TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】   作:GT(EW版)

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帝国の逆襲が一番すき

 聖獣たちの住むこの町を守ったことにケテルが感謝しているのは、おそらく本当だろう。

 しかし、わざわざ礼を言う為だけにサフィラス十大天使が五人でやって来たとは考え難い。

 それも、王様が直々に動き出したぐらいだからね。基本ポジティブな僕としても、これは何か理由があるなと察していた。

 

 そんな僕たちの代表として炎が前に出ると、青空の下、原作主人公とラスボスが対峙する。

 

 顔立ちの整ったムッツリ顔の二人が向かい合った瞬間、ふと気づいたように長太が何やらこそこそと翼に耳打ちしていた。

 

「炎とあっちの王様、ちょっと似てねぇか?」

「……言われてみれば、昔のアイツに似てるな」

 

 あー……なるほど、言われてみれば確かに。

 

 そうか……先ほど僕が「ケテルってこんな奴だっけ?」と疑問を抱いた割には思ったよりすんなり受け入れることができたのは、元々既視感があったからか。

 

 うん、確かに「フェアリーセイバーズ」初期の炎はこんな感じだったね。

 

 当時の彼は常に表情が固く、身体中から辛気臭さが滲み出ているように暗い雰囲気があった。そんな彼がたまに口を開いたと思ったら言葉足らずで周りを振り回したりしていたものだ。

 僕がカロン様のところで序盤だけ見た新作アニメ「フェアリーセイバーズ∞」でも、そんな初期の主人公の様子は特に変更されていなかった。

 かつての彼を思えばこうして自分から前に出て立派に対話を行うようになったことに成長を感じ、胸が熱くなるものである。

 

 それはそれとしてラスボスと主人公に共通点があるアニメは名作だと個人的に思う。

 安易なキャラ被りと違って、意図的なキャラクターの対比とかそういうところで重ねてくるのは結構好みだった。

 

 そんなことを思いながら二人のやりとりを眺めていると、二人の間では当初予想していたよりも遙かに穏便な話し合いが行われた。

 

 ──と言うのも、ケテルはこの世界でセイバーズが行ってきたことについて高く買っていたのだ。色眼鏡を抜きにして。

 

 確かにこの世界でのセイバーズはコボルド族の村を救ったことから始まって、復活した深淵のクリファ「アディシェス」の完全消滅。そして、今度はカイツールの分体率いるアビスの軍勢に襲われたこの町を救ったと来ている。

 アニメ「フェアリーセイバーズ」ではこの時点ではまだ、フェアリーワールドに対してそこまで貢献していなかったからね。それと比べると彼らがこの世界で残した功績は多い。

 特に「深淵のクリファ」というアビス側の強大勢力の存在により、それを討ったセイバーズの功績が旧作よりも一層大きくなり、王の目にも無視できないものになったのだろう。いい感じのバタフライエフェクトである。

 ホドやマルクトたちからの証言もあっただろうし、多少は人間のことを見直してくれたのだと思いたい。

 ケテルは確かに物語のラスボスだが、彼自身は純粋にフェアリーワールドを守ろうとしている存在であり、それ自体が悪というわけではもちろん無いのだ。彼のそういうところがオリ主としてこう、救済したくなったところでもある。怖いけど。

 

 もしかしたら戦わずに済むかも……と少しの期待を抱きながら成り行きを見守っていると、彼らは話し合いを続けた。

 

 

『お前たちがこの世界へ来訪した目的は聞いている。その真意も。アディシェスの討伐に貢献した事実も理解している』

「ええ……俺たちに、聖獣たちへの敵意は無い。セイバーズは……多くの人々は、無益な争いを望んでいません」

 

 炎の口から紡がれた嘘偽り無い言葉を聞いた途端、強硬派のコクマーとゲブラーは「何を今更……」と言いたげな顔を浮かべる。

 だけど聖龍抜きでは取り付く島もないだろうと推測していた中で、ケテルがここまでまともに話を聞いてくれたのは驚嘆に値する光景だった。

 

 うーん……どういう風の吹き回しかわからなくて怖いなぁ。

 ケテルの表情は「サーチ」を使っても全く読み取れないし……そんな彼は仏頂面のままチラリと僕、そして何故かメアちゃんの顔を一瞥して言った。

 

『お前たち個人は……善人ではあるのだろう。しかし、余はこの世界の守護者だ。お前たちがいかに善行を積み重ねようと、「人間」という種族全体がこの世界にとって危険な存在であることに変わりはない。神により世界の管理権限を預かった「王」として、これ以上人間世界の勝手を見過ごすことはできない』

「……っ、それは……!」

 

 ケテルは炎たちのことを善人と認めた上で、人間世界に対する方針を変える気は無いと言い切る。

 それを聞いて僕は、やっぱ簡単にはいかないよなーと苦い表情を浮かべる。

 全ての人間が悪いとは言わないまでも、人間の世界に聖獣に被害を与える悪人がいたことは事実だからね。大体PSYエンスのせいだけど。

 人間である彼らによって聖獣たちが被害を受けたのは事実なので、その遺恨が今も響いている感じか。

 そこを突かれると、彼らの犯行を止められなかった警察組織の一員として炎たちも苦い顔をしていた。

 

『そういうことだ、愚か者共め。我らが何年待ってやったかも知らず、今更どの面下げて見逃してくれと言うのだ!』

 

 コクマーが吐き捨てたその恨み節には、同胞を苦しめられた聖獣としての激しい怒りが滲んでいた。

 本当なら、今すぐにでも再び攻撃しに行きたいぐらいなのだろう。そんなことはさせないが。

 

 ……どうしたものかねこれは。

 

 設定的には彼らの言う通り、先に酷いことを仕掛けてきたのは人間の方なんだよね実際。

 ケセドをはじめ異世界のゲートから迷い込んできた聖獣さんたちに酷いことをしたのもそうだし、そもそも両世界のゲートが開いてしまったこと自体、元を辿れば人間たちが引き起こした迂闊な研究成果によるものだったりする。

 現代の人間にとっては生まれる前に起こった昔の話なので当事者の家系からもすっかり忘れられているが、寿命の長い天使たちにとってはつい最近のことだという時間感覚の齟齬もあった。

 

 ──ただ、僕としては「全部人間のせい」、「全部人間が悪い」という言い分はちょっと腑に落ちない。

 

 個人的にそう言うのは一方的というか、フェアじゃないよねという意見だ。

 オリ主のSEKKYOUも似たようなものだけど。

 

 

「伝わっていなきゃ、意味が無いよ」

 

 

 と言うわけで、ここらで存在感申し上げるぜ! 

 

 炎たちは過去の経験から揃いも揃って自罰的な性格をしており、「PSYエンス」を最近まで制圧できなかった負い目も合わさって強く出れないところがある。

 しかし、オリ主である僕には関係ない。

 僕には天使を含む聖獣に対して特に負い目も無いので、遠慮無く前に出ることにした。

 

 そんな僕が割り込ませた言葉に、コクマーが『何ぃ?』と眉を顰め、大天使たちとセイバーズ御一行の視線が集中する。

 

 ふふふ、これだけの顔ぶれに注目されているこの状況──超気持ちEEE。

 これよ……この存在感を申し上げる為に、僕はオリ主を楽しんでいた。

 

 

「キミたちは確かに寛大なのだろう。実際、ケセドが陥れられるまでは我慢していたのだろう? 聖龍アイン・ソフが言ったように、いつか人類全体が成熟すると信じて」

『……ふん、とんだ見込み違いであったがな。もはや、人間共にその価値は無い! 我らが神に与えられた力を愚行にしか用いぬ者たちには、楔を打ち込む必要がある。それが我らサフィラスの導きよォ』

「それは行き過ぎだよ、コクマー。その為に多くの命を犠牲にするのは間違っている」

『何を甘いことを……そうでもせねば何も変わらぬのが奴らなのだぞ!?』

 

 

 イイ声だぁ……こう、心にズシッと響いてくるよね。

 原作アニメではそれはそれはインパクトの強い敵役だったコクマーだけど、現実として向き合うとやっぱり彼のことも結構好きなんだなと自覚した。

 思わず、笑みが零れてしまうほどに。

 

 

「ふふ……思っていたより真剣に、人間のことを考えていたんだね。そういうところ好きだよコクマー」

『…………』

『……王?』

 

 

 しかし、なるほどね。

 コクマーはてっきり「人間など皆殺しじゃああ!」というノリで暴れ回っていたのかと思っていたが、彼には彼なりの正義があったようだ。

 いくらなんでもやり方が過激過ぎだが、聖龍様の言いつけ通り彼も己の意思で人間を導こうとしていたようでちょっとだけ安心する。

 

 しかし、それでも……やっぱり善良な市民まで巻き込むのはとばっちりすぎるし、楔を打ち込む相手として違うと思う。あくまでも、平和な国で生きていた人間の平和ボケした倫理観ではあるが……それでもね。

 

 

「人間だから悪いのではなく、やらかした人たちが悪いんだよ」

 

 

 「PSYエンス」の組織運営に関わった者たちに対しては全く以て彼の言う通りなんだけど、それでも人類全体に連帯責任を与えるには主語がデカすぎる。

 慎ましく真面目に生きていた善良な市民たちが、一部の戦犯のせいで巻き込まれるなんてこれほど不憫なことはないよ。

 彼らからしてみれば「なんで俺たちが知らない奴らのやらかしの為に裁かれなあかんのだ」という話だ。俺は悪くねぇ!(マジ)という奴である。

 

 「無知は罪」という言い分もあるかもしれないが、全ての人たちに常にそこまで気を回して生きろというのも酷な話である。

 

 世の中、明日生きるだけで精一杯な人たちだっているのだ。そんな彼らからしてみれば、身に覚えの無い罪を糾弾されて聖獣たちに襲われるのは天罰として受け止められない。誰も納得しない。

 

 

「だから、行動が早すぎると思うんだ。攻撃するよりも先に、キミたちは遺憾の意でも表明するべきだったと思う」

「遺憾の意って……」

「それ、具体的に碌な対処をしない奴じゃねーか……」

 

 

 お黙り! 公務員的な立場である彼らには印象の悪い言葉かもしれないが、空気の読めない長太と翼にエイトちゃんは大変遺憾の意である。

 

 だが、お気持ちを表明するのは実際大事だ。

 伝えるだけで何も行動しないのはもちろんアレだが、現状、人間の世界では聖獣たちがなんで怒っているのかも伝わっていないからね。ここを疎かにしてはいけない。

 

 ぶっちゃけ人間世界から見たら、彼らの行動は侵略宇宙人みたいなものだし……それではせっかく彼らにも高尚な理念があるのに、お互い不幸だと思う。

 

 

『ふん……警告で済ましてやれば百年も経たず罪を忘れ、つけ上がるのが人間だ。痛みを伴わなければ、奴らは頭を下げた裏でヘラヘラと笑いながら愚行を積み重ねるだろう!』

「大丈夫だよ。それを窘める為に、彼らセイバーズのような存在がある。人間の世界だって、自浄作用は立派に働いているんだ。だから人間の可能性も、決して捨てたものではない。キミたちの神様も言っていただろう? 今はまだ未熟な人類だけど、どうか導いてあげてって」

『ぬう……』

「T.P.エイト・オリーシュア……あんたは……」

 

 おっと、喋りすぎたね。ごめん炎。

 

 会話中に割り込むのは存在感を示せるのでいいが、やりすぎるとひたすら原作主人公の邪魔になったり、お話のテンポが悪くなってしまうのでその塩梅が大事である。

 僕は何か言いたげにしている炎に向かってくすりと微笑み掛けると、頃合いを見計らって元の位置に下がった。あーすっきりした!

 

 そんな僕の背中に、コクマーとのお話中ずっと黙っていたケテルが口を開き、問い掛けてきた。

 

 

『……お前は、人類の覚醒を信じているのか?』

 

 

 非常に神妙な顔をしているのは、僕が「ダァト」だと思っているからだろうか。

 なりすましは後が怖いので僕もさっさと真相を知りたいのだが……そのおかげで彼が僕の話をちゃんと聞いてくれるのは皮肉な話である。

 しかし、不本意な状況だろうとそれを使いこなすのが、トリックスターなチートオリ主、T.P.エイト・オリーシュアの本領である。ふふん、僕カッコいい。

 

 

「全ての人が、となると流石に難しいだろうね。だけど、キミたちサフィラス十大天使を含めて色んな人たちで助け合っていけば……いつかきっとできる筈だよ。ここにいる人間たちだって、仲間と助け合うことで境地に達したんだ。他の人たちだって、きっと」

『……フェアリーバースト、か……』

 

 

 全人類がフェアリーバーストに至ったらそれはそれでどんなインフレだよという話になるが、原作の設定的には理論上不可能ではないだろう。尤も、何年先になるかはわからないけどね。それでも天使からしてみればそこまで長い時間ではない筈だと言っておく。

 オリ主故にそんな感じに無責任で楽観的な私見を述べると、風岡翼が何かに納得した顔でこちらを見つめていることに気づいた。

 

「……やっぱり、怪盗行為の目的はその為だったんだな……」

 

 ? 何言ってんだアイツ。

 異能怪盗としてのムーブはいい感じの能力をカッコ良く盗む為であって、それ以外の何物でもないんですが……まあ、いいか。何か知らないが、納得してくれたのならそれでヨシ! 

 

 

『そうだ……余はこれまで、人間の世界を静観してきた。異能を手にした人間こそが、我ら聖獣(フェアリー)不倶戴天の敵であるアビスへの切り札になると、神は言っていた……余は、それを見極めようとしていた』

 

 

 彼は目を閉じて、過去を省みるように呟いている。いい流れである。

 僕の言葉はケテルに効いたようだね。ダァト効果すげえ。

 まあ、僕が言ったのは難しい話ではない。長々と語ったが、要約すれば「不満とか怒りとかぶつけるのは殴る前に話し合いでやろうぜ!」という至って当たり前の意見である。

 謝罪と弁償の要求とか、そういうガチな感じの生々しい話は好みのジャンルではないので偉い人に丸投げしたとも言える。流石にそこまで首を突っ込みたくないし……

 その際には人間側の代表が誰になるのかはわからないが、セイバーズが関わるなら下手な交渉にはならない筈だ。

 

『その点から言っても、人間世界に攻撃を仕掛けるのは悪手だよケテル。僕たちはお互いに、お互いのことを話し合う必要がある』

 

 アニメ「フェアリーセイバーズ」では同じことを言っていたケセドが、メアちゃんの肩から同調して言う。なんだい君……ちょっと見ない内に、いつの間にかメアちゃん専属のマスコットみたいになっているね。

 

 ……いいもん、僕にはカバラちゃんがいるし。

 

 少しだけ拗ねながら、僕は足元に擦り寄ってきたもふもふを見下ろして微笑む。

 しかしケセドの言葉に対して真っ先に反応したのは、呼び掛けたケテルではなくコクマーとマルクトだった。

 

『ふん、人間に一方的に利用されてまだ言うか。だから貴様は愚かなのだ! カイツール程度に不覚を取りおって……この間抜けが!』

『そうです! ケセドはもっと人間に怒るべきなんですよっ!』

『え、ええ……』

 

 仲良いね君たち。

 実は僕、コクマーさんってケセドのこと好きなんじゃね? と思い始めている。もちろん、腐的な意味ではない。彼にはこう、古き良きツンデレライバル的な波動を感じるのだ。見方によってはケセドと話をしている彼、ちょっと楽しそうだし。

 

 そんな彼らを他所に、ケテルに対して追撃とばかりに暁月炎が言った。

 

 

「……アビスと戦うなら、俺たちも協力する。だからこれ以上、俺たちの世界に攻撃するのは──」

 

 

 やめてくれ──と、そう言いかけた言葉を遮るように、ケテルが言い放ったのはその時だった。

 

 

『その必要は無い』

 

 

 その瞬間──僕はぞわりと、なんだか背筋が底冷えするような感覚を催した。

 

 え? なに? なに? なんで今怒ったの? 

 この王、情緒不安定なのでは……?と、様子が急変した彼に疑いの眼差しを送ると、彼は冷淡な眼差しをセイバーズ一同に向けて語った。

 

 

『そう……もはや人間と協力する必要も、その力を利用する必要も無い』

 

 

 それは、僕が知っている「フェアリーセイバーズ」のラスボスとはっきり重なる冷徹な姿だった。

 目を開けた彼はその場から数歩歩き出すと、その足はセイバーズの中にいる一人の少女の前で止まる。

 

 そして彼は、少女の姿を見下ろして言った。

 

 

『迎えに来たぞ、夢幻光メア──我が娘よ』

「……え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ? 

 

 

 !? 

 

 

 !?!?!?!??

 

 

 えっ、ケテル……今メアちゃんのこと娘って……娘って言った!? 

 

 あいあむゆあふぁーざー? 

 

 嘘だ……そんなの嘘だ……! 

 No……! 僕は頭の中で帝国的なBGMを流しながら、王の爆弾発言を聞いた僕たちは驚愕の目で二人を見つめた。

 

 

 ──メアちゃん、最近目立ってないと思ったらそんなことに……マジかよ。

 

 

 僕はオリ主として「フェアリーセイバーズ∞」を履修できなかったことを、今ほど悔やんだことはなかった。

 







【おまけ】

 サフィラス十大天使が一人除いて出揃ったのでそれぞれの天使から見たエイトの印象を置いておきます。



ケテル・・・ダァトほぼ確定。感情が複雑骨折。どんな顔で何を言えばいいのかわからぬ……

コクマー・・・ダァトらしい。正直信用していないが人間や聖獣にはない怖さを感じるので苦手意識

ビナー・・・ダァト確定。憧れの天使なので助けたい。ちょっとだけ甘えたい。すき

ケセド・・・ダァト確定。恩人なので命に懸けても助けたい

ゲブラー・・・ダァト半信半疑。峻厳とは正反対の甘さを見て苦手意識

ティファレト・・・ダァト半信半疑。恩人なので好印象。趣味が合いそう。ハープのこと聞きたい

ネツァク・・・えっダァトだったの? そりゃ予想外だぜHAHAHA

ホド ・・・ダァトほぼ確定。好印象。ダァトじゃなかったらそれはそれで面白そうだと思っている

イェソド・・・現在出張中なので存在を知らない

マルクト・・・ダァト確定。王様と一緒にみんなで仲良くしたいなぁ……



 大体のキャラに好かれている……これがチートオリ主の人徳よ(´・ω・`)
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