TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】 作:GT(EW版)
オリ主系SSにおいて、原作ブレイクのやり方は多岐に渡る。
一つは、作者の意向により先天的に世界観を改変するパターンだ。登場人物の境遇や性格等、最初から「そういうもの」として設定を変えた創作である。わかりやすい例を挙げると、原作主人公やライバルキャラをTSしてヒロイン化したりするSSがこれに当てはまるだろう。
そしてもう一つは、オリ主の介入によって後天的に原作の物語に変化を起こすパターンだ。こちらは一般的なオリ主物に多く、読者的には馴染み深い展開であろう。
言ってみればそもそもオリ主という異物がいるのだから、物語が原作と全く同じ展開を辿る方が不自然な話ではある。故に、僕たちがいることでこの世界がある程度乖離するのは何らおかしくないのだが……流石にこの展開は想定外である。
──それでも僕は自己弁護したい。僕はこれに関して一切関与していないと。
「フェアリーセイバーズ」異世界編のキーパーソン、穏健派聖獣のケセドが警告に来ない。異能怪盗として僕がしてきた行動が、巡り巡ってそのような結果につながるとは思えない。
確かにセイバーズに関しては多少振り回してしまったかもしれないが、聖獣さんサイドの事情にはノータッチだった筈である。
元々大筋は原作沿いの方がチートオリ主らしいことしやすいと思っていたし、重要な展開までブレイクする気は無かったのだ。
……うん、やっぱり僕のせいじゃないな。そうなるとこの状況は僕よりも先んじてこの世界にいたメアによる影響か、設定レベルで何らかの改変を入れた女神様っぽい人の意向か。
後者であれば、女神様っぽい人はやはり上級者である。
「まさか、ね……」
SSの原作ブレイクには、こういうパターンもある。
それは、オリ主の存在自体が原作キャラのポジションに成り代わる場合である。
あれから僕もメアについて詳しく調べてみたが、彼女のことでわかったのはPSYエンスに改造された聖獣の因子を持つ人間だということだった。オリ主的には実に「らしい」設定である。仮面系の特撮は人気ジャンルだからね。
彼女はそれ故に人間と聖獣、二つの種族に対してこの世界で最も近しい関係性を持っている。
そんな彼女なら、ケセドがいなくても代わりが務まる……と言うか、思えば彼女の立ち位置はなんだかケセドと契約した原作のフェアリー戦士「光井灯」と微妙に被っている気がしてきた。
故に、この物語自体が実は「オリ主であるメアがケセドの代わりにセイバーズを導く内容」のSSだった可能性があるのだ。
何ということだ……まさかタグに「ケセド不在」が付いていたとは……!
ポッと出のチョイ役ならまだしも、よりによって原作のキーパーソンが除籍されているとは思うまい。と言うか、考えたくない可能性だったので頭から除外していたのだ。だってよ……ケセド……出番が!
……いけない。推しの一人がいないショックに錯乱してしまった。
『裁きの時だ……人間共よ覚悟しろ! ブルアアアアアッ!!』
コクマーさん、原作より荒ぶっておられる。イイ声だぁ……。
白翼の天使がその手に携えた槍を振り上げると、空から稲妻の嵐が降り注ぎ、一瞬にして町を火の海に変えていく。
いけないいけない……僕がパニクっている間にも、現実という物語は容赦なく進行しているのである。
天使コクマーによる宣告の後、拡大していく被害。
間も無くセイバーズ三人が出動し、人智を超える激闘が始まった。
しかしその戦場の中に、光のオリ主たるメアの姿は無い。
ええい、あの子は何をやっているんだ? アカリンの代わりに炎たちを助けに行ってよ役目でしょ!
僕が行ってもいいが、今は待ちの姿勢である。もちろん、生で見る超常の存在に怯えているわけではない。メアがいない中で僕だけが一方的に活躍するのは、オリ主同士のバランスを崩すことになりかねないからだ。
オリキャラ複数物のオリ主とは神経を遣うものなのだ。
「仕方がない……」
オリキャラ同士、一対一の対面はしたくなかったんだけど……こうなってしまっては、確かめなければなるまい。
僕は千里眼で彼女の現在地を探し出すと、急ぎテレポーテーションで向かうことにした。
炎が燃え、氷が弾け、風が吹き荒れる。
暁月炎、力動長太、風岡翼が戦っているのだ。
セイバーズきってのエース部隊であり、世界でも有数の実力を持った異能使いが三人も集まれば、どんな相手も制圧できる筈だった。
しかし、ゲートから現れた新種の天使型聖獣はあまりにも強さのレベルが違った。
人間と聖獣、二種族の壁はこんなにも大きいのかと打ちのめされるほどに、三人は出力の差で完全に力負けしていたのだ。
このままでは、みんなやられてしまう……。
混乱する町の住民たちと共に避難誘導に従いながら、姉代わりである光井灯に手を引かれ、メアは明保野の町を駆け抜けていた。
過去の記憶も身寄りも無いメアの後見人になったのが、セイバーズの司令官を務める灯の父光井明宏である。そうして光井家で暮らすことになったメアのことを、事情を知る灯は姉代わりとなって可愛がってくれた。
「メアちゃん、大丈夫だから……今度もきっと、炎や翼さんたちがやっつけてくれるから!」
「……うん」
……今だって、そうだ。
戦う力を持たない無能力者である灯が、戦う為に作り出されたフェアリーチャイルドを怖がらせまいと励ましている。
──何故、こうも彼女は……彼女らは、こうもメアに関わるのか? 戦う為の、使い捨ての道具に過ぎないメアに。
薄暗いPSYエンスの実験室にいた記憶しか持たないメアには、初めは彼女らの思考が全く理解できなかった。
しかし、明宏の方針でこの一年間、市井で平穏に暮らしてみてわかった。何となく、少しだけわかったような気がするのだ。
それはきっと人間が持っている当たり前の心──「優しさ」という感情なのだと。
「メアちゃん?」
足を止め、灯の手を離す。そうするとやはりと言うべきか、灯が戸惑った表情でメアの瞳を窺う。
温かかった……人の心の優しさが。
守りたいと思った……彼女のような人間を。
救いたいと願った……炎たちのような戦士を。
戦いたいと思った。この世界と、優しい人たちの為に。
そう思ったからこそメアには、灯たちと一緒に避難することができなかった。
「メアは……行かなくちゃ、いけない」
「っ、だ、駄目だよメアちゃん! 貴方はもう……!」
「メアが戦わないと、エンが死ぬ」
「っ!」
「ごめん、なさい……おねえ、ちゃん」
「! ……メアちゃん」
気が付いたら、走り出していた。無能力者の灯では、どう頑張っても追いつけないスピードで。
メアはその小さな身体では到底考えられない脚力で道路を踏み越え壁伝いに走り抜けると、住宅街の屋根上へと跳躍し最短距離で炎たちの元へ向かっていく。
わがままを言ってしまった……嫌われてしまっただろうか?
もしかしたら灯とは……お姉ちゃんとはもう、会えないかもしれない。
あのゲートが開かれ、聖獣の天使が現れてからずっと、メアは身体中が疼いていた。それは自身の身体に組み込まれた聖獣の因子が、あの聖獣に反応しているからなのかもしれない。
だとしたら、自分は……自分の記憶も、おそらく……
「答えは出ているのだろう?」
「!?」
屋根伝いに戦場へ向かって走っていたメアの前に、一人の少女の姿があった。
少女、と言ってもメアから見れば十分大人の女性に見える姿だ。姉の灯よりも大人びた雰囲気を纏う黒髪の少女は、焦るメアの心を落ち着けるようにハープの音色を響かせると、薄い笑みを浮かべてメアを見つめていた。
「貴方は……」
「T.P.エイト・オリーシュア。エイトでいいよ、メア」
「エイト……」
待ち構えていた様子は、まるでメアがやってくるのを初めからわかっていたようだった。
急がなければならないのに、思わず足を止めてしまう。
佇まいは静かなのに、メアの姿を見つめるエイトのエメラルドのような瞳は、心の中が吸い込まれるような感覚だった。
その視線を逸らさずメアの瞳を捉えながら、シルクハットを目深に被ったエイトが問い掛けてくる。
「キミは、この世界で何を見た?」
「……っ」
問いが、心を抉った。
「キミはこの世界で……何を為すんだい?」
「……メアは……」
実験室にいた頃は、生まれてきた意味もわからなかった。
そんなメアの心には今、炎や灯たちの優しさを受けたことで、新たな感情が芽生えていた。
その感情の正体がわからず、メアはずっと戸惑っていた。
でも、もう違う。
メアは力強く頷き、問い詰めるエイトの目から視線を逸らさずに言い切った。
「メアは……助けたい! エンやアカリたち……人の、優しさを、信じたい……っ」
初めて知った人の愛。
その優しさに、少女は目覚めたのだ。
少女の中に眠っていた
そんなメアの決心を前に、エイトがハープの音を止めてくすりと微笑む。
月下に照らされたその笑顔は、儚く眩しいものだった。
「そうか……キミは選んだんだね。キミ自身がその役目を果たすことを……ケセドが信じた未来を」
安堵したように息を吐くと、エイトの姿が朧のように搔き消える。
まるでそこにいたのが幻影だったかのように、彼女が消えた痕には何も残らなかった。
言葉を交わしたのはほんの僅か。しかしメアにはその時、彼女が言い残した言葉の意味が何となくわかるような気がした。
彼女の言葉からはどこか、懐かしい響きを感じたのだ。
「ケセド……? そう、だったんだ……それが、この子の……」
ストンと胸に落ちたように、心に掛かっていた靄が一斉に晴れるような感覚だった。「ケセド」というその名前を反芻した瞬間、疼いていた身体が熱く燃え滾っていく。
今、理解した。
メアは、そして彼は思い出した。
その役割を……自分たちが為すべきその使命を。
「メアの名前っ!」
身体の熱さが臨界点を超えたその瞬間。
その時が訪れるのをずっと待っていたかのように、メアの身体が光に包まれ猛々しい唸りを上げて広がっていく。
その光は闇夜を照らす一条の光芒となって拡散していくと、戦場の戦士たちの意識をも釘付けにする。
「何!?」
「何だ!?」
「あの光は……!」
溢れ出る光が収まった時、そこにいたのは背中に二枚の翼を広げた、銀髪の天使だった。
天使は碧眼の右眼と黄金の左眼をゆっくりと開き、虹彩異色の瞳で聖獣コクマーを見据え、告げる。
「去って、コクマー。ここは、貴方のいるべき世界ではない!」
『……! 貴様ァ……その眼は、まさか!?』
──目覚めし者が今、この世界を祝福しようとしていた。
あーメアちゃん、聖獣になっちゃったよー。
違うよ、人間と聖獣の心を持つ、オリ主マンだ。
いやあ、なんか凄いことになったな……と他人事に思いながら、僕はメアちゃんマンのスーパーオリ主タイムに圧倒されていた。何というかこう、予想外な事態の連続に頭脳がオーバーフローしたのである。
原作の大事なシーンだというのに、重要な役目をこなす筈のオリ主がいない。そんな中で僕だけが目立ってしまうのはオリキャラ複数物としていただけないので、彼女にも見せ場を与える為に焚き付けたまではいい。
もちろん、今一度彼女のオリ主としてのスタンスを見極めてみたかったのが先ほど接触した理由だが……全く、よもやよもやである。
──どうやらあの子、ケセドだったらしい。
正確には、ケセドの因子を埋め込まれた改造人間である。
一体全体どういう経緯でそうなったのかはわからないが、彼女の身体に組み込まれている聖獣の因子とは、「フェアリーセイバーズ」の重要人物ケセドのそれだったのだ。おいおい、灯ちゃんの出番消滅したわ。
しかしオリ主物SSにおいて、オリ主が特定の原作キャラと密接な関係にある作品は珍しくない。「オリ主はあの原作キャラの親類ですよ」とか「オリ主はあの最強キャラの弟子です」とか、そういった関係性を設定することで、物語に絡ませやすくなるのだ。この手法は実際便利で、バトル物から日常系まで幅広く応用されている。
それが彼女の場合、「オリ主はケセドの因子を持つ改造人間です」という設定だったというだけだ。わかるかそんなもん。
……だけど、冷静になって判断するとそう悪い展開ではない。
SSとしては、実に王道的な原作ブレイクだろう。
前にも言ったが、オリ主がいることで崩れた戦力バランスを、オリ敵を増やすことで調整するSSは失敗することが多い。しかしその逆で、味方側の戦力を減らすことでバランス調整するSSは、意外にも割と生き残るものなのだ。
それは、いなくなった原作キャラのポジションに成り代わることで、オリ主が明確な役割を持てるからである。
無論、いなくなった原作キャラが好きな人からすると非常に残念であり、作風として好みが分かれるところはあるが、作者サイドからしてみれば都合の良い舞台設定だったりする。
故にメアがオリ主
正直僕も楽しみにしていた灯ちゃんの出番が消えたのは残念だが、これはこれで尊いのでヨシとする。流石は美少女補正、相手に回しても恐ろしい。
「やるね、メア」
炎たちのピンチに純白の翼を広げて駆けつけたメアは、三人に代わってコクマーと壮絶な空中戦を繰り広げていく。
流石は彼と同格の聖獣、ケセドの力を宿しているだけのことはある。原作の灯ちゃんの役目を完全に奪ってしまっているが、メア自身の戦闘技術は高く、彼女以上に力を使いこなしていた。
これは凄い。僕が入り込む余地が無いほどである。
『いい気にィ……なるなぁぁ!!』
「ッ!」
しかし、コクマーは強い。
思わぬ増援に動揺し、最初は互角だった戦いにもすぐに順応してみせる。
戦況はやがてメアが圧され、劣勢になり始めていた。
ふっ、やれやれ……いよいよ僕の出番かな?
ウキウキとその時に備えてストレッチを始めるが、ふと思いつく。
……ここで僕が加勢してあっさり強敵を倒してしまうのは、それは二次創作として如何なものかと。
原作主人公たち三人が歯が立たなかった相手に、オリ主が参戦して善戦する。ここまではまあいいが、そこに謎のオリキャラが加勢して、敵を撃退する……ああ、これは少しマズい。
客観的に見て、原作キャラ一同がオリキャラの引き立て役になってしまうからだ。
あっぶな、危うく複数転生者物SSの罠に嵌まるところだったぜ。
そうだ。原作へのリスペクト的に考えて、このまま炎たちに何の見せ場もないまま終わってしまうのは非常によろしくない。
原作主人公たちにも見せ場を作った上で、オリ主としての力も見せつける。両方やってこそ、僕が望む完璧なチートオリ主だ。TSオリ主は欲張りなのだよ。
まさしく慢心の権化、合掌。そんな僕が今やるべきことは、口惜しいがメアというオリ主に加勢して敵を倒すことではない。
いざ行かん、テレポーテーション!
「キミの可能性はここで終わるものではない筈だ。アカツキ・エン」
「……お、お前は……!」
向かった先は、原作主人公暁月炎のところだった。
わお、思ったより大分酷くやられているわコレ……
炎たちは皆虫の息で倒れ伏しており、痛みに震える身体でなんとか立ち上がろうとしている様子だった。
そんな彼らの前で僕はスカートを折り畳みながらその場に座り込むと、僕の登場に驚く炎の額をつんつくつんと小突いてやった。
ホラホラ、このエイトちゃんが激励に来てやったぞ。がんばれ、がんばれー。
ヒロアカ二次における青山君の雄英合格率が気になる今日この頃。
ヒロアカに詳しくないので度々不在になっている青山って子はひょっとしてレジェンド誠並に嫌われてるのかな?って思ったけど、特にアンチ青山君がいるわけでもないのは驚きました。