TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 あると思います。何となく。


チートオリ主対話編
最終章の冒頭はラスボスの過去回想から始まる


 夜の寝床はビナー様が用意してくれた。

 

 ……と言うか、ビナー様の寝室だった。

 

 もちろん、やましい話ではないので悪しからず。

 僕とビナー様は一瞬で遠くまで移動できる「テレポーテーション」が使えるので、遅くなった時間でもすぐに聖都へと飛ぶことができるのである。

 復旧を進めたとは言えアビスのせいで町はボロボロだ。不必要に避難所のキャパを圧迫するわけにはいかないし、大天使である自分たちがそこにいると皆が気を遣いすぎてしまうからというビナー様の計らいだった。僕は大天使じゃないけど。

 

 実際、彼女の周りは助けに来てくれた感謝やら初めて晒した素顔についてのことやらで、てんやわんやだったからね……あれではビナー様はもちろんだが住人たちの気も休まらないだろう。

 因みに僕の周りでも同様だった。聖獣さんたちから善意でちやほやしてもらうのは正直くっそ気持ちいいけど、今日のところは色々あった彼らにはちゃんと休んでもらいたいなというのがこちらの心情である。僕たちが浄化したとは言え、皆さん毒を喰らっていたわけだし。

 

 それにしても、今回の事件で死亡者が出なかったのは幸いである。毒性のある闇の霧の中に三十分も閉じ込められていたにしては、住民たちが受けた被害は奇跡的と言っていいほどに抑えられていた。

 

 何でもヘットの町の住民たちは先祖代々谷底に封印されている「シェリダー」という深淵のクリファを見張る使命を受けた選ばれし民のようで、非戦闘員を含めてやたらとタフなプロ市民だったらしい。アビスの侵攻にもクワ攻撃カマ攻撃で応戦していたようで、そこはかとないライフコッドみを感じる。

 

 もちろん、それでも多勢に無勢であり時間がもう少し経っていたら人的被害は免れなかっただろう。

 クワもカマもアビスに喰らい尽くされいよいよヤバくなってきたところで、僕とビナー様のエントリーである。

 ふふん、僕たちが乱入するタイミングは住民たちにとって完璧だったらしい。いやあ参ったなー。

 

 

 ──まあ、そういう感じで僕たちはすっかり英雄扱いである。

 

 

 あの時、会食を抜け出して屋根の上にいたのは、一頻り受けた彼らの歓待に満足したからという思いもあった。

 

 あっ、もちろん事後処理としてやるべきことはやったよ? 

 事件が終息した直後には、ビナー様と一緒に封印されし深淵のクリファ「シェリダー」とやらの様子を見てきた。ドデカイ谷底の裂け目の奥深くから覗く、光の檻によって厳重に施された封印は、数千年維持してきたのも納得の強固さだった。流石は大天使たちが本気で施した封印である。あれは解けねぇわ。

 そんなレベルの封印ともなると檻の中までサーチすることはできなかったが、中にとてつもなく巨大な気配があることはわかった。あれが「シェリダー」の気配なのだろう。封印されている筈なのに何だかすっごい視線を感じたし、アディシェスよりも身の危険を感じてしまう、ヤバそうな雰囲気だった。正直二度と近づきたくない。

 

 だが、おかげで封印に不備は無いということがわかった。

 

 ビナー様と翼は今回のアビス大量発生には件のクリファが関わっているのではないかと見ていたようだが、依然封印されたままだということがわかって何よりである。これが「アビスが町にたくさん出てきたのは、実はシェリダーの封印が解けた影響だったんだよ!」というのが真相だったら目も当てられなかったところだ。僕もハープ弾いている場合じゃねぇ。

 

 ビナー様からは現地の司祭様に何かあったらザフキエルに報告するように言い含めておき、今日のところは僕たちも寝ることにしたという経緯だ。夜も遅いし、僕たちも疲労していたからね。

 

 そう言うわけで僕は聖都に戻り、今一度ビナー様の城へと案内されたわけである。

 因みにお風呂もビナー様と一緒に入りました。とても気持ち良かったです。

 

 僕は温泉の時に着た浴衣を寝巻きとして着用すると、ビナー様も似た柄の浴衣を着ていた。

 日本の文化に理解のある彼女は、自分用の浴衣を持っていたのである。僕の前でくるりと一周してその姿を見せびらかす彼女の姿はとても綺麗で、得意げな顔をしていた。ドヤ顔ビナー様である。

 しかし背中に八枚も羽が生えている為か、背中の部分はメアちゃん以上に大胆に開かれており、僕としては失礼ながらちょっとえっちだと思った。いや、彼女が元から着ていたドレス自体、そんな感じではあったんだけどね? 

 これはアレかな。日本人スピリッツとして、浴衣とはこういうものだという先入観が強く働いたんだろうね。スタイルの良い外国人さんが浴衣を着ている時に感じる奇妙な背徳感に近い感覚なのかもしれない。

 まあ、それはそれとして。

 

「うん、バッチリ似合ってるね」

『っ! ありがとう、エイトみたいに着こなせているか不安だったんだ』

「ふふ、綺麗だよ。ビナー」

 

 もちろん、僕の方が完璧に着こなしているのは当然さ。完璧なチートオリ主は、見た目にも常に気を配っているのだよ。

 そんな僕と同じ顔をしているだけあって、彼女の浴衣姿もとてもよく似合っている。今から寝るだけなのが惜しいぐらいだった。

 

「キミはとてもファッションセンスがある」

『へへ……そうかい?』

 

 僕は鈍感系の男オリ主ではなく女の子の気持ちにも聡いTSオリ主なので、彼女の浴衣姿を見て思ったことは正直に伝えるのである。

 褒めたいことは照れずに褒めた方がいいことは、姉さんで学習済みだった。

 そんなこんなで和気藹々と城の浴場を後にすると、その足でビナー様の寝室へ直行する。

 重ねて言うがやましいことは何も無い。袖を引っ張りながら嬉々として案内する彼女の顔を見て、誰が拒めるものか。

 あと大天使様がどんな部屋で寝ているのか普通に気になったのもあった。

 

 

『さ、ここが寝室だよ。私も普段はあまり使っていないんだけど、メイドさんたちにバッチリ綺麗にしてもらったからね』

「おおー」

 

 ……普通だ。

 

 僕の分のベッドもちゃんと用意してくれたのはありがたいが、そこに広がっていたのは二人分のベッドが備えられているだけの意外と質素な部屋だった。

 もちろん清潔感に溢れている綺麗な部屋だったのだが、大天使の寝室と聞いて想像していたものと比べてやや地味に感じてしまった気持ちは、誤魔化すことができなかったようだ。

 そんな僕の反応を見て苦笑するような顔で、ビナーが言った。

 

『他のサフィラスで言うとマルクトとティファレトの寝床は見たことがあるけど、ここよりもずっと豪華な感じだったね。だけど私は、このぐらいが一番眠りやすいんだ。あんまり派手な部屋は落ち着かなくて』

「へぇ、意外だね。キミは派手好きな子だと思っていたよ」

『地味な部屋でごめんね。要望があれば、もっといい部屋もあるけど……』

「ううん、ボクはここがいい。ボクも眠る時は、落ち着ける部屋の方が好きなんだ」

『……良かったぁ』

 

 うむ、いいよね寝るだけって感じの部屋も。チートオリ主である僕は派手なものが好きだが、睡眠に関しては落ち着ける場所ならなんでも良かったりする。何なら木の上とかでも眠れるし。薬の臭いは嫌いだけど、病室とかも割と好きだったりする。

 しかし、普段からウエディングドレスみたいな派手な服を着飾っている彼女にしては意外だった。てっきりおとぎ話のお姫様みたいに、天蓋付きのベッドとかで寝ているのかと思っていたよ。

 

「よっと……おお?」

 

 僕は柔らかなベッドの上に寝転ぶと、後頭部に感じたふわりとした柔らかい感触に意表を突かれた。

 おお、これは凄い。

 

「いいね、この枕。優しい感じがして、とてもふかふかだ」

『ふふん、私の羽根で作った枕だからね。弾力には自信があるよ!』

 

 つまりセルフ枕か……すげえ! 

 うーん、こういうことができるのはまさに人外の強みである。

 しかも大天使の羽根で作った枕とか、御利益凄そうで贅沢すぎるんですけど。ありがたやありがたや。

 

 ……ん? でもこれって、人間で言うと「私の髪でマフラーを編んだの(はぁと)」的な……ビ、ビナー様? 

 

 

『?』

 

 

 ……ごめんなさい、僕が不純でした。

 

 不思議そうな顔で小首を傾げる彼女の姿を見て、僕は微笑みを返しながら枕に頭を預け、胸元まで掛け布団を掛けた。そこにするするっと入ってくるカバラちゃん。布団をふみふみする小動物の姿ってなんでこんなに癒やされるんだろうね? 小動物と添い寝する僕を見て、ビナー様も羨ましそうだった。やらんぞ。

 

「キュー……」

「ふふっ、カバラちゃんも気持ち良さそうだね」

 

 この布団にもビナー様の羽根が使われているのかね-。こちらも柔らかくて温かい。おお、ぬくぬく……

 

「いい寝心地だよ、ビナー」

『それは何よりだ。よければあげようか? その二つは、私が作ったアイテムの中でも会心の出来なんだ』

「物作り、好きなんだ。気が合うね……ありがとう、大切にするよ」

『……よしっ』

 

 貴重な一日を過剰な睡眠時間で無駄にしたくない僕としては、日々の寝心地についてはあまり考えたことはなかった。

 だけど寝心地が良いに越したことはないからね。彼女が善意で譲ってくれるのなら、僕はありがたく頂戴することにしよう。

 と言うわけで、僕はカバラちゃんと一緒に遠慮なくぽふーっと枕に顔を埋めると、その感触に身を委ねていった。

 

 あーこの感触はたまらんぜよ。

 

「おやすみ、ビナー」

『うん、おやすみダァト……』

 

 ……すまぬ、今日は色々あって流石の僕も実は疲れているんだ。

 だからその呼び名にツッコむ余裕もなく、僕は程なくして眠りの世界に落ちていった──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──夢を見た。

 

 

 殺風景な世界の夢だ。

 

 大地は荒れ果てており、空は青いキャンパスに黒い絵の具をぶちまけたかのようにデタラメなほど青と黒が入り混じっている。見ていて不安になる色が頭上に広がっていた。

 

 そして地上に聳え立つ山よりも大きな木は大部分が枯れ果てており、今にもへし折れてしまいそうだった。

 

 そんな木の下で、二人の天使が何やら話し合っていた。

 それぞれ白と黒の装いをしている女性の天使である。

 

 

『……ボク、わかったよ』

 

 

 黒い方の天使が言った。

 

 ビナー様に似た漆黒のドレスを着ている、黒髪の少女の姿をした天使だ。

 艶やかな髪は肩に掛かる程度のショートカットで、瞳の色はエメラルドのような綺麗な翠色だ。容姿はとても整っていて、凛々しさと儚さを完璧に両立させた感じのカッコいい──って言うか、僕じゃん! あからさまにエイトちゃんなのである。

 

 しかしそんな少女の背中には、十枚もの漆黒の羽が生えていた。

 闇の呪縛を応用した僕のそれとは違って、天使のものと同じれっきとした羽である。

 服装と言い、僕はその時点で彼女が僕とは似て非なる別人であることを理解した。

 

 少女はその黒い羽を小さく揺らしながら、微笑みを浮かべて振り向く。

 

 

『何故、ボクだけが黒い羽を持って生まれたのか……何故、ボクだけが闇の力を操ることができたのか……全ては、この為だったんだね』

 

 

 彼女がおもむろに振り上げた右手に、淡い光に包まれた一冊の本が現れる。

 その表紙には僕の怪盗ノートと同じく何かの木のような絵が描かれていたが、ページ数の方はノートとは呼べない分厚さである。まるで六法全書である。

 

 取り出したその本を、彼女は振り向いた先にいた銀髪の女性に向かって手渡していく。

 白銀の髪に白い肌、黄金の瞳に豊満なバスト──って、カロン様じゃん! 何やってんのあんた!? 

 

 

『サフィラの書はキミに託すよ、カロン。次に生まれくる天使たちと、世界樹の未来を……任せたよ』

『……心得た』

 

 

 差し出した分厚い本を賞状の如く両手で受け取ると、カロン様はその腕で大切そうに抱え込んだ。……なんか気持ち的に、少しだけ雰囲気が幼い気がする。

 

 そして何より、この夢のカロン様は僕の知る彼女と違って背中に十枚の白い羽が生えていた。

 

 今しがた黒い少女が呼んだ名前とその容姿から判断して白い方はカロン様で間違いないのだろうけど、常に無表情な顔からは相変わらず感情が読み取りにくかった。

 しかしその黄金の瞳が僅かに揺れていることから察するに、悲しんでいるように見える。

 そんな目で少女を見つめながら、カロン様が言い放つ。

 

 

『ダァト……私は、汝のことを忘れない』

 

 

 寂しそうに送り出す、今生の別れのような光景だった。

 カロン様が言ったその言葉を聞いて初めて、僕は目の前にいる黒髪の超絶美少女の正体を理解した。

 

 ダァト──そうか、この人がダァトか。

 

 ビナー様が度々僕のことをそう呼ぶわけだ。

 確かにこの姿を知っていれば、エイトちゃんの容姿はダァトそのものである。うーん、美少女! 

 カロン様が「ダァト」と呼んだ少女はキャラ被りとかそういう次元ではなく、それこそ一人称や息遣い、仕草まで僕とそっくりだった。ちょっと怖いぐらいである。

 

 ただそうなると、ふむ……僕は外側からこういう風に見えているというわけだね。これはなんとも……

 

 

 ──いいじゃない! 

 

 

 僕はダァトではないが、本物の彼女を見て僕はとてもカッコいいと思った。

 いや、僕の着ている怪盗衣装も当然カッコいいんだけど、彼女が着ている漆黒のドレス──女神様っぽさをこれでもかというほどに詰め込んでいるカロン様の衣装と対になるような装いは、何と言うかビナー様以上にダークヒロイン感があった。ビナー様ももちろんカッコいいんだけど、何かこう、隠しきれない人柄の良さとかが逆にダークな感じを薄めているのである。僕と違ってね! 

 

 その点、ダァトという天使は僕の理想とする雰囲気に誰よりも近かった。

 

 強いて言うならば十枚の羽に合わせてガバッと開いている背中とか、僕やビナー様よりもずっと短い膝上15cmぐらいのスカートとかはその……肌の露出度は僕よりも数段高く、カッコ良さの表現として女の子としてのかわいさが合わさっている為、TSオリ主である僕とは方向性が違う感じがするが。

 しかし厨二系ファッションとしてはとても参考になるので、是非とも今後の参考にさせてもらうとしよう。

 

 そんな不思議な夢の中で僕が「ダァト」の姿をまじまじと見つめていると、彼女はふっと微笑み、カロン様の身体をその腕で優しく抱き締めた。

 

 おお、キマシタワー……とは言わない。

 二人の間は何か、そういう風にはやし立てる雰囲気ではなかったのだ。

 オリ主たる者、シリアスな場面では相応の態度をとるべきだ。SSでは常識である。

 

 

『姉さん……ボクも、キミのことを忘れない。いつかまた、ボクの生命が世界樹に還った日に会おう』

『……待っている』

『うん……それまで待っててね』

 

 

 何やらボソッと話している様子だが、残念ながら僕の位置までその声は届かなかった。

 不躾に近づくこともできたが、白と黒の女性が仲睦まじそうに抱擁を交わしている光景を見て、僕はあえてその必要を感じなかった。

 話している会話の内容よりも、この光景の尊さを大切にしたいと思ったのである。

 

 そういう心持ちで二人の抱擁を見守っていると、二人がお互いに離れたところで空から一人、誰かがやってきた。

 

 それは少年の姿をした天使だった。

 

 その羽の枚数は、彼女らと同じ十枚だ。

 おいおい、サフィラス十大天使の八枚を超える天使が三人もいるとか高位天使のバーゲンセールかよ。子供まで十枚羽とか、まるでインフレさせすぎてしまった残念な二次創作ではないか。これはちょっと雲行きが……

 

 

『ダァト!』

 

 

 僕が何とも言えない顔で状況を見つめていると、少年は一目散にダァトのもとへ駆け寄った。

 そんな彼──カロン様よりも真っ白な髪をしている美少年の来訪に気づくと、ダァトが「仕方ないな……」とでも言いたげな苦笑を浮かべる。

 

 

『キミも来てくれたんだね』

『行くなダァト! たった一人で深淵の世界に行くなんて、無茶だっ!』

 

 

 酷く焦った様子で、白い髪の少年が詰め寄る。

 

 

『僕も行く! 僕もダァトと一緒に戦うよっ!』

 

 

 彼女に対して、少年は何か必死に訴えかけていた。

 そんな少年の言葉を受けて、ダァトは困ったように笑いながら首を横に振る。

 目線を合わせる為に腰を屈めると、彼女は少年の両肩を掴んで諭すように返した。

 

 

『……違う。違うんだ。ボクは戦いに行くんじゃない』

 

 

 彼女がそのまま顔を間近に近づけると、ダイヤモンドのような透き通った少年の黒目と交錯する。

 二人はお互いに一歩も下がることなく、譲れないものがあるかのように微動だにせずじっと見つめ合っていた。

 

 そうしているとしばらくしてダァトの方が笑みを溢し、彼の白い髪にスッと手を伸ばして撫でていった。

 恐ろしく自然な撫でポ……僕でなきゃ見逃しちゃうね。という冗談はさておき。

 

 慌てて駆けつけたことで乱れていた彼の髪を整えるように何度も撫でながら、ダァトは語る。

 

 

『ボクはアビスたちと、わかり合いに行くんだ。それが、ボクの生まれた意味だから』

『わかり……あう……? アビスと……?』

『彼らは何も知らない。虚無から生まれ、全てを虚無に還す本能だけで生きている彼らは、悲しいほど真っ白で、真っ黒な存在だ。だから知識を司るボクが、彼らに教えてあげたい。ただ一つ、生命にとってとても大切な……「愛する」という感情を』

『……愛する、こと……』

 

 

 少年はとても不安で悲しそうで、僕でも思わず頭を撫でたくなるような顔でダァトを見つめていた。

 彼女もまた、そんな彼の眼差しを受けて寂しそうな顔をしていた。

 

 

『それが、ボクの……ボクにしかできない使命なんだよ』

 

 

 そう言って、彼女はカロン様にしたのと同じように、少年の身体を抱き締めた。

 少年の顔は彼女の胸に押し付けられたことで見えなくなったが、ダァトの顔はこちらからも見えた。

 彼女の語る言葉はどこまでも穏やかで、僕と同じ聞き心地の良いウィスパーボイスである。

 しかしその表情は──彼女の方こそ、何かを堪えているように見えた。

 

 

『キミにはキミの使命がある。だから、一緒には行けない』

『使命なんて……そんなものより、僕はっ!』

『ふふ、ありがとう。そう言ってくれて、嬉しいよ』

『……っ』

 

 

 泣きじゃくるような声を溢す少年の背中を、優しく宥めるようにポンポンと小さく叩く。

 そしてダァトは、少年の耳に囁くように告げた。

 

 

『愛してるよ、ケテル。この世界を明るく照らす、立派な天使になるんだぞ』

『──ッ、ダァト!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……え。

 

 

 あの子、ケテルなの!? 

 

 

 ダァトが述べた衝撃的な一言に唖然としていると、いつの間にか夢は途絶えていた。

 

 そんな、睡眠中の出来事である。




 総合2.5000ptありがとうございます!
 ここまで行けるとは思っていなかったのでありがたや……感謝感謝です。
 最終章になるかはわかりませんがフェアリーセイバーズ∞の物語も最終クールに入りそうです
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