい。それが終わったら、私は頼りになる兵も連れて君たちに同行するとしよう』

「それは……大天使としての試練という奴か?」

『うーん……試練と言うよりは、個人的なお願いかな。君たちにも関係のあることだ』

「俺たちに?」

 

 

 ……次のことを考えていたのがフラグになってしまったようだ。

 まあ、いいけどね別に。せっかくのオリジナル展開なのだ。ここであっさり「ビナー様を引き込んで戦力アップ! 翼と合流! おしまい!」とこの島のイベントを消化してしまうのは味気ない。

 僕は巻き込まれ系のオリ主ではなく、巻き込まれに行く系のオリ主なのである。人死が絡むような激重イベントでなければ、トラブルは寧ろウェルカムだった。

 完全受け入れ態勢の僕の前で、ビナーはまどろっこしくもったいつけた言い回しでその条件を語る。

 

 

『救ってあげてほしいんだ……君たちの仲間──カザオカ・ツバサのことをね』

 

 

 




 説明回はやはり話が進まないから難しい
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