TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】 作:GT(EW版)
異世界から現れた聖獣コクマー。雷を操る大天使の攻勢に、炎たちセイバーズは苦戦を強いられる。
絶体絶命の窮地を救ったのは、聖獣ケセドと契約しその力を得た炎の幼馴染、光井灯だった!
そして四人の力を合わせた全力の一撃により、セイバーズは辛くもコクマーの撃退に成功する。
しかし、去り際に彼が残していった怨嗟の言葉……それは、新たなる戦いを告げるものなのか?
疲労困憊の炎たちに向かって、ケセドは警告する。
『彼らの名はサフィラス十大天使……この世界は、滅びます』
以上が、本来辿る筈だった原作アニメ「フェアリーセイバーズ」の展開である。
そして次が、この世界で起こった現実だ。
異世界から姿を現した高位聖獣コクマー。自らをサフィラス十大天使と語る彼は、圧倒的な力で炎たちを苦しめた。
このままでは町の全てが焼き尽くされてしまう……! 三人の戦士が倒れ伏したその時、光の中から現れたのはその背中に白い翼を広げたメアだった。
「去って、コクマー。ここは貴方のいるべき世界ではない」
思わぬ救援の登場に辛うじて持ち堪えるセイバーズ。メア、君は一体何者なんだ?
しかし、コクマーは強い。メアの力でさえも及ばず、町は絶体絶命の窮地に陥った。
その時、怪盗T.P.エイト・オリーシュアが現れた!
突如として姿を現した彼女は不可思議な異能で炎たちの傷を癒すと、天使と戦う為の力「闇の不死鳥」を授ける。
彼女の目的は一体なんだ? 疑問冷めやらぬ炎たちだが、エイトの助けを借りて遂に強敵コクマーを退けるのであった!
「希望は蹂躙された。可能性を掴むのは彼らか、それとも……」
天使たちの降臨は、地球を襲う未曾有の危機の前兆か──。
はい、大体こんな感じの要約になります!
情報量が……情報量が多い。
SSにおけるオリキャラ複数物の難しさを、まざまざと見せつけられた気分である。僕としてはそうならないように上手く立ち回っていたつもりだが、こうして文章にするとどうしても原作よりわちゃわちゃしてしまう。
今回のオリ主ムーブの自己採点は、大体75点ぐらいかな? イレギュラーが重なった中では及第点だが、終わった後になってもっといい感じのことできたのではないかと後悔している。期末試験の直後みたいな気分だ。
まあ、さっさと切り替えよう。今回の活動の反省は、次に生かせばいい。それがオリ主の特権だ。
──それで、次の問題はこの後の展開である。
原作イベント的に考えて、ここで重要なのは人間世界が聖獣たちに狙われていることと、サフィラス十大天使という存在が明かされること、そして灯ちゃんが追加戦士になることである。原作では全部ケセド君がやってくれた。ははは、やっぱ重要人物だわあの子。ははは……
まあこの三点においては概ね原作沿いになっているだろう。
人間世界が狙われていることとサフィラス十大天使の名前は、何故か原作より荒ぶっていたコクマーが高らかに告げていたのでクリア。よっぽどキレてたんやろなぁ。
灯ちゃんが追加戦士になるフラグは、残念ながらポッキリ折れた。これは後々めっちゃ響くので、今から対策を考えなければならないだろう。
ともあれ現状の流れは大きく乖離していないので、次も概ね原作沿いの流れになる筈だ。
そう、セイバーズによる親善大使護衛隊の結成&炎たちの異世界入りである。異世界編の突入だ。
翌朝から早速始まるので、僕も現場へ行くぞー。
先の激闘により町の大部分が廃墟と化した明保野市。
その大空には、この惨状を引き起こした元凶である異世界に繋がるゲートが渦巻いていた。
コクマーが通ってきたゲートはこれまで観測された中で最も大きく、一夜が明けた今も残り続けている。
そのゲートの下で、セイバーズ本部では無事な者たちを集め会議を行っていた。
背中に白い翼を生やした銀髪の少女──まさに天使と呼ぶべき姿に生まれ変わったメアが一同の前で、自らが知る全ての情報を打ち明けたのである。
「……では、聖獣の世界──フェアリーワールドでは、我々の世界への総攻撃が計画されていると?」
語り終えた彼女に対し、最初に問い掛けたのは、セイバーズの司令である「光井明宏」である。
メアの後見人でもある彼は、彼女が記憶の一部を取り戻したことに喜びながらも、今は組織の長という立場で彼女と向き合っていた。
彼の問い返しに、メアが深く頷く。
「うん……です。計画を主導しているのは、サフィラス十大天使……フェアリーワールドの守護天使で、コクマーとケセド……メアの中にある聖獣の心も、その一人、です」
「なるほどな。つまり今のメアちゃんの中で、その「ケセド」って天使の記憶が目覚めたんだな!」
「そう、です。ケセドもサフィラスの天使だけど、ずっと迷っていた……確かに聖獣に酷いことした人もいたけど、優しい人もいるから……」
「あちらも、一枚岩ではないということか」
この会議の主役であるメアは、慣れない状況におっかなびっくりとした様子で一同に聖獣たちの情報を開示していく。
聖獣の世界と人間の世界の衝突──それを防ぐ為にこの世界にやってきたのがケセドという天使である。
しかし彼は不幸な遭遇からPSYエンスの手に落ち、採取された因子を通して彼の心がメアの身体に宿ったのだ。
彼女から語られた真実に、炎たちは目を閉じて黙祷する。
和睦の使者だったかもしれない聖獣が、悪人に利用されていた。その事実に、一同は怒りを噛み殺した苦々しい表情を浮かべていた。
重苦しい沈黙を破ったのは、力動長太だった。
「……で、これからどうするんだ?」
後悔など、いくらでもできる。
今考えなければならないのは、人間世界を襲う危機にどう立ち向かうかだ。
長太の問い掛けに司令の明宏が顔を上げ、もう一つメアに対して問い掛けた。
ここにいる者たちの中で最も幼い彼女だが、情けないことに今は彼女の情報だけが頼りだった。
「……計画が実行されれば、我々はこの町を守る為に応戦するしかない。メア君、聖獣たちとはもはや、交渉の余地は無いのか?」
サフィラス十大天使──あのコクマーと同等の実力者が、ケセドを除いてもあと八体いるのだ。国中の戦力を一カ所に集めても、正面からの戦闘では勝ち目は無かった。
故に、戦争になる前に何としてでも対話による解決を図りたかった。
「ある、です。聖獣の多くは人間を嫌っているけど、みんなが戦争をしたいわけじゃない……ケセドのように、迷っている天使もたくさんいたから、です」
たどたどしい敬語で語りながらも、強い決意を込めた眼差しでメアが明宏の目を見据える。
僅か一年ながら後見人として父親代わりをしてきた彼には、彼女がその次に言う言葉がわかってしまった。
……それしかないという現実も、痛いほど理解していたのだ。
「メアは、フェアリーワールドに行く」
「……そう、か……」
到底、喜ぶことはできなかった。
「聖獣と人間だって、話し合えば、きっとわかりあえる筈だから……ケセドの思いを、メアが伝えに行く」
それが自分の使命なのだと言い切る彼女の顔は幼くとも、今まで町の悪と戦ってきた戦士たちと同じだった。
大人としては断じて許可するわけにはいかない提案だが、彼女の決意が揺らがないであろうことも知っていた。
理想と現実。ままならなさに溜め息を吐くと、翼が明宏に代わって問題点を指摘した。
「と、言ってもな。果たして連中が聞く耳持つだろうか? あのコクマーなんて、メアちゃんの説得に「人間が聖獣の言葉を語るのか」ってブチ切れてたし……」
「……うん、わかってる……」
「翼、言い方を考えろ」
「もちろん、メアちゃんの思いが本物なのはわかってる。だが、言葉を押しつけるだけじゃ伝わらないのも事実だろ」
「それは、そうだが……他に手は無いだろう」
聖獣が人間と同じ感情の生き物である以上、その怒りが簡単に鎮められないことも理解できる。
一方で人間世界だって無関係の人間が被害を受けているのだから、こちらにも彼らへの言い分はいくらでもあった。
「問題はそこだ」
相手に対する信用が最底辺の状態で説得しても、あちらからしてみれば煽られているようにしか聞こえないだろう。
それでも一部の穏健派は話を聞いてくれるかもしれないが、天使たちの代表としてコクマーを引き合いに出すと、全員が口をつぐんでしまった。
「なあ? そのサフィなんとかって天使の上にさ、親玉はいねぇのか?」
「え?」
会議が平行線になったその時、ふと面白いことを言い出したのは力動長太だった。
「ケセドってのと、あのコクマーって奴は聖獣の天使なんだろ? ってことは、その上に聖獣の神様とかいるんじゃねぇかって」
「神様に、天使たちとの対話を仲介してもらおうって? 甚だ図々しいが……それができるなら、交渉まで通るかもな」
「だろ!? いやあ流石俺だ」
取り付く島もないのなら、上司から言って聞かせてもらおうという提案だ。
将を射んと欲すればまず馬を射よ、ということか。しかしこの場合、格の違いが正反対であることに大きな問題があった。
しかし、ケセドを通して聖獣世界の事情を知っているメアが言った。
「……いける、かもしれない」
「! 本当かね?」
「うん。今のフェアリーワールドを管理しているのは、サフィラス十大天使の王「ケテル」。だけど、ケテルを含めて、天使たちにはお父さんがいる……聖龍アイン・ソフが」
聖獣世界の大天使たちをも上回る権力者──すなわち神。
それは、今日の人間世界にも多大な影響を与えた聖獣でもあった。
一同が一斉に息を呑んだ。
「聖龍……! まさか、その名前が出るとはな」
頭痛を堪えるように額を押さえながら、司令の光井明宏が再び溜め息を吐く。胃の痛さが一周回って心地良いぐらいだった。
「アイン・ソフだと……? エイトが知っていたのは、やはりアイツは……」
その名前に聞き覚えがあった炎は、パズルのピースが少しずつ合わさったような感覚を催しながらぼそりと呟いている。
知らぬ者のいない「異能」の起源と呼ぶべき存在、聖龍。人間世界にもかの存在を崇める者は多い。
その聖龍の……知る者のいなかった真名を聞いて、この場にいる者たちの多くが話のスケールの大きさにめまいを覚えた。
「大物中の大物じゃねぇか……要するに伝説のドラゴンは、聖獣たちの神様だったってことだな!」
唯一平常運転だったのが、この場において最も単純な思考回路をしている力動長太だった。
彼の解釈を、メアが肯定する。
「アイン・ソフは今、フェアリーワールドの管理を十大天使に任せて眠っている。だけど眠る前までは、人間と聖獣たちが仲良くなれないか、ずっと悩んでいた……だから、メアがケセドの気持ちをアイン・ソフに伝えれば、協力してくれると思う。コクマーたちも、アイン・ソフの言葉なら、きっと……」
「……賭けるしか、ないか……」
あまりにも分の悪い賭けだ。
交渉の相手が強大すぎて、失敗すればどうなるか考えるだけでも恐ろしい。
流石に尻込みする一同の中で、一歩踏み出したのがセイバーズの機動部隊隊長──暁月炎だった。
「行こう。聖獣たちの世界へ」
「炎?」
「たとえ可能性が低くても……それで天使たちと交渉して、戦争を起こさずに済むのなら……今動ける俺たちが行くしかない」
「よし、決まりだな!」
「待てよ、俺たちだけで行く気か?」
「仲間を集めている時間が無い。コクマーが使ったゲートだって、いつ消えるかわからないんだ。それに……次にゲートが開いた時が、開戦の時かもしれない」
「……ちっ」
もはや一刻を争う事態なのだ。
この世界を滅ぼしうる存在との全面戦争など、何が何でも止めなくてはならない。
炎の決意に明宏が頷くと、デスクを叩いて立ち上がる。
「わかった。その方向で話を進めよう」
「司令!」
重い腰を上げて「上は俺が説得する」と言い放つと、彼はメアの頭に手を置いてわしゃわしゃと撫で回す。力加減がわからず不器用な撫で方だったが、メアは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
セイバーズの司令光井明宏は仏頂面で強面の男だが……その表情は、ただ子供の身を心配する父親のものだった。
「あ、ありがとう……! お……おとう、さん……っ」
「……必ず生還しろよ。それが俺の出す唯一の条件だ」
「うん……うん……!」
全責任は自分が取ると、明宏を覚悟を決めて言う。
神との交渉が成功するにせよ、失敗するにせよ……これがセイバーズの、最後の戦いになるだろう。
作戦への参加は強制しない。最後にそう締めくくって、一旦この場での会合は切り上げた。
──その後、最終的に代表の明宏と親善大使のメア。メアの護衛として三人の
しかし決定する直前になって「遅れてサーセンっしたあああ!」と勢い良くドアを開けて会議室に乗り込んできた「力動長太」の姿に、一同は驚愕に目を見開いたものである。
騒然とする会議室から一人抜け出した男がいる。
筋骨隆々のリーゼントヘアーの男、力動長太である。そんな彼は外に出て日の光を浴びると、背伸びをしながら首を回す。
そんな彼に向かって声を掛けたのは、程なくして彼の後に続いてきたセイバーズ、風岡翼だった。
「待てよ怪盗」
「……んー?」
去りゆく彼──否、彼女の背中を呼び止める。
「もう帰っちまうのかい? 昼飯ぐらい食ってけよ」
「ふ……」
呼び止めた背中に語り掛け、
すると彼は、姿形から身長体型まで完全に「力動長太」だった筈の姿から、マジックのように華奢な少女の姿へと変貌していった。
燕尾服のような上着に掛かるロイヤルブルーのマントを振り払った後、ロングスカートの皺をポンポンと叩いて伸ばし、身だしなみを整えた彼女がゆっくりと振り向く。
「流石だね、いつから気づいていたんだい?」
感心した様子で問い掛けてきた言葉に、翼が答える。
「あんたが聖獣の神様の話を、メアに振った時からだな。長太にしちゃ頭の回転が早すぎるし、思い返せば会議中おとなしすぎた。本物なら、もっとギャーギャー騒いでいただろうよ」
「それはちょっと、彼に失礼じゃないかな?」
「そういう奴だよアイツは。伊達に何度も共闘してねぇさ。それにな……」
もっと言えば、遅刻の常習犯である彼が定刻通りの時間に会議に訪れた時点で引っ掛かっていたまである。翼は「もう一つの職業」柄、日頃から疑り深い男だったのだ。
明らかに変装を超えたレベルの擬態に気づけたのは、奇しくもある少年と面識があったからである。
「元々、あんたが擬態の異能を持っていることは知っていたんだ。それを使って、いつかここに潜入してくるだろうと思っていた」
「ふふ、そうか……それは迂闊だったね」
大胆不敵な侵入の目的は、会議内容の傍聴と
思い返せば長太に変装した彼女の言葉は、どれも会議の方向を都合良く進めていく為のものだったように思える。
メアの口から聖龍アイン・ソフの名を引き出し、かの神との交渉に乗り出した炎に対して真っ先に同調したのも、おそらく彼女自身がその展開を望んでいたからであろう。
……尤も、翼自身も異世界には乗り込むつもりだったので、そこに口を挟む気は無かったが。
強行して問い詰めるまでもなく、あっさりと自らの正体を明かした怪盗少女。エイトは翼から目を外すと、そのシルクハットを外して自らの黒髪を弄り始める。「擬態」を解除した自身の身体に、異常が無いか確認しているのだろうか?
面識の薄い男性の前で行う仕草としては些か女性らしくないが、仕草自体はどことなく妖艶な女性らしさを感じる。女性経験豊富な翼の目にはどうにも、あどけなさと大人びた雰囲気が混在した雰囲気がアンバランスに見えた。
(なんか、ペースを乱されるな……)
噂通り、つかみどころの無い性格をしているようだ。
そんな彼女は自らのシルクハットをクルクルと回転させながら、次に放たれる翼の言葉を待っている様子だった。
ならば、ここは一つ言っておくとしよう。
「翔太が世話になったな」
「……翔太君? ああ、知り合いだったんだ」
「親の仕事の関係でな。あのガキと来たら、あんたと会ってから明らかに男の目になり始めた。全く、善良な市民からとんでもないものを盗みやがって……」
「?」
「……いや、不思議そうな顔するなよ」
何も存じませんと言いたげに首を傾げる少女の姿に、一体どこまで計算済みなのだろうかと空恐ろしく感じる。
彼女が「擬態」の異能を盗んだことは、盗まれた少年翔太と直接会って知っていた。
そして件の少年が、彼女と接触して以降良い方向に変わっていたことも。
巷では彼女のことを悪人や自分の異能に苦しんでいる人からしか異能を盗まない義賊だという声も上がり始めているが……果たして真実はどうなのやら。
風岡翼はセイバーズの一員である。
そんな彼には警察お抱えの「探偵」という、ごく一部の者にしか知られていないもう一つの顔があった。
「率直に聞きたい。あんた何者だ?」
先ほどの礼は少年の兄貴分としての言葉であり、ここから先はセイバーズの一員兼探偵風岡翼としての言葉だ。
「いや、こう聞いた方がいいな。あんたは聖獣……それも、サフィラス十大天使の一人なのか?」
「……ふふっ」
彼女、T.P.エイト・オリーシュアに関する情報はあまりにも少ない。
大胆不敵な犯行を重ねておきながら仮面を付けてもいないその容姿は既に割れており、調べれば過去の経歴など幾らでも出てくる筈なのに、不自然なまでに過去の情報が無いのだ。
この情報化された社会で、彼女ほど目立つ存在でありながらである。多彩な異能の応用で隠していたのだとしても、それこそ「最近になって他所からこの世界にやって来た」と言われた方がすんなりと納得できるレベルの隠蔽ぶりだった。
……いや、この質問自体がもはや白々しいものなのだろうか。
翼にとって、疑いが決定的になったのは昨夜のことだ。
彼女の異能「闇の不死鳥」に乗ってコクマーに挑んだ時、あの聖獣は怒りの形相でこう叫んだのだ。
『それは我ら十大天使の力の筈だ。人間如きが何故それを使っているのだァ!?』と。
その時点で既に、翼の疑問は九割がた確信に変わっていた。
ただ……それでも何故なのか、彼女の正体をまるで暴けた気がしないのだ。
まるで深淵を覗き込んでいるかのように、翼には彼女の底がわからなかった。
そんな少女は翠色の瞳で翼を見つめると、「しーっ」と人差し指を立てながら言い返した。
「ここで答えてしまうのは面白くない。キミも探偵なら、ボクの全てを当ててみてはどうかな? ボクの正体……このT.P.エイト・オリーシュアの素顔を、ね」
立てた人差し指で自らの頬を突き、不敵な笑みを作りながら翼を挑発する。
妖艶かつ無邪気な仕草と勇猛な風格と行動。そんなエイトの姿に一瞬だけ見とれていると、まばたきする間に彼女の姿はこの場所から消え去っていた。
それを追う気の無かった翼は、彼女が去り際に残していった一枚の紙切れを拾い上げながら、その顔にどっと疲労を滲ませながら息を吐いた。
「……マセガキ共が夢中になるわけだぜ」
彼女が盗んだ異能は、数日したら元に戻る。
しかし彼女が盗んだ者たちの心は、何年経とうと戻る保証はないのである。
怪盗の被害に遭った者たちの多くは何故か彼女についてその口をつぐみ、捜査協力に対して消極的になるのだと言う。被害に遭ってもそのことを報告しない者も多いらしい。
普通の犯罪者なら脅迫を疑うのだが、彼女の場合はその逆だ。
「犯罪者でなけりゃ、俺も口説いたんだけどなぁ……」
割と本気でそう呟く翼は、自他共に認める「チャラい男」だった。
一見クールで中身は熱いハートの主人公!
馬鹿だけど熱血ヤンキー筋肉の三枚目!
皮肉屋でチャラい、便利屋の二枚目!
不思議系大天使幼女の追加戦士枠!
敵か? 味方か? 謎の怪盗お姉さん!
我ら!!! ……記号にすると原作主人公が薄い気がするわコレ