TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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 日間一位取れた。感謝感激です。
 それにしても前回からのこの伸びは……青山君はやっぱり大人気キャラだったんですね!


ガチャ報告は作者の特権

 あの子が……メアが、一人で戦っている。

 

 早く助けに行かなければ……と傷だらけの身体を起こそうとする炎だが、その身体は神経の至るところが麻痺しており、身動きすらままならなかった。

 他の二人も同じだ。力動長太も、風岡翼も、あの天使型聖獣の雷に貫かれ、瓦礫の下で這いつくばっている。

 サフィラス十大天使が一柱、コクマーと奴は名乗った。

 なるほどこの力は聖獣世界の天使と呼んで相応しい……圧倒的な強さだ。

 PSYエンスのボスやエレメント・ワイバーンらの聖獣も含め、今まで戦ってきた誰よりも圧倒的に強い。高位聖獣の実力をまざまざと見せつけられ、炎たちは血を吐いた。肋骨が折れているかもしれない。

 しかし、この心までは折れていない。

 

「ま、守らなければ……俺が、この町を……みんなを!」

 

 コクマーの怒りは尤もだ。

 PSYエンスのような一部の人間たちは、彼ら聖獣に対して一方的に危害を加えた。その報復がこれだというのも……わかる。

 炎とて復讐者だったのだ。自分の復讐はきっちりと成し遂げて、他人に復讐するなと言っても説得力は無い。

 

 だが、それでも彼の行いを許すわけにはいかない。

 

 関係の無い人々を、善良な人間まで巻き込むのは間違っている。

 例えこの身が燃え尽きようとも、俺が奴を倒す。そう決意し、PSYエンスのボスを倒したあの時の力を解放しようと全身に力を入れた──その時だった。

 

 

「その意気だよ。立ち上がれ、エン」

「!?」

 

 

 声が聴こえた。

 穏やかで緩やかな、この場に似つかわしくない声だ。

 先日一度だけ聴いたことがあるその声が耳に入ると、うつ伏せながら顔を上げた炎の前に、膝を抱えながらしゃがみ込んでいる黒髪の少女の姿があった。

 

「キミの可能性は、こんなところで終わるものではない筈だ」

「お……お前は……!」

 

 T.P.エイト・オリーシュア。

 判明している時点での罪状は多数の異能取締法違反、住居不法侵入、窃盗等、この数日間警察関係者を悩ませていた異能怪盗である。

 

 思えばようやくセイバーズにも彼女の拘束命令が下された矢先に、この事態だ。

 元々ある疑念を抱いていた炎には、彼女とあの天使型聖獣コクマーの降臨が全くの無関係だとは思えなかった。

 ……そんな彼の胸中を知らぬ少女は、最初に出会った時と何ら変わらない態度で言った。

 

「本当に綺麗な目だ……こんな時でも希望の灯火を絶やさない。キミはやはり、ボクの知るアカツキ・エンなんだね」

「何……?」

 

 身動きが取れない中警戒心を露わにする炎に向かって、エイトが左手に一冊のノートを開きながら右手を伸ばすと、その人差し指で炎の額を小突いた。

 

 そんな彼女の柔らかな指先が触れた瞬間、信じ難い異変が炎の身体を襲った。

 

 

「!? 痛みが……」

 

 一瞬にして、身体中の痛みが消え失せたのである。

 

「ヒーリングタッチ。この指で触れた相手を癒す異能さ」

「……盗んだ能力か?」

「ふふっ」

 

 少女が触れた部位を起点に傷が癒えていく。効き目は劇的だった。

 セイバーズお抱えのドクターに匹敵する、強力な治癒系異能である。いや、使い勝手を考えれば彼の異能さえも凌駕しているかもしれない。

 盗んだ異能で助けられるとは、犯罪の片棒を担ぐようで面白くない。しかし、今はそんなことを気にしていられる状況でなければ、立場でもなかった。

 

 炎は麻痺と傷が癒えた身体を起こすと、手足の動きを確認し少女の姿を見下ろす。シルクハットで水増しされているが、実の身長は160センチよりやや低かった。

 助けられたことに対する感謝と猜疑心が合わさった複雑な表情を浮かべる炎に対して、エイトは何が面白いのか微笑むばかりだ。初めて間近で見たその顔はまさに月下美人もかくやという美貌であり、状況が状況であれば魅力的な少女に見えたのであろう。しかし生憎にも炎は元々硬派である上に、今はじっくり観察している余裕もなかった。

 

 少女はシルクハットのつばで目線を隠しながら踵を返すと、左手に持ったノートを宙に浮かし、空いた手にどこからともなく銀色のハープを取り出した。

 

 

「人が得た異能にはね……その人にしか引き出すことができない無限の可能性が眠っているんだ」

 

 

 唐突に語り始めると、宙に浮いたノートのページから淡い光が放たれる。

 そしてその横で彼女は、炎を癒したその指でハープの演奏を始めた。

 

「「調合」の異能を使い、治癒の異能と不朽の銀琴を調合……そうして完成した癒しのハープが奏でる音色は、人々の身体を癒す福音となる」

「な……っ」

 

 それは形容のし難い、不思議な音色だった。

 炎は音楽センスのある人間ではない。しかし彼女のハープが奏でる演奏が、今まで聴いたことのあるどのメロディーとも合致しない独特な調律であることを耳に感じていた。

 それでいて何故か精神が落ち着く──心が癒される音色である。

 

 そしてそれは精神だけではなく、聴いた者たちの肉体にも作用していた。

 

「この曲は……」

「な、なんだこれ? 身体の痺れが消えた……!?」

 

 突如として怪我が治り、不思議そうな顔で立ち上がる長太と翼。

 

 ……同じだ。先ほど彼女の指が、炎の額に触れた時と。

 彼女が奏でるハープの音は癒しの異能となり、倒れていた二人の身体を癒やしたのである。

 してやったりと言いたげないたずらっぽい顔で、怪盗少女は振り向いた。

 

 

「ね? 異能は、使う者の心の持ち様で姿を変えるものなんだ。それはきっと、キミの焔も同じさ」

「……あんたは……」

 

 

 指先に触れた対象の身体を癒すヒーリングタッチと、音楽を聴いた者の身体を癒す今の異能は元は同じ力だと、彼女はそう語った。

 炎にはそれが、「異能」の本質的なことを言っているように聞こえた。

 

 炎自身、経験があるのだ。

 

 炎の異能は「(ほむら)」。

 紅蓮の焔を自在に操ることができ、放射したり身体に纏ったりすることができる能力だ。

 

 最初は応用の幅こそあれそれだけの能力だったのだが、PSYエンスの戦いの中で少しずつできることが増えるようになった。

 そして父の仇である組織のボスを前にした時──絶対に負けられないと心の極限を超えた時、炎の異能は一時的に次のステージへと上ったのである。

 

 ……その時のことを思い出した炎の心を盗み見たかのように、エイトが告げた。

 

 

「正しい心を持った異能使いは、やがて次のステージへと進んでいく。それが聖龍アイン・ソフの望み……」

「!? なんだ、その話は……!?」

「おっと、喋りすぎたかな」

 

 

 忘れてくれ、と少女は夜風に揺れるシルクハットを押さえながら言う。

 この状況で無ければ、どれほど問い詰めたかったか。尤も、問い詰めたところで煙に巻かれる気しかしないが。

 観念したように、炎は立ち上がった仲間たちの側へと意識を向けた。

 

「回復系の異能か……? サンキュー!」

「礼には及ばないよ。何故ならボクは本来、キミたちに追われる筈だった身……善良な市民から異能を盗む、悪いお姉さんなのだから」

「……! あんた、怪盗か」

「だったらどうする? 今ボクを拘束するかい?」

「……はぁ」

 

 彼女のハープに助けられたことで素直に礼を言う力動長太と、即座に彼女の正体に勘づく風岡翼。

 翼はつかみどころの無いエイトの態度を受けて助けを求める目を炎に向けてきたが、炎は黙って首を振った。

 この状況で彼女を拘束する余裕がある筈もない。今優先すべきなのは聖獣コクマーだ。

 しかしそれでも、彼女には最低限今の自分たちにとって敵か味方なのかをはっきりさせておきたい。明確な裏付けは無いとは言え、彼女が聖獣の仲間かもしれないという疑惑もあるのだ。

 

 リーダーポジションとして炎が訊ねると、彼女は浮遊させていたノートを手元に戻しながら言った。

 

「そうだね、取引と行こうじゃないか」

 

 そのままおもむろにページをめくった次の瞬間──どこからともなく漆黒の巨鳥が現れ、それが三体、それぞれ炎たち三人の元へと付き従うように鎮座した。

 

「な、なんだこの鳥は!?」

「影を実体化する異能か……これも、盗んだ能力かい?」

「さあてね」

 

 鳥に目や鼻は存在しておらず、まるで闇そのもので作られたオブジェクトのようだ。

 しかしそれは問題なく物体として触れることができ、丁度成人男性が一人背中に乗れる大きさがあった。

 

「人呼んで、闇の不死鳥(ダーク・フェニックス)ってところかな。ボクが足場を用意してあげるから、キミたちは無垢なる天使を助けてあげてほしい。ついでに、ボクのことも見逃してくれたら嬉しいね」

 

 それは三人にとって、願ってもない提案だった。

 先ほどは三人掛かりでコクマーに挑み、歯が立たなかった。その原因は単純な力の差もあったが、そもそも自由自在に空を飛び回る相手では地の利が無く、こちらの攻撃がほとんど通らなかったことにある。

 

 盗んだ能力の一つだとしても、彼女がこうして飛行手段を用意してくれるのは非常にありがたい申し出だった。

 

「……あんたは俺たちに味方してくれるんだな?」

「うん。今のコクマーは暴走している……彼をこのままにしておくのは、ボクの本意ではないからね」

「わかった、提案を受けよう」

「ご利用どうも」

 

 時間が惜しい。こうしている間にも、メアがたった一人であの天使の相手をしているのだ。

 炎は迷わず不死鳥の背中に乗り込むと、そんな二人のやりとりを見て、翼も続いて乗り込んだ。

 長太はと言えば、とっくに自身に割り当てられた不死鳥に乗り込んでいた。「奴をぶん殴れるなら何だっていい!」と、こういう時は考えるより先に動く馬鹿の方が強いのである。

 

「その子たちの命令権はキミたちに渡してある。どの子もとても利口だから、ちゃんと言うことを聞くよ」

「そうか? よし、メアちゃんのところへ飛べ! うおおっ!? 速えぇ──!」

 

 早速長太を乗せた不死鳥が舞い上がり、一気に闇夜へと上昇していく。

 ハイテンションな彼を見て翼が呆れたような、或いは感心したような表情で溜め息を吐いた。

 

「……あんたには聞きたいことがあるが、今はどう考えてもあんたに構っている状況じゃねぇ。ここは信じさせてもらうよ、怪盗さん」

「感謝するよ、カザオカ・ツバサ」

「へっ」

 

 彼女が当たり前のように自分の名を知っていたことに薄気味悪そうな顔をしながら、翼を乗せた不死鳥が飛び立っていく。

 

 最後に残った炎は、自分たちに味方をしていると言ったその言葉が偽りではないことを信じ、初めて本心から礼を言った。

 

「……協力に感謝する、怪盗」

「エイト」

「?」

「エ・イ・ト」

「??」

 

 少女が返したのは、茶目っ気を込めた要求だった。

 

 

「キミには、そう呼んでほしいな」

「…………」

 

 

 炎は、何も言わずに飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……連れないね」

 

 人知れずしょんぼり。どうも月下の闇使いことT.P.エイト・オリーシュアです。

 

 推しの口から名前で呼んでくれないかなーと思い要求してみたのだが、流石に炎君は警戒心が強かった。

 それはそうだ。どう見ても不審者だもの僕。寧ろ、そう簡単にデレられた方が原作ファンとして困惑したところだろう。性格改変物のSSも確かに面白いが、僕は原作キャラは原作に忠実な方が好きなのだ。

 

 まあ、それはそれとして推しに名前を呼ばれるのは嬉しいのである。お前推しばっかりだな目移り気味なアイドルオタクかよって? 原作のキャラはみんな推しなのだから仕方が無い。我ながら、ファンの鑑である。

 

 一人残った廃虚の地でポロローンとハープを鳴らし、今の寂しい気持ちを音にしてみる。

 うむ、前世は演奏の心得などなかった僕だが、休憩時間で練習した成果もあり、それなりに様になってきたものである。

 因みに、さっき弾いた曲はアニメ「フェアリーセイバーズ」のエンディング曲をイメージしたものである。雑な耳コピで弾いたのでちょっと不安定だったが、次にやる時はもっと上手く調整しておこう。

 このハープにヒーリングタッチを「調合」して弾いたのは、他の二人までいちいち触りに行くの面倒だなと思った結果のアドリブである。

 それと、僕の演奏を伏線に炎君たちに「異能」にはその先のステージがあるよ、っていうのをそれとなく仄めかしておきたかったのだ。原作だと灯ちゃんと契約したケセドが教えてくれたことだからね……

 

 

 さて、唐突ですまないが、ガチャの報告をしよう。SSの前書きか後書きには、ガチャ報告を入れるのがトレンドなのだ。作者という生き物は共感を求めるものなのだよ。

 

 僕が引いたガチャと言うか、いつも引いているのはもちろん異能ガチャだ。引く前に自分の目で厳選できるのでソシャゲのガチャのような闇の深いものではないが、それでも盗んだ後になって実は自分には使いこなせない異能だった。使ってみたら思っていた以上に凄い異能だった、ということが稀にある。

 

 今回は後者──SSR異能「調合」について説明しよう。

 

 スタジアムの闘士ハーンフ・リーから盗んだこの能力、実は薬以外も調合できる超優れものだったのだ。

 それに気づいたのは予告状を出す直前のことで、「よくよく考えたらこの能力要らないんじゃないかなぁ」と思い始めた時である。

 彼の異能により副作用の無い強力な薬物を調合できるのは確かに凄いが、治療目的の薬なら指先一つで傷を癒やす「ヒーリングタッチ」があれば十分事足りるのである。

 彼のように肉体を強化するドーピングに使うのは、もちろんTSオリ主的に考えてNG。それでも色々と使えそうではあるのだが、ノートのページ数は限られているのだ。この世界には原作の登場人物以外にも面白い異能はたくさんあり、役割が重複している能力はなるべく避けた方が良いかと判断していた。

 

 コクマーの強さを実際に見てみて、その判断は正しかったのだと再確認した。あのレベルの敵と戦うなら、使わない能力を盗む余裕は無い。

 

 しかし諦める前に僕が考えたのは、「調合」という異能の応用範囲である。いかにも色々悪さできそうなその能力、別の使い方は無いのか?という疑問だった。もしかしたらその異能には、持ち主すら気づいていない応用の仕方があるのではないかと。

 

 

 たとえば調合の対象に、「異能」そのものを選べるのではないか? 選べたらいいなーぐらいの感覚で、僕は願望全振りの解釈をノートに付け足したのである。あまりにも僕に都合が良すぎる解釈だったが、もしそうならば異能をストックする怪盗ノートとのシナジーが非常に高い。失敗してもページの一枚程度の犠牲なら、ガチャを引いて試してみる価値のある能力だと思い直したのだ。

 

 

 ──で、それは的中していた。

 

 答えはその通り、彼の異能の力は一定時間内であれば僕が盗んだ他の異能を対象にすることができ、盗んだ能力同士を「調合」して組み合わせ、別の能力へと昇華することができた。

 この使い方ならば調合と言うよりも、「合成」と言った方がしっくりくるかもしれない。先ほど使った力もその賜物である。

 

 異能【ヒーリングタッチ(指先で触れた者を癒やす能力)】と【どこでもハープ(異空間からハープを呼び出すことができる能力、錆びない)】を調合し、癒やしのハープという全体回復技を編み出したり。

 

 異能【闇の呪縛(闇を実体化する能力。引きこもりの幼女から盗んだ)】と【念動力(その名の通り、サイコキネシスで物を動かす異能。スカートめくりをしていたクソガキから盗んでやった)】を調合し、ケセド君シャドー的な乗り物を作ることができたのだ。

 

 「調合」により僕のチート能力の応用の幅は一気に増え、夢が広がった。

 正直SRぐらいだと思った能力が人権SSR並の性能だったことにびっくりした。そりゃガチャ報告もしたくなるものよ。

 あまりにも嬉しかったので、盗んだ後で本来の持ち主であるリーさんところへ戻り「キミの異能、最高だったよ!」とわざわざ報告しに行ったぐらいである。そしたら、なんか泣かれた。「こんな俺にも、誇れるものがあったんだ……!」とか口溢しながらめっちゃ泣かれた。

 いきなり大の大人に泣かれたのでつい女の子らしい悲鳴を上げそうになったが、どうどうとなだめすかしながら「スタジアム準優勝者が何言ってんねん」的なことを言ったらもっと泣かれた。情緒不安定だったのだろうか……人生色々と、悩む人は多いということだろう。

 

 

 閑話休題。

 

 さっき三人に渡したケセド君シャドー的な鳥型の乗り物「闇の不死鳥」は、彼の「調合」の異能が無ければ作れなかったものだ。

 造形の参考にしたのはもちろん、存在を抹消されし重要人物「ケセド」。彼の姿を小型化して疑似再現したものである。

 ごめん……やっぱケセド君いねぇのつれぇわ……

 

 いやね、僕だって色々考えたからここに来たのだ。

 ケセド不在という思い切りの良すぎるタグ付けには、正直女神様っぽい人に色々言いたいことがある。しかし、この世界ではそうなっているのだから仕方が無い。

 大事なのはこれからのことだ。僕は未来を生きるオリ主なのだから。

 

 

「希望は蹂躙された……可能性を掴むのは彼らか、それとも……」

 

 

 間を持たせる為、とりあえず気になったことをカッコ良く呟いておく。

 初めはこの戦いでデビューする予定だったが、エイトちゃんの謎の怪盗キャラは続行! 続行します!

 と言うのも、自分の演奏で心を落ち着けてみて疑問に感じたのである。それは今、メアの元へ三人が合流したことで無事コクマーを撃退できそうになっているのを見て、確信に変わった。

 

 ──今はまだ、僕が無双する時ではないな、と。

 

 三人を回復させ、再び戦場に送り出したことで状況は原作の展開に近づいたしね。

 原作ブレイクを最小限に抑え、横から割り込んで軌道修正する。まあ、そういうオリ主がいてもいいんじゃないかなと思う。

 

 物語の影で人知れず世界を救うやれやれ系オリ主……フッ、カッコいいぜ僕。勝ったな、ランキング見てくる。

 フフフ、僕が男オリ主だったらちょっと鼻につく人もいたかもしれないが、かわいいTSオリ主なら案外許されるものなのだ。即ち、TSオリ主はオリ主が進化した究極体転生者なのである。必殺技は無自覚シチュ。

 

 チートオリ主としてはもうちょっとこう、パンチの効いたことをしたい気持ちはあるけど僕は我慢できるオリ主だ。ここはもう少し、様子を見よう。

 女神様っぽい人の思惑を読み取るまで、闇雲に無双するのは危険だからね。十分存在感は示せたと思うし、僕はこれでも石橋を叩いて渡るタイプなのだよ。

 

 だがこの「物語の要所で敵かな? 味方かな? と煽るように出てくる謎のお姉さんポジション」は使えるぞ。

 原作を彩るささやかなスパイスでありたい僕としては、今の立ち位置は手放したくなかった。正直くっそ楽しいからだ。

 

 ……よし、メアがああして王道チートオリ主をしている間は、僕は彼女の対を為す存在でい続けよう。

 

 おあつらえ向きにケセドの力を持つ彼女は光属性の技を使うらしく、先んじて闇属性の異能を盗んでいた僕には丁度いいロールだった。

 オリ主は闇属性が多い。これはまあ、僕の勝手な印象だけどね。

 

 

 

 そんなこんなで僕は、四人が力を合わせてコクマーをゲートの向こうへ押し込んだのを見届けると、一礼をして立ち去っていった。




 異能を盗まれた子供たちは、何故か周りの大人に怪盗のことを話さないらしい。
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