TSオリ主は完璧なチートオリ主になりたいようです【本編完結】 作:GT(EW版)
ケセドの力を盗んだ時に感じた違和感は最初、彼の影響を受けたからだと思った。
だけど、それだったらもっと拒否反応とか僕の中であってもおかしくないのではないかと少し引っかかってもいたのだ。
もちろん、ケセドのことを受け付け拒否とか思っていないよ? ただ何と言うか、違和感を抱いている割には僕もすんなり受け入れすぎではないかと自分自身の思考に疑問を感じていたのだ。
そしてその疑問はビナー様やカロン様と会って、今朝のあからさまに重要そうな怪しい夢を見て、なんとなくわかってきた感じである。エイトちゃんわかっちゃった……
そう、今こうしてダァトと顔を合わせて語り合ったことで、僕の中で何か大切なピースがガッチリとハマったように感じた。パーフェクトエイトちゃんの完成である。まあ今までも十分パーフェクトだったけどね。前世の前世を知って、さらに完璧になったということだ。
しかし……改めて思うとすげえな僕。前世の前世はサフィラス十大天使の母親的な存在でしたとか、予想外な方向で格が高すぎである。ふふふ……前前世までカッコいいとは、これはもう転生ガチ勢と名乗っても良いのではないか? 鼻高々である。
「そうかな……」
「そうだよ」
もちろん、前前世がいかに格の高い存在であろうと、それだけで今の僕が偉大なる者かと言うともちろんそんなことはない。
僕はダァトでダァトは僕だけど、僕は僕でダァトはダァトだ。
この僕、T.P.エイト・オリーシュアが偉大なる大天使の来来世に相応しい存在であったかどうかは、これまでに僕が起こしてきた行動の全てが示してきたと思う。
その点どうかな、審査員のダァトさん?
「キミは立派だったよ」
……ありがとね。
君にそう思ってもらえたのなら、僕も完璧なチートオリ主を目指してきた甲斐があったと言うものだ。
彼女の言葉に満面の笑みを返した僕は、心の中がとても晴れやかになった。
僕自身のことについては、これで納得した。もはや何の引っ掛かりも無い。
まあ、もっと他に大事なことは色々あるんだけどね。
例えばここの外のこととか。
「エンくんたちのことが、気になるのかい?」
そりゃあもう、彼らだって僕の友人たちだもの。気になるに決まっているでしょう。
ぶっちゃけこの身体の秘密なんかよりも、僕には今彼らがどうなっていて、何をしているかの方が心配だった。僕はいつ如何なる時も冷静沈着で頼りになるクール系オリ主だから慌てないけど、特にメアちゃんのこととか結構心配しているのである。……うん、心配だなぁあの子……大丈夫かなぁ。
「メアちゃんなら大丈夫だよ。あれからも五体満足で、彼らのところにいる」
おお、それは良かった。
頼れるお兄ちゃんたちと一緒なら、二度と暴走することもあるまい。ケテルが欲しがっていた力も僕が頂戴しておいたし、今後は実の父親に狙われる心配も無い筈だ。……無いよね?
「ケテルは理由も無く誰かを殺すような子じゃないよ。……まあ、そうでなくても状況はあまりよろしくないけどね」
えー……状況、悪いの? もしかして僕が離脱しちゃったせいで?
「それもある……けど、仮にキミが離脱しなかったとしても、フェアリーワールドは根本的に大きな爆弾を抱えている世界だからね。ケテルと姉さんはそれぞれのやり方で対応しているようだけど、お互い上手く行っていないのが現状かな」
ふむ……その心は?
「キミが離脱した直後、深淵のクリファ「シェリダー」が目覚めた」
えっ。
シェリダーってあれでしょ? ヘットの近くに封印されている深淵のクリファって言うあの。
昨夜ビナー様と一緒に確認しに行ったけど、封印は完璧だったじゃん。なんで……ああ、封印が完璧だったからか。大体そう言うのって、近い内に何らかのイレギュラーが起こって解除されるものだもんね。
完璧な封印とか、満を持して復活する前フリだろフラグ的に考えて。
「それにしては長い前フリだったね……」
それな。完璧という前フリに恥じず、数千年間も封印を維持できていたのが寧ろ凄いって言うか……
あっ、そう言えば光の檻の中をサーチで覗いた時、シェリダー君からなんかすっごい嫌な目で見られたけど、心当たりとかある? 彼と面識があったりとか。
「あるよ。ボクが彼に、感情を教えた」
なるほど。と言うことは、深淵の世界の旅路で出会った関係か。
ふむ……君が感情を教えることができたのなら、君が会えば穏便に解決できたりする?
「それは難しいかな……彼が初めて知った感情は、深い怒りと憎しみだったから。彼は深淵の外──天界に生きとし生けるもの全てを憎んでいた。ボクのことも、ずっと殺してやりたいって憎んでいたよ」
怖っ……うーん、元々憎しみに生きていたクリファがその上何千年も封印されていたのだから、さらに酷いことになってそう。ラスボスの設定かなこれ。
しかし思ったけど、ラスボス候補多すぎだろこの世界。もしかして僕、今までずっと勘違いしていた?
「フェアリーセイバーズ∞」でのケテルって、ラスボスじゃなくて中ボスなのかしら……気持ち的に、元祖ラスボスは丁寧に扱ってほしいところだけど。
「おっと、こんなところにカロン姉さんが録りためた録画ディスクが」
よし、でかした!
僕が炎たちのこと、「フェアリーセイバーズ∞」について思考を巡らせていると、ダァトがおもむろに数枚のディスクを取り出すなり目の前にちらつかせてきた。
だけど……なんでそんなの持ってるの? 姉妹の間で流行ってるの?
「丁度キミが来る前に、姉さんがここに顔を出してね。これを置いていったんだ」
おや、入れ違いだったのか。再会してたんだね君ら。それは良かった!
だけど原初の大天使の再会を祝するお土産が、自分たちの世界をアニメ化したBDってかなりシュールすぎない? もう少しこうさ……雰囲気とかそういうのを大事にしようよと、エイトちゃんは劇場型オリ主として苦言を呈する。
「やだ。ボクだって娯楽好きだもん」
ディスクを抱き抱えながら、駄々っ子みたいな顔で言うなよ……かわいいけど。
まあ、それを言われてしまえば僕に返す言葉は無い。
どこぞの亡霊も言っていたけど、意識が永遠に続くなんて拷問だからね。暇を持て余した彼女がいい感じに時間を潰すことができる娯楽としては、カロン様のお土産チョイスは理にかなってはいた。俗っぽいが。
「ふふ、姉さんは昔からそう言うところ、気が利いていたからね。他のフェアリーたちからは「アイツいつも無口で何考えているかわからない」と言われていたけど……誰よりも気遣いができて、誰よりも優しかったのがカロン姉さんなんだ」
わかる。カロン様、いいよね。
「いい……」
いえーいとハイタッチする僕たち。二人揃ってカロン様ファンクラブである。
うん、カロン様がめっちゃ優しくていい人──いい女神様っぽい人だと言うのは、今更な話である。何より僕がここにいることがその証拠だし、彼女も何か企んではいるのだろうけど悪いことはしないと信じている。
それは別に、僕が彼女にそう思うように洗脳されているとかそういう黒い伏線ではない。紛れもない僕自身の本心である。
そんな素敵なカロン様を姉に持つダァトは、子供みたいにニコニコしながら手元のディスクをチェックしていた。その姿はこれから視るアニメの内容にワクワクしているようにも見えたし、姉から貰った久しぶりすぎるプレゼントにウキウキしているようにも見えた。
つまり何が言いたいかと言うと、クール系美少女が見せる子供っぽい一面っていいよねという話だ。
「……キミにそう思われるのはなんか釈然としないけど、一緒に視ない? エイト」
もちろん、そのつもりだよ。
カバラの叡智の時は途中だったし、外の世界の状況把握を原作のアニメを視聴することで行うのも乙なものである。
それに……カロン様がわざわざダァトのところに届けてきたということは、今の僕にはこれを視ることが必要だと判断したのだろうしね。彼女が。
興味津々にディスクを弄ぶダァトを前にして、僕はやれやれと苦笑を浮かべた。内心はもちろん、ノリノリだけどね。
ダァトの手によって、怪物が長年の封印から解き放たれるように──そのディスクが再生された。アニメ「フェアリーセイバーズ∞」一挙上映会の開始だった。
いっけー! フェアリーバーストだーっ!
そこだそこだそこだ! 負けるな炎! がんばえー! おおおお!? おおおお……よしっ! やったー!
「おー……これがエンくんのフェアリーバーストか。凄い凄いカッコいい~」
ディスクの再生から数時間後、そこには空のような世界に二人仲良く寝転びながら「フェアリーセイバーズ∞」の上映会を楽しんでいる僕たちの姿があった。
テレビとBDプレイヤーはカロン様と同じような手順で、どこからともなくダァトが召喚してくれた。電源とかどこに繋がっているんだよとか気になる光景ではあったがわざわざツッコミを入れるのは野暮ってものである。視れるものは視れるのだから、仕方ないよね!
いやあ、熱中しすぎてつい第一部──旧作で言うところのPSYエンス編のラストまでノンストップで視てしまったよ。歳甲斐も無く、応援上映みたいに興奮してしまったものだ。
ここまで、控えめに言って神アニメである。リメイクされてもフェアリーセイバーズは、やはり名作であることを再確認した。ふふ、みんなカッコいいなー。
しかしこうして改めて視聴してみると、シナリオ面に関してはPSYエンス編の方が完成度高いなぁと僕は思う。
それはきっと、主人公である暁月炎の物語としては、この章でほとんど完結しているからなのかもしれないね。
物語の中では早い段階からPSYエンスが聖獣を改造して作った「怪獣」をけしかけてきたり、コクマーがぶち切れる伏線が張られていたのだが、「組織のボスを倒す」という物語開始当初における主人公の大目標に対して常に一貫しているシナリオはわかりやすくていいものだった。
個人的にキャラクターのビジュアルとかは異世界編の方が好きだけど、起承転結が綺麗に纏まっていて完成度の高いバトルアニメだった。
いいものを視たわー。メアちゃんをはじめとする新キャラたちもさることながら、クオリティの高いデジタル作画で描かれた新しい「フェアリーセイバーズ」の物語は新技術で蘇ったリブート作として百点満点の出来だった。アニメの進化ってすげえや。
そんな興奮冷めやらぬ熱い想いを胸に適度にIQを落としながら視聴していた僕とは対照的に、ダァトの方はと言うと初めて目にした現代アニメにふむふむと相槌を打ちながら識者的な視聴スタイルで冷静に視聴していた。
そんな彼女が溢した率直な感想が、これである。
「人間って凄いね」
確かに。
「異能」というファンタジー的な力を科学的に解明することで、さらなる力を引き出そうとしたPSYエンスのボスも。
そんな彼の傲慢な面を、覚醒したフェアリーバーストの拳でぶん殴った暁月炎も。
どちらも凄いわ、同じ人間なのに。
人外の存在かつ異能の起源でもあるダァトから言わせてもらえば、二人の戦いを視た感想はそこに帰結するのだろう。
……うん、改めて見ると人間って凄いね。特に、PSYエンスのボスは天才すぎる。彼のたどり着いた叡智も真理の一つではあったし、人格さえまともなら稀代の天才科学者として人類史に名を刻んでいたことだろう。そう思うと実に惜しいと言うか、残念な男だった……作中でも言われていたが。
「もちろんそれも凄いけど、ボクは何より、アニメーション映像という媒体でボクたちの世界を完璧に具現化した作者さんの想像力にびっくりだよ」
……? あ、ああ、そっちの話ね。
確かに制作事情は不思議である。こちらの世界で起こった出来事が別の世界ではアニメとして放送されているなんて、冷静に考えるとどういうことだと言う話である。
あれかな? もしかして原作者とか脚本家とかが、この世界から変な電波を受信しているのだろうか?
「当たらずとも遠からずってところかな。姉さんが言うには、このアニメを作った人たちはかつて、ボクたちの世界に関わっていたらしい」
ほえー、それはそれは。案外原作者とかの魂のルーツが、こちらの世界の住人だったりしたのかもね。
僕とダァトという両世界を行き来した存在が実際にいる以上、あながち荒唐無稽な説ではなさそうだ。
ま、そんなのもう関係ないけどね。そんなことよりアニメの続きだ! 次のディスクの用意をしろ、ダァト!
「ガッテン承知っ」
ノリいいね。そうこなくちゃ。
僕と比べれば冷静な顔でアニメを視聴していたダァトだが、続きが気になるようで彼女は鼻歌を歌いながらディスクを交換していた。
察するに、「フェアリーセイバーズ∞」のメインターゲットは旧作の視聴者を親に持つ男の子ってところなんだろうけど、れっきとした女の子……子?であるダァトも楽しめる内容だったようだ。良かった良かった。
「ふふ、そんなに気を遣って女の子扱いしなくても、ボクのことは時代に取り残されたお婆ちゃん扱いでいいんだよ? とっくの昔に世界から居場所のなくなったロートルだし……」
? 君の居場所は僕の中だろ何言ってんの。
「…………」
そんな僕たちの関係だ。実年齢をアピールして、わざわざ自分から距離を取りに行く必要はなかろう。転生オリ主と言えば精神年齢でマウントを取ることもあるが、君にはしてほしくないなそういうの。
何ならエターナル美少女という利点を生かして、君はもっと僕のように、自分自身の外見的魅力を生かしていくべきだと思う。こう、スタイリッシュな感じに!
「……考えたことなかったな、そういうのは」
あらら……それは勿体ない。じゃあ、今度僕が色々教えてあげるよ。最高にカッコいいオリ主ムーブって奴をね!
「……やっぱキミの方が、天使に向いているよ」
さ、そんなことよりフェアリーセイバーズ∞の時間だ! はよ! はよ!
「わかってるわかってる。そう急かしなさんなって」
D・V・D! D・V・D!
……この場合、本当はB・D!と叫ぶのが正しいんだろうけど、D・V・Dの方が語感がいいよね。腕を振りながら連呼するととても気持ちがいい。昔、マイフレンドたちとアニメの上映会を開いた時、男共が楽しそうに叫びながら何故か上着を脱いで踊り回っていたことを思い出す。
「……アレって、何か元ネタとかあるのかな?」
さあ? アイツらのことだし何かしらの元ネタはあるとは思うけど、何故かみんな、僕に教えてくれなかったんだよねー。僕も無理には聞き出さなかったけど。
「えっちな奴だったりして」
あー……もしかしたら、そうかも。
僕は男友達とする猥談とか結構楽しいと思っているけど、何故か僕相手にはみんなして避けたがるんだよねそういう話。デッキーは気にせずバンバン話してくれたけど。そこでわかったけどアイツロリコンらしいぜ。本当は貧乳が好きなだけだと思うけど、僕は指摘しないであげたよ!
「偉い違い。あの子、凄く面白い子だったよね」
うん。だけどとても頑張り屋で、本気になれば何だってデキるナイスガイだったぜ。
「そうだね……キミの友人たちは、みんな個性的で楽しい人間たちだった」
当然だろ……ま、今はそんな話よりアニメを楽しもう。さあフェアリーセイバーズ∞だ!
PSYエンス編が終わったら、次はお待ちかねの異世界編である。ラファエルさんの回だけ先に視せてもらったけど、旧作とは色々展開が変わっていて面白そうである。
チートオリ主である僕がいない原作の異世界編が果たしてどう進行していたのか──見せてもらおうじゃないか!
異世界編は──僕にとって予想外な展開の連続で、とても面白かった。
PSYエンス編の内容も大変素晴らしかったが、「フェアリーセイバーズ∞」が送る全く新しいフェアリーワールドはクオリティーの高い作画も含めて覇権的な出来映えであり、風景を眺めているだけでも心が躍った。
PSYエンス編よりも大人っぽくなった炎たちのビジュアルも男らしくてカッコいいし、より人間らしくなったメアちゃんも可愛くて素晴らしい。旧作のように戦うヒロインではなくなってしまったけど、炎の帰る場所を健気に守っている灯ちゃんの姿も由緒正しきメインヒロインの風格が漂っていたし、明宏はムキムキであった。
そう、彼は今作では異世界組に同行することなく地球に残り、地球に侵攻してきたアビスたちをサフィラス十大天使9の天使「イェソド」と協力し合いながら元気にしばき回っていたのである。
アビスがこの段階で人間世界に進出していたのは旧作と異なる展開であったが、それより驚いたのは「基礎」を司る大天使イェソド──サフィラスの中で一人だけ見かけないと思っていたら、人間世界にいたんだね君。
最後の大天使は、僕たちの知らないところで大活躍をしていたというわけである。これは一本取られたわ。
……で、物語はそんな人間世界の様相と並行しながら、炎たちセイバーズ機動部隊+メアちゃんがフェアリーワールドの空を飛び回り、はぐれた仲間たちを捜しながら聖龍アイン・ソフのもとを目指す──というのが「フェアリーセイバーズ∞」の異世界編の内容である。
大筋は旧作「フェアリーセイバーズ」とそこまで変わらないけど、尺が贅沢に使える分、登場キャラクターの掘り下げが断然増えているのがいいよね。特にマルクト様ちゃんやホドの扱いは旧作とは偉い違いである。
他には「深淵のクリファ」や「T.P.エイト・オリーシュア」と言った新キャラたちの活躍も見どころである。
特にT.P.エイト・オリーシュアの活躍ぶりと言ってはまさに新章のヒロインって感じで華々しい! 今までいなかったタイプのボーイッシュなボクっ子お姉さん系美少女である彼女は、PSYエンス編が終わった後の日常回から姿を見せ始め、意味深なセリフを呟きながら子供たちの異能を次々とかっ攫っていた。
そんな彼女は闇雲カケル君が主役を張る外伝的なテレビスペシャルのメインヒロインとして大々的に活躍すると、その存在感を一気に爆発させていった。
ミステリアスな黒髪美少女は異世界編にも主要人物として参戦すると、炎たちセイバーズを導くような立ち振る舞いをしながら幾度となく彼らのことを助けてくれた。
その強さとカッコ良さは、一視聴者として「このT.P.エイト・オリーシュアってキャラ、目立ちすぎじゃね?」と思うぐらい獅子奮迅の活躍で物語の中心人物になっていたのだ。
戦う新ヒロインとして颯爽と現れたボーイッシュお姉さんである。彼女の愛用するロングスカートも戦闘中には程よくめくれて脚線美が美しく……みえ……みえ……
「……無理しなくていいんだよ、エイト」
「……っ」
……あ。
あああ……あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
なんで!?!?!?!?!?!!?
なんでボクいるの!? ボクオリ主でしょ!? オリ主がナンデ原作にいるの!?
わからない……わけわからないよぉ……! なんでお前そこにいるんだよぉ違うだろぉ灯ちゃん差し置いて何ヒロイン面してんだよお前……ばかぁ! ばかー!! そういうの誰得……圧倒的誰得……っ、お前のせいで名作アニメがクソアニメの仲間入りじゃ! 二次創作オリ主が公式面するとかお前……っ、それをやったらダメでしょうがあああああああああああっ! うわああああああああああああっ!!
「……やだぁ……っ」
「よしよし、大丈夫だからね……キミはオリ主だから。エイトは完璧なチートオリ主だよ」
「……うう……ボク、おりしゅ……こうしきじゃないよ……」
オリ主だと思っていた自分が、オリ主じゃなかったかもしれない。
そんな許されざる光景を目の当たりにした僕は、現実逃避から帰ってきた途端存在の矛盾と羞恥心が綯い交ぜになったカオスな感情に悶え苦しみ、ジタバタと暴れ回った後ダァトの膝の上で泣いた。泣いた。
それはもう、思わず幼児退行してしまうほどに泣いたよ。前世で余命宣告された時より泣いたんじゃないかってぐらい……いいもん、どうせダァトしか見ていないんだから存分に泣かせてよ。
「あ、うん……泣きたい時は泣いていいんだよ。だけどその顔は悲しんでいるって言うよりも、完璧なヒロインムーブを客観視したことによる羞恥心に悶えていると言った方が……」
そうだ……それが一番の問題なのだ。
僕が……T.P.エイト・オリーシュアが公式のキャラになっていることも泣けたが、それ以上に泣けたのは僕が作中において、まるで真のヒロインみたいに扱われていることだ。なんでや……どう見てもミステリアスなイケメンお助けキャラポジションやろが!
綺麗に描かれているのは嬉しいけどさ……ちょっと、そう言う対象に見られるのはその……やだ。
「……あざといなキミ」
うるさい。とにかく僕はこんなものを認めない! オリ主のブランドに傷がつくからな……
そう……それは僕の前に、「公式からお出しされた致命的な解釈違い」という──オリ主にとっての
オリ主の裏ボス(公式からの後出し情報)降臨!
なお絶対に勝てないもよう